現在、総入れ歯を使っていて何か問題のある方やほとんどの歯を治療する必要のある方のなかには、オールオン4という治療を考えている方もいるのではないでしょうか。
オールオン4とは、4本のインプラント体に前歯から奥歯までが一体となった義歯をかぶせるインプラント治療の一種です。オールオン4のメリットはほとんどの場合、手術当日または翌日に仮歯を装着し、歯のない期間がなく過ごせることです。
では、仮歯で過ごす期間は、どれくらいなのでしょうか。仮歯の役割や仮歯期間の注意点を解説します。参考にしてオールオン4の治療にお役立てください。
オールオン4の仮歯期間
- 仮歯の期間はどのくらいですか?
- オールオン4の治療では、早ければインプラント埋入手術当日に仮歯を装着できます。それから、本歯を装着するまで仮歯で過ごすことになります。仮歯の期間はおおむね3~6ヶ月が多いようです。しかし、仮歯の期間は、患者さんのお口の状態や治療方法により異なります。仮歯の期間は定期的に通院し、術後の状態の確認や本歯の準備を行います。
- 仮歯期間を短くできますか?
- 仮歯期間はインプラント体が顎の骨としっかり結合し、傷口が治癒するまでの期間です。患者さんの骨密度やインプラント体の本数、初期固定時の強さなどで術後の経過が変わってくるため、仮歯期間は患者さんによりさまざまです。仮歯期間を短くしようと慌てると、インプラント体のぐらつきやインプラント周囲炎などのトラブルにつながりかねません。あまり焦らず、歯科医師の診察を受け、きちんとタイミングをみて治療を進めていきましょう。
- 仮歯期間中の通院回数の目安を教えてください。
- オールオン4の治療では、初めの検査から本歯の装着まで10回程度の通院が必要とされています。仮歯の装着は、インプラント体を埋入する手術と同日に行われます。ただし、出血など歯肉の状態で仮歯装着が、翌日から1週間程度後になることもあるでしょう。その後、本歯の型取りや調整などに6回程度、おおむね1ヶ月に1~2回の頻度で通院します。このときにインプラント体の結合状態と傷口のチェックもあわせて行います。経過がよければ数回程度の通院で済むでしょう。決まった受診日には必ず通院して経過をみてもらうようにしましょう。
- 仮歯にかかる費用相場を教えてください。
- オールオン4を含むインプラント治療は、一部の症例を除き保険適用外の治療です。そのため、費用は歯科医院によりばらつきがあります。相場でいうと、上下どちらかの片顎の治療費用は、2,000,000~3,000,000円(税込)程度といわれています。その内、仮歯の料金は200,000~500,000円(税込)前後が多いようです。本歯は材質により、おおむね600,000~1,800,000円(税込)程度が多いようです。また、治療前の診察や検査で10,000~50,000円(税込)程度かかるでしょう。オールオン4治療は高額に感じるものの、複数の歯を1本ずつインプラント治療をするとより高額になります。治療する歯の本数によっては、オールオン4は価格を抑えられる治療法といえるでしょう。また、オールオン4は、医療費控除の対象になります。医療費控除は、家族内で1年間にかかったほかの医療費とあわせて申告すると、所得税が還付または軽減される制度です。診療明細や治療費の領収証が必要になるので、とっておきましょう。
オールオン4の仮歯の役割
- オールオン4で仮歯をする目的はなんですか?
- オールオン4で仮歯をつける目的は大きく3つあります。1つ目は咀嚼力を回復することです。手術後1週間程度はやわらかいものを選んで食べる必要があり、その後は徐々に普通の食事を摂ることになります。手術から本歯を装着するまでの期間は数ヶ月あるため、その間、食事を摂るときに歯で噛めることは重要です。2つ目は審美的回復です。オールオン4では残っている歯は抜歯して治療します。仮歯の期間はお口の中はインプラント体だけになります。歯がないと、人と会うことに抵抗がでたり、表情に自信をなくしたりしかねません。仮歯といっても、見た目には本歯と大きく変わりません。手術後すぐに仮歯をすることでこのような問題が解決できます。3つ目は細菌や刺激から患部を守ることです。インプラントが安定する前に細菌感染や刺激で炎症を起こすと、インプラント体が骨と結合するのを阻害する原因になります。仮歯はこの元となる細菌感染や刺激から患部を守り術後の回復を助けます。
- 仮歯を装着しないとどうなりますか?
- 仮歯を装着せずに過ごすと、歯がないことでさまざまなデメリットにつながります。食事のときの熱い・冷たいなどの刺激や噛むときの力は、インプラント体には大きな負担です。手術の傷の治りが悪くなったり、治りかけていた傷が開いてしまったりする可能性があります。また、先述したとおり、仮歯は患部を細菌感染から守る役割もあります。仮歯は患部のふたの役割をしているといえるでしょう。本歯をつけるまでの数ヶ月は、メンテナンスをしながら仮歯を装着しましょう。
- オールオン4で仮歯を装着するタイミングを教えてください。
- オールオン4の治療は、インプラント体を埋入する手術と同日に仮歯を装着できます。インプラント体埋入後、歯肉の状態など術後の経過をみて問題なければ、数時間後に仮歯を装着します。出血や患者さんの疲れが目立つときは翌日、長くても1週間以内には装着することがほとんどです。オールオン4は歯がない期間をなくせる新しい治療法です。
オールオン4の仮歯期間中の注意点
- 生活上の注意点はありますか?
- 仮歯は、後で調整しやすいようにレジンでできていて、その強度はジルコニアやセラミックなどで作られた本歯より劣ります。そのため固いものを食べると、欠けたり割れたりすることがあります。歯ブラシもゴシゴシ強く磨くと、仮歯に傷がつく恐れがあるため、歯ブラシはやさしく丁寧に行いましょう。また、仮歯の期間は治療箇所の良好な経過のために大切な期間です。仮歯の下ではインプラント体と骨が結合し、傷口が治癒していきます。良好な経過のため、術後しばらくは無理をしない・禁煙禁酒を心がける・基本的な生活習慣を見直し免疫力をあげるなどの点に注意し、術後の回復を助けましょう。
- 仮歯が取れる可能性はありますか?
- 普通の生活をしていれば、仮歯が簡単に取れてしまうことはありません。しかし、仮歯は後で外すため、基本的に弱めのセメントで接着されています。キャラメルやソフトキャンディーのような粘着力の高い食べ物は歯にくっついて、仮歯が取れてしまう可能性があります。また、さまざまな悪条件が重なったり、思いがけず外力がかかったりすると取れてしまう原因になるため注意が必要です。もし、仮歯が取れてしまったら、できるだけ早く治療した歯科医院を受診しましょう。
- 仮歯期間中に治療を中断してもよいですか?
- オールオン4の治療期間は数ヶ月間にわたります。残念ながら途中で治療をやめてしまう患者さんもゼロではありません。長期間の治療のため、途中であきらめてしまうことや、仮歯でも見た目が大きく変わらず食事もできることが理由になっているようです。しかし、治療を完了せずにやめてしまうと、治療前より状態が悪くなる可能性があります。最後までしっかり行いましょう。歯科医師との相性や通いやすさも考慮して医院を選ぶとよいかもしれません。やむを得ず通えなくなる場合は、治療の詳細やデータをもっていけば、通いやすい別の歯科医師でも治療を再開してもらえます。オールオン4の治療は途中で中断せず最後まで行いましょう。
編集部まとめ
オールオン4は歯がない期間を作らずに、一度にすべての歯を回復することができる新しい治療法です。インプラント埋入と同日に仮歯で歯の回復を行い、インプラントが落ち着くまで数ヶ月間仮歯を装着して過ごします。
仮歯期間は、患者さんのお口の状態により変わります。月に1~2回程度通院し、経過をみながら治療を進めていきます。
仮歯は治療箇所を保護し咀嚼力と審美性を回復する重要な役割があるため、決められた日に受診し、快適に仮歯期間を乗り切りましょう。
歯肉に出血や腫れがある・仮歯が取れてしまうなど、トラブルがあったらできるだけ早く治療した歯科医院を受診し、メンテナンスをしながら最後まで治療しましょう。
参考文献