事故やむし歯・歯周病などですべての歯を失ってしまった場合、総入れ歯を検討する必要があります。
その候補として、全部の歯をインプラントにしようと考えている方もいるのではないでしょうか。
また現在、総入れ歯を使っていてあわないからインプラントにしたいと考えている方もいるかもしれません。
しかしインプラントというと値段が高いイメージを持たれている方も多いでしょう。歯を全部インプラントにした場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
この記事では歯を全部インプラントにした場合の費用を解説していきます。
歯を全部インプラントにする方法は?
歯を全部インプラントにする方法として、1本ずつインプラントを埋め込む方法以外に次の2つの方法があります。
- インプラントオーバーデンチャー
- オールオン4
下記ではこれら2つの方法の特徴などを解説していきます。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、簡単に説明するとインプラントと総入れ歯を組み合わせた治療法です。数本のインプラントで、入れ歯を支えます。
だいたい、片顎2〜4本のインプラントを埋め込みます。基本的な構造は総入れ歯と似ていて、取り外しが可能です。
しかし固定装置を使って入れ歯とインプラントを固定させるため、装着時にずれたり外れたりする心配がありません。
ただし、食事中に外れるリスクはあるので注意しましょう。歯茎と入れ歯の間に食べかすが挟まることもあります。
総入れ歯よりもしっかりと噛めるようになるため、総入れ歯では食べにくいと感じていた食べ物も美味しく食べられるようになるでしょう。
装着・取り外しも簡単に行えるため、簡単にお手入れができるのも魅力の1つです。
オールオン4
オールオン4は4本のインプラントを使って12本の歯を作成する治療法です。
すべての歯を失った場合、通常のインプラント治療で対応するとなると8~14本のインプラントが必要になります。
それだけの数のインプラントを埋め込むとなると患者さんの体に負担がかかるだけでなく、費用もかなりかかってしまいます。
しかしオールオン4なら4本のインプラントを埋め込むだけなので体への負担が軽く、費用もそこまでかかりません。
またインプラントによってしっかりと人工の歯が固定されるため、総入れ歯に多い「えずく」「合わない」「外れやすい」といった悩みも解消できます。
歯を全部インプラントにした場合の費用はどのくらい?
歯を全部インプラントにした場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
歯を全部インプラントにする方法で触れましたが、インプラントにすることでさまざまなメリットがあります。
しかしインプラント自体が高いため、どれくらいの費用がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。インプラント治療は自由診療になります。
そのため、歯科医院によって費用が異なります。治療費だけでなく、検査費用や処置費用がかかる場合もあるでしょう。
下記ではこれらも含め、どのくらいの費用がかかるのかみていきます。
歯科医院によって費用が異なる
インプラント治療は自由診療のため、歯科医院によって費用が異なります。保険診療では制限がありますが、自由診療では制限がありません。
そのため、技術力や使う素材・設備などが歯科医院ごとに違います。その違いが、費用にも反映されているのです。
最新設備を使っていたり、技術力の高い歯科医師がいる歯科医院は、比較的費用が高くなる傾向があります。
インプラント治療自体が高めなので、少しでも費用を抑えたいという方もいるでしょう。
しかし極端に費用が安い場合、歯科医師の技術力や使用している素材・設備に不安要素がある場合もあります。
インプラント治療を受ける際は費用だけでなく、歯科医師の技術力や設備なども確認しましょう。
検査や処置などにも費用がかかる
インプラント治療では検査や処置などでも費用が加算される場合があります。
例えば何本かの歯が残っている状態ですべての歯をインプラントにしたいのなら、抜歯が必要です。
そのため、インプラント治療とは別に抜歯に関する費用が必要になります。
治療を受ける際はインプラント治療に対する費用だけでなく、トータルでいくらかかるのかをしっかりと確認するようにしましょう。
インプラント本体のメーカーや素材の違いで費用が変わる
インプラント本体のメーカーや被せものに使われる素材も費用に大きく影響します。
インプラント本体を製造しているメーカーはさまざまで、メーカーによって品質や価格が違います。
インプラント体の素材はチタン・チタン合金・セラミックの3種類が主要です。チタンは骨との癒着度が高く、治療がスムーズに進めやすいというメリットがあります。
しかしチタンは金属のため、金属アレルギーの方は使用できないというデメリットがあります。
セラミックは金属アレルギーの方でも使用できますが、チタンに比べると強度が低いのがデメリットです。
自由診療のため費用が高額
歯科をはじめ、診療には保険診療と自由診療があります。保険診療では素材・治療法を国が指定します。
健康保険が適用でき、患者さんは1~3割負担で治療を受けることが可能です。自由診療は健康保険が適用されません。
そのため治療費は全額負担となり、費用が高額になります。しかし歯科医院の方で素材・治療法を決められるため、幅広い選択肢から選べるというメリットがあります。
インプラント治療は自由診療なので、費用は高額です。しかしその分、納得のいく仕上がりを期待できます。
上下の顎全体に1本ずつインプラントを埋め込む場合の費用相場は?
上下の顎全体に1本ずつインプラントを埋め込んだ場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
インプラント1本あたりの相場は約30万~50万円(税込)です。インプラントはかぶせもの・アバットメント・インプラント本体の3つの構造でできています。
これらに検査費用・処置費用を加えた金額になります。
片顎10本インプラントを埋めた場合、約300万~500万円(税込)になります。上下合わせたら約600万~1000万円(税込)です。
インプラント治療は高額のため、全部の歯をインプラントにしようと考えるとかなりの予算が必要になってきます。
オールオン4の費用相場は?
続いて、オールオン4の費用相場を見ていきましょう。オールオン4の費用相場はトータルで、200万~250万円(税込)程です。
素材によって値段が異なり、アクリルが一番安いです。その次に安いのはハイブリッドで、オールセラミックが一番高くなります。
ただアクリルはあまり一般的には使われておりません。
オールオン4のメリットは?
オールオン4のメリットは次の5つです。
- 1本ずつ埋め込むよりも費用が抑えられる
- 身体への負担が少ない
- 治療期間が短い
- しっかりと噛める
- 審美性が高い
下記ではこれら5つのメリットについて解説していきます。
1本ずつ埋め込むよりも費用が抑えられる
オールオン4の費用相場でも述べさせていただきましたが、オールオン4にすることで費用を抑えることができます。
1本ずつの場合、例えば片顎10本ずつインプラントを埋めると約600万円~約1000万円(税込)かかります。
一方、オールオン4で埋め込むインプラントは最小限の4本です。上下合わせても約400万~800万円(税込)です。約200万円の差があります。
身体への負担が少ない
オールオン4は使用するインプラントの数が少ないため、身体への負担も少ないです。
手術時間が短く済むため、手術後の腫れも小さいです。手術をした当日から普段と同じ食事ができます。
治療期間が短い
治療期間が短いのもオールオン4だからこそです。インプラントは顎の骨に埋め込むため、骨が少ない場合は骨を増やす治療(骨造成)をしなくてはいけません。
しかしオールオン4は骨が残っている場所を選んでインプラントを埋め込むので、その分、時間を短縮できます。
インプラントを埋め込んだ後は仮の歯を入れ、顎の骨とインプラントがくっついたら最終的な被せものを入れます。
顎の骨とインプラントがくっつくまでの期間は、3〜6ヶ月となっています。
オールオン4の特徴として、手術後すぐに仮歯を入れることが可能です。ただし、顎の骨の状態によっては当日に仮歯を入れるのが難しい場合もあります。
しっかりと噛める
総入れ歯を使用している方に多い悩みの1つに、しっかりと嚙めないというものがあります。総入れ歯の咀嚼力は、本物の歯の2~3割といわれています。
そのため、しっかりと噛むのが難しいのです。オールオン4は顎の骨にインプラントを埋め込むため、人工の歯がしっかりと固定されています。
嚙んだ刺激が顎の骨に直接伝わるため、しっかりと噛み心地を体感できます。また総入れ歯のようにずれたり外れたりする心配もありません。
歯を失う前と同じように、いろんな食事を楽しむことができます。
審美性が高い
インプラントの歯は見た目が美しく、審美性が高いのが特徴で魅力でもあります。
すべての歯を一気にインプラントへ変えるので、患者さんの希望にあった歯の形・色にできます。そのため、まるで芸能人のような白い歯を手に入れられるのです。
インプラントの費用の支払い方法は?
最後にインプラントの費用の支払い方法をみていきましょう。
- 現金払い
- クレジットカード払い
- デンタルローン
インプラントの費用の支払い方法にはこれら3つの方法があります。クレジットカード払いやデンタルローンは手元に現金がなくても大丈夫です。
インプラント治療は高額なので、自分に合った支払い方法を確認してください。
現金払い
現金払いは窓口で支払う方法と、金融機関への振り込みなどがあります。
金融機関への振り込みの場合は、振り込み先・口座番号・口座名をしっかりと確認しておきましょう。
治療費を払うタイミングも歯科医院によって違います。
- 治療開始時に払うのか
- 治療終了時に払うのか
- 治療の進行度にあわせて払うのか
ほとんどの歯科医院ではインプラント治療の計画を立てた後、契約を結びます。その契約書に書かれているので、しっかりと契約書を確認してください。
クレジットカード払い
インプラント治療は高額なため、現金での支払いは厳しい方もいるでしょう。そんな方におすすめなのが、クレジットカード払いです。
患者さんが持っているクレジットカードを使って治療費を払います。
クレジットカード会社が治療費を立て替えてくれるので、患者さんはクレジットカード会社へその分を返済します。
歯科医院によって使えるクレジットカードが決まっているので、自分が持っているクレジットカードは使えるのか事前に確認しておきましょう。
デンタルローン
デンタルローンは「歯科治療費」を利用目的にしたローンです。
ローン会社が治療費を立て替えてくれるので、患者さんは治療費プラス手数料をローン会社へ支払います。
分割回数は6回~120回の中から選べるので、患者さんの都合に合わせて返済回数を決められます。
例えば治療費が100万円かかった場合、120回払いにすれば毎月払うのは10,000円程です。
分割で払うという点ではクレジットカード払いと同じですが、デンタルローンの方が手数料が低めに設定されています。
歯科医院によっては「何回払いまでは無料」というようなキャンペーンを行っている場合もあるでしょう。
まとめ
インプラント治療は入れ歯やブリッジに次ぐ第3の治療法として、認知されるようになってきました。
顎の骨に固定するため、従来の歯と同じようにしっかりと食べ物を嚙むことができ、見た目も綺麗とさまざまなメリットがあります。
総入れ歯の代わりにインプラントを検討する方も多いです。総入れ歯を検討している方は、インプラントも候補に加えてみてはいかがでしょうか。
気になる方はぜひ、お近くの歯科医院に相談してみてください。
参考文献