すべての歯がない無歯顎のケースに適応できるオールオン4は、総入れ歯の見た目や使用感が苦手という方には推奨できる補綴治療です。
オールオン4の上部構造は、総入れ歯のように取り外してケアできないため、汚れがたまりやすくなっています。この記事では、オールオン4と歯茎の間に隙間ができる原因やケア方法、メンテナンスの重要性を詳しく解説をします。
オールオン4と歯茎に隙間ができる原因
オールオン4の上部構造と歯茎との間に隙間ができる原因やそれによって生じる問題を解説します。
- なぜオールオン4と歯茎に隙間ができるのですか?
- 一般的にオールオン4の上部構造と歯茎との間に隙間はほとんど生じません。可能な限り歯茎とフィットするよう設計されるものですが、以下にあげる原因からオールオン4の上部構造と歯茎との間に隙間が生じることがあります。
◎インプラント体の埋入位置が適切ではない
オールオン4では、チタン製の人工歯根であるインプラント体を4本、顎の骨に埋め込みます。この埋入位置が適切ではないと、上部構造の適合性も低下することから、歯茎との間に不要な隙間が生じます。オールオン4の治療直後から歯茎の隙間が見られる場合は、この可能性が高いといえます。
◎歯茎と歯槽骨の吸収
インプラントは、総入れ歯よりも歯茎や歯槽骨が痩せにくい治療法ですが、それでも経年的な吸収は避けられません。歯茎が下がり、上部構造との間に隙間が生じてしまいます。これはオールオン4のすべての症例に伴うリスクといえるでしょう。
◎インプラント体の移動
上部構造の土台となるインプラント体は、顎の骨にしっかりと結合していますが、患者さんの食生活や全身状態の変化などによって、僅かながらでも移動することがあります。その影響が歯茎にもおよび、不要な隙間が生じるのです。
- オールオン4と歯茎の隙間によって起こる問題を教えてください
- オールオン4の上部構造と歯茎との間に不要な隙間が生じると、以下のような問題が生じます。
◎口元の審美性が低下する
オールオン4の上部構造は小さく、自然な見た目に仕上がります。歯茎との移行部に隙間が生じることで不自然な見た目となり、口元の審美性が低下することがあります。 口を開けたときに上部構造と歯茎との移行部まで露出しないケースであれば、不要な隙間が生じても審美面における問題は生じません。
◎細菌感染のリスクが高まる
オールオン4では天然歯が1本もないため、不潔になってもむし歯になることはありません。しかし、顎の骨に根差した人工歯根があることから、歯周病にかかります。オールオン4の上部構造と歯茎の間の隙間は、細菌が繁殖しやすい場所で、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが上昇します。
◎咬合力が不均一になる
歯槽骨の吸収やインプラント体の移動によって歯茎の隙間が生じている場合は、噛む力である咬合力が部位によって変わることから、オールオン4が損傷したり、顎骨に過剰な負担がかかったりするおそれがあります。
- 歯茎の隙間はどのくらいの期間で生じやすくなりますか?
- インプラント体の埋入位置に誤りがあったり、上部構造の設計が不適切だったりする場合は、オールオン4の治療直後に歯茎の隙間が生じます。
それ以外の理由で上部構造と歯茎の間に隙間が生じる場合は、少なくとも1年近く経ってから生じやすくなります。短い期間で歯茎の隙間が生じた場合は、インプラント周囲炎を発症するなどのトラブルを抱えているものと考えられるでしょう。
適切なケアを行っていれば、10年経っても歯周組織に変化は見られないケースも珍しくはありません。
オールオン4の歯茎の隙間をケアする方法
オールオン4の上部構造と歯茎との隙間をケアする方法を解説します。
- 歯茎の隙間の汚れを防ぐにはどうすればいいですか?
- オールオン4と歯茎との隙間は、やわらかめの歯ブラシ、ワンタフトブラシ、口腔洗浄器、マウスウォッシュなどを活用して、セルフケアしましょう。
歯茎の隙間の汚れは、通常のケア方法では落としにくいことから、あらかじめ歯科医院で正しいケア方法を学んでおく必要があります。
- ワンタフトブラシを用いたケア方法を教えてください
- ヘッドの部分に一束のブラシが付いた清掃器具で、細かい部位の汚れを落とすのに適しています。オールオン4の上部構造と歯茎との隙間に丁度よく入るような構造となっていることから、効率的なケアが行えます。
ワンタフトブラシの毛先を上部構造と歯茎の隙間に挿入するような感覚で磨くようにしましょう。ワンタフトブラシはその構造上、力が集中するようになっているため、磨く圧力には十分な配慮が必要です。
- 歯ブラシの磨き方のポイントを教えてください
- 歯ブラシによる歯磨きもワンタフトブラシと同じです。やわらかめの歯ブラシの毛先を歯茎の隙間に挿入する感覚で磨きましょう。
歯茎のマッサージも同時に行うと、歯周組織の血行が良くなります。歯ブラシで歯茎の隙間を磨くときは、歯磨き粉を使わない方がよいでしょう。特に研磨剤入りの歯磨き粉を使ってゴシゴシ磨くと、歯茎を傷めてしまいます。
- その他にも効果的なセルフケアはありますか?
- ジェットウォッシャーと呼ばれる口腔洗浄器は、歯茎を傷めにくいセルフケア方法です。歯茎の隙間にジェット水流を吹き付けることで効率的に汚れを落とせます。
ジェットウォッシャーだけでセルフケアを完結することは難しいため、歯ブラシやワンタフトブラシで磨くことの併用が必要となります。お口のなかの細菌の活動を抑えられるマウスウォッシュも歯茎の隙間のケア方法として効果的です。
歯科医院でのオールオン4のメンテナンス方法
歯科医院で受けることができるオールオン4のメンテナンス方法について解説します。
- オールオン4はどのくらいの頻度で通院すればいいですか?
- オールオン4のメンテナンスは、3ヵ月に1回の頻度で受けるのが望ましいです。上部構造と歯茎の間の隙間は、セルフケアだけで衛生状態を良好に保つことは難しいため、メンテナンスを定期的に受ける必要があります。
患者さんのセルフケア状況や口内環境によっては、6ヵ月に1回の頻度でメンテナンスを受けても問題がない場合もありますが、主治医と相談しながら決めていきましょう。
- 歯科医院で受けられるメンテナンス方法を教えてください
- 歯科医院では、オールオン4のメンテナンスでは、上部構造とインプラント体の状態を確認します。その際に歯茎の隙間もしっかり診てもらえます。
インプラント体の安定性や骨との結合状態を見る場合は、レントゲン撮影を行うこともあります。その他、歯科衛生士によるクリーニングやセルフケア指導が行われます。
- オールオン4と歯茎の隙間が大きくなったら作り直しが必要ですか?
- 隙間の大きさによって状態によって対応が異なります。上部構造の作り直し、インプラント体の埋め直し、歯肉移植術、骨造成などの方法があります。歯茎の隙間が大きくなったら、大きな処置が必要となることから、可能な限り予防しましょう。
編集部まとめ
オールオン4の上部構造と歯茎との間に隙間が生じる原因とケア方法を解説しました。オールオン4の上部構造と歯茎との間には、一般的には大きな隙間は存在していませんが、インプラント体の埋入位置に誤りがあったり、歯茎や歯槽骨が痩せたりすることで不要な隙間が生じることがあります。
歯茎の隙間は細菌感染のリスクを上昇させることから、セルフケアと定期的なメンテナンスを徹底する必要があります。オールオン4の治療直後からケアをしっかり行うことで、歯茎の隙間は予防しやすくなるでしょう。
参考文献