インプラント

インプラントの失敗率は?よくある失敗・原因・対処法を解説

インプラント 失敗率

歯科治療の中でも希望する人が増加傾向にあるのがインプラントです。見た目が美しくて丈夫であるなどの理由から、希望する人は増えています。

しかし、インプラント治療は失敗することがあるのも事実です。失敗と聞くと怖いと思う人・インプラント治療を考え直す人もいるでしょう。

失敗の原因・歯科医院選びなどを知っていれば、失敗のリスクは回避できるかもしれません。

ここでは、インプラント治療の失敗率について解説します。主な失敗例・原因・対処法・病院の選び方についても紹介するので、参考にしてみてください。

インプラントの失敗率は?

インプラントの失敗率とは

インプラントの失敗率は、手術全体における具体的な数字として公式に発表されていません。

しかし、成功率については90%台といわれています。このことから失敗率は数%と予想されているのが現状です。

失敗率が正式に発表されていないのには理由があります。それは、どのような状態を失敗と認識するかが異なっているからです。

例えば、2007年に東京都のとあるクリニックでインプラント治療による死亡事故が発生しました。原因はフラップ手術の際に起きた動脈損傷です。

適切に対応しきれず、1人の尊い命が奪われてしまった痛ましい事故でした。このような死亡事故は、国内では数えるほどしか報告されていません。

その一方で、インプラントの緩み・人工歯の破損などは数多く報告されています。しかし、これらの多くは失敗と認識されていないかもしれません。

その理由は対処が可能だからです。適切に対処すればほぼ元の生活に戻れるため、失敗と認識されていない可能性があります。

これらの理由から、正確な失敗率については不明といえるでしょう。

ただし、インプラント治療後の不具合についてはそのほとんどが対処可能です。また、適切な歯科医院を選ぶことで回避もできます。

後述で具体的な失敗例はもちろん、対処法・適切な歯科医院選びについても紹介するので参考にしてください。

インプラント治療でよくある失敗

主な失敗例は

多くの歯科医院で報告されているインプラント治療の失敗は、どこも似ています。主な失敗例は過去の4つです。

  • インプラント体と骨の結合不足
  • インプラント周囲炎
  • 痛み・腫れの継続
  • インプラントが取れる

それぞれの失敗例について解説するので、失敗が怖い・不安という人も含めて参考にしてください。

インプラント体がうまく骨と結合しない

骨が接合していない

インプラント体と骨の結合不足は、治療後に報告されている失敗例の1つです。

インプラントは、手術で歯茎の中にインプラントを埋入します。時間が経てば埋入したインプラントと顎の骨が結合して安定するのが一般的です。

しかし、埋入したインプラントが顎の骨と結合しないケースが見られます。その場合、インプラントが安定せずにグラグラするでしょう。

歯の噛み合わせも悪くなるので、咀嚼しにくいなど日常生活に支障をきたします。

インプラントと骨の結合の不具合は、すぐに確認できないこともあります。インプラントと顎の骨の結合には時間がかかるため、手術後1~3ヵ月程度経ってから判明する場合もあります。

インプラントの治療を受けてからグラグラするなどの違和感があれば、長い時間が経過していても歯科医院を受診してください。

インプラント周囲炎が起こる

インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の骨が溶けて抜ける症状のことです。

インプラント周囲炎により骨が溶けると、粘膜がやせて金属部分が露出してくるでしょう。また、周囲から膿がでてくることもあります。

天然歯に比べてインプラントは細菌に感染しやすいので、インプラント周囲炎を引き起こしてしまうのです。 なお、インプラント周囲炎は手術を行ってからすぐに発症することは少ないです。

多くの場合は数年後に症状があらわれるでしょう。 インプラントは治療を終えてからもメンテナンスが欠かせません。かかりつけ歯科医院で、定期的に検診を受けてください。

痛みや腫れが続く

腫れや痛みが引かないことも特徴

痛みや腫れが続く場合も、失敗している可能性があるため危険です。

インプラントは歯科における手術のため、治療直後に痛み・腫れの症状が出ることはあります。しかし、多くの場合は短期間でなくなるでしょう。

また痛み・腫れの度合いは人によってさまざまなので、治療後に痛み止めが処方されます。服用すれば治まるケースがほとんどです。

ただし、長期間の痛み・腫れや痛み止めを服用しても治まらない場合はかかりつけ歯科医院を受診しましょう。失敗の可能性が否定できないからです。

インプラントは歯の内部の治療なので、外側からはわかりにくいデメリットがあります。不安・違和感がある場合は、早めに歯科医院を受診してください。

インプラントが取れてしまう

インプラントが取れてしまうのも、失敗例の1つです。

インプラントは適切な治療・メンテナンスの継続で長期間利用できます。

しかし、使っている間にインプラントが取れてしまうこともあります。原因としては上部構造を固定しているネジの緩みやインプラント周囲炎などが考えられるでしょう。

インプラントで用いられるネジは緩むことがあるので、定期的な検診でネジの緩みをチェックする必要があります。

インプラントが取れてしまう症状は、治療から数年後に見られることもあります。数年経ってからグラグラしたら、使用期間に関係なく歯科医師に相談してください。

インプラント治療で失敗する原因

インプラントで失敗する原因とは

インプラント治療で失敗する原因は、ある程度はわかっています。原因がわかれば、対処方法も明確になるでしょう。主な失敗の原因は下記の5つです。

  • 不十分な治療計画
  • インプラント埋入不備
  • 不十分な歯周病治療
  • メンテナンス不足
  • 不十分な衛生管理

それぞれの失敗の原因について解説するので、参考にしてください。

手術前の検査や治療計画が不十分

インプラント手術を行う前に、検査・治療計画が十分行われていないと失敗のリスクが高まります。主な術前検査は下記の4つです。

  • 健康状態の問診
  • 口腔内検査
  • レントゲン・CT撮影
  • 歯型の採取

上記4つの中でも、術前検査における健康状態の問診は欠かせません。糖尿病などの疾患がある場合はインプラント治療が困難になるからです。

そして口腔内検査では、歯周病の状態やむし歯の有無などを調べます。歯周病はインプラント治療にも影響があることが分かっていますので、事前の検査が必要です。

インプラント治療前の歯周病治療が不十分な場合、インプラント周囲炎を発症するリスクが高まります。インプラントは細菌に感染しやすいという特徴があるからです。

次にレントゲン・CT撮影で、顎の骨の状態を確かめます。インプラントは顎の骨に埋め込むため、十分な厚みがあるか確認しなければいけません。

もし顎の骨が十分ない場合は、骨を作る必要があります。顎の骨の厚みが不十分な状態でインプラントをすると、外れる可能性があるからです。

歯型の採取は、インプラントを埋め込むシミュレーションのために行います。どれくらいの大きさのインプラントを使用するかなど確認するためです。

これらの術前検査を行った後、具体的な治療計画を立てます。インプラントの埋入位置の決定には、ある程度時間がかかることがあるので注意しましょう。

インプラントが適切に埋め込まれていない

インプラントが適切に入っていない可能性も

失敗の原因として、インプラントが適切に埋め込まれていない事例も挙げられます。インプラントは埋め込む際、位置・深さなどを適切に見極めなければいけません。

ここを誤ると、インプラントに過剰な噛み合わせの力がかかったり、感染のリスクとなったりすることがあるからです。

また、インプラントを埋め込む際の処置にも注意が必要です。

インプラント手術の際に使用するドリルと骨が過剰にこすれてしまい、周囲の骨がやけどをすることがあります。

これをオーバーヒートといい、骨へのダメージが原因でインプラントの結合を妨げる可能性があります。

メンテナンスが不十分

メンテナンスも丁寧に

メンテナンスが不十分な場合も、インプラントの失敗率が高くなります。不十分なメンテナンスは、感染リスクを高めるからです。

治療後は、正しい歯の磨き方の指導があるかもしれません。日常的な歯磨きで、一定の感染リスクは抑えられるからです。

しかしそれだけでは不十分であり、歯科医院での定期検診も欠かせません。歯垢・歯石の除去も並行して行なう必要があるからです。

歯科医師による定期的なクリーニングは、インプラントを長持ちさせる役目を担っています。歯ブラシの届きにくい場所は、歯科医師の助けが必要です。

インプラントは治療が終わればおしまいではありません。定期的な検診・クリーニングが欠かせないので、気をつけましょう。

インプラントが適切に埋め込まれていない

衛生管理が不十分な場合、インプラントの失敗率を引き上げる原因になります。

インプラントの治療を行う際には、徹底した衛生管理が必要です。多くの歯科医院では、衛生管理のために新しい設備を取り入れています。

インプラントは感染しやすいというデメリットがあるため、衛生管理には細心の注意を払わなければなりません。

十分な衛生管理がなされていない歯科医院でインプラント治療を行った場合、術後に不具合が生じるなどのリスクが高くなります。

インプラント手術が失敗した場合の対処法

失敗したときの対処法は

インプラントの失敗例と原因について解説してきました。このようなインプラントの失敗があった場合、どのように対処すればよいのでしょう。

主な対処法として2つがあげられます。

  • 手術を受けた歯科医院に相談
  • 別の歯科医院に相談

それぞれの対処法について解説するので、参考にしてください。

手術を受けた歯科医院に相談・再手術する

インプラント手術が失敗した場合、手術を受けた歯科医院に相談・再手術をする方法が一般的です。その理由として下記の2つがあげられます。

  • 一度手術を受けているので安心
  • 保証内での治療が可能

手術を受けた歯科医院なら、失敗の原因がわかるので手術などの対応も素早いでしょう。術前検査・問診などのデータも残っているので安心です。

また、歯科医院によっては同じ場所の再手術にあたるので保証内で治療を行ってくれるところもあります。

ただし、この場合はすべての歯科医院で対応しているわけではないので確認が必要です。

別の歯科医院に相談・再手術する

インプラントに失敗したら、別の歯科医院に相談・再手術を依頼することも考えましょう。主なメリットは別の方法を提案してもらえる点です。

歯科医院の中にはインプラントを除去せずに治療してくれるところもあるので、探してみるとよいでしょう。

ただし、別の歯科医院に相談・再手術を依頼する場合は新たな費用が発生します。

一度手術を受けた歯科医院なら、保障の範囲内で再手術が受けられるかもしれません。しかし、別の歯科医院の場合は別に費用が掛かります。費用の相場は30~50万円(税込)ほどだそうです。参考にしてみてください。

インプラントは費用が高くなる治療なので、別の歯科医院に相談・再手術を依頼する場合はよく考えたほうがよいでしょう。

喫煙をしている場合には失敗率が高くなる?

喫煙はやめましょう

喫煙が歯周組織に与える影響について論文が発表されています。対象者は非喫煙者と喫煙者で、喫煙者はヘビースモーカーとそれ以外にわけた研究です。

喫煙者と非喫煙者のインプラント埋入後の生存・合併症については、全体での失敗率は2%でしたが、喫煙者だけに注目した場合の失敗は4%と2倍でしたという結果が得られています。

また合併症発症率については非喫煙者では31%でしたが、喫煙者では46%と高い数字でした。

さらにインプラント治療を行った患者さんについて、5年以上の追跡調査も行われています。

すると、非喫煙者の成功率は98.6%と高い数字であったのに対し、喫煙者は84.2%という結果でした。

さらに喫煙者のなかでもヘビースモーカーとそれ以外の喫煙者の失敗率の比較では、ヘビースモーカーのほうが失敗率は3倍高かったとのことです。

以上のことから、喫煙をしている場合は非喫煙者に比べてインプラントの失敗率が高いといえるでしょう。

インプラントで失敗しないための歯科医院の選び方

歯科選びは大切

インプラントで失敗しないためには、歯科医院選びが欠かせません。適切な治療・手術を行ってくれる歯科医院なら失敗のリスクは下がるでしょう。

歯科医院の選び方の主なポイントは下記の2つです。

  • インプラントの専門知識の有無
  • デメリットの説明の有無

これらのポイントについて解説するので、参考にしてください。

インプラントの専門知識を持った歯科医院を選ぶ

インプラントを失敗しないよう歯科医院を選ぶために、症例数や日本口腔インプラント学会認定医として専門知識を持つ歯科医師を見つけることは、最善の治療を行うためのメリットといえます。

重要なのは、インプラントの専門知識の有無です。インプラントは一般歯科とは異なるため、特別な知識・技術を必要とします。

主なチェックポイントは下記の2つです。

  • 症例数
  • 日本口腔インプラント学会認定医

過去にどのようなインプラントに関する治療を行ったのか確認すると良いでしょう。

ただし、症例数が多ければ良いというわけではありません。専門知識の有無を確認する際の参考程度にしてください。

日本口腔インプラント学会では、指定施設での研修・学会主催の研究会・筆記試験・面接試験を行っています。

これらをクリアし、知識・スキルともに認められた歯科医師は認定医を名乗ることが可能です。プロフィール・経歴などで確認できるため、参考にしてみてください。

デメリットも含めて詳しい説明をしてくれる歯科医院を選ぶ

デメリットの説明の有無も重要なチェックポイントといえるでしょう。

インプラント治療はメリットばかりではありません。継続的なメンテナンスの必要性・コスト面・失敗のリスクなどのデメリットもあります。

継続的なメンテナンスは、インプラント治療を受けたら歯科医院に通院し続けなければいけません。そのためには費用も掛かります。

また、加齢によって顎骨が細くなるなどの原因でインプラントが不安定になる可能性があるのも事実です。

これらのデメリットについても詳しい説明があり、人として信頼できると思える歯科医師のもとで治療を受けることが重要です。

まとめ

インプラント 失敗率 まとめ

インプラントの失敗率について解説してきました。

日本でのインプラントの成功率は高いといえるでしょう。しかし確率は低いとはいえ、失敗例があることも事実です。

またインプラントは自由診療のため、例えば治療費もある病院だと43万円(税込)程度となり高額に設定されています。

上記の件に加え、さらに失敗例との天秤がかけられハードルが高く感じるかもしれません。

しかし治療費を有効に使うため、加えて失敗率を下げるためにできることはあります。

インプラントの失敗率を下げるためには、適切な歯科医院選びと日頃のメンテナンスが欠かせません。

インプラントは手術をすれば終わりというものではなく、継続的な検診・日頃の口腔内の清潔保持が必要です。

正しい知識を持ってインプラント治療を行ってください。知識を得ることも、インプラントの失敗率を下げることに役立つでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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