オールオン4の歯磨きの仕方は天然歯と違うことをご存知でしょうか。
オールオン4とは、4本のインプラントにフルブリッジ(上部構造)を取り付ける治療法です。
すべての歯をインプラントにするより費用や身体への負担を抑えられますが、天然歯が残っている場合、治療前に抜歯が必要です。
本記事では、オールオン4を行った際の歯磨きの仕方や注意点を解説します。
また、歯磨き以外の注意点やメンテナンスも記載するので参考にしていただければ幸いです。
オールオン4について
- オールオン4とはどのようなものですか?
- オールオン4とは、インプラント治療の一種で、まったく歯がない方に向けた治療法です。片顎に4本のインプラントを埋め込み、そこにフルブリッジを取り付けます。メリットは以下のとおりです。
- 機能性・審美性が高い
- しっかりと噛むことが可能
- 成功率が高い
歯のない方でも天然歯のように見せることが可能で、満足度の高い治療となっています。また、デメリットは以下のとおりです。
- 保険適用外のため価格が高い
- 手術や定期的なメンテナンスが必要
- 感染症になるリスクがある
オールオン4は歯のない方だけではなく、総入れ歯があわない方やすべての歯の状態が悪く噛むことが困難な方にもおすすめの治療法です。
- オールオン4と一般的なインプラントは何が違いますか?
- オールオン4と一般的なインプラントを比べ、よいところを2点挙げます。一つ目は、埋入本数が少ない点です。インプラント治療と比べて身体や費用の負担を軽減でき、骨が薄い方でも骨の厚い部分を選べるので治療可能となります。
また、本数を少なくするため傾斜埋入を行っており、インプラントにかかる応力を減らすことが可能です。さらに、より長いインプラント体を埋め込むことで安定化を測っています。
二つ目は、治療期間が短い点です。インプラント治療では3ヵ月以上かかるのに対して、オールオン4では早ければ即日で仮歯を利用できます。また、欠点は以下のとおりです。- 天然歯を抜歯する必要があること
- 治療できる歯科医院が限られていること
- 長期的な経過に関する十分な報告がないこと
特に、インプラント治療だけでも歯科医院が限られていますが、そのなかでもオールオン4を行っている医院はさらに少なくなってしまいます。
インプラント治療では信頼できる医院探しが重要ですので、オールオン4をする際は医院探しに時間がかかることがあります。
- オールオン4はどのような口腔トラブルが起きやすいですか?
- オールオン4で起こりやすい口腔トラブルは以下のとおりです。
- インプラント周囲炎
- インプラント体の動揺や脱落
- インプラント・仮歯・人工歯の損傷
- 痛み・腫れ・痺れ
特に、インプラント治療をした際に起こりやすいインプラント周囲炎には注意が必要です。通常の歯周炎と同様に細菌・糖尿病・ストレスなどが原因ですが、歯周炎に比べてインプラント周囲炎は進行が早く気付きにくいです。これは、インプラント体周囲に歯根膜がなく血流量が低くなることや神経がないことに由来しています。
軽度時には歯肉の腫れや出血が見られ、進行すると歯肉の強い炎症・出血・骨の減少が起こり、さらに進行するとインプラント体の動揺が起こります。インプラント周囲炎を防ぐためにも適切な自宅でのケアや、定期的な歯科医院でのメンテナンスが必要です。
- オールオン4の寿命はどのぐらいですか?
- オールオン4治療が開始されたのは新しく、3〜4年では95%以上の成功率を挙げられていますが、長期長期的な経過に関する十分な報告はありません。インプラント治療での長期的な経過に関する報告はあり、10〜15年での残存率は90%以上もあります。
また、長い方で40年以上機能した事例もあります。インプラントの寿命は個人差があり、長持ちさせるためにも術後の適切な過ごし方・定期的な歯科医院によるメンテナンス・適切な自宅でのケアが必要です。
オールオン4の歯磨きについて
- オールオン4の歯磨きの仕方を教えてください。
- オールオン4治療後の歯磨きは、天然歯と同様に一本ずつ丁寧に磨きましょう。人工歯はむし歯にはなりませんが、歯肉と人工歯の間に汚れが溜まりやすいため注意が必要です。
人工歯と歯肉の間は狭いため、オールオン4の歯磨きには通常の歯ブラシよりも小さく毛の本数が少ないワンタントブラシの使用をおすすめします。また、歯磨き以外のメンテナンス方法は以下のとおりです。- デンタルリンス
- 歯間ブラシやフロス
- 口腔洗浄機
天然歯よりも入念なケアが必要ですが、オールオン4の長期的な利用のためには丁寧な自宅でのケアが必須です。特に、インプラント周囲炎を防ぐためにも磨き残しのないように歯磨きを行いましょう。
- オールオン4の歯磨きで痛みを感じたらどうすればよいですか?
- 痛みが出る原因は、強い力での歯磨きによる知覚過敏や歯周病などが考えられます。対処法は以下のとおりです。
- 歯科医師へ相談する
- 歯ブラシでの刺激を避ける
- 血行がよくなる入浴や運動などを避ける
- 禁酒・禁煙する
- 刺激物を食べない
痛みが続くと重篤な症状になる可能性もあるため、気になる場合は早めに歯科医院へ受診しましょう。
- オールオン4は歯磨きの回数を増やすべきですか?
- 歯磨きの回数は天然歯と同様に毎食後で構いません。しかし、天然歯と比べて時間をかけて丁寧に歯磨きする必要があります。
歯磨きが不十分だとインプラント周囲炎になる恐れがあるからです。特に、唾液の分泌が少なくなり菌が繁殖しやすい就寝の前の歯磨きは重要で、通常のケアに加えてデンタルリンスや歯間ブラシなどの併用がおすすめです。
- オールオン4の歯磨きの注意点を教えてください。
- オールオン4治療後の歯磨きの注意点は以下のとおりです。
- 硬い毛の歯ブラシを使わない
- 軽い力で歯磨きする
- インプラントに安全性の高い歯磨き粉を用いる
人工歯や歯茎に傷がついてしまうと、傷に菌が溜まり炎症を起こすことやインプラント体が露出する原因になります。そのため、やわらかい歯ブラシを用いて優しく歯磨きしましょう。
また、インプラントに安全性の高い歯磨き粉選びが難しい方はオールオン4治療を行った歯科医院での購入や相談がおすすめです。
オールオン4の手入れ方法
- オールオン4の歯磨き以外の注意点は何ですか?
- オールオン4治療後に注意する点は以下のとおりです。
- 硬い食べ物を避ける
- 炭酸飲料や極端に熱い・冷たいものなど刺激のあるものを避ける
- 長時間のお風呂や運動など血行のよくなる行為を避ける
- 処置した箇所に触れない
- 喫煙や飲酒を避ける
インプラントとフルブリッジに影響の出る食事や生活習慣は避けるようにして、オールオン4を長持ちできるよう注意を払いましょう。
- オールオン4のメンテナンスで通院は必要ですか?
- オールオン4のメンテナンスで通院は必要です。メンテナンスは長期的にオールオン4を機能させるために行われます。メンテナンス内容は以下のとおりです。
- 口腔内状態のチェック
- 噛み合わせ確認
- オールオン4のフルブリッジを外しての点検やクリーニング
丁寧なセルフケアを行っていても汚れは残ってしまうので、インプラント周囲炎やオールオン4の機能の欠如の原因を防ぐためには、歯科医師によるチェックやクリーニングは必須です。
メンテナンスの頻度はオールオン4の治療経過や口腔内の状態により変わるので、歯科医師の診断に従いましょう。また、保証がオールオン4についていても定期的にメンテナンスを受けなければ保証対象外になることもあるので気をつけましょう。
編集部まとめ
すべての歯を損失した際は、インプラント治療のなかでも4本のインプラントの埋入とフルブリッジで行えるオールオン4治療がおすすめです。
オールオン4の歯磨きの仕方は、天然歯と比べて優しく丁寧に磨く必要があります。さらに、デンタルリンスや歯間ブラシなどの併用もおすすめです。
歯磨きの注意点には、歯や歯肉を傷つけないように強い力での歯磨きを避けることや研磨剤のない歯磨き粉を用いることなどが挙げられます。
また、オールオン4治療後の歯磨きで痛みが続く場合は、できるだけ早めに歯科医院を受診しましょう。
オールオン4は適切な自宅でのケアと定期的なメンテナンスが必要です。長く使い続けるためにも、注意点に気をつけ使用しましょう。
参考文献
- 即時荷重インプラントにより咬合機能回復を行った1例
- 口腔インプラントAll‐on‐4(オールオンフォー)システムについて
- Influence of number and inclination angle of implants on stress distribution in mandibular cortical bone with All-on-4 Concept
- All‐on‐4conceptに基づいた上顎インプラント治療の3年以上経過後の臨床的検証
- 歯科インプラント治療指針
- 歯周炎患者におけるインプラント周囲炎の病態と治療法
- 厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」 歯科インプラント治療のための Q&A