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インプラント治療と認知症の関係性|認知症の方のインプラント治療について

インプラント 認知症

インプラント治療は失われた歯の代わりに人工の歯を装着する治療で、入れ歯の代わりとして高齢の方が受けるケースが目立ちます。

問題は、高齢者が罹患する認知症との関係です。

インプラント治療が認知症リスクにどのような影響を与えるのか、インプラント治療後に認知症を発症した患者さんとどのように向き合うかなどについて解説します。

インプラント治療の特徴

インプラントイメージ

インプラント治療について教えてください。
インプラント治療とは人工物を体内に埋め込むこと全般を指しますが、歯科分野でのインプラント治療はなくなった歯の代わりに人工の歯を入れる治療のことです。
まず、体になじみやすい材料でできたインプラント体を上顎もしくは下顎の骨に埋め込みます。インプラント体の材質としてはチタンやチタン合金が一般的です。次に、人工の歯を支える支台部をインプラント体の上に設置します。支台部の材質はチタンやチタン合金、ジルコニアなどです。最後に、支台部の上に人工の歯を取り付けます。人工の歯の材質として使用されるものはレジン・セラミック・金合金などです。チタン製のインプラント体を使ったインプラント治療が行われるようになったのは1950年頃からで、日本では1983年から行われています。
インプラント治療をするメリットを教えてください。
インプラント治療のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
  • 自分の歯のように噛める
  • 見た目が自然
  • 健康な歯を削る必要がない

入れ歯の場合、歯が顎の骨に接していません。そのためしっかりと噛みにくく、咀嚼時に違和感を覚えることがあります。インプラントの場合は人工の歯とはいえインプラント体が顎の骨に埋設されているので、噛んだときに自分の歯と同じような感覚が得られます。入れ歯は昔に比べると違和感がなくなっているものの、必ずしも自然な見た目になるわけではありません。インプラント治療は人工歯根を埋め込み人工の歯を被せるため、見た目も自然だと感じる方が多いでしょう。
また、なくなった歯を補完する方法としては入れ歯以外にブリッジもあります。インプラントのようにしっかりと噛める点が、入れ歯とは異なっています。しかし、ブリッジを装着するにあたって健康な歯を削らなければなりません。インプラント治療はそのようなことはなく、健康な歯は削らない治療法です。

インプラント治療をするデメリットを教えてください。
一方、インプラント治療には以下のようなデメリットもあります。
  • 健康保険の適用外で金銭的負担が大きい
  • 外科的治療が必要となる
  • 定期的なメンテナンスが欠かせない

インプラント治療は基本的に健康保険の適用外なので、医療費を全額自己負担しなければなりません。保健診療のように一部だけを支払うというわけにはいかないので、金銭的負担が大きくなります。また、インプラント治療はインプラント体を顎の骨に埋め込むものです。このときには手術が必要ですし、治療に時間がかかります。さらに、インプラント治療を受けた後は定期的なメンテナンスが必要です。放置しているとインプラント周囲炎を起こし、顎の骨に悪影響が出るというリスクがあります。

インプラント治療を受けるための条件はありますか?
インプラント治療を受けるにあたって、以下の点についてチェックが行われます。
  • 成長期が終わっているか
  • 全身疾患の有無と現状
  • 金属アレルギーの有無

インプラント治療は顎の骨の成長が止まっている成人を対象としており、成長期の人には行われません。
全身疾患については高血圧・心疾患・糖尿病・骨粗鬆症の有無のチェックが行われます。インプラント体を埋め込んだ後、顎の骨にうまくくっつかないといったトラブルが発生するリスクがあるためです。またチタンは金属アレルギーが出にくいとされていますが、それでもアレルギー症状が出る人はいるので注意が必要です。アレルギーが心配な人はインプラント治療を行う前にパッチテストを行い、金属アレルギーの有無を確認しましょう。

認知症とインプラント治療の関係性

歯ブラシを持っているおばあちゃん

インプラント治療が認知症リスクに与える影響を教えてください。
インプラント治療のメリットのひとつは、入れ歯に比べてしっかりと噛めることです。実は認知症リスクのひとつに、しっかり噛めないことがあります。歯があまり残っていなくてしっかりと噛めない人は、咀嚼が十分にできる人と比較して認知症リスクが高いのです。
また入れ歯などを使っていない人は、使っている人より認知症リスクが高くなります。インプラント治療を行ってしっかりと噛めるようになれば、認知症リスクのひとつは排除できるようになるのです。これらの点から、インプラント治療は認知症予防につながるとして期待が持たれています。
認知症リスクを抱える高齢患者さんの診療と治療について教えてください。
インプラント治療による認知症リスクの低下が期待されていますが、高齢者への治療ガイドラインは確立されているとはいえません。認知症だけでなく、以下の点についてもリスクのある患者さんがいるからです。
  • 全身疾患
  • 骨の強度の低下
  • 長時間の手術への耐性

全身疾患のなかには糖尿病のように、インプラント治療の予後に関わるものがあります。骨粗鬆症などで骨の強度が下がっていると、インプラント体と顎の骨がくっつきにくいとされています。
また高齢者は同じ姿勢を取り続けることが難しく、長時間の手術が難しいケースもあります。ガイドラインが確立されていないのは、これらの事情によるものです。そのため、患者さんに合わせた方法を選択するプレシジョンインプラント治療を行うことなどが提唱されています。

インプラント治療後に認知症になったらどうなりますか?
インプラント治療後に認知症を発症した場合、問題になるのは治療後のメンテナンスです。メンテナンスが不十分だとインプラント周囲炎のリスクは大きくなりますが、認知症の患者さんは自分がインプラント治療を行ったことを覚えていないケースがあるのです。医療行為そのものも、認知症を発症していない人よりも困難になります。認知症の患者さんがインプラント周囲炎を発症し、顎の骨が壊死してしまった臨床例も報告されているのです。

認知症の人がインプラント治療をする場合の注意点

シニア男性と虫歯

インプラント治療は老後に適していますか?
インプラント治療によってしっかりと噛めるようになれば、認知症のリスクは低下します。また、しっかりと噛めるようになることで食事がしっかりと摂れるのもメリットです。
食事が十分にできれば、栄養状態の良化にもつながります。そのようなメリットを考慮すると、インプラント治療は老後に適した医療行為だといえるのです。ただし、高齢になってからのインプラント治療は、顎の骨の強度低下をはじめとするリスクと背中合わせのため難しいことがあります。このため、医療機関においては患者さんに合わせた治療を行うよう心がける必要があります。
認知症の人がインプラント治療をする場合の注意点を教えてください。
認知症の患者さんがインプラント治療を行っている場合の注意点は、いかにしてスムーズにインプラント治療後のメンテナンスを行うかです。メンテナンスが不十分だとインプラント周囲炎のリスクは高くなり、顎の骨に悪影響を与えかねません。
しかし医療機関に行くにも介護が必要な認知症の患者さんの場合、介護を行っている人への負担も問題です。訪問歯科診療を利用してメンテナンスを行うなど、介護を行う人への負担を減らす方法も考慮すべきだといえます。
インプラント治療がほかの持病に与える影響はありますか?
心臓病の治療のためペースメーカーや人工弁などの人工物を体内に埋め込んでいる場合、インプラント治療による感染性心内膜炎のリスクがあります。
インプラント治療は外科的治療のため、菌血症を誘発する可能性があります。血液内の細菌が心臓病治療のための人工物に感染し、感染性心内膜炎を引き起こしかねません。特に歯周病も罹患している患者さんは、リスクが高くなります。
医療機関は患者さんが人工物を埋め込んでいるかどうかを把握し、埋設している場合には細心の注意を払って手術を行わなければなりません。

編集部まとめ

病院にいる医療スタッフ(3人)

インプラント治療によってしっかりと噛めるようになることで、認知症リスクの低下が期待できます。栄養状態の改善も見込めるでしょう。

老後の健康を考えるならば、インプラント治療は効果的だといえます。健康保険の適用外ですが、費用に見合うと判断すれば治療を検討してもよいでしょう。

ただし、認知症になった場合にはメンテナンスをどうするかが課題となります。治療を受けるにあたり、事前に家族と相談しておくことがおすすめです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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