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より精緻なインプラント治療を可能にするガイド手術とは?メリットや治療の流れについて解説!

より精緻なインプラント治療を可能にするガイド手術とは?メリットや治療の流れについて解説!

顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むインプラント治療。何らかの理由で失った歯を歯根から回復できる治療法で、天然歯に近い機能性と審美性を手に入れることができますが、外科手術が必須となる点に不安を感じている人が多いようです。そんなインプラント手術は、サージカルガイドという装置を使うことでより精緻な処置が可能になることをご存知でしょうか? ここではサージカルガイドを活用したインプラント手術の特徴やメリット・デメリット、診療の流れなどを詳しく解説します。

サージカルガイドの基礎知識

サージカルガイドの基礎知識 はじめに、インプラント手術で使用するサージカルガイドの基本事項から確認していきましょう。

サージカルガイドとは?

サージカルガイドとは、一部のインプラント手術で使用するマウスピースのような形をした装置です。サージカルガイドには、人工歯根を埋め込む位置、角度、深さといった情報が記録されているため、手術時に装着するだけで安全性と確実性を確保した上での埋入処置が可能となります。サージカルガイドは、歯科用CTによる精密検査とデジタルシミュレーションを行った上で作製されるため、患者さんそれぞれの口腔内の状態によって設計も大きく変わってきます。

サージカルガイド作製にかかる費用

サージカルガイドの作製に保険は適用されません。自費診療となることから、歯科医院によってサージカルガイド作製費用は大きく異なります。全国的な費用相場としては、サージカルガイド1枚あたり50,000〜100,000円程度となっています。サージカルガイドはあくまでインプラント手術のオプションであり、その作製には専用のソフトや知識が必要となるため、費用もやや高い傾向にあります。

サージカルガイドは絶対に必要ではない

人工歯根であるインプラント体の埋入位置、角度、深さまでを誘導してくれるサージカルガイドは、インプラント手術に必須の装置のように思えますが、実際は違います。サージカルガイドも決して万能ではないため、すべてをその誘導に任せるわけにもいきません。 場合によっては、手術の途中からサージカルガイドを撤去し、術者の手技でインプラント体を埋入することもあります。また、患者さんの口腔内の状態によっては、そもそもサージカルガイドが使えないこともあり得ます。とはいえ、多くのケースではサージカルガイドを活用した方がより精緻なインプラント手術を実施できるのも事実です。

ガイド手術のメリット・デメリット

ガイド手術のメリット・デメリット サージカルガイドを用いたガイド手術には、次に挙げるメリットとデメリットが伴います。

サージカルガイドを使うメリット

インプラント手術の精度向上

サージカルガイドを活用したガイド手術では、人工歯根の埋入の精度が向上します。これはサージカルガイドによるメリットとして、最もわかりやすい点といえるでしょう。

顎の骨の大きさは限られています。その中でも人工歯根を埋め込む位置はさらに限定されており、3次元的に正確な位置に埋入しなければ、手術そのものが失敗に終わります。そんな人工歯根の3次元的な埋入位置を正確に誘導してくれるのがサージカルガイドであり、インプラント手術の精度も自ずと向上することでしょう。

インプラントのリスク軽減

インプラント手術には、以下に挙げるリスクを伴います。サージカルガイドを用いれば、そのリスクの多くを軽減することが可能です。

◎重要な血管・神経を損傷するリスク
顎の骨には、そのほかの組織と同様に血管や神経が分布しています。その中でもとくに注意しなければならないのが、下顎管(かがくかん)と呼ばれる空洞です。下顎骨と水平に走っている管で、その中には下歯槽神経(かしそうしんけい)と下歯槽動静脈が通っており、周囲組織の感覚や血液の供給を担っています。そして、下顎のインプラント治療では、人工歯根の埋入時にこの下顎管を損傷してしまうリスクが高くなっているのです。

インプラント手術時に下歯槽神経を損傷すると、術後に口唇周囲の感覚の麻痺が残ります。下歯槽動脈が損傷した場合は、術中の大量出血を招いてしまいます。サージカルガイドで人工歯根の埋入位置を正確に誘導できれば、そのような重大なトラブルを避けやすくなるでしょう。

◎上顎洞への突き出し
上顎にインプラント手術する場合は、上顎洞(じょうがくどう)への突き出しに注意しなければなりません。上顎の歯のすぐ上には、上顎洞という空洞が存在しており、インプラント手術においてドリルで穴を開けたり人工歯根を埋めたりする際、深さを誤ると上顎洞に突き出てしまう恐れがあります。その結果、上顎洞が汚染されて上顎洞炎という炎症性疾患を引き起こしかねません。

手術時間の短縮

サージカルガイドを活用したガイド手術には、時間短縮の効果も期待できます。人工歯根を埋入する時もガイドに従ってスムーズに処置を進められるので、インプラント手術にかかる時間を従来法よりも短縮できます。手術の時間が長くなるほど、患者さんの感じる不安や恐怖、ストレスなどは大きくなるため、患者さんの心身への負担を減らすことにつながります。

術後の痛みや腫れの軽減

インプラント手術後の痛みや腫れは、処置の内容や手術時間によって変わります。例えば従来法は歯茎をメスで大きく切開しなければならず、手術時間が長くなるだけでなく、口腔組織への侵襲も大きくなることから、術後の痛みや腫れも相対的に強く現れます。

歯茎をほとんど切らずに人工歯根を埋め込むガイド手術であれば、手術時間が短くなり、口腔組織への侵襲も最小限に抑えられ、術後の痛みや腫れも軽減されます。これもインプラント手術にサージカルガイドを活用するメリットの一つといえるでしょう。

仕上がりが美しくなりやすい

サージカルガイドによるガイド手術は、安全面を第一に考えた手法といえます。上でも述べたように、顎の骨には傷つけてはいけない血管や神経、解剖学的構造が存在しているため、それらを損傷するリスクを限りなくゼロに近付けることが何よりも重要です。

また、サージカルガイドの作製時には、安全面だけでなく審美面を追求したシミュレーションも可能です。とりわけ高い審美性が求められる前歯部のインプラント治療では、人工歯根を埋め込む位置や角度、深さが0.1mmずれても見た目の良し悪しを大きく左右します。そんな時にあらかじめ最善といえる人工歯根の埋入位置・角度・深さを設定できるサージカルガイドは、術者にとっても頼もしい存在であることは間違いありません。

サージカルガイドを使うデメリット

追加の費用が必要となる

インプラント手術におけるサージカルガイドの活用は、あくまで治療のオプションです。サージカルガイドをオプションとして追加する場合は、当然ですが手術費用もその分高くなります。上述したように、サージカルガイドは1枚あたり50,000〜100,000円程度の費用がかかるため、経済面においては大きなデメリットとなり得ます。

手術を受けられる歯科医院は限られている

サージカルガイドを活用したガイド手術は、すべての歯科医院および歯科医師が行えるわけではありません。前提として、歯科用CTやデジタルシミュレーションソフトなどの機材を導入していなければならず、なおかつそれらを使いこなせる歯科医師が在籍している必要があります。そうした条件がそろっている歯科医院は、全国的にも一部に限られます。インプラント治療に対応しているからといって、必ずしもガイド手術を行えるというわけではないのです。

ガイド手術を受けられない人もいる

サージカルガイドによるガイド手術は、すべての症例に適応できるわけではありません。例えば、サージカルガイドの装着が困難なほど開口量が少ない人には、ガイド手術は行えません。サージカルガイドは装置自体にある程度の厚みがあるため、相応の開口量が必要となります。 また、残っている歯の本数が極端に少ない場合もサージカルガイドを用いたガイド手術が難しくなります。というのも、サージカルガイドは残っている歯を固定源にして装着するマウスピースタイプの装置です。歯がない部分が多いと装置が不安定となるため、インプラント手術を安全に遂行できなくなることがあります。

インプラント治療の期間が長くなる

サージカルガイドを活用したガイド手術は、手術時間を短縮させることはできますが、インプラント治療全体の期間はやや長くなります。それはサージカルガイドを作製するために通常とは異なる診療プロセスが必要となるからです。もちろん、サージカルガイドによって長くなる治療期間は数週間程度ですが、それでもできるだけ早くインプラント治療を終わらせたいと考えている人にとっては、この点を大きなデメリットと感じるかもしれません。

手術時に処置の妨げとなることがある

上述したように、サージカルガイドは万能ではありません。実際にインプラント手術を開始してから、患者さんの骨の状態がシミュレーションや検査結果とは異なった場合に、サージカルガイドが手術の妨げとなる可能性もゼロではないのです。その場合はサージカルガイドの使用をやめて、歯科医師の手技や技術に依存した埋入処置へと切り替えることになります。それだけにサージカルガイドによるガイド手術であっても、できるだけ経験豊富な歯科医師に治療を任せるようにしたいものです。

サージカルガイドを使った治療の流れ

サージカルガイドを使った治療の流れ 最後に、サージカルガイドを使ったインプラント治療の流れを簡単に紹介します。

CTスキャン

サージカルガイドを活用したガイド手術の出発点となるのはCTスキャンです。歯科用CTを使って、患者さんの顎の骨の状態を3次元画像で撮影します。CTによって得られた画像は任意の角度から観察可能なため、患者さんの顎の骨の厚みや幅、深さなども精密に把握できます。

コンピュータ上でのシミュレーション

CTスキャンによって得られたデータを専用のシミュレーションソフトに入力して、最適といえる人工歯根の埋入位置、角度、深さを決定します。これはすべてがオートメーションで決まるのではなく、歯科医師がこれまでの経験や知識を活かしながら微調整を加えつつ、シミュレーションを進めていきます。そのため機材だけそろっていればサージカルガイドによるガイド手術を行えるというわけではなく、正しい知識と豊富な経験を持った歯科医師が治療を担当することで初めて、この治療法の本領が発揮されるといえます。

サージカルガイドの作製

コンピューター上でのシミュレーションが完了したら、いよいよサージカルガイドの作製です。現在では3Dデータを元にして、3Dプリンターを使用してサージカルガイドを作製するのが一般的です。

ガイドを用いたインプラント手術

患者さん専用のサージカルガイドが完成したら、いよいよインプラント手術です。口腔内に装置を装着すれば、あとはガイドに沿って人工歯根を埋入するだけです。

編集部まとめ

編集部まとめ 今回は、インプラント手術をより精緻に行うためのガイド手術について解説しました。サージカルガイドと呼ばれるマウスピースタイプの装置を作り、手術の際に装着することで人工歯根を埋入する適切な位置、角度、深さの誘導を受けられる施術法です。

サージカルガイドを用いたガイド手術には、インプラント手術の精度が向上する、手術に伴う偶発症のリスクを軽減できる、手術時間を短縮できる、術後の痛みや腫れを減らすことができる、といったメリットがあるため、近年はこれを利用するケースが増えてきています。ただし、適切な設備と正しい知識を持った歯科医師がそろった歯科医院でなければ、安全にガイド手術を遂行できませんので、その点はご注意ください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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