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インプラントの治療で使用されるヒーリングキャップとは?治療の流れやよくあるトラブルを解説

インプラントの治療で使用されるヒーリングキャップとは?治療の流れやよくあるトラブルを解説

インプラント治療ではさまざまなパーツが使用され、そのなかの一つにヒーリングキャップと呼ばれるものがあります。
この記事では、ヒーリングキャップがどのような目的で使用されるのかや、インプラントの治療法の種類、そしてヒーリングキャップでトラブルがあった場合の対処法などを解説します。

インプラント治療で使用されるヒーリングキャップとは

インプラント治療で使用されるヒーリングキャップとは

インプラント治療の過程で使用されることがあるパーツの一つが、ヒーリングキャップと呼ばれるものです。
ヒーリングキャップは、インプラント体にアバットメントが接続された後や、ワンピースタイプでの治療を行う際に、仮歯や上部構造の装着まで期間が空いてしまうケースで利用されます。
まずはヒーリングキャップの役割や使用されるタイミング、そしてヒーリングキャップがどのような素材で作られているのかなどを紹介します。

ヒーリングキャップの役割

ヒーリングキャップの主な役割は、アバットメントの内部に汚れが入り込んでしまったり、アバットメントが傷ついてしまうことを防ぐというものです。 インプラント治療は、骨と結合させたインプラント体にアバットメントを接続し、そこに上部構造を装着するという方法で行いますが、アバットメントを接続してから上部構造を装着するまでに時間が空いてしまうことがあります。
装着したアバットメントがそのまま露出した状態になっていると、食べかすなどによってアバットメントが汚れたり、傷ついたりして、治療の質が低下してしまう可能性があります。
アバットメントの上にヒーリングキャップを被せておくことで、アバットメントの汚れや損傷を防ぎ、良好な状態のまま治療を進めやすくなります。 また、インプラント体とアバットメントが一体型になった、ワンピースタイプのパーツを使用して治療を行う場合も、ヒーリングキャップを使用することがあります。
ワンピースタイプのパーツを使った治療の場合、インプラント体を埋め込む手術の後は、インプラント体や切開部位が露出した状態のままになります。
この状態をそのままにしておくと、患部が刺激を受けやすく、回復が遅くなってしまうほか、細菌感染のリスクなども高まってしまいますので、ヒーリングキャップを使用することで治療部位を保護します。
ヒーリングキャップは周囲の歯が倒れこんでくるのを防ぐ役割もあり、適切に活用することで治療を円滑に進めやすくなります。

ヒーリングキャップが使用されるタイミング

ヒーリングキャップが使用されるタイミングは、2回法であれば2回目の手術の後、1回法であれば1回目の手術の後です。
インプラント体にアバットメントが接続されてから、上部構造を取り付けるまでの間には、歯肉の回復を待ったり、上部構造を作るために時間がかかるため、この期間をヒーリングキャップでカバーします。 なお、治療の方法によってはアバットメントを接続した後すぐに仮歯が設置され、ヒーリングキャップは使用されないこともあります。
特に、1回法の場合はインプラント体が露出している状態が長くなってしまいますが、インプラント体の埋め込みと同時に仮歯を装着する即時荷重と呼ばれる治療を行うことで、インプラントの手術直後から仕上がりに近い見た目を実現できます。

ヒーリングキャップの素材

ヒーリングキャップは、主に樹脂製の素材や、チタンなどの素材で作られています。
これらの素材は金属アレルギーのリスクが低く、長時間口腔内に設置されていてもトラブルを引き起こしにくいことが利点です。

インプラントのアバットメントとは

インプラントのアバットメントとは

ヒーリングキャップは、インプラント治療で使用されるアバットメントというパーツに装着されます。
そもそもアバットメントがどのような役割のパーツなのかなどを解説します。

アバットメントとは

インプラント治療は、顎の骨に埋入するインプラント体と、白い歯の部分である上部構造(被せ物)、そしてインプラント体と上部構造を接続するためのアバットメントというパーツで行われます。 インプラント体に直接上部構造を接続するのではなく、アバットメントを使用することで、インプラント体の埋入時に角度がついてしまうなどした場合でも、アバットメントで微調整して上部構造をまっすぐに取り付けられるといったメリットがあります。 また、硬いものを噛んだり、歯ぎしりをしたりして歯に強い負担がかかった場合にインプラントのパーツが損傷してしまう可能性がありますが、アバットメントを使用していればその負担がインプラント体までかかりにくくなり、インプラント体の損傷を防ぎやすくなります。
インプラント体が損傷してしまうと再度手術が必要になってしまいますが、アバットメントまでの損傷であればパーツを取り換えればすぐに回復できるため、トラブルのリスクを抑えるという意味でもアバットメントは有効です。

インプラントのワンピースタイプとツーピースタイプ

インプラントには、ワンピースタイプとツーピースタイプと呼ばれる2つの種類があります。
一般的によく使用されるのはツーピースタイプで、これは上記で紹介しているような、インプラント体とアバットメントが分かれ、二つのパーツになっているものです。
2回法とよばれる、切開を伴う手術を2回行う方法で治療が行われることが多くなっています。
2回法は、1回目の手術でインプラント体を骨に埋入させ、歯肉を覆った状態で一度縫合してから、インプラント体と骨が結合するのを待ち、2回目の手術でインプラント体にアバットメントを装着して、歯肉の状態が落ち着いたら上部構造を取り付けます。
一方、ワンピースタイプは、インプラント体とアバットメントがわかれていないもので、1回法と呼ばれる方法で治療が行われます。
1回法は、最初の手術でインプラント体を埋め込んだ後、歯肉で覆わずにインプラント体が露出した状態で過ごし、インプラント体と骨の結合が完了したら上部構造を取り付けるというものです。 ツーピースタイプのパーツで1回法の治療が行われることはありますが、ワンピースタイプのパーツでは2回法の治療は行えません。
なお、上述のようにヒーリングキャップは1回法と2回法のどちらでも使用される場合があります。

1回法の治療のメリットとデメリット

1回法の治療のメリットは、手術の負担が少ないことです。
歯茎を切開する手術が1回だけですむため、通院回数が抑えられますし、何度も手術を受けたくないという方にとっては精神的な負担の軽減にもなります。
また、インプラント体と骨の結合が完了すればすぐに上部構造を取り付けられるため、治療期間を短縮できる点もメリットといえます。 さらに、1回法であれば、即時荷重という方法にも対応できる場合があります。即時荷重はインプラントと骨の結合を待たず、手術後にすぐ仮歯を装着するという治療法で、仮ではありますがすぐに歯を入れることができるため、治療中も見た目などを良好に保ちやすくなります。
あくまでも仮歯なので硬いものを噛むといった行為はできませんが、なるべく歯がない期間を作りたくないという方にとっては便利な治療法といえるでしょう。 一方、デメリットとしては手術後にインプラント体が露出した状態になるため、細菌感染などのリスクが生じる点や、そもそも骨の量や周囲の歯の状態などによっては、1回法での治療が難しいという点があります。

2回法の治療のメリットとデメリット

一般的に、インプラント治療は2回法で行われることが多いのですが、その大きな理由として、安全性に配慮した治療を行いやすい点が挙げられます。
2回法での治療は、インプラント体が骨に結合するまで歯肉で覆われた状態にするため、インプラント体の周囲に細菌が感染するリスクを抑えることができます。
これにより、インプラント体と骨の結合をしっかりと行いやすく、良好な治療結果を獲得しやすいといえます。
また、骨の厚みなどの関係で、1回法では充分な初期固定を得ることが難しいような症例において、2回法であれば骨造成を行って対応できる可能性があるといったメリットもあります。 デメリットは手術を2回行うため通院などの負担が1回法と比べて大きいことや、即時荷重のような方法が対応できないことなどです。

インプラント治療の流れ

インプラント治療の流れ

インプラント治療は、下記のような流れで行われます。
1回法と2回法では手術から人工歯(上部構造)の装着までの流れが異なりますので、それぞれのパターンにわけて紹介します。

検査と治療説明

インプラント治療はまず、精密な検査で治療が可能かどうかを調べることからはじまります。
インプラント治療は骨にパーツを埋め込み固定するため、顎の骨の量が不足していると、治療を適切に行うことができません。そのため、CTなどで詳しく骨の状態などを検査し、治療を行うために充分な骨の厚みや量があるかなどを調べます。 なお、骨の量が少ないために治療の適応がないという場合でも、骨造成という、骨の量を増やす治療を行うことで、インプラント治療が可能になる場合があります。 精密な検査の後は、お口の状態や選択可能な治療方法などの説明が行われ、提案された治療内容に納得ができたら、契約をして治療に進むというのが一般的な流れです。

1回法の手術から人工歯の装着まで

1回法の手術は、麻酔をして痛みを抑えたうえで、歯茎を切開し、顎の骨にインプラント体を埋め込んだら、そのままインプラント体が露出した状態で終了します。 ただし、そのままインプラント体だけが露出していると汚れが付着したり、インプラント体が傷つきやすくなってしまうため、ワンピースタイプでの治療の場合はヒーリングキャップを取り付け、ツーピースタイプの場合はヒーリングアバットメントというパーツを装着します。
ヒーリングキャップやヒーリングアバットメントはインプラント体へのダメージを防ぐと同時に、歯肉の回復を補助したり、隣の歯が倒れこんできてしまうのを防ぐという役割があります。
なお、即時荷重の場合はヒーリングキャップを使用せず、仮歯が取り付けられます。 一定期間が経過してインプラント体と骨の結合が完了したら、後は型取りをして上部構造を作り、アバットメントや上部構造を装着して治療が完了となります。

2回法の手術から人工歯の装着まで

2回法は、1回目の手術で顎の骨にインプラント体を埋入させた後、インプラント体の穴を塞ぐスクリューカバーなどを取り付け、インプラント体を覆うように歯肉を縫って保護します。 その状態で一定期間を過ごし、インプラント体と骨の結合が完了したら、再度歯肉を切開してアバットメントを取り付ける2回目の手術を行い、型取りを行って上部構造を作ります。 2週間ほどが経過し、2回目の手術の傷が落ち着いたら、上部構造を取り付けて治療が完了します。
2回目の手術後から上部構造を取り付けるまでの間は、ヒーリングキャップを使用してアバットメントなどを保護します。

インプラント治療後のケア

以上でインプラント治療は終了しますが、インプラントは進行の早い歯周病のような症状であるインプラント歯周炎などのリスクもあり、長く歯を使い続けるためには、しっかりとケアを行うことが大切です。
自宅での歯磨きなどによるケアはもちろんですが、それだけでは落としにくい汚れなどもありますので、しっかりと定期的に歯科医院に通って、専門的なクリーニングを受けましょう。
定期検診を受けることで、万が一トラブルが生じても早い段階での対応が可能であり、長期的にインプラントを使い続けやすくなります。

ヒーリングキャップ使用中によくあるトラブルと対応方法

ヒーリングキャップ使用中によくあるトラブルと対応方法

ヒーリングキャップを使用している最中には、下記のようなトラブルが生じる場合があります。それぞれの対処法などを紹介します。

ヒーリングキャップが外れた

ヒーリングキャップは上部構造を取り付けるまでの一時的なパーツなので、強固に接続されているわけではありません。そのため、何らかの衝撃などによって外れてしまうことがあります。
ヒーリングキャップが外れてしまったからといってインプラント治療が失敗に終わるというわけではありませんので、焦らずまずは主治医に相談しましょう。
注意点として、外れたヒーリングキャップを無理矢理に自分で取り付けようとすると、ほかのパーツが損傷してしまう可能性などもありますので、自分でつけ治すような行為はやめておきましょう。なるべく早く歯科医院で適切な対応を受けることが大切です。

ヒーリングキャップが損傷した

ヒーリングキャップは樹脂製などのやわらかい素材で作られることもあり、強い力がかかると損傷してしまう可能性があります。この場合も、やはり早めに歯科医院に相談することが大切です。

治療部位の周囲に炎症が生じた

インプラントを埋め込んだ周囲に炎症が生じた場合、ヒーリングキャップに限らず、何かしらのトラブルが生じている可能性があります。
炎症が悪化してしまうとインプラント治療に問題が出てしまう場合もありますので、早めに歯科医院を受診して、検査や治療を受けるようにしましょう。

まとめ

まとめ

ヒーリングキャップは、上部構造を取り付けるまでの間、インプラント体やアバットメントを保護するためのパーツです。
1回法と2回法それぞれで使用されるケースがありますが、治療法によってはヒーリングキャップを使用せずに仮歯が装着されることもあります。
ヒーリングキャップは、治療中に外れたり損傷したりというトラブルが生じることもありますが、そういった場合は、早めに主治医に相談し、適切な対応を受けることが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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