歯が1本もないような症例に適応されるオールオン4治療ですが、総入れ歯よりも審美性や機能性、耐久性に優れていることから検討する方が増えています。
しかし、オールオン4が適応にならない方もいるのはご存知でしょうか?この記事では、オールオン4の治療ができない理由や適応条件、代わりとなる治療法について気になる疑問にお答えしていきます。
オールオン4ができない主な理由
オールオン4ができないと診断される主な理由を確認しておきましょう。
- 顎の骨量が不足しているとオールオン4は受けられませんか?
- 顎の骨が不足していると、オールオン4が受けられないことがあります。
オールオン4を含むインプラント治療では、適応の可否を検討するうえで、顎の骨の状態が重要です。オールオン4は、顎の骨にチタン製の人工歯根を4本埋め込んで、12本の人工歯からなる上部構造を装着する治療法です。顎の骨量が著しく不足していると、埋入手術を行うことができなくなってしまいます。
ただし、オールオン4は一般的なインプラント治療よりも、顎の骨量が少なくても適応になることがあります。インプラント体を斜めに埋めることが可能で、骨量が十分ある部位を狙って手術することができます。
- 健康状態が悪いとオールオン4は受けられませんか?
- 全身の健康状態が著しく悪い場合は、オールオン4できないことがあります。具体的には、以下ような健康状態だと治療が受けにくくなります。
・重度の糖尿病を患っている
・骨粗鬆症で骨の質が悪くなっている
・血圧が極端に高い
糖尿病は、食後の血糖値が高くなるだけでなく、全身の血流が悪化して細菌感染のリスクを高めてしまいます。そのため、外科手術を伴うオールオン4は適さない場合があります。
骨粗鬆症では、骨量が減って骨の質が悪くなる全身疾患です。国内に1,590万人の患者さんがいるとされており、高齢になるにつれてそのリスクは高まります。顎の骨が悪くなっている状態では、インプラント体を埋め込むことが難しい場合もあります。
血圧が高い人はオールオン4できない場合があります。血圧のコントロールができていない状態で外科手術を行うと、術中に血が止まらなくなったり、全身状態が急変して、危険な状態に陥ったりするリスクが存在するからです。
- 歯周病だとオールオン4を受けられないのですか?
- 歯周病が治っていない状態でオールオン4治療を行うことは推奨されていません。
歯周病は進行により顎の骨が破壊されるため、インプラント治療が行えにくくなる病気です。歯周病を放置したままインプラント治療を行うと治療の成功率にも影響します。
軽度の歯周病であれば歯茎や顎の骨の破壊を起こすことなく、インプラント治療を進める場合もありますが、可能な限り歯周病を完治させてから行う方が望ましいです。
オールオン4が適応されるための条件
オールオン4の適応条件について解説をします。
- オールオン4に必要な骨の状態を教えてください
- オールオン4の治療を行うには、4本のチタン製の人工歯根を、しっかりと埋められる骨の量と質が必要です。
歯周病や骨粗鬆症を患っていて骨の状態が悪いと、精密検査の結果次第では適応にならないことがあります。
また、オールオン4と一般的なインプラントでは、骨量の適応条件が少し異なります。
オールオン4は骨が十分にある部位を狙って人工歯根を埋めますが、インプラントの場合は、人工歯根を埋め込む位置がほぼ固定です。骨量の適応条件においては、オールオン4の方が広いといえます。
- 健康状態にどのような条件がありますか?
- 基本的には、外科手術を安全に受けられる健康状態が求められます。
糖尿病や骨粗鬆症、高血圧症は、術中や術後の感染リスクを高めたり、インプラント体の定着を邪魔したりするため、適応にならないことがあります。
また、加齢や病気で介護を必要としていたり、口腔内環境が悪い状態であったりする場合もオールオン4できないことがあるでしょう。
- 適応条件に口腔内環境が含まれるのはなぜですか?
- 口腔内の環境は、歯周病と深い関係があるからです。
オールオン4は、歯が1本もない状態でインプラント体を埋めて上部構造を装着する治療法なので、むし歯になることはありません。
しかし、口腔内の環境が悪くて歯周病菌が繁殖すると、インプラント周囲炎の発症リスクが高まります。そのため、口腔内環境が良好なこともオールオン4を適応する条件に含まれています。オールオン4は固定式の装置で、治療後のケアは総入れ歯よりも難しくなることも理解しておきましょう。
オールオン4ができない場合の治療法
カウンセリングや精密検査の結果、オールオン4ができないと診断された場合の代替治療について解説します。
- 顎の骨量が不足している場合、どのような治療法がありますか?
- 顎の骨の量が不足していることが原因で、オールオン4できないと診断されたケースでは、骨造成を行うことで対処可能な場合があります。
骨造成とは、加齢や歯周病などによって失われた骨を補う治療法で、GBR法やソケットリフト、サイナスリフトなどの方法があります。
ただし、骨造成は極めて高度な歯科治療であり、適切に行える歯科医院は全国的にも一部に限られます。また、骨造成を適応できるケースも限定的であることから、顎の骨が大きく不足している場合は、その他の治療法が推奨されることも珍しくありません。
【GBR(骨再生誘導法)】
骨が不足している部分に人工骨や自家骨、骨補填材などを詰めたうえで、メンブレンと呼ばれる特殊な人工膜を被せる治療法です。適応範囲は広く、さまざまな部位に使えます。
【ソケットリフト】
上部の顎の骨が軽度に不足しているケースが対象となります。インプラント体を埋め込む方向から骨補填材など詰めて、不足している顎骨の高さを補います。
【サイナスリフト】
サイナスリフトも上部の顎骨に適用される方法です。骨の不足が顕著な症例にも適応できる点がソケットリフトと異なります。また、ソケットリフトよりも手術に伴う負担が大きく、治療の難易度も高くなります。
- 全身疾患がある場合でも受けられる治療があれば教えてください
- 重篤な全身疾患を患っていて、オールオン4できないと診断された場合は、総入れ歯が第一選択となります。
総入れ歯は、人工歯と義歯床から構成されています。オールオン4のような外科手術を必要としないため、重篤な全身疾患を患っていても問題なく治療できます。
編集部まとめ
今回は、オールオン4ができない理由や適応条件、代わりとなる補綴治療について解説しました。インプラント治療の一種であるオールオン4には、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術を伴うため、顎骨が不足している、全身の健康状態が悪い、口腔環境が悪い場合は適応外となることがあります。
顎骨の不足に関しては、骨造成を行うことで適応が可能となる場合もありますが、すべてのケースで選択できる方法ではないため、まずは歯科医院でカウンセリングを受けてみましょう。顎の骨や全身の健康状態が悪くてオールオン4の適応は不可能と診断されたら、外科手術を必要としない総入れ歯を選択することになります。
参考文献