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奥歯がないとどのような影響があるの?3つの治療法について解説

奥歯がないとどのような影響があるの?3つの治療法について解説

奥歯がない状態が続くと、日常生活に支障をきたすだけでなく、周囲の歯や顎の骨にも悪影響を与えることがあります。そのため早めの対処が重要です。

本記事では奥歯がないとどのような影響があるのかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 奥歯の役割
  • 奥歯がない場合の治療法
  • 奥歯がない状態による悪影響を軽減するためには

奥歯がないとどのような影響があるのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

奥歯の役割

奥歯の役割

奥歯にはどのような役割があるのでしょうか。 以下で解説します。

食べ物を砕く

奥歯は、食べ物を細かく砕く役割を担っています。奥歯がないと、食べ物を十分に細かくすることができず、消化器官に負担がかかり、効率的な消化が難しくなります。

その結果、食べ物が十分に消化されず、吸収も悪化する恐れがあるのです。奥歯を1本失うだけでも、噛む力が20%前後低下し、消化機能にも大きな影響を与えることになります。

歯列のバランスを維持する

奥歯は、歯列全体の安定を保つ重要な役割を果たしているのです。奥歯を失うと、その隙間に隣の歯が傾いて移動し、歯並びが崩れてしまうことがあります。これにより、噛み合わせが乱れ、顎にかかる負担が増加します。

さらに、噛み合わせの不安定さが続くと、顎関節症などの問題を引き起こすリスクも高まるでしょう。奥歯がしっかりと機能することで、上下の歯列が調整され、咀嚼時にかかる力が均等に分散されるため、歯や顎への負担が軽減されます。

顔の形状を維持する

奥歯は、咀嚼機能だけでなく、顔の輪郭にも大きな影響を与えています。もし奥歯を失ったままでいると、噛み合わせが乱れ、最終的には歯並びや顔の形に変化が生じることがあります。

特に、奥歯が失われることで顎の骨が痩せてしまうことがあり、その結果、頬が凹んだり、口元が痩せて見えたりすることがあるのです。奥歯がしっかりと機能していることで、顔の輪郭が保たれ、自然な外観を維持できます。

正しい発音を支える

奥歯は、発音をクリアに保つために重要で、舌の位置や動きに影響を与え、正しい音を作るサポートをしています。噛む力だけでなく、口腔内のバランスを保ち、正確な発音ができるようにするためにも奥歯の健康は重要です。

奥歯がないままにしておくと起こる影響

奥歯がないままにしておくと起こる影響

奥歯がないままにしておくと起こる影響にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。 以下で解説します。

お口への影響

奥歯がないままにしておくと噛み合わせが悪くなったり歯茎が下がったりなど、お口への影響が出る可能性があります。以下で詳しく解説します。

噛みあっていた歯が挺出(ていしゅつ)する

奥歯が抜けたまま放置すると、噛み合っていた反対側の歯がその空いたスペースに向かって移動することがあります。特に、下の奥歯が抜けた場合、上の奥歯が下がってくることがあるのです。

逆に、上の奥歯が抜けると、下の奥歯が上に伸びてくることがあります。この移動は数年かけてゆっくりと進行しますが、こうなると、後で入れ歯やブリッジ、インプラントなどでの治療が困難になることがあります。

ほかの歯にも負担がかかる

残っている歯には、噛み合わせのバランスが偏ってかかることになり、特に前歯やほかの健康な歯に過度な負担がかかります。これが原因で歯がすり減ったり、歯周病が進行したりする可能性が高まります。最終的には、残っている歯が歯根から動いてしまい、抜けてしまうリスクも増えるでしょう。

噛み合わせが悪くなる

奥歯を失うと、隣接する歯や反対側の歯がその隙間に向かって動き始めます。この歯の移動が原因で、噛み合わせがずれてしまい、食事や会話など日常生活に支障をきたすことがあります。噛み合わせの不具合は、物を持ち上げる際やスポーツをするときにも重要な影響を与え、力をうまく使えなくなる場合があるでしょう。

噛み合わせの崩れが続くと、顎関節に過度な負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性もあります。

歯茎が下がってくる

歯がない状態を放置すると、歯を支えていた骨が衰退し、歯茎も同時に下がることがあります。

さらに、歯茎が下がると、隣の歯の根が露出しやすくなり、知覚過敏などの問題が発生することも考えられるのです。歯を失った部分には噛む刺激が伝わらないため、骨は少しずつ痩せ、歯茎が下がり、くぼんで見えることがあります。この状態では、インプラントやブリッジで治療を行っても歯茎のラインがきれいに整わないことがあるため、早期の対応が重要です。

機能性・審美性への影響

次に考えられることは、発音がしにくくなったり顔の形が変わったりするなど、機能性・審美性への影響です。以下で詳しく解説します。

発音しにくくなる

奥歯を失うと、発音に影響を与えることがあります。特に“し”や“ち”などの音がうまく発音できなくなり、言葉がもごもごとこもった感じになってしまうことがあります。これは、歯がない部分から空気が漏れ、口腔内で音をしっかりと作れなくなるためです。

特に、“サ行”や“タ行”、“ラ行”の発音に影響が出やすく、歯列に隙間ができることで、舌の動きがうまく伝わらなくなります。このような問題が発生すると、会話が聞き取りにくくなり、コミュニケーションに支障をきたすこともあります。

顔の形が変わる

奥歯を失うと、顔の輪郭にも影響が出ることがあります。歯を失った部分の骨が衰え、噛む刺激が伝わらなくなることで、骨が痩せていきます。 この結果、頬のラインが内側に寄り、顔の輪郭が細くなることがあるでしょう。これは小顔になるというよりも、頬がこけて見え、しわが増えるなど、年齢を感じさせる印象を与えることが多いようです。

さらに、片方の奥歯が失われると、もう一方の歯でばかり噛むようになり、顔の左右で筋肉の発達に差が生じます。噛まない側の頬がたるみ、顔全体が歪んで見えることもあります。こうした変化により、顔の形や印象が大きく変わることがあります。

見た目の印象が悪くなる

奥歯は見えにくい部分ですが、大きくお口を開けて笑ったり食事をしたりすると、意外と目立つことがあります。歯がない状態は、ほかの方にとって印象に残りやすく、審美的にもマイナスになる場合があるでしょう。

このような見た目の変化を気にするあまり、ほかの方との会話を避けたり、無意識に人の目を気にしてしまうこともあります。結果として、コミュニケーションに対して億劫になり、精神的にも負担がかかることがあります。

全身への影響

ここまでお口や機能性・審美性への影響があることをお伝えしてきました。最後に肩こりや消化機能の低下など全身への影響も考えられることについて、以下で詳しく解説します。

肩こりや頭痛が生じる

奥歯を失ったり、噛み合わせが崩れたりすると、身体全体のバランスにも影響が出ることがあります。特に片方の奥歯がない場合、反対側の歯でばかり噛むようになり、その結果、左右の噛み合わせに不均衡が生じるのです。

このバランスの崩れが身体に負担をかけ、肩こりや頭痛、さらには腰痛につながることがあります。ひどくなると、めまいや吐き気を感じることもあります。奥歯を放置することで、こうした体調不良が徐々に進行し、後々の健康に大きな影響を及ぼす可能性があるため、早期の対応が重要です。

咀嚼力や消化機能が低下する

奥歯が失われると、食べ物をしっかりと噛むことができなくなり、咀嚼力が低下します。特に固いものや大きな食べ物を噛むのが難しくなり、その結果、食事が楽しめなくなることがあります。

さらに、咀嚼が不十分になると、食べ物を十分に細かくすることができず、消化器官や胃、腸に過剰な負担がかかり、消化不良を引き起こしやすくなるのです。また、咀嚼回数が減ることで唾液の分泌も減少し、口腔内環境が悪化します。

唾液は口腔内の清潔を保つ役割があるため、分泌量が少なくなると歯周病やむし歯のリスクが高まるのです。このように、奥歯を失うことで、消化機能や口腔内の健康にも大きな影響が出ることがあります。

奥歯がない場合の3つの治療法

奥歯がない場合の3つの治療法

奥歯がない場合、どのような治療法があるのでしょうか。 以下で解説します。

1.ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を土台として、人工の歯を橋のようにかける治療法です。固定式で安定しており、噛み心地も自然で、硬い食べ物もしっかり噛めます。治療が短期間で済み、保険適用素材を選べば低価格で治療が可能とされています。自費治療を選ぶことで、天然歯に近い仕上がりにすることもできるでしょう。

しかし、ブリッジにはいくつかのデメリットもあります。特に、両隣の健康な歯を削る必要があり、土台となる歯に負担がかかります。このため、土台の歯が割れやすくなり、さらに被せ物と歯の間に隙間ができると、細菌が侵入しむし歯や歯周病を引き起こすリスクが高まります。

2.入れ歯

入れ歯は、失った歯を補うために上部構造を取り付け、残っている歯にバネをかけて固定する治療法です。どの歯が失われても対応でき、取り外して清掃ができるため、メンテナンスが簡単です。また、保険適用となる場合もあり、治療費を抑えることができる点も大きな利点でしょう。

ただし、入れ歯にはいくつかのデメリットもあります。バネを使って固定するため、違和感が生じやすく、特に硬いものを噛むことが難しくなります。また、時間が経つとずれや外れが発生することがあり、痛みを伴うこともあるのです。

さらに、保険適用のものは見た目が劣ることが多く、金属のバネが目立つこともあります。また、長期間使用すると、入れ歯を支える健康な歯に負担がかかり、歯の寿命が短くなる可能性があります。

入れ歯は取り外しが可能なため、清潔に保ちやすく、トラブルが起きた際にも自身で対処しやすい点が魅力です。しかし、適切に使用しないと周囲の歯や口腔内に悪影響を及ぼす可能性があるため、定期的なチェックが必要です。

3.インプラント

インプラントは、顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に上部構造を取り付ける治療法です。失った歯の本数や位置に関係なく適用でき、顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯に近い噛み心地が得られます。インプラントはほかの歯を削る必要がなく、健康な歯をそのまま維持できる点が大きな利点です。

また、インプラントは審美性がよく、見た目が自然で、噛む力も本来の歯に近い感覚で使用できます。入れ歯のように取り外す必要がなく、メンテナンスも簡単です。さらに、顎の骨が痩せるのを防ぐため、骨の健康にもいい影響を与えるでしょう。

ただし、インプラント治療には外科手術が必要で、治療期間が長くなることがあります。また、費用が高くなる場合や、骨量が不足している場合には骨造成が必要となることがあります。さらに、全身疾患を持つ方には手術ができない場合もあるのです。

奥歯がない状態による悪影響を軽減するには

奥歯がない状態による悪影響を軽減するには

奥歯がない状態による悪影響を軽減するためにはどのようなことを行うのがいいのでしょうか?以下で解説します。

定期検診を受ける

入れ歯や被せ物、インプラントなどの人工物に関しても、定期的なチェックは重要です。人間の身体は年齢とともに変化し、特に加齢によって歯茎が下がったり、顎の骨が痩せることがありますが、人工物はこれらの変化に自動的に対応できません。そのため、一定期間使用した後には調整が必要です。

適切に調整されていない人工物を長期間使用すると、噛み合わせが悪くなり、残っている健康な歯に負担がかかったりします。また、顎関節や首、肩にまで影響を及ぼす可能性があるため、定期的な健診を受け、口腔内の状態を常に把握しておくことが大切です。

正しい歯磨きを行う

正しい歯磨きを行い、歯垢や歯石をしっかりと取り除くことが大切です。歯ブラシは、お口の中に合った適切なサイズや硬さを選ぶことが重要です。

加えて、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯と歯の間や歯茎の隙間もしっかりケアすることで、口腔内の健康を維持できます。これらのポイントを守ることで、むし歯や歯周病の予防につながり、健康的な口腔環境を保つことができます。

歯科医院に相談する

治療を受けるかどうか迷っている場合でも、まずは歯科医師に不安や懸念点をすべて相談してみることが大切です。初めて訪れる際には、カウンセリングを受け、治療計画を立ててから治療に進むのが多いようです。カウンセリングだけでも問題なく対応してもらえる歯科医院もあります。

まとめ

まとめ

ここまで奥歯がないとどのような影響があるのかについてお伝えしてきました。奥歯がないとどのような影響があるのかについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 奥歯の役割には、食べ物を砕いたり歯列のバランスや顔の形状を維持したりすることが挙げられる
  • 奥歯がない場合の治療法には、ブリッジや入れ歯、インプラントがある
  • 奥歯がない状態による悪影響を軽減するためには、定期検診を受けたり正しい歯磨きを行ったり、歯科医院に相談したりすることが大切である

奥歯が失われることでさまざまな影響が生じますが、適切な治療法を選ぶことでその影響を抑えることが可能とされています。

インプラント、ブリッジ、入れ歯のいずれもそれぞれの特徴やメリット・デメリットがあります。早期に対処することで、口腔内の健康を保ち、全身の健康にもよい影響を与えられるでしょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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