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インプラント治療を受けるとできなくなることはある?治療のメリットやトラブルへの対処法も解説

インプラント治療を受けるとできなくなることはある?治療のメリットやトラブルへの対処法も解説

インプラント治療は施術から10年後で9割、20年後でも7割が機能しているとされ、耐久性の高さや審美性、快適性などで注目される治療法です。

しかし、この治療を受けるとMRIやCT検査などができなくなるともいわれます。本記事では、インプラント治療によってできなくなることの詳細や、治療のリスク、メリット、トラブルの対処法などを解説します。

インプラント治療を考えている方は、この記事を参考にしていただければ幸いです。

インプラント治療を受けるとできなくなることはある?

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インプラント治療の特徴を教えてください。
インプラント治療は、顎の骨に人工の金属製歯根を埋め込み、その上部にプラスチックやセラミックなどで作った人工歯を取り付ける治療法です。手順は歯肉を切開して顎骨を露出させ、そこにドリルで穴を開け、人工歯根のネジをねじ込みます。歯科治療のなかではかなり大がかりで、手術を伴う治療です。埋め込むインプラントは大きく3つの部分に分かれます。顎の骨に埋め込まれて歯根となるインプラント体、その上部に付く支台のアバットメント、上部構造の人工歯からなる3点構成です。外から見えるのは上部構造だけで、レジン(プラスチック)やセラミック(陶器)、金合金などから選択します。
インプラント治療を受けるとMRI検査ができなくなりますか?
インプラント治療の後MRI検査ができなくなる場合は、たしかに存在します。ごく一部ですが、人工歯を固定するために磁石を使うインプラントにした場合です。MRIは強力な磁場と電磁波を発生させて、体内の構造を描出する装置です。そのため鉄やニッケルなどの磁性体が患者さんの体内や身体の周囲に存在すると、強力な磁場に引き寄せられてケガをしたり装置が破損したりする事故が発生します。歯科のインプラントで使う材料はチタンやチタン合金が一般的です。チタンは非磁性体のため、インプラント治療を受けた後も多くの方はMR検査が受けられます。詰め物やかぶせ物に使う金や銀、パラジウムなども非磁性体で問題ありません。
インプラント治療を受けるとCT検査ができなくなりますか?
CT検査の場合、インプラント治療が原因で検査ができなくなることはありません。CTの検査機器はMRIとよく似た形ですが、しくみはまったく別物です。CTはX線を使って身体を透視する機器で、輪切り画像が一般的です。また複数の方向から患部を撮影し、それを複合的に処理した立体的な3D画像も得られます。体内にインプラントがあっても、そのまま画像として表示されるだけです。ただ、金属の種類によってはそれにX線が反射して、光の乱反射(アーチファクト)のような画像になる場合があります。しかし、歯のインプラントはほとんどチタンまたはチタン合金のため、アーチファクトが写り込む可能性はほとんどありません。
インプラント治療を受けると喫煙ができなくなるというのは本当ですか?
インプラント治療を受ける場合、治療前から禁煙を求められます。禁煙する理由の一つは、酸欠状態を起こさない点です。喫煙時に吸い込む一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと酸素との結合を妨害します。その結果顎骨や歯肉が酸欠になり、治療中の出血リスクと術後の治癒遅延が生じます。これを抑制するために禁煙が必要です。もう一つの理由として、タバコには有害物質が多数含まれる点があります。有害物質が傷の治癒を妨げ、インプラントと顎骨の結合を遅らせる点が懸念されます。さらに、免疫機能を低下させ、術後の感染症リスクを上昇させる点も禁煙が求められる理由です。インプラント治療後は少なくとも一週間は禁煙ですが、インプラント治療の成功を望むなら、数ヶ月は禁煙しましょう。

インプラント治療に伴うリスク

レントゲン写真を確認する歯科衛生士

インプラント治療にはどのようなリスクが伴いますか?
インプラント治療はメリットが大きい治療法ですが、いくつかのリスクも伴います。なかでも大きなリスクは手術になることです。麻酔の負担や出血、痛みは避けられず、装着したインプラントと骨が結合するには長い時間が必要です。手術のほかにも、以下のようなリスクが挙げられます。
  • 細菌感染:歯周病に似たインプラント周囲炎
  • 骨との結合不良:喫煙や造骨機能低下による
  • 痛みや腫れ:手術のほか細菌感染による
  • 見た目の不満:前歯などで不自然に見える場合がある
  • 構造物の破損:歯ぎしりや結合強度不足による
  • 神経損傷による諸症状:手術中に下顎神経周辺を損傷

インプラント治療にはこうしたリスクが予想されます。しかし、それぞれに適切な予防措置が取られるため、実際に不具合が発生する頻度は多くありません。

インプラント周囲炎について教えてください。
インプラント周囲炎は天然歯の場合にみられる歯周病に似た疾患です。インプラントに接する粘膜部分が細菌感染による炎症で赤く腫れ、歯周ポケットからの排膿や歯肉からの出血がみられます。また、歯槽骨が溶けて減少しているのも特徴です。原因はインプラントに付着した細菌の塊であるプラークで、インプラント周囲炎の患者さんの多くに、インプラント治療前の歯周病の既往があるのが特徴的です。また、喫煙者や糖尿病の方が発症しやすいことも示唆されています。治療は薬剤で除菌する非外科的療法と、病変部を切開して消毒し不良組織を切除する外科的療法です。症状によってはインプラント除去もあり得ます。
インプラント治療が受けられない方もいますか?
インプラント治療は誰にでもできるものではありません。身体の状態が以下のような方は治療を見合わせる場合があります。
  • 基礎疾患がある:疾患治療との兼ね合いが難しい
  • 埋入部位に骨が少ない:保持する強度が不足する
  • むし歯や歯周病がある:感染症リスクが大きい
  • 未成年や妊婦:成長阻害リスクや危険性との兼ね合い
  • 禁煙できない:感染症や癒合不良のリスクあり

こうした状況にある方はリスクが大きいため、インプラント治療には向かないでしょう。ただし、深刻な問題がない場合は、リスクの回避手段によって治療が可能になります。まずは歯科医師に相談しましょう。

インプラント治療のメリットとトラブルへの対処法

歯医者と男性患者

インプラント治療にはどのようなメリットがありますか?
インプラント治療のメリットで、代表的なものは自分の歯に近い感覚で食べられる点です。インプラントは顎骨に直接取り付けるため、噛み合わせに違和感がありません。会話でもしっかり発音でき、自然に無理なく話せます。また、ブリッジのように自分の歯を削る必要がなく、部分入れ歯のようにほかの歯に負担をかけるリスクが少ないのもメリットです。そして、審美性のよさも大きなメリットです。セラミックやジルコニア製の人工歯は天然歯のような色つやと透明感があり、人工物とは気付かれにくいため気兼ねなく会話や食事が楽しめます。
インプラント治療中のトラブルを回避する方法を教えてください。
インプラント治療は長期間を要するデリケートな治療で、さまざまな事情で期待どおりの結果が得られない可能性があります。もし治療中に不満や不明な点が生じた場合は、できるだけ早く歯科医師に相談するのが重要です。歯科医師の説明がよくわからないまま治療が進むと、結果の受け止めに歯科医師との間で食い違いが生じます。疑問がある場合、治療方法が変更できる早い時期の相談が効果的です。また、相談や質問は納得がいくまで繰り返しましょう。やり取りが頻繁なほど思い違いが減らせます。なお、歯科医師やスタッフとの間で交わした治療方法や費用に関する説明事項は、できるだけ同時にメモを取りましょう。そうすることでより理解が深まり、トラブル回避に効果的です。
インプラント周囲炎への対処法を教えてください。
インプラント周囲炎は、進行するとインプラントの除去、つまり治療の失敗に直結する深刻な疾患です。原因菌は歯周病と同じ歯周病菌です。インプラント治療の前に歯周病の治療ができていないとインプラント周囲炎にかかりやすいため、治療前の歯周病診査が欠かせません。予防には患者さんが自分で行う口腔内の清掃が重要な役割を持ちます。そして、患者さんもインプラント周囲炎の知識と関心を持ち、日常で何か変化があればすぐに歯科医師の診察を受けることが大切です。さらに、術後の経過が順調であっても、定期的に歯科医師のチェックを受けることを忘れてはいけません。

編集部まとめ

女性の歯

インプラント治療を受けるとできなくなる可能性があるのはMRI検査と喫煙です。しかしMRI検査ができないのは、ごく一部の治療に限られ、大半のインプラント治療は問題ありません。そして、喫煙は治療効果の維持のため禁煙することが望ましいです。

また、インプラント治療にはリスクがあり、持病や身体の状態で治療が受けられない方も存在しますが、大半は予防措置で対応できます。

ただ、注意すべきなのはインプラント周囲炎です。罹患しないように医師と連携して対応すれば、インプラント治療のさまざまなメリットを享受できるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

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