インプラント

総入れ歯とインプラントはどちらがいい?違い・費用について解説

診断する医師

上顎・下顎の歯を複数失った場合、補う方法として提案される治療の代表例は総入れ歯・インプラントです。失った歯の代わりになる、というゴールは同じですが機能・費用面は大きく異なります

今回は総入れ歯とインプラントはどちらがいいかについて解説していきます。どう違うか・費用面・メリット・デメリットなど、さまざまな角度から解説を行いますので治療法を決める参考になれば幸いです。

総入れ歯とインプラントはどちらがいい?

案内する医師

総入れ歯とインプラントは、どちらも複数の歯を失った場合の治療法です。総入れ歯は費用面や治療期間の短さが優れており、インプラントは審美性・噛み心地・器具の寿命の長さが優れています。

歯を補う際どのような点を重視するかで、どちらがより相応しい治療法かが変わってきます。そのためどちらが明確に良い、という訳ではありません。

歯を失った後そのままにしておくと、顎の骨が少なくなったり顔全体の筋力が衰えたりとさまざまな悪影響が発生します。

歯を複数本失った場合は、総入れ歯・インプラントといった失った歯を補う治療を受けるようにしましょう。

総入れ歯とインプラントの違いは?

指をさす医師

総入れ歯とインプラント治療は、さまざまな面で異なります。選択するか考える際、どのような違いがあるかきちんと把握して置くことが重要です。

どちらの治療法も医院によって治療方針やアプローチが異なるため、治療を受ける際は歯科医と相談して治療法を選択するようにしましょう。

治療方法

総入れ歯はまず歯茎の型を取り、総入れ歯の土台となる模型を作成します。次に咬合床と呼ばれる入れ歯の原型を歯茎の土台に乗せ、歯茎の上に乗せる歯の形・大きさを測定します。

咬合床による咬合採得によって噛み合わせが決定するため、総入れ歯作製において重要な流れです。この咬合床を元に入れ歯を設計し、入れ歯を作製したら実際に口内に装着し噛み合わせを確認します。

インプラント治療は人工歯根に上部構造を固定する治療法です。総入れ歯のように上顎・下顎どちらかを全てインプラントにする場合、オールオン4と呼ばれる4本の人工歯根のみで上部構造を支える治療法も存在します。

人工歯根を埋め込む場所をCTスキャンなどで血管・神経の位置を確認し、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる顎の骨に穴を開けます。

その部分に人工歯根を埋め込み、アバットメントと呼ばれる結合部を装着し上部構造を取り付けます。

手術の有無

検査写真

総入れ歯の場合、基本的に手術を行う必要はありません。歯茎の上に入れ歯を装着するため、土台となる部分の状況が悪い場合は手術が必要となります。

インプラントは人工歯根にアバットメント・上部構造をはめ込むため、そのための外科手術が必要です。

まず歯茎を切開し歯槽骨に穴を開け、人工歯根を装着します。人工歯根が骨と結合したら再度歯茎を切開し、アバットメントを取付け上部構造を取り付ける準備が完了します。

1回目の手術でアバットメントまで取り付け手術の回数を減らせる術式も存在するため、身体の負担を減らしたい場合は可能か相談ましょう。

治療にかかる期間

総入れ歯の治療が完了するまでの期間は歯科医院によって異なりますが、おおよそ1~3ヶ月かかります。

通院回数は型取り・噛み合わせの確認・試適・入れ歯の装着の計4回必要なことが多いです。微調整を細かくしたい場合、通院の回数はこれより増加します。

インプラントの場合、初診のカウンセリング・現在の口内環境を確認する診療・治療計画の立案など事前準備に時間がかかります。

その後手術を行い人工歯根を装着しますが、人工歯根が骨と結合するまでは3ヶ月~半年近くかかるため治療にかかる期間は総入れ歯より長いです。

人工歯根と骨が結合したら上部構造をはめ込み、治療が完了します。初診からはめ込みまでは早くて4ヶ月、長い場合は半年を超えることも珍しくありません。

寿命

総入れ歯の寿命は、歯に使われる素材によって異なります。入れ歯の寿命として10年生存率という考え方がありますが、10年後にも同じ入れ歯を使用できている割合は5割程度といわれています。

インプラント治療を受けた人の追跡調査では、10年以上同一のインプラントを使用している人は9割以上という結果が出ています。歯科医院・自宅でのメンテナンスを十分に行えば20年以上使えることも珍しくありません。

お手入れ方法

総入れ歯は取り外して義歯用のブラシを使用し、付着した汚れや細菌を取り除きましょう。手入れ中の落下や、汚れを強く擦って取ろうとすると入れ歯が欠ける場合があります。

また目視だけで確認できない汚れを取るため、夜間の間洗浄液に着けておくのも効果的です。

インプラントは通常の歯磨きに加えて、歯科医院で定期的な検診でインプラント歯周炎を防止することが重要です。

インプラントは歯茎の痛みを感じにくくなるため、歯周炎のリスクが高まります。

手術が完了し上部構造をはめ込んだ後も、数ヶ月に1度は通院を行いましょう。

審美性

笑顔の口元

総入れ歯の審美性は、使用する素材に影響されます。保険適用の場合歯の色がプラスチックと一目で分かったり、歯茎の色がピンクで入れ歯と分かりやすいなど審美性は低くなりがちです。

保険適用外の入れ歯を使用する場合、歯茎に被せる土台の色を調整できます。土台の素材もインプラントでも用いられるチタンや、レジンより薄くチタンより安価なコバルトクロムに変更できます。

インプラントは上部構造として使われるセラミックは天然歯と遜色ない見た目のため、審美性は非常に高いです。

審美性においてはインプラントの方が、総入れ歯より優れているといえるでしょう。

食べ物の噛み心地

総入れ歯になると、硬い食べ物やイカ・タコといった噛み切りにくい食べ物を噛むのに苦労するようになります。これは噛む力が天然歯と比べると10~20%までに下がるためです。

しかしあくまで天然歯だけだった頃より食べにくくなるだけで、小さく切ったり時間をかければ食べられます。柔らかい物ばかり食べるようになると、顎の骨が弱ったり口の筋肉が落ちてしまい危険です。>

インプラントは天然歯と同じような食事が可能です。噛み切る力も天然歯とほぼ変わらないため、食事を楽しみたいならインプラントが良いでしょう。

ただし歯ぎしりや食いしばりを頻繁に行うと、上部構造が欠ける場合があります。寝る際はマウスピースなどを装着するなど、上部構造を痛めない生活を心がけましょう。

総入れ歯とインプラントの費用の違い

説明する医師

ここまでは総入れ歯・インプラント治療の流れや、メンテナンス方法の違いについて解説してきました。ここからは費用面ではどのような違いがあるか解説していきます。

インプラントは原則自費診療ですが、総入れ歯は自費治療と保険治療の2種類が存在し、目的に合わせて選択が可能です。

保険治療の方が費用は安く済みますが、その分制限も多く満足した治療が受けられない場合があります。治療方法は慎重に選びましょう。

総入れ歯の費用相場

保険適用されるプラスチック総入れ歯の場合、保険適用される前の金額は約30,000円~40,000円(税込)です。ここから保険が適用されるため、3割負担なら約10,000~12,000円(税込)が費用相場となります。

保険適用外の場合、歯・歯茎に接着する土台部分の素材によって金額が異なります。主に使用されるのはコバルトクロム・チタンですが、コバルトクロムの方が比較的安価です。

>自由診療の総入れ歯は素材や歯科医院によって幅があり、300,000〜1,000,000円(税込)程度となっています。

インプラント費用の相場

インプラントの費用には人工歯根・上部構造の値段に加え、手術費用も含まれます。オールオン4インプラントにかかる費用は上顎・下顎どちらか一方につき、約200万~250万円(税込)です。

この金額のばらつきは上部構造に使う素材や、歯科医だけでなく麻酔医への依頼など治療に関わる人数が医院によって異なるためです。病院によって内訳の内容が異なるため、費用を見積もる際に確認を行いましょう。

総入れ歯とインプラントのメリット

サムズアップする医師

総入れ歯とインプラントはどちらも失った歯を補う治療法ですが、補うためのアプローチは大きく異なります。そしてメリットも異なるため注意が必要です。

総入れ歯とインプラントのメリットを把握することは、失った歯を補う際にどういった点を重要視して治療をするかを考える際重要になります。

まずは総入れ歯・インプラントそれぞれのメリットを確認し、自身が求める要素と照らし合わせるところから治療法を決定していきましょう。

総入れ歯のメリット

歯の模型を持つ医師

総入れ歯のメリットとしてまず挙げられるものは、保険適用が可能な点です。保険が適用されるのは歯の部分がレジンと呼ばれるプラスチックですが、失った歯を補うために十分な機能を備えています。

治療期間が短く、最短2ヶ月で治療が完了するのも特徴の1つです。総入れ歯自体は約1ヶ月で作製が完了し、その後は噛み合わせを確認しながら微調整を行います。

この微調整の期間を含めても3ヶ月程度で全ての治療が完了するため、失った歯を早く取り戻し仮歯を卒業したい人におすすめです。

医師に相談し、総入れ歯のメンテナンス方法を決定しましょう。

インプラントのメリット

インプラントのメリットは審美性の高さと天然歯に近い機能性です。インプラントの上部構造はセラミックを始めとしたさまざまな素材から選択でき、頑丈さや求める機能に応じて変更ができます。

噛む力は天然歯に近く、むし歯菌によって歯にダメージを受ける心配もありません。口内のメンテナンスは数ヶ月に1度歯科医院に通う以外は、これまで通りの歯磨きや歯間ブラシでケアが可能です。

また寿命も10年以上使えるケースは9割以上あり、歯科医院のメンテナンスと自宅でのセルフメンテナンス次第で20年以上使えます。何度も作り直す手間を省けるため、治療後の負担が少ないのも大きなメリットです。

総入れ歯・インプラントのデメリット

悩む女性

総入れ歯・インプラント治療はそれぞれメリットが存在しますが、同時にデメリットも存在します。治療中のデメリットや、治療が終わった後の日常生活におけるデメリットなど種類はさまざまです。

メリットの重点を置いて考えるか、デメリットに重点を置くかは人によって異なります。しかしメリット・デメリットをきちんと理解することが、納得のいく治療を受けるためには重要です。

ここからは総入れ歯・インプラントのデメリットをそれぞれ解説していきます。治療を受ける際の参考になれば幸いです。

総入れ歯のデメリット

歯茎の部分がレジンを使用した入れ歯は厚みがあるため、食事をする際に歯茎から感じる熱を受けにくいデメリットがあります。またその厚みにより噛みにくい・話しにくいと感じる人も少なくありません。

従来あった噛みにくい・頻繁に外す必要があるといったデメリットが解消された入れ歯も多く存在します。しかしこれらの要素を持つ入れ歯は保険適用外の場合が多く、総入れ歯のメリットである費用の安さが無くなってしまいます。

費用面と使用感の良さを両立するのが難しいため、妥協点を決め治療を受けましょう。

インプラントのデメリット

インプラント治療の最大のデメリットは費用の高さです。治療は原則自費治療である点に加え、総入れ歯と同じ本数をインプラントで行う際に費用が250万円(税込)を超えることは珍しくありません。

またむし歯になりにくいのがインプラントのメリットですが、インプラントの歯周病とも呼ばれる「インプラント周囲炎」になる可能性はあります。

インプラント周囲炎は放置するとインプラントの脱落に繋がるため、非常に危険です。

また糖尿病や病気などで顎の骨が脆くなっている場合、治療の難易度が上がるため医院によっては治療を断られる場合があります。

治療を受ける歯科医院の選択に時間がかかる可能性を念頭に置いておきましょう。

天然歯に近い噛み心地を求めるならインプラントがおすすめ

パソコンを持つ看護師

失った歯を補う際にこれまで通りの食事や使い心地を重視する場合、インプラントがおすすめです。天然歯と比べても噛む力とほぼ同じであり、治療前と治療後で違和感を少なく運用できます。

上記で取り上げた通りインプラント特有のデメリットも存在するため、インプラント医療を選択した際は数ヶ月に一度の通院を必ず行いましょう。

まとめ

カウンセリング

今回は総入れ歯とインプラントの違いについて解説してきました。どちらの治療にもメリット・デメリットが存在します

天然歯により近い治療法はインプラントであり、費用面や治療期間の短さに関しては総入れ歯が優れています。

重要なのは治療を行う際、どのメリット・デメリットを重要視するかです。これまでの生活や治療中どう過ごすかを考え、ご自身に合った治療法を選択しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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