インプラント

インプラントはむし歯にならない?起こり得る口腔トラブルや必要なケアを解説

インプラントはむし歯にならない?起こり得る口腔トラブルや必要なケアを解説

インプラントは高い審美性の獲得と噛む機能の長期的な改善が見込める治療です。

インプラントは金属のインプラント体にレジンやセラミックなどの人工歯を結合させたものであるため、むし歯にはなりません。

しかし、日頃のプラークコントロールや歯科医院でのメンテナンスを怠るとインプラント周囲炎になり、インプラントが抜けてしまう可能性があります。

この記事ではインプラントで起こりえる口腔トラブルと必要なケア方法を解説します。インプラントの正しい知識を深めてから治療を行いましょう。

インプラントはむし歯にならない?

治療する歯科医師

むし歯のメカニズムを教えてください。
むし歯は、口腔内の細菌が食事に含まれる糖分を分解し、酸を生成することで歯が侵食される現象です。むし歯の原因であるミュータンス菌はグルカンと呼ばれる物質を放出し、細菌の集合体を作ります。集合体が増えて歯の表面に付着したものがプラーク(歯垢)です。プラークは歯に強くこびりつきます。ミュータンス菌はプラーク内で乳酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かしむし歯を進行させます。
インプラントはむし歯にならないと聞きましたが本当ですか?
インプラントに使用される材料が酸に強いため、むし歯になることはありません。インプラントは、顎の骨に埋め込まれたインプラント体に人工歯を固定する構造です。インプラント体にはチタンやチタン合金など金属アレルギーが出にくい金属を使用し、人工歯にはレジンやセラミックなどの材料を用いています。いずれの材料も酸に強く、ミュータンス菌が生成する乳酸では溶けないため、インプラントがむし歯になることはありません。

インプラントで起こり得る口腔トラブル

歯科衛生士と男性患者

インプラント周囲炎について詳しく教えてください。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯周ポケットが深くなり、骨が吸収されることで発症します。インプラント体の周囲で膿がたまり、腫れる場合もあるため注意が必要です。インプラント周囲炎の原因には以下のものがあります。
  • プラークコントロール不足による口腔衛生状態の不良
  • 歯科医院での定期的なメンテナンスの不足
  • 喫煙
  • 糖尿病

インプラント周囲炎は細菌感染による炎症性の疾患です。感染を防ぐには、毎日の歯磨きと歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。

インプラント治療後の腫れや出血が長期間続いているのですが大丈夫でしょうか?
インプラント手術後、患部が腫れることがあります。腫れは2〜3日でピークに達し、1週間ほどで引いてくるでしょう。インプラントは顎の骨にチタンを埋め込むため、外科的な負担が大きくなります。インプラントを埋め込んだ骨が炎症を起こして腫れるのは一般的な反応です。
1週間以上経っても腫れが引かない場合は、治療を受けた歯科医院を受診しましょう。インプラント手術後1〜2日は出血がみられることがあります。出血は、一般的な傷の治癒過程と同様に、徐々に減少していきます。1週間以上出血が続く場合は、手術を受けた歯科医院で診察を受けましょう。
インプラント治療後に感覚障害が残ることはありますか?
手術の影響で神経を傷つけたり圧迫されたりすると、下歯槽神経・オトガイ神経・舌神経の感覚障害が生じることがあります。インプラントを埋め込む手術では外科的な侵襲を伴うため、神経を損傷するリスクを完全に排除することはできません。感覚障害には以下のものがあります。
  • 顎の感覚異常
  • 舌の知覚異常
  • 唇の感覚異常
  • 顎・舌・唇の痺れ

感覚障害の多くは時間が経過すれば徐々に回復します。回復を早めるための薬物療法を行うことも可能です。しかし、神経損傷の程度によっては手術前の状況まで回復しないケースもあるため注意が必要です。不安な方は手術前の検診で歯科医師に相談するとよいでしょう。

インプラントが抜けたり破損したりするケースがあると聞いたのですが……。
手術後にインプラントが定着せず、抜けてしまうケースがあります。骨とインプラントがしっかりと結合する前に歯ぎしりなどで強い負荷がかかってしまうとインプラントが抜けてしまいます。手術後の一定期間はインプラント体に負荷がかからないように注意が必要です。なお、喫煙糖尿病によってインプラントの定着が悪くなる傾向があります。不安な場合は、手術の前に歯科医師に相談するとよいでしょう。顎の骨の骨量不足や骨密度が低い場合、強い負荷がかかると骨が損傷し、インプラントが抜けてしまいます。
また、毎日の歯磨きによるプラークコントロールと定期的な歯科医院でのメンテナンスを怠ると、細菌がインプラントと歯茎の間で増殖しインプラント周囲炎になります。インプラント周囲炎になるとインプラント体周囲の骨が溶けてインプラントが抜けてしまうケースがあるので注意が必要です。インプラント体の上部に付ける人工歯が破損する可能性もあります。人工歯はレジンやセラミックでできており、耐用年数は10年ほどです。人工歯は使用の継続に伴って破損する可能性が高まるため定期的にメンテナンスをするとよいでしょう。

インプラントに必要なケアや注意点

歯磨きをする若い女性

インプラントの正しいセルフケア方法を教えてください。
インプラントのセルフケアには、毎日の丁寧な歯磨きやデンタルフロス、歯間ブラシによるプラークコントロールが欠かせません。インプラントと歯茎の間のポケットにプラークがたまり、歯周病菌が増加するとインプラント周囲疾患になります。インプラント周囲疾患にはインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎があります。
インプラント周囲粘膜炎では、インプラント周囲の骨が溶けていない状態のため、毎日のプラークコントロールにより症状の改善が可能です。インプラント周囲炎では、インプラント周囲の骨が溶けているため進行具合によって殺菌やインプラント体の撤去などの処置が必要になります。プラークは食べ物の残りカスではなく、細菌とその代謝物のかたまりです。プラークを長時間残してしまうと、インプラント周囲疾患になる可能性が高まります。歯磨きを中心にプラークコントロールを行い、インプラントを長持ちさせましょう。
インプラントを長持ちさせるための注意点を教えてください。
インプラントの手術直後はインプラント体が骨に定着していないため、インプラント体に負荷がかからないようにしましょう。歯ぎしりなどで無意識のうちに負荷をかけてしまう可能性があるので注意が必要です。
インプラントだけではなく、自分の歯の健康を保つことも重要です。毎日の歯磨きやデンタルフロスによる清掃を欠かさず行い、口腔内の衛生状態を保ちましょう。プラークを残してしまうと口腔内は細菌が増殖しやすい環境になります。細菌が増殖するとインプラント周囲炎になる可能性が高まります。毎日のプラークコントロールを徹底して行い、口腔内全体の衛生状態をよくしておきましょう。
毎日の生活で注意するべきことはありますか?
手術直後は、骨や組織の再生を促すために栄養バランスのよい食事を取ることを心がけましょう。血や筋肉のもとになるタンパク質や骨の材料となるカルシウムを多く含む食品を取るとよいです。インプラントに強い負荷をかけないように硬いものを多く摂ることは避けた方がよいでしょう。
インプラントを長持ちさせるためには、毎日のプラークコントロールが欠かせません。歯磨きやデンタルフロスで歯についたプラークを除去して口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯科医院でのメンテナンスはどのくらいの頻度で受ければよいですか?
インプラント治療後の歯科医院でのメンテナンスは2〜3ヶ月に1度の頻度で受けるとよいでしょう。メンテナンスではプラークの付着状況、インプラント周囲粘膜の炎症の有無などを確認します。また、プラークや歯石を除去し、口腔内の健康状態を維持することも定期的なメンテナンスの目的です。メンテナンスの検診で毎日の歯磨きで磨き残しがないか確認してもらうこともできます。

編集部まとめ

歯医者イメージ

インプラントの手術は外科的な処置を伴うため、術後に腫れや出血が生じることがあります。腫れや出血は1週間ほどでよくなることがほとんどです。

インプラントが顎の骨に定着をすれば、噛む機能と審美性の改善が期待できます。

インプラント自体はむし歯にはなりませんが、毎日のプラークコントロールと定期的なメンテナンスを怠るとインプラント周囲炎を発症し、インプラントが抜けてしまう恐れがあります。

インプラントを長持ちさせるためには、セルフケアと歯科医院でのメンテナンスを徹底し、口腔内の衛生状態を維持することが重要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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