インプラント

インプラントが取れた場合の費用は?対処法・再治療について解説

インプラントが取れた場合の費用

インプラントは失った歯の代わりになる治療法で、耐久性もほかの治療方法と比べると高いことが特徴です。しかしながら、治療後にインプラントが取れたり、破損したりする可能性もあります。

インプラントを入れたものの、もし取れたらどうすれば良いのか、費用はどれくらいかかるのか気になる方もいるでしょう。

本記事では、インプラントが取れた場合の費用はどれくらいかかるかをご紹介します。また、インプラントが取れた場合の対処法や再治療についても解説しますので、参考にしてみてください。

インプラントが取れた場合の費用は?

お札と財布

インプラントが取れた場合の費用は、どの部分が取れたかによって異なります。

インプラントは上部構造・アバットメント・インプラント体で構成されており、どの部分が取れたかに応じて費用も変わるでしょう。それぞれの場合の費用について解説します。

上部構造が取れた場合

まず、インプラントの上部構造(被せ物)が取れた場合の費用です。インプラントの被せ物には、ネジで固定するものと、セメントで接着するものの2種類があります。

基本的には、被せ物が割れていなければ再接着するだけで済むため、数千円程度と費用はそれほどかからないでしょう。

保証期間内であれば無料の場合もあります。ただし、上部構造が壊れた場合や紛失してしまった場合は修理や作り直しが必要になるため、再作製の費用がかかる場合があるでしょう。

場合によっては、最初に支払った被せ物の費用と同じぐらいかかる可能性があります。修理や再作製の場合も、保証期間内であれば費用は少なくて済むでしょう。

アバットメントが取れた場合

アバットメントは、顎の骨に埋め込まれているインプラント体と、被せ物をつなぎ合わせている部品です。アバットメントが取れる場合は、被せ物も一緒に取れるケースが多いでしょう。

アバットメントに破損がなければ、そのままインプラント体に接合できるため、費用は数千円程度で済みます。

ただし、アバットメントに破損がある場合は再び取り付けることはできず、修理や作り直しが必要になるでしょう。

インプラント体が取れた場合

顎の中に埋め込まれているインプラント体が取れた場合は、一番費用がかかる可能性があります。のちほど詳しく説明しますが、インプラント周囲炎のような原因が考えられるからです。

インプラント周囲炎の治療を行い、再手術が可能かどうかを検討します。インプラント周囲炎で取れたインプラント体は、細菌を完全に除去することが困難なため、再利用はできません。

そのため、新しいインプラント体を使って再手術する必要があります。再手術になると、最初に手術を受けた時以上の費用がかかる場合もあるでしょう。

インプラントが取れた場合の対処法

歯を気にする女性

もし、インプラントが取れた場合は、どのように対処したら良いでしょうか。対処法は、インプラントを構成するどの部分が取れたかによって異なります。

上部構造・アバットメント・インプラント体が取れた場合がありますが、それぞれの場合の対処法をみてみましょう。また、自分で直すことは可能かどうかについても解説します。

上部構造が取れた場合

まず、上部構造(被せ物)が取れた場合の対処法ですが、破損していなければ再接着で利用が可能です。そのため、飲み込まないように口から出して、清潔な入れ物やケースなどで保管しましょう。

紛失してしまうと新たに作り直す必要が生じるため、注意しながら保管する必要があります。また、上部構造(被せ物)が取れたまま放置していると周りの歯に悪影響を与える場合があるので、できるだけ早めに歯科医院に取れたものを持って行って再接着してもらいましょう。

アバットメントが取れた場合

アバットメントが取れた場合も、破損していなければ再利用が可能です。アバットメントが外れると上部構造(被せ物)も同時に外れるケースが多いため、被せ物が付いているかどうかチェックしましょう。

上部構造が取れたときと同様、清潔なケースやビニール袋などに入れて保管し、歯科医院に持って行きます。歯科医院では、折れたり曲がったりしていないかを確認したのちに、インプラント体とアバットメントを接合して終了です。

アバットメントや上部構造(被せ物)が破損している場合は、新しいパーツに取り換えなければなりません。

インプラント体が取れた場合

インプラント体が取れた場合は、アバットメントも上部構造(被せ物)もすべて外れている状態です。状態によっては再利用が可能なパーツもあるため、捨てずにケースやビニールに入れて保管しましょう。

インプラント体が外れる原因としては、インプラント周囲炎もあります。そのため、インプラント体が抜けたあとに放置していると、炎症が悪化し細菌感染を引き起こす可能性があるでしょう。

できるだけ早めに歯科医院で診察を受ける必要があります。また、インプラントが抜けた部分もできるだけ触らないようにしましょう。

自分で無理に直そうとするのは危険

歯科医師 バツマーク

インプラントが取れたときに、自分で直せないかと考えるかもしれませんが、危険なのでやめましょう。

たとえば、被せ物が取れた場合、自分で被せ物を装着できないかと思うかもしれません。実際には被せ物はただはめるだけでなく、インプラントと固定する必要があるため、自分では装着できません。

また、被せ物を装着する向きを間違えると破損したり、すぐ取れてしまったりして誤飲の危険性もあります。

インプラント体が外れた場合も、そのまま自分で元に戻すと細菌感染やその他の不具合が生じる可能性があるでしょう。必ず歯科医院に外れたパーツを持って行って直してもらう必要があります。

インプラントが取れた場合の再治療の費用

歯科医師 計算機

インプラントが取れた場合の再治療の費用は、上部構造やアバットメントだけが取れたケースか、インプラント体が取れた場合かで変わってくるでしょう。

再利用できるパーツがあれば費用は安くて済みますし、破損があった場合は新たにパーツを揃える必要があるため高くなります。

通常のインプラント治療の費用は1本あたり30~50万円(税込)が相場ですので、すべて再治療するとなると同じくらいの金額がかかるでしょう。

また、骨量が多いか少ないか歯周組織によっても治療費は異なります。保証期間内であれば、無償か低価格で再治療を受けられるでしょう。

インプラントが取れる原因

インプラント取れる イメージ

インプラントが取れるのには、さまざまな原因が考えられます。具体的には、次のような原因が挙げられるでしょう。

  • 良くない噛み合わせ
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • インプラント周囲炎
  • 経年劣化
  • 強い衝撃
  • ネジの緩み

それぞれの原因について詳しく解説します。

良くない噛み合わせ

インプラントが取れる1つ目の原因は、良くない噛み合わせです。インプラントを埋め込む場所が悪いと、噛み合わせに問題が出るケースがあります。

結果としてインプラントに過剰な負担がかかることになり、それがインプラントが取れる原因の1つになるでしょう。

こうした事態を防ぐには、定期的なメンテナンスでインプラントの噛み合わせを確認する必要があります。

歯ぎしりや食いしばり

歯が痛そうな女性

インプラントが取れる別の原因は、歯ぎしりや食いしばりなどの癖です。天然歯の場合は顎の骨との間に歯根膜(しこんまく)と呼ばれるクッションがあるために、衝撃があっても吸収する働きがあります。

インプラントは骨と直接結合しているため、噛むときに強い負荷がかかるでしょう。強い歯ぎしりや食いしばりを無意識に行っていると、インプラントに強い負担がかかって取れる可能性があります。

強い歯ぎしりや食いしばりがある方は、マウスピース型のナイトガードを付けたり、矯正治療で噛み合わせを調整したりすることがおすすめです。

インプラント周囲炎

インプラントが取れる別の原因は、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は歯周病の一種で、お口の中の不衛生な状態により歯周病菌が増殖して引き起こされます。

インプラント周囲炎になると炎症が歯槽骨に広がり、骨が溶けてしまい、インプラントを支える骨が足りなくなって抜け落ちる原因になるでしょう。

インプラント周囲炎を防ぐためには、お口の中を清潔に保つとともに、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けることが大切です。

また、喫煙もインプラント周囲炎の原因になる場合があるので、予防を優先するのであれば禁煙することも良い方法といえるでしょう。

経年劣化

インプラントの経年劣化も、インプラントが取れる原因の1つです。インプラントは丈夫な素材で作られているため、通常は10~15年は使用できますが、経年による劣化があります。

しかしながら、歯ぎしりや食いしばりなどの癖により、寿命が短くなってしまう可能性があるでしょう。ナイトガードを使用してインプラントに必要以上の負荷がかからないようにしたり、定期的なメンテナンスによって寿命を延ばせます。

経年劣化によってインプラントの寿命が来た場合は、新たに手術を受けてインプラントを埋め込み直す必要があるでしょう。

強い衝撃

インプラントが取れる別の原因としては、強い衝撃も挙げられるでしょう。転倒してインプラントをぶつけたり、事故にあったりして強い衝撃が加わると、インプラントが取れたり破損したりすることがあります。

また、硬すぎるものを噛んで強い衝撃が加わるケースもあるでしょう。天然歯でも欠けてしまうような硬いものをインプラントで噛むと、歯が欠けてしまう場合があります。

とはいえ、通常の食事であればインプラントが取れたり、破損したりすることはありません。

ネジの緩み

最後に、ネジの緩みもインプラントが取れる原因として考えられるでしょう。インプラントはネジで固定されており、緩んでしまう場合があります。

緩んでしまう原因には、上部構造(被せ物)の不具合・歯ぎしりや食いしばり・噛み合わせが合っていないことなどがあるでしょう。

インプラントがぐらついているように感じた場合はネジが緩んでいる可能性がありますので、早めに歯科医院で診てもらいましょう。ネジを締め直すことにより、インプラントが取れるのを防げます。

インプラントの保証期間は?

歯科医師

インプラントが取れても保証期間内であれば、無償で修理や付け直しをしてもらえる場合があります。インプラントの保証期間は歯科医院によって異なるでしょう。

一般的には、5年・10年・永久保証のうちのいずれかの場合が多いです。保証期間がある場合でも、インプラント体は10年保証で上部構造(被せ物)は5年保証など、パーツにより期間が異なるケースもあります。

また、インプラントを入れてからの年数に応じて自己負担の費用が変わる場合が多いでしょう。さらに定期的なメンテナンスを受けていなかったり、予期せぬ事故でインプラントが取れたりした場合は、対象外になるケースもあります。

インプラントを長持ちさせるには?

歯を指さす女性

インプラントは通常10~15年は使用できますが、何もしないと寿命が短くなってしまう場合があります。

インプラントをできるだけ長持ちさせるためには、次のような点に注意しましょう。

  • 定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける
  • 歯ぎしりや食いしばりなどの癖を改善する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける

歯科治療中の医師

インプラントを長持ちさせるためには、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。インプラントの寿命を縮める大きな要因は、インプラント周囲炎です。

インプラント周囲炎はお口の中の環境が悪く、歯周病が増殖して引き起こされるため、セルフケアとともに定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける必要があります。

歯ぎしりや食いしばりなどの癖を改善する

インプラントを長持ちさせるためには、歯ぎしりや食いしばりなどの癖を改善する必要があるケースもあるでしょう。歯ぎしりや食いしばりも、インプラントに過剰な負荷がかかって寿命を短くする原因になるからです。

歯ぎしりの癖がある方には、ナイトガードを作製する場合があります。

また、生活習慣も歯ぎしりや食いしばりの原因になることがあるでしょう。そのため、深く眠る・ストレスを解消することなどにより、生活習慣を改善することも大切です。

まとめ

歯のレントゲンを指さす歯科衛生士

本記事では、インプラントが取れた場合の費用についてご紹介しました。費用はインプラントのどのパーツが取れたかによって変わってきます

また、ただ外れただけか破損しているかによっても変わってくるでしょう。ほかにも保証期間内かどうかも費用に影響を与える要素です。

もし、インプラントが取れた場合は清潔な状態で保管し、歯科医院に持って行きましょう。自分で直すのは危険なため、おすすめできません。

インプラントは、定期的なメンテナンスによって長持ちさせられるので、忘れずに歯科医院に行くようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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