インプラント

インプラント 治療を30代で行うのは早い?メリット・デメリット・費用を解説

インプラント 治療を30代で行うのは早い?メリット・デメリット・費用を解説

インプラントはまるで天然歯のような噛み応えと輝くような白さが魅力的な歯の治療です。歯を失いがちな高齢者の方にとって、インプラントは大切な治療といえるでしょう。

歯にまつわる病気のなかでも歯周病は進行性の病気といわれており、痛みの伴わない歯周病も含めると30代以上の8割が罹患している病気とされています。

こちらでは、インプラント治療を30代で行うことのメリット・デメリットと費用について解説しています。ご自身や大切な人が30代である場合など、ぜひ参考にしてみてください。

インプラント治療を30代で行うのは早い?

歯並びが綺麗な男性

失われた天然歯と同じような噛み応えを感じられるインプラントですが、30代で行うのは早いのでしょうか。実はそのようなことはなく、30代でもインプラントの治療を行なっている方はいます。

30代で起きる歯の病気や怪我には、以下のものがあります。

  • むし歯・歯周病
  • 歯の破折(歯が折れること)

ほかにも埋没歯などがありますが、大半は上記2件です。

30代はまだ若く、歯も健康であることが少なくありません。それよりも、30代は仕事や家庭で忙しく、それにまつわる怪我(破折)や歯磨きの不足によるむし歯・歯周病が多くみられます。

たとえ歯周病に罹患していなくとも、年齢が上がるにつれて歯周病のリスクは上昇します。歳を重ねて歯茎や歯槽骨が薄くなってしまったときでは、土台となる骨が薄いためにインプラント手術が受けられなくなる可能性があるでしょう。

そうならないためにも、30代のうちにインプラント治療をするのは後々のことを考えると重要だといえるでしょう。

また、30代でも以下の傾向がある場合は歯周病に罹患する可能性が上がるため、やはり早い段階でインプラント治療を考えることも必要かもしれません。

  • 糖尿病に罹患している
  • 喫煙習慣がある(禁煙や節煙ができる方を除く)
  • 歯ぎしり・食いしばりがある
  • 不規則な食習慣やストレスを抱えがち
  • 口呼吸が多い

インプラントは歯肉を切開して歯槽骨に人工物を埋め込む外科手術を伴います。露出した骨に穴をあけるために細菌感染を引き起こす可能性があります。

糖尿病に罹患している場合、免疫力が低下しているために細菌感染のリスクが上昇する傾向にあるようです。

また、煙草に含まれるニコチンには血管を収縮させる特徴があり、体内に必要な酸素や血液が行き渡りにくくなります。そのためインプラント治療に不可欠なインプラントと歯槽骨の結合がしにくくなり、成功率が下がるそうです。

その他、歯ぎしりや食いしばり・不規則な食習慣やストレスもインプラントの成功率を下げてしまう可能性があります。

歯周病は進行状況によって、歯肉の状態に変化がみられます。ご自身で確認のうえ、気になるようなら歯科医院で受診してみるとよいかもしれません。
健康な歯肉は以下の状態です。

  • 薄いピンク色の歯肉
  • 歯と歯の間に歯肉が入り込んでいて弾力がある
  • 歯肉にハリがある
  • 歯磨きでは出血しない

歯肉炎(歯と歯周ポケットから侵入した細菌が歯肉に炎症を引き起こした状態)になると、次のように歯肉の状態が変わっていきます。

  • 赤色の歯肉
  • 歯肉のハリが失われ、丸みを帯びている
  • 歯磨きで出血する

歯周炎(歯肉炎に加えて、歯槽骨を溶かして歯をグラグラにさせる状態)まで進むと、次のような症状がでます。

  • 赤紫色の歯肉
  • 歯と歯の間が広がっている
  • 歯磨きで出血だけでなく膿も出る
  • 歯肉が退縮して歯が長く見える
  • 歯周ポケットが深くなり歯槽骨が解ける

なお、歯肉炎と歯周炎を合わせて歯周病といいます。

30代でインプラント治療を行うメリット

メリットの看板

30代でインプラント治療を行うメリットはさまざまあります。30代はまだ歯を支える骨が丈夫であることが少なくなく、骨造成が不要なケースがあったり、治療したことで自分に自信が持てたりします。詳しく見ていきましょう。

骨造成が必要になるケースが少ない

30代はまだ若く歯や骨が丈夫なこともあり、歯周病に罹患していても歯槽骨の厚みが十分にあり、骨造成が必要になるケースも少ない可能性があります。

そもそも骨造成とは、歯を支える歯槽骨の厚みが薄くインプラント手術が受けられないために、歯槽骨を増やす治療のことです。歯槽骨を増やすためにご自身の骨を使用したり、人工の材料を移す治療が行われます。

歯槽骨は歯周病や加齢によって薄くなることがわかっています。骨が薄い状態で無理矢理インプラントの手術をしてしまうと、インプラントが骨を突き抜けたり、歯肉から露出してしまう原因となるようです。

そのため、歯周病に罹患している人は歯周病を治療してからインプラント手術を受けることとなります。ただし、歯周病にかかっていない30代でも、歯槽骨が薄い方もいます。

ご自身の骨の厚みがどうなっているのかは、歯科医師へ確認してみた方がよいでしょう。

歯の見た目に自信が持てるようになる

歯並びが綺麗な女性

30代以上の成人の3人に2人が歯周病に罹患しているというデータがあります。

歯周病は必ずしも痛いものではなく、痛みのない状態で進行している歯周病に罹患している成人の方も少なくありません。そして歯周病に罹患している場合は前述したとおり、歯肉の色が赤紫色だったり、歯周ポケットが深くなっていたりします。

インプラント手術にはまず歯周病を治すことが必要ですが、その後にインプラント治療を行うことで歯肉の色が悪化するのを抑えたり、歯周ポケットが深くなるのを抑えることができます。

またインプラント自体はむし歯になることはありません。むし歯とは、食べ物から摂取した糖分を餌としてむし歯菌が繁殖し、むし歯菌が作り出す酸によって天然歯にあるエナメル質が溶かされることで生じます。

その後の象牙質まで溶かし、侵食が歯髄にまで達することで激痛を伴います。しかしながらインプラントの場合はエナメル質が存在しません。そのためインプラントがむし歯になることはありません。

そして丁寧に歯磨きを行えば、いつまでも歯の白さを保つことができます。仕事や子育てなどで何かと人前に出ることの多い30代だからこそ、早めの処置が大切かもしれませんね。

健康な歯を残しやすい

歯の治療にはインプラントのほかに入れ歯やブリッジがあります。どちらもインプラントよりも治療費や治療期間を抑えられるケースが少なくありませんが、治療が必要な歯だけでなく、その付近にある健康な天然歯にも負担をかけてしまうようです。

部分入れ歯は留め具を健康な歯に引っかけて固定させます。そのため、食事や取り外しのたびに歯や歯茎への負担が蓄積されていき、傷ついてしまうことでむし歯や歯周病のリスクを高めてしまうでしょう。

ブリッジの場合は両隣の健康な天然歯を削る必要が生じます。そして欠損した歯を補うため、食事などの際に欠損した歯にかかるはずの負荷がすべて支台の天然歯に分散されることになり、寿命を縮めてしまう可能性があります。

また連結しているため隙間がなく、フロスによる食べかすの除去ができないために支台の歯に食べかすが残ることがあるようです。これにより支台の歯へのむし歯や歯周病のリスクが高まる可能性があるでしょう。

なお、インプラント周囲炎によって、周囲の歯へ影響がおよぶことがあります。インプラントは独立した歯であり周りの健康な歯への影響はないため、健康な歯を残しやすいといえます。また、歯を失ったまま放置しているのも危険です。失った歯の隣の歯が倒れてきたり、失った歯と噛み合っていた歯が伸びてきたりするようです。

そのため、歯を失ってしまったとしても、インプラント治療をすることは大切かもしれません。

30代でインプラント治療を行うデメリット

バッテンをする人

30代でインプラントを行うメリットがある一方で、一定のデメリットも存在します。感染症のリスクであったり治療費が高額であること・治療期間が長いことなどが挙げられます。詳しく見ていきましょう。

感染症のリスクがある

感染症の代表的なものとして、インプラント周囲炎があります。これは、インプラントを原因としてその周囲が歯周病のようになり、歯槽骨の吸収が起きる病気です。

これにより歯周ポケットが深くなり、最悪の場合インプラントが抜け落ちることがあります。インプラント周囲炎に罹患すると、処置方法として外科的手術が必要になるケースも少なくありません。

なお、インプラント周囲炎に罹患しにくいものとしてチタン製のインプラントではなく、セラミック製のインプラントがあるようです。セラミックは汚れが付きにくいためインプラント周囲炎にも罹患しにくいといわれています。

しかしながら、どの歯科医院でも導入しているとは限りませんので、詳細は歯科医院にご相談ください。またセラミックは衝撃に弱いという報告もあるため、どのようなインプラント手術を受けるべきかしっかり考えるとよいでしょう。

治療期間が長い

入れ歯やブリッジと比べて治療期間が長いことも、インプラントのデメリットです。歯槽骨にインプラント体を埋め込んだのち、歯槽骨とインプラントがしっかり結合するのを待たなければなりません。

また、歯槽骨の厚みが十分にない場合は骨造成が必要となるケースもあり、この場合はさらに治療期間が延びる可能性があります。

継続的にメンテナンスを行う必要がある

治療中の人

インプラントは、手術をして終わりではなく、適切な歯磨きや歯科医院への検診が必要不可欠です。

どれだけ丁寧に歯磨きをしていても、どうしても磨き残しが生じて除去し損ねた歯垢が発生することがあります。歯垢を放っておくとむし歯の原因となるため、歯垢や歯石を歯科医院で除去してもらいましょう。

また、歯磨きや検診を怠るとインプラント周囲炎に罹患する恐れがあります。せっかく治療したインプラントでも、長い年月をともに過ごしていくため予期せぬトラブルによりインプラントを傷つけてしまうことがあるかもしれません。

そのため、保証が受けられる歯科医院でインプラント治療を受けるのがおすすめです。患者さんの不注意や不慮の事故など歯科医院の責任がまったくないケースを除き、インプラント体の破損・アバットメントのゆるみ・破損・人工歯の破損などのケースが起きた場合に保証が受けられるかもしれません。

保険が適用されない

インプラントは自由診療となり、基本的に健康保険が適用されません。むし歯や歯周病、外傷によって歯を失い、入れ歯やブリッジで治療する場合は保険適用となるケースがほとんどです。

対してインプラントの場合、見た目をよくする・よく噛めるようになるための治療ととらえられており、保険適用とはなりません。

ただし、病気や事故などで広範囲にわたって顎の骨と歯が失われ、治療のためにインプラント手術を行った場合は保険適用となることがあります。生まれつきの疾患で顎の骨が欠損している場合や、腫瘍や顎骨骨髄炎によって顎の骨が失われた場合でかつ、国が定めた条件を満たした歯科医院や病院で治療を行う場合に限られます。

インプラントの費用相場はどのくらい?

費用

インプラント治療を行う際、治療費は以下のとおりとなります。なお、患者さんの口腔内状況や受診する地域によっても価格は異なるため、あくまで参考程度にしてみてください。

検査費用

検査費用は4万円程度かかります。これはインプラントを正確に埋入するための検査となり、CTやレントゲンを撮影する場合も含まれます。

手術費用

手術費用は120,000円(税込)程度かかります。また、手術時に麻酔をかける場合は静脈内鎮静法の場合で110,000円(税込)程度上乗せされます。

上部構造の費用

60,000~180,000円(税込)程度かかります。

メンテナンス・通院・その他の費用

メンテナンス1回につき7,000円(税込)程度かかります。なお、医療機関によっては保証を付けることができ、メンテナンスにかかる費用は保証の範囲内であるケースもあるようです。

骨造成を行う場合の費用

骨造成が必要な場合は50,000~250,000円(税込)程度かかります。

インプラントの寿命は?

歯医者さんの説明

魅力の多そうなインプラントですが、手術してからどのくらいもつのでしょうか。日々の歯磨きや歯科医院への検診の有無によっても変わってきそうですが、詳しく見てみましょう。

通常は10年以上

インプラントは適切にメンテナンスをしていれば、10〜15年はもつとされています。

この期間の累積生存率は90%以上といわれています。10〜15年使っていてもインプラントを維持している人が9割もいるので、実際はさらに長く使えている人も少なくないでしょう。

また、なかには40年以上使い続けている人もいるようです。長く使い続けるためにも、毎食後の歯磨きや歯科医院への検診は基本的に守るようにしましょう。

メンテナンスの重要性

歯ブラシを持つ女性

上記のとおり、インプラント治療においてメンテナンスは重要だといえます。歯科医院によって多少異なるものの、主に以下の項目のメンテナンスが行われます。

  • プラークコントロールの状態
  • 周囲粘膜の状態
  • プロービング(歯肉の入り口から歯周ポケットの底の部分までの距離を測ること)の深さ
  • 排膿の有無
  • インプラントの動揺度
  • エックス線写真
  • 口腔内の観察と写真による記録
  • 細菌検査・指尖血清抗体価検査
  • スケーリング・ルートプレーニング
  • 咬合状態のチェック・咬合調整
  • 機械的歯面清掃

検査項目は少なくありませんが、充実した内容の検診を受けることがインプラントと長く付き合うためには必要でしょう。

インプラント治療に向いていない人は?

カウンセリング中

天然歯のような噛み応えやむし歯にならない点など魅力的なインプラントですが、インプラント治療が不向きな人もいます。

  • 歯槽骨の厚みや質がよくない人
  • 歯周病を患っている人
  • 重度の全身疾患(糖尿病など)を罹患している人
  • 妊娠中の人
  • 歯磨きや歯科医院への検診などができない人
  • 喫煙習慣のある人

上述してきたとおり、歯槽骨の厚みがない人はインプラントが飛び出す恐れがあるため、骨移植が必要となる場合があります。歯周病を患っている人も、治してからでないとインプラント治療を受けられないケースがあるでしょう。

また重度の全身疾患を罹患していたり、妊娠中・歯磨きや歯科医院への検診が受けられない・喫煙習慣のある人も不向きといえます。これらをしっかり守って治療と向き合える人が、インプラント治療を受けられるでしょう。

まとめ

カウンセリング中

インプラントを30代で行う場合はデメリットもありますが、メリットも少なくありません。

歯周病は治療によって進行を止めることができます。しかしながら、歯周病などによって下がった歯茎をもとに戻すことは基本的にできません。そのため、30代の若いうちから適切な治療を行い、健康な歯を一本でも多く残すことが大切です。

また、治療費もご自身の口腔内の状況や治療を受ける医療機関によって変動します。しっかり歯科医院で治療費についての概要を聞き、納得したうえでインプラント治療を受けるようにしてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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