インプラント

インプラントが骨と結合する仕組みとは?骨結合しない場合の対処法を解説

インプラントが骨と結合する仕組みとは?骨結合しない場合の対処法を解説

インプラントに興味はあるけれど、「本当に骨と結合するの?」「もし結合が得られなかった場合、どうすればいいの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではインプラントと骨の結合について以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラント体の構造と素材の特徴
  • インプラントが骨と結合する仕組み
  • インプラントと骨が結合しない場合の対処法

インプラントと骨の結合について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

インプラント体の構造と素材の特徴

インプラント体の構造と素材の特徴

インプラント体はどのような構造ですか?
インプラント体は、失われた歯の機能と見た目を補うために、顎の骨に埋め込む人工歯根の部分です。フィクスチャーとも呼ばれています。
ネジ状の構造で、顎の骨に埋め込まれます。この部分が歯根の役割を果たし、オッセオインテグレーションと呼ばれる生体との結合によって、しっかりと顎骨と一体化します。
インプラント体の上部に、アバットメントと上部構造が組み合わされ、歯の役割を果たします。
インプラントと骨が結合するために使われる金属は何ですか?
インプラントと顎の骨がしっかりと結合するために使用される金属は、チタンまたはチタン合金です。
チタンは医療用金属として、次のような特性を持っています。・高い生体親和性
チタンは人体にとって異物反応を起こしにくく、拒絶反応がほとんどないといわれており、骨と直接結合することが可能とされています。
この現象はオッセオインテグレーション(骨結合)と呼ばれ、インプラント治療の成功に欠かせない要素です。・軽量かつ高強度
チタンは軽くて丈夫なため、長期間にわたって口腔内での機能を維持できます。噛む力に耐えられるだけの強度がありながら、骨への負担も少なく済みます。

・腐食に強い
お口のなかは常に唾液や温度変化にさらされていますが、チタンは酸化被膜によって表面が保護されており、腐食しにくい特長もあります。

こうした理由から、チタンは歯科インプラントだけでなく、人工関節や骨折治療の固定具など、さまざまな医療分野でも活用されています。骨と結合する根幹の素材はチタンが基本です。

チタンの生体親和性とは何ですか?
生体親和性(バイオコンパチビリティ)とは、ある素材が人体と接したときに、拒絶反応や炎症などを引き起こさず、体内で安定して機能する性質のことを指します。
インプラント治療で使われるチタンは、この生体親和性が大変高い金属とされています。・なぜチタンは身体に優しいのか?
チタンが体内で安定して使える理由のひとつは、酸化チタンの保護膜にあります。チタンの表面は空気や水と反応して、安定した酸化皮膜(TiO₂)を自然に形成します。
この膜が腐食や化学反応からチタン本体を守り、周囲の組織との摩擦や拒絶反応を抑える役割を果たします。・アレルギーの心配が少ない
アレルギーを起こしにくい性質から、チタンは金属アレルギーの不安がある方にも利用されることがあります。
ただし、まれに反応が出る方もいるため、事前のチェックが推奨されます。

このように、チタンの生体親和性の高さはインプラント治療で重要な要素であり、安全性と長期的な安定性を両立できる素材として、世界中で広く採用されています。

インプラントが骨と結合する仕組み

インプラントが骨と結合する仕組み

オッセオインテグレーションはどのような現象ですか?
オッセオインテグレーションとは、歯科インプラント治療で重要な概念で、インプラント体と顎の骨が直接結合する現象を指します。
これは、単に骨に埋め込むというだけではなく、骨と上部構造が光学顕微鏡レベルでしっかり結合し、骨の細胞がインプラント表面に密着して一体化していく生物学的なプロセスです。【オッセオインテグレーションが起こる仕組み】

1.埋入直後の反応
インプラント体を顎の骨に埋め込むと、最初は微小な出血や組織反応が起きます。
これは自然な炎症反応で、治癒の第一段階です。

2.骨再生の開始
その後、骨芽細胞という新しい骨を作る細胞が活性化し、インプラントの表面に向かって骨を形成していきます。

3.骨と金属の結合
数週間から数ヶ月かけて、骨がインプラント表面と直接接触し、動かない状態になります。これがオッセオインテグレーションの完成です。

この現象を成立させる上で欠かせないのが、インプラント体に使われているチタンです。 チタンは生体親和性を持ち、骨と自然に結合しやすいため、オッセオインテグレーションが起こりやすく、インプラント治療におすすめな素材とされています。

インプラントが骨と結合しないケースもありますか?
インプラントが骨と結合しない(オッセオインテグレーションが成立しない)ケースも存在します。
インプラント体はチタンなどの生体親和性の高素材で作られており、適切に処置されれば高い確率で骨と結合しますが、条件が整わない場合には結合に失敗することもあります。
オッセオインテグレーションがうまくいかない原因を教えてください
・主な原因とリスク要因
  1. 喫煙
  2. 糖尿病や骨粗しょう症などの全身疾患
  3. 口腔内の衛生状態が悪い
  4. 初期固定の不良
  5. 術中・術後の感染リスク

インプラント治療は成功するケースが多い一方で、患者さんの健康状態や生活習慣に   よってリスクが左右されるデリケートな治療でもあります。
安心して治療を受けるためには、事前の検査と丁寧なカウンセリング、そして術後のセルフケアが重要です。

インプラントが骨に結合するまでの期間を教えてください
治癒期間の目安は以下のとおりです。
・上顎(上の歯の場合):3~6ヶ月程度
上顎の骨は下顎よりもやわらかいため、結合にはやや時間がかかります。・下顎(下の歯の場合):2~4ヶ月程度
骨密度が高いため、短期間で結合する傾向があります。

この期間中は、インプラント体が骨と自然に結びつくのを待つ安静期間となり、無理な力をかけずに慎重な管理が必要です。

インプラントと骨が結合しない場合の対処法

インプラントと骨が結合しない場合の対処法

インプラントと骨が結合しないときはどうすればいいですか?
結合がうまくいかなかった場合、多くのケースでは再治療が可能とされています。
具体的な対応は以下のとおりです。
・インプラントの除去と再埋入
一度取り除いて、一定の治癒期間を置いた後、同じ部位または別の位置に再度インプラントを埋入します。骨の状態が改善していれば、成功する可能性は十分あります。・骨再生治療(GBRなど)の併用
骨が不足している場合には、骨補填材を用いた再生療法を先に行い、骨の量を確保してから再埋入する方法があります。
インプラントの骨結合を成功させるためのポイントを教えてください
これまで述べてきたように、インプラント治療の成功には、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合するオッセオインテグレーションが不可欠です。
この結合がうまくいけば、インプラントは天然歯のような強度と安定性を長期にわたって維持できます。ここでは、骨結合を成功させるための重要なポイントをご紹介します。1.術前の精密な診断と計画
骨の量や質、噛み合わせの状態、全身の健康状態などを詳細に把握し、患者さん一人ひとりに合った治療計画を立てる必要があります。

2.喫煙を控える
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させるため骨の再生を妨げます。 治療前後は禁煙することがインプラント成功の大きなポイントです。

3.全身疾患の管理
糖尿病や高血圧などの慢性疾患がある場合は、医師と連携して病状を安定させることが必要です。

4.術後のケアと安静
インプラント埋入後の数週間から数ヶ月は、無理な力をかけず安静に過ごすことが大切です。インプラントが安定するまでに微細な動きが加わると、骨結合が阻害されてしまう可能性があります。

5.毎日の口腔ケアと定期メンテナンス
インプラントを長持ちさせるには、天然歯と同様に清潔な口腔内の環境を保つことが重要です。
専用の歯ブラシやフロスを使い、定期的な歯科医院でのチェックとクリーニングを欠かさず行いましょう。

インプラント治療は手術だけでなく、日々の生活習慣や患者さん自身の協力があって初めて成功に導かれます。 焦らず着実に準備や治療、ケアを進めれば骨との結合が得られ、快適な口腔環境が長く保たれます。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでインプラントと骨の結合についてお伝えしてきました。インプラントと骨の結合の要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラント体は、主に医療分野で広く使用されているチタンまたはチタン合金で構成されており、その形状はネジのようなスクリュー型であり、顎の骨に対して安定した埋入が期待される設計である
  • インプラントと骨の結合は、オッセオインテグレーションと呼ばれる生物学的なプロセスに基づいており、これは骨の細胞がインプラントの表面に密着しながら時間をかけて一体化していく仕組みである
  • 骨とインプラントがうまく結合しない場合には、喫煙習慣や全身疾患の有無、口腔内の清掃状態、あるいは初期の固定状況など、さまざまな要因が影響している可能性があり、それぞれの原因に応じた丁寧な対処が求められる

インプラントと骨が結合しない場合は、感染症や骨の質に問題があることがあります。それぞれの原因に基づいた対処が必要です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP