インプラントは、失った歯を歯根から回復できる治療法であり、審美性や機能性、耐久性において期待されている治療法です。その一方で、インプラントはしない方がいいという話を聞くことも少なくありません。
この記事では、インプラント治療はしない方がいいといわれる理由や治療に伴うリスク、デメリットについて詳しく解説します。
インプランをしない方がいいと言われる理由
インプラントへのネガティブな印象を持っている人がいる理由について解説します。
- インプラントはしない方がいいと言われる理由を教えてください
- インプラントにネガティブな印象を持つ理由としては、以下があげられます。
◎外科手術が必要になる
インプラントをしない方がいい理由として、外科手術が必要なことがあります。歯茎をメスで切り開き、ドリルで顎の骨に穴を開けてからチタン製の人工歯根を埋め込む処置が必須となることから、外科手術に抵抗がある場合はネガティブな治療法に感じられます。
◎手術にはさまざまなリスクを伴う
外科手術には、細菌感染や神経の損傷、埋入処置の失敗など、さまざまなリスクを伴う点もインプラントがネガティブにとらえられやすい理由のひとつです。
◎治療期間が長い
インプラント治療では、顎の骨と人工歯根が定着するまでに、3〜6ヵ月程度の期間を要します。上部構造の製作や装着まで含めると、ブリッジや入れ歯よりも治療期間がかなり長くなります。
◎治療費が高い
インプラント治療には、原則として健康保険が適用されません。また、使用する素材や必要となる医療設備は高額で、歯科医師に求められる知識や技術力も高いことから、治療にかかる費用も自ずと高くなります。
◎適応できる症例がやや狭い
インプラント治療の適応症がやや狭いことも、しない方がいいといわれる理由です。顎の骨が足りない、重度の糖尿病や高血圧症を患っている、チタンアレルギーを持っているなどの理由で、インプラントが適応外となることは珍しくありません。それぞれのケースで対処する方法はありますが、費用がさらに高くなったり、手術に伴うリスクが上昇します。
◎メンテナンスの重要性が高い
インプラントは、治療後のメンテナンスが重要です。インプラント体に埋め込むタイプの補綴装置であり、メンテナンスを怠ると、さまざまなトラブルを引き起こしかねないことに関係しています。
インプラント特有の歯周疾患であるインプラント周囲炎は、定期的なメンテナンスを受けていないと予防が難しくなるでしょう。その他、カバースクリューやアバットメントが緩んだり、上部構造が破折したりした場合の対応もメンテナンスを定期的に受けることで迅速に行えます。
◎強く噛みすぎてしまう
インプラントは天然歯のようにしっかり噛むことができます。しっかり噛めることはメリットですが、強く噛みすぎると、上部構造が欠けたり、顎の骨に過剰な負担がかかったりするため注意が必要です。
◎再治療が難しい
インプラントが脱落する主な原因は、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎では、顎の骨がボロボロになるため、インプラントを再び埋め込むことは困難な場合があり、再治療の際には入れ歯やブリッジを選択しなければなりません。
- インプラントを避けた方がいいのはどのような人ですか?
- 以下にあげるような症状や病気を抱えていたり、補綴治療への希望を持っていたりする人は、インプラントではなくブリッジや入れ歯で治療した方がよいです。
- 全身の健康状態が悪くて外科手術を受けるのが難しい
- 顎の骨が不足している
- インプラントを埋め込む際に神経や血管を傷つけるリスクが高い
- 補綴治療の費用をできるだけ抑えたい
- 失った歯をできるだけ短期間で補いたい
- チタンアレルギーを持っている
- 喫煙習慣をやめられない
いずれか該当する場合は、インプラントをすぐに諦めるのではなく、まずはカウンセリングを受けてみるのもひとつです。
- 年齢によってインプラントをしない方がいいことはありますか?
- 歯や顎の骨の発育が途上にある子どもは、インプラントをしない方がいいでしょう。成長期にインプラントを埋め込むと、体の発育を邪魔してしまうためです。高齢者に関しては、全身状態が悪かったり、口腔ケアが十分に行えなかったりする場合、無理してインプラントをしない方がいいでしょう。
インプラントをするリスクとデメリット
インプラント治療に伴うリスクやデメリットについて解説します。
- インプラントにはどのようなリスクがありますか?
- インプラント治療に伴うリスクは、手術中と手術後で異なります。
◎手術中のリスク
- 重要な血管や神経を損傷する
- インプラントが上顎洞に突き出る
- ドリルによるオーバーヒートで顎の骨が死滅する
◎手術後のリスク
- 患部に腫れや痛みが生じる
- 神経の損傷によって口唇の周りの感覚が麻痺する
- 感染症にかかる
- インプラントが定着しない
- インプラントが脱落する
- 上部構造が破損する
術後の腫れや痛みは、ほとんどのケースで生じる症状です。神経の損傷や感染症、インプラントが定着しないなどのトラブルは、一部のケースで見られます。
- インプラントが失敗する可能性はありますか?
- インプラント治療の成功率は、一般的には高いとされていますが、失敗する可能性もあります。インプラントが失敗する原因としては、不適切な埋入処置、治療後のケアやメンテナンス不足、喫煙習慣などが挙げられます。
インプラントを失敗させないためには、歯科医院側だけでなく、患者さん側も適切に対応しなければならないのです。
インプラントをしない場合の治療方法
インプラントを選ばなかった場合の補綴治療の選択肢について解説します。
- インプラント以外の治療方法にはどのようなものがありますか?
- 失った歯の治療法としては、インプラント以外にブリッジと入れ歯があります。ブリッジは、失った歯の両隣の歯を支えとして、人工歯が複数連なった被せ物を固定する治療法です。入れ歯は、着脱式の装置で、欠損部に人工歯を配置します。部分入れ歯は人工歯、義歯床、クラスプからなり、総入れ歯は人工歯と義歯床のみで構成されています。
- ブリッジとインプラントの違いを教えてください
- どちらも固定式の装置ですが、インプラントには人工歯根があるため、見た目や噛み心地がブリッジよりも優れています。
インプラントは噛んだときの力を顎の骨で受け止められることから、顎の骨が痩せにくいという特徴もあります。また、インプラントには残った歯を削る必要がない、外科手術が必要、保険が適用されないといった違いがあります。
インプラントを受けるか判断するポイント
失った歯の治療法としてインプラントを選ぶ基準を解説します。
- インプラントをすべきかどうかの判断基準を教えてください
- 以下の判断基準を参考にするとよいでしょう。
- 自分が求めていることはインプラントでなければ実現できない
- インプラント治療に伴うデメリットやリスクを許容できる
- インプラント治療を適切に行える歯科医院が見つかっている
補綴治療に何を求めているかは、患者さんそれぞれで異なることから、インプラントを受けるかは歯科医師と相談して判断するのが望ましいです。
- インプラントが向いているのはどのような人ですか?
- 次のような人にはインプラント治療が向いています。
- 残った歯に負担をかけたくない
- 見た目や噛み心地の良さを追求したい
- ブリッジの適応外で入れ歯は絶対につけたくない
インプラントには、ブリッジや入れ歯にはない効果やメリットがあります。見た目や噛み心地の良さを追求したい人は、インプラントが向いているでしょう。
編集部まとめ
インプラントをしない方がいい理由やインプラント治療に伴うリスク、デメリットについて解説しました。インプラントは、外科手術が必要になったり、治療期間が長くなったりすることなどから、ネガティブなイメージを持っている方も少なくありません。
その一方で、ブリッジや入れ歯にはないメリットもたくさんあることから、まずは歯科医院でカウンセリングを受けてみましょう。
参考文献