インプラント

骨造成に失敗したらどうする?起こりえる症状や対処法、失敗しないためのポイントを解説

骨造成に失敗したらどうする?起こりえる症状や対処法、失敗しないためのポイントを解説

インプラント治療を受けるうえで骨造成が必要と言われ、不安になっていませんか?
「骨造成が失敗するリスクはある?」
「骨造成がうまくいかなかった場合はどうすればいい?」
などの不安を抱えている方は少なくありません。

骨造成は、インプラントを安定させるために重要な処置です。しかし外科的な手術であることから、痛み・腫れ・感染など、さまざまなリスクも避けられません。

本記事では、インプラント治療における骨造成の基礎知識や失敗の原因、症状と対処法について詳しく解説します。また、骨造成の失敗を避けるためのポイントもわかりやすく紹介しています。
骨造成に関する理解を深めることで、納得してインプラント治療に臨むためのヒントになれば幸いです。ぜひ最後までお読みください。

インプラント治療の骨造成とは

骨造成とは、インプラントを埋め込む部位の骨が足りない場合に、人工的に骨の量や厚みを増加させる方法を指します。
歯周病や加齢により骨の量や厚みが不足すると、インプラントが骨から突き抜けたり、歯茎から露出したりする可能性が高まります。骨造成により、インプラント治療の安全性を高めることが可能です。

また、理想的な場所にインプラント埋入できるため、機能性・審美性の向上も期待できるでしょう。自然な歯並びや噛み合わせを可能にし、患者さんの生活の質向上につながります。
本章では、骨造成が必要なケースや骨造成のリスクについて、詳しく解説します。

骨造成が必要なケース

インプラント治療を受けるうえで骨造成が必要となるケースとして、以下の例が挙げられます。

  • 歯周病やむし歯により、歯を支える骨が溶けている場合
  • 加齢により骨密度が減少している場合
  • 外傷や事故により、顎の骨が欠けている場合
  • 長期間歯がない状態を放置しており、骨が吸収されてしまった場合

これらの状態では、インプラント治療におけるトラブルが起こりやすく、長持ちしにくくなる恐れがあります。骨造成により骨の量と厚みを増やすことで、インプラント治療が成功しやすくなるでしょう。

骨造成のリスク

骨造成によりインプラント治療の成功率を高められる一方で、リスクがあることも知っておく必要があるでしょう。骨造成によるリスクとして、以下の点が挙げられます。

  • 腫れや痛み・出血
  • 感染
  • 骨補填材と骨の結合不足
  • 神経損傷
  • 上顎洞炎

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

腫れや痛み・出血

術後に口腔内の腫れや痛み、傷口からの出血がみられることがあります。痛みは数日で改善することが多く、通常の場合、鎮痛剤を処方されます。

感染

外科手術である以上、傷口からの感染のリスクは避けられません。口腔内には多くの常在菌が存在するため、術後の感染兆候(熱感・赤み・腫れ・痛みなど)に注意が必要です。一般的に、傷口からの感染を防ぐため、抗生剤が処方されます。

免疫力が低下している方や口腔内の衛生状況がよくない方は、感染リスクが高いことから、すぐには治療が行えない可能性があります。

骨補填材と骨の結合不足

骨補填材が周囲の骨と十分に結合せず、十分な骨の再生が期待できない場合があります。

神経損傷

下顎の骨の中には、下歯槽神経と呼ばれる神経が通っています。また下顎の骨の裏側には舌神経が通っています。骨造成の手術中、これらの神経を損傷してしまう可能性があります。
神経損傷により起こりえる症状は、以下のとおりです。

神経症状が起こる部位症状
下歯槽神経損傷損傷を受けた側の下唇から口角・顎にかけて感覚の低下・ピリピリ感・しびれ・麻痺
舌神経損傷損傷を受けた側の舌半分感覚の低下・しびれや麻痺感・味覚の低下

これらの症状が生じた際は、早期に診断を行い、症状に合わせた薬物療法や理学療法による治療が選択されます。
神経を損傷する事態を予防するため、手術前にCT検査にて、神経の走行を確認します。

上顎洞炎

上の歯が植っている上顎骨の上側には、上顎洞と呼ばれる空洞があります。骨造成において、上顎洞の粘膜を破らないように持ち上げ、骨補填材を入れる方法があります。
この際、上顎洞の粘膜が傷つくことにより生じる上顎洞炎も、骨造成のリスクの一つです。

インプラントの骨造成の種類

骨造成の種類として、以下の5つが挙げられます。

  • GBR法
  • サイナスリフト
  • ソケットリフト
  • ソケットプリザベーション
  • 遊離骨移植

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

GBR法

GBR法とは、骨が不足している部分に骨補填材を入れ、その上からメンブレンと呼ばれる人工膜を被せる治療法です。顎の骨の条件が良ければ、インプラントを埋め込むのと同時に処置できます。その場合、ほかの方法に比べて治療期間が短いのが特徴です。

サイナスリフト

上の歯が植っている上顎洞の上側にある空洞上を上顎洞(サイナス)と呼びます。サイナスリフトとは、上顎洞の粘膜を持ち上げ、骨補填材を入れて骨の厚みを増やす方法です。
広範囲の骨量不足に対応できる一方で、歯肉を切開するため身体への負担が大きいというデメリットもあります。

ソケットリフト

上顎洞の粘膜を持ち上げて、少量の骨を補填することで、骨の厚みを増やす方法です。既存骨の厚みが4〜5mm以上ある場合に選択されます。

サイナスリフトよりも少量の骨造成を行う術式であり、歯肉切開の範囲が狭いことから、身体的な負担が少ないのが特徴です。また、インプラントを同時に埋入できることから、治療期間がサイナスリフトに比べて短くなります。

ソケットプリザベーション

抜歯によってできた穴(抜歯窩)に人工骨や骨補填材を埋めて、周囲の骨吸収を防ぐ方法です。抜歯により周囲の骨が痩せ、インプラントを埋入できなくなる状態を予防できます。

遊離骨移植

患者さんの上顎骨や下顎骨、腸骨、脛骨などから骨を採取し、骨の量や厚みが不足している部位に移植する方法です。
移植と聞くと拒絶反応が起こるイメージをもつ方もいるかもしれません。骨造成における移植において、自家骨移植が主体の場合は生体への適合性が高く、拒絶反応の可能性は低いといえます。また、骨の再生力にも優れています。

このようなメリットがある一方で、痛みや腫れなどの副作用が起こりやすいというデメリットもある点に注意が必要です。

骨造成に失敗する原因

骨造成に失敗する原因は、以下の3つに分けられます。

  • 患者さん側の原因
  • 治療者側の原因
  • 外的・環境要因

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

患者さん側の原因

患者さん側に要因がある場合、次のようなケースが考えられるでしょう。以下に当てはまる方は、注意が必要です。

  • 免疫力が低下している方
  • 喫煙習慣がある方
  • 糖尿病や骨粗しょう症の方
  • 口腔衛生状態が不良な方

続いて、一つひとつ解説します。

免疫力が低下している方

口腔内には常に常在菌が存在するため、ほかの部位に比べて術後の感染リスクが高いといえます。
特に、高齢者や持病によりステロイド薬を服用している方は、免疫力が低下しており感染しやすいでしょう。感染症を引き起こすと、治療がスムーズに進まない恐れがあります。

喫煙習慣がある方

煙草に含まれるニコチンは末梢血管を収縮させ、血流を悪化させます。喫煙習慣があると、手術後の傷の治りが遅くなるほか、骨結合にも悪影響を及ぼします。

糖尿病や骨粗しょう症の方

糖尿病の患者さんは処置部にできた傷の治りが遅い傾向にあるうえ、傷口からの感染リスクが高いといえます。また骨粗しょう症の方は骨密度や骨の質が低下しているため、移植した骨が定着しにくくなります。

口腔衛生状態が不良な方

歯周病やむし歯が放置されていると、細菌が手術部位に侵入し、感染の温床となります。術前に歯科クリーニングや歯周病治療を受けることが、成功率の向上につながります。

治療者側の原因

治療者側に原因がある場合、以下のケースが考えられます。

  • 治療者の経験不足や技術的なミス
  • 術中の無菌操作の不徹底

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

治療者の経験不足や技術的なミス

骨造成は高度な技術を要する手術です。特に骨の移植位置・材料の選定や、メンブレン(人工膜)の設置方法にミスがあると、移植骨がうまく定着しません。

術者の経験や技術が不足している場合、治療が成功しない可能性があります。何かトラブルがあった際にも対応する技量が必要です。一方で、ベテランの術者はより高度な症例に対応することから、治療者に十分な経験があったとしても失敗のリスクは考えられます。

術中の無菌操作の不徹底

手術中に無菌操作が徹底されていないと、移植部位からの感染リスクが高まります。手術環境の衛生管理が不十分なことも、骨造成を失敗に導く原因の一つです。

外的・環境要因

外的・環境要因として、以下の2つが考えられるでしょう。

  • 手術部位への刺激
  • 患者さんに適した骨造成が選択できていない

それぞれについて、詳しく解説します。

手術部位への刺激

骨造成後すぐに強い力で噛んだり、強い力で手術部位やその周囲の歯を磨いたりすることにより、未定着の骨に過度な負担がかかります。術後の食事制限や注意が守られていないことも、骨形成がうまくいかない原因の一つです。

患者さんに適した骨造成が選択できていない

骨造成の方法はさまざまです。患者さんの状態に適していない方法を選択してしまうと、骨造成を失敗に導く原因となり得ます。

骨造成に失敗した際に起こりえる症状とインプラントへの影響

骨造成に失敗すると、どのような症状がみられるでしょうか?起こりえる症状として、術部の腫れ・痛み・出血・熱感や、術部からの膿の排出が考えられます。
また前述したように、神経損傷を引き起こした場合、感覚の異常を認めることもあります。

また考えられるインプラントへの影響は、以下のとおりです。

  • インプラント治療が中止または延期になる
  • インプラントが脱落する
  • インプラントが安定しない

骨造成がうまくいかなかった場合に起こりえる症状と、インプラントへの影響について知っておくことで、冷静な対処につながるでしょう。

骨造成に失敗した場合の対処法

骨造成がうまくいかなかったと感じた場合、以下の対処法を参考にするとよいでしょう。

  • セルフチェックと口腔衛生に努める
  • 主治医に相談する
  • セカンドオピニオンに相談する

上記について、詳しくみていきましょう。

セルフチェックと口腔衛生に努める

骨造成後は、こまめにセルフチェックを行いましょう。違和感に気付いたら、いつ頃からどの程度生じたかを記録しておくと歯科医師への報告がスムーズになります。
また、口腔内を清潔に保つことが重要です。骨造成後、患部に違和感があったとしても直接触らないようにしましょう。

主治医に相談する

術後の腫れや痛みが長引いていたり、膿が出たりしている場合は、自己判断せずすぐに主治医に連絡しましょう。早期に適切な処置を受けることで、症状の悪化を防ぎ、再治療の選択肢を広げられるかもしれません。

セカンドオピニオンに相談する

主治医の説明や治療方針に納得できない場合や、ほかの歯科医師の意見も聞いてみたい場合は、セカンドオピニオンを活用することも有効です。複数の歯科医師の意見を聞くことで、より客観的な判断ができ、納得のいく治療法を選択できる可能性があります。

骨造成で失敗しないためのポイント

続いて、骨造成の失敗リスクを低減させるためのポイントを3つ紹介します。

  • 骨造成の経験が豊富な歯科医を選ぶ
  • 口腔内の状態を改善する治療を受ける
  • 全身状態を整える

上記について、一つひとつ詳しく解説します。

骨造成の経験が豊富な歯科医を選ぶ

骨造成は、歯科医師の経験と技術が大きく影響する治療です。歯科医院の骨造成の症例数や実績、所属している学会などを確認し、信頼できる歯科医師を選びましょう。
地域の歯科医院で治療を受ける際は、緊急時の対応が可能な医療機関との連携が取れているかを確認するとよいでしょう。
また、治療のリスクや合併症について十分な説明を受け、納得したうえで治療に臨むことが大切です。

口腔内の状態を改善する治療を受ける

歯周病やむし歯がある場合は、骨造成の前にそれらの治療を優先的に行うことが重要です。日頃から食後の正しい歯磨きを実践するとともに、歯科衛生士による歯科クリーニングを定期的に受け、口腔内を衛生に保ちましょう。

全身状態を整える

全身状態を整えてから治療に臨むことも大切です。
喫煙は骨の再生を妨げる大きな要因となるため、骨造成を検討している方は禁煙を心がけましょう。また糖尿病や骨粗しょう症などの全身疾患がある場合は、主治医に相談のうえ、血糖コントロールや薬剤の調整などを行う必要があります。

まとめ

骨造成により、インプラント治療の安全性が高まるだけでなく、機能性や審美性の向上が期待できます。しかし、外科手術であることから感染や痛み、腫れなどのリスクは避けられません。また骨造成がうまくいかない原因として、患者さん側の要因や術者側の問題、環境要因が考えられます。

本記事で紹介した対処法や、失敗しないためのポイントを押さえ、納得のいく治療ができる歯科医院を探すことが重要です。この記事が、骨造成を成功に導くための一助となれば幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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