インプラント

歯が欠けたまま放置することは危険?歯が欠ける原因と治療法を解説!

歯が欠けたまま放置することは危険?歯が欠ける原因と治療法を解説!

硬いものを食べたり、ボールが顔に強くぶつかってしまったりして、歯が欠けてしまったことはありませんか?「少しくらいなら大丈夫だろう」とそのままにしておくと、様々なお口のトラブルにつながってしまうことも。そこで、この記事では、歯が欠けてしまったときの応急処置や歯が欠けてしまう原因、おすすめの治療法などを詳しく解説していきます。ひとことに「歯が欠けてしまう」といっても、その程度によってそれぞれ治療法が異なります。この記事を参考にして、ご自身に適切な方法を見つけてください。

歯が欠けたまま放置することは危険?

歯が欠けたまま放置することは危険? フランスパンや煎餅、おかき、アイスキャンディー、ナッツ類などの硬いものを噛んでいる時に、歯が欠けたり、折れてしまうことがあります。しかし、本来健康的な歯ならば、一般的な硬さの食べ物を噛んだだけで欠けてしまうことはありません。歯に何らかのトラブルがあり、もろくなっていた可能性が考えられます。この他にも、調理済みの食品に混入したフルーツの種や甲殻類の殻、異物などを誤って噛んでしまい、歯が欠けてしまうことがあります。また、ボールがぶつかったり転倒したりして物理的に強い力が口元にかかり、歯が折れてしまうこともあります。どの場合でも、欠けたり折れたりした歯をそのまま放置しておくのは危険です。

歯の表面は硬いエナメル質でおおわれていて、歯の中心にある歯髄(しずい)とそのまわりの象牙質を守っています。象牙質はエナメル質よりもやわらかく、酸の影響を受けやすい部分です。歯が欠けてしまうと、エナメル質がはがれ、象牙質がむき出しになってしまいます。象牙質は熱や振動が神経に伝わりやすく、食事や歯みがきの際に痛みを感じるようになります。また、先述の通り、酸にも弱いため、むし歯になりやすいという特徴もあります。象牙質がむき出しのまま放置しておくと、むし歯の進行を早めるだけでなく、感染症などのリスクもあります。歯が欠けてしまったり、折れてしまった場合は、そのままにはせずに、早めに歯科医院で診てもらうようにしましょう。

歯が欠けたときの応急処置はどうすればいいの?

歯が欠けたときの応急処置はどうすればいいの? 突然歯が欠けてしまったら、誰でも混乱してしまいがち。落ち着いて、正しい対処のしかたを覚えましょう。応急処置として、次の3つを心がけてください。

  • ・欠けた部分に触らないようにする
  • ・適切に保存するように心がける
  • ・歯科医院で診察を受ける

欠けた部分に触らないようにする

まず、欠けた部分に触らないようにすることが大切です。欠けた部分が気になって、舌で舐めたり手で触ったりしてしまうと、そこから雑菌が入って炎症を起こしかねません。また、自己判断で消毒液などを塗ったり、何かを詰めるのも危険です。感染症のリスクが高くなりますので、患部には触れないようにしましょう。痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を飲んでも構いません。ただし、鎮痛剤は一時的に痛みを抑えているだけで患部を治癒させるわけではないため、あくまでも応急処置として用いて、必ず早めに歯科医院で受診するようにしてください。

適切に保存するように心がける

欠けた歯が手元に残っている場合は、捨てずに適切に保管して受診の際に歯科医院に持っていきましょう。場合によっては、接着剤などで元に戻すことが可能です。

歯科医院で診察を受ける

欠けた歯が保存できたら、早めに歯科医院で診察を受けましょう。その際、欠けた歯を持っていくことを忘れずに。来院が早く運がよければ、治療で欠けた歯を再着できるかもしれません。欠けた歯が残っていなくても、なるべく早く歯科医院へ行くことをおすすめします。しみたり痛かったりした場合はもちろんですが、自覚症状がなくても欠けた部分から患部が悪化していくことも考えられます。また、欠けた衝撃で歯根が損傷している可能性もあるため、確認するためにもできるだけ早く歯科医院で受診するようにしてください。

歯が欠けた原因

歯が欠けた原因 歯が欠ける原因は様々です。

  • ・むし歯
  • ・歯ぎしり
  • ・酸蝕歯(さんしょくし)
  • ・噛み合わせ
  • ・外傷によるもの

それぞれの原因について見ていきましょう。

むし歯

歯が欠けてしまう原因のひとつは、むし歯です。むし歯は細菌によってエナメル質が溶かされるため、歯がもろくなります。この状態で硬いものを噛むと歯が欠けてしまうことがあるのです。また、むし歯が進行し、エナメル質だけでなく象牙質も溶け出している場合は、内部が空洞化がしているため、歯が欠けるリスクが上昇します。

歯ぎしり

成人の約10%が夜寝ている間に異常な歯ぎしりをしているといわれています。この歯ぎしりは、歯が欠ける大きな要因のひとつです。なぜなら、自分の体重と同程度の力が歯にかかることもあり、歯への負担が非常に大きいからです。また、起きている状態でも、無意識に歯を食いしばると同様のリスクがあります。事務作業や勉強中など、集中している時に歯を食いしばりやすい人は注意が必要です。

酸蝕歯(さんしょくし)

酸蝕歯とは、酸によって歯が溶けてしまうことです。飲食物には酸が含まれているものが多く、スポーツドリンク、酢、ワイン、柑橘系の食べ物など身近なものも少なくありません。これらのものを頻繁に摂取すると、酸蝕歯になるリスクが高まります。酸で歯が溶けてしまうと歯の強度が格段に落ちるので、ちょっとした刺激を受けただけでも歯が欠ける原因となってしまいます。

噛み合わせ

歯並びが悪く、上下の噛み合わせがズレていることも歯が欠ける要因のひとつです。噛み合わせが悪いと、一部分に過度な力がかかってしまうことが多く、そこだけに負荷が集中しがちです。この状態が長く続くとその部分にヒビが入り、歯が欠けたり、折れたりするリスクにつながります。

外傷によるもの

ボールが顔に当たったり、転倒したり、といった外傷によって歯が欠けるケースもよくあります。特に歩き始めたばかりの乳幼児や、スポーツなどに触れる機会の多い小学生、思春期頃に多発する傾向があります。このような場合は、歯だけでなく、口や舌などにも傷があることが多いので、特に早期の治療が求められます。

歯が欠けた程度ごとにおすすめする治療法

歯が欠けた程度ごとにおすすめする治療法 歯が欠けた場合、歯科医院での治療法は患部の重症度によって異なります。

歯が小さく欠けた場合

欠けた部分が小さく、神経や歯根へのダメージがほとんどない場合は、レジン充填という治療法が行われます。白い歯科用のプラスチック樹脂を欠けた部分に入れて、光で固める方法です。保険適用なので費用も安く抑えられます。また、歯の大部分が残っているため、見た目も気になりません。

歯が中くらいに欠けた場合

歯の欠け具合が中程度の場合は、通常、被せ物による治療を行います。保険適用では、前歯には金属フレームを白い樹脂でおおった被せ物、奥歯には金属による被せ物を使用します。また、審美性にこだわるのであれば、自費治療でオールセラミックやジルコニアなどの自然な見た目に近い被せ物や詰め物を選択することもできます。

歯が大きく欠けた場合

欠けた箇所が大きい場合、神経が生きていれば全体をおおう被せ物で対応します。また、神経に損傷がある場合は、根管治療(歯の根の治療)を行います。根管治療とは、神経を取って歯の内部の細菌を取り除く治療法です。その後、土台を作ってその上に被せ物をします。

歯が欠けたのではなく、大きく折れてしまった場合の治療法

歯が欠けるといった程度ではなく、大きく折れてしまったような場合や歯根まで損傷が広がっている場合は、抜歯することになります。その後、抜いた歯を補完する方法として、インプラント、ブリッジ、入れ歯のいずれかを選択します。

インプラント

インプラントは、顎の骨に穴を開けて人工歯根を埋め込み、その上から人工の歯を装着する治療法です。顎の骨にしっかりと固定されているため、噛む力が強いというメリットがあります。また、自然の歯に近いセラミック素材のパーツを使用することで、見た目が美しく仕上がることも人気の理由のひとつです。耐久性にも優れており、長期にわたって維持することが可能です。さらに、健康な他の歯への負担もありません。 デメリットとしては、顎の骨にインプラントを埋め込むための手術が必要なこと、保険が適用されないために費用が高額になりがちなことなどが挙げられます。

ブリッジ

ブリッジは、なくなった歯の両側の歯を削って土台とし、そこに人工の歯を被せる方法です。残った歯を土台とするため、硬いものも噛むことができます。保険適用となる場合も多く、費用を抑えることが可能となります。ただし、健康な歯を土台として使うために、大きく削らなければならないことがデメリットです。また、審美性を向上させる材質を使用すると、保険適用とならないことがあるので注意が必要です。加えて、ブリッジと歯肉の間にプラークがたまりやすいので、むし歯や歯周病の原因となる場合もあります。

入れ歯

入れ歯は、取り外し可能な補綴物で、上下どちらかの全ての歯がない場合に適用される「総入れ歯」と、一部分の歯が欠けたり、なくなったりした場合に用いられる「部分入れ歯」があります。「部分入れ歯」は、クラスプという金具を使って隣の歯に引っ掛けて固定します。費用は保険適用となるので、経済面での負担が抑えられます。また取り外し可能なため、自分でメンテナンスしやすいというメリットもあります。その反面、デメリットとしては、噛む力が弱くなるということが挙げられます。人によっては本来の20〜30%まで噛む力が減ってしまうこともあり、硬い食べ物が噛みにくくなります。さらに、プラークがたまりやすく、食事のたびに取り外して清掃する必要があります。

歯が欠けたら放置しないでインプラントを検討

歯が欠けたら放置しないでインプラントを検討 歯が大きく折れてしまって抜歯を行なった場合の治療法を3つ紹介しました。どれもメリット・デメリットの両面がありますが、総合的にメリットが大きく上回っていると考えられるのがインプラントです。

インプラントのメリット

先ほども述べたようにインプラントにはいくつかのメリットがあります。主なものに、

  • ・審美性が高い
  • ・機能性が高い
  • ・寿命が長い

といった点が挙げられます。それぞれについて解説していきます。

・審美性が高い
インプラントの一番のメリットは、審美性が高いことです。保険適用の範囲でブリッジや入れ歯を選択する場合と比べて、インプラントではより自然な歯に近いセラミック素材の人工歯を使用することで、天然の歯と遜色ない見た目に仕上げることができます。入れ歯のように金具の部分が見えてしまう心配もありません。さらに、歯が欠損するとどうしても顔立ちが老けて見えてしまうことがありますが、天然の歯と同様の見た目のインプラントを採用することでこれを防ぐこともできます。

・機能性が高い
インプラントの二つ目のメリットは、その高い機能性です。インプラントは天然歯と同程度の噛む力を発揮することができます。」天然歯の方が優れているので衰えるといってもよいでしょう(実際には機能障害)。咀嚼力が維持されるので、胃腸に負担をかけることもなく、健康面でもプラスになります。また、装着感も天然の歯と同様なので、入れ歯のようにズレを感じたり、発音がしにくいといった問題もありません。食事や会話といった日常の重要な場面でのストレスを限りなく抑えることができるので、生活の質(QOL)の向上にも繋がります。

・寿命が長い
インプラントのメリットの三つ目は、寿命が長い、という点です。寿命を考える上で10年生存率という値が参考になります。通常、入れ歯の10年生存率は50%程度、ブリッジの生存率は90%程度といわれています。それに比べてインプラントの10年生存率は90%以上です。しかも、しっかりとしたメンテナンスを行っていれば半永久的に維持することも可能です。上部の人工歯の部分は、土台となるインプラント本体よりは耐用年数が短いことが多く、交換が必要となってきますが、それは入れ歯やブリッジの場合でも同様です。最初にまとまった費用のかかるインプラントですが、適切なメンテナンスさえ行えば、長期的には経済的であるということもできます。

まとめ

まとめ 突然歯が欠けてしまうと、誰しも混乱してしまうもの。でも、落ち着いて正しい処置を行えば、運が良ければ歯科医院で再着できることもあります。再着ができなくても、それ以上のお口のリスクは避けられます。欠けた歯は適切に保存して、なるべく早く歯科医院での診察を受けるようにしましょう。歯が欠けた部分は、自覚症状がなくてもむし歯や感染症など大きなトラブルに発展する可能性があります。痛くないからとそのままにしないで、早期に治療を受けることをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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