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インプラント治療の身体への影響|リスク・注意点も解説

インプラント治療の身体への影響|リスク・注意点も解説

インプラント治療が、身体にどのような影響を与えるかご存知ですか?

自分の歯に近い感覚で噛めるのがインプラント治療の大きなメリットですが、手術によって思わぬ悪影響がでることも少なくありません。

インプラント治療の悪影響や、期待と違った結果によってトラブルになってしまう前に、患者さん自身でも十分な知識を持っておきましょう。

この記事では、インプラント治療で知っておくべき以下の内容を解説します。

  • インプラント治療の身体への影響
  • インプラント治療のリスク
  • インプラント治療のリスクファクターとなる全身疾患

インプラント治療のメリット・デメリットを把握して、適切に判断する参考になれば幸いです。

インプラント治療の身体への影響

治療中の医師

インプラント治療の特徴を教えてください。
インプラント治療は、歯を失った部分の骨に金属製の土台(インプラント体)を埋め込んで、強く固定された人工歯を取り付ける治療方法です。
失った歯を補う治療を欠損補綴治療(けっそんほてつちりょう)といい、主な補綴方法はインプラント治療・ブリッジ治療・取り外し可能な入れ歯治療の3つがあります。
取り外し可能な入れ歯治療は費用が安く、治療の負担も少ない一方で、不安定で食事や発音の快適性が大きく低下します。
ブリッジ治療は隣の歯に架橋して人工歯を支えるため、安定感はありますが健康な隣の歯を大きく削らなくてはいけません。インプラント治療は骨に土台を埋め込むため、健康な歯を削らずに強い安定感を得られるのがメリットです。
インプラント治療のデメリットは、保険適用外であるため費用が高額になることで、1本あたり300,000~500,000円(税込み)が相場となります。
インプラントの外科的手術はどのくらいの時間がかかりますか?
インプラント治療の手術にかかる時間は、土台を埋め込む部位や骨の状態などによって大きく異なります。インプラント体を埋め込む部分の骨が少ない場合は、骨造成手術などが必要になるため、手術時間も長くなります。
特に問題がない場合は、インプラント体を埋め込む手術は1時間程度で終わることがほとんどです。
インプラント手術には1回法と2回法があり、それぞれ手術にかかる時間も異なります。インプラント体と人工歯を接続する部品をアバットメントといい、アバットメントの交換の有無が1回法と2回法では異なります。
2回法では、インプラント体を埋め込んで骨に固定されてから、アバットメントを装着する手術が必要です。2回法は骨の治癒不全や感染のリスクが低いのがメリットで、2回目の手術は10分程度で終了します。
インプラント治療の身体への影響を教えてください。
インプラント治療で装着した人工歯は、自分の歯に近い感覚で使用できるのが大きなメリットです。歯の本数と健康寿命には強い相関関係があります。
インプラント治療で歯を補うメリットは、全身の健康にも大きな影響を与えることです。一方で、インプラント治療に起因する症状が全身に影響を及ぼすことも少なくありません。
インプラント体の周囲で感染が生じ、インプラント周囲炎となると、慢性的な痛みによって生活の質が大きく低下します。
インプラント治療は金属製の土台を骨に埋め込む侵襲性の高い手術であるため、全身の状態が良くない患者さんの場合は慎重な管理が必要です。

インプラント治療のリスクは?

CT画像検査

インプラント治療にはどのようなリスクがありますか?
インプラント治療では、インプラント体を自分の歯の歯根と同じように骨に埋め込む手術を行います。
人工のインプラント体は天然の歯根に比べて免疫機能が働かないため、感染に極めて弱くなるリスクがあります。
むし歯や歯周病がある場合には、先に治療してからでないと原則インプラント治療はできません。手術自体も侵襲性の高い手術となるため、麻酔の制限や治癒不全の可能性が高い患者さんには適応できない場合があります。
インプラント治療の合併症を教えてください。
インプラント治療では、歯肉を切開して骨にインプラント体を埋め込んだ直後に、患部で強い炎症が起きます。
手術後数日間は疼痛が続いたり、頬が腫れたりするケースが少なくありません。手術直後の炎症は数日で落ち着きますが、インプラント体の周囲で感染が生じるとインプラント周囲炎となります。
ほかの歯の歯周組織にも感染が広がっていく場合があるため、早急な治療が必要です。また、下顎のインプラントの場合には下歯槽神経を刺激してしまい、低い確率ではあるものの下歯槽神経鈍麻が生じると可能性があると報告されています。
骨とインプラント体がうまく結合しないことがあると聞いたのですが…。
埋め込んだインプラント体が歯槽骨と結合して一体化していくことを、オッセオインテグレーションといいます。
オッセオインテグレーションがうまくいかないと人工歯を装着できないため、手術のやり直しとなる場合もあります。
オッセオインテグレーション不全が起こる原因はさまざまですが、喫煙は大きなリスクのひとつです。タバコに含まれる成分によって毛細血管が収縮して創傷治癒や骨の再生が遅れるため、リスクが高まると報告されています。
インプラント周囲炎になるとどのような症状が出ますか?
インプラント周囲炎は、歯周病のようにインプラント周囲に炎症が起こる疾患です。インプラント周囲の歯茎が赤く腫れて痛みを生じ、膿がでることもあります。
炎症が周囲の骨にまで広がると、インプラント体を固定している骨が吸収されて、人工歯がグラグラ動くようになります。

インプラント治療を受ける際の注意点

診察中の女性

インプラント治療のリスクファクターとなる全身疾患を教えてください。
インプラント治療のリスクファクターとなる全身疾患は、手術自体がリスクになるものと、オッセオインテグレーション不全のリスクになるものがあります。
高血圧・不整脈などの循環器疾患は、麻酔量の制限がある場合も少なくありません。また、糖尿病では、創傷治癒の遅れによってオッセオインテグレーション不全となるリスクもあります。
高血圧や糖尿病がある場合でも、治療によって症状がコントロールされている場合には、インプラント治療は可能です。
ほかにオッセオインテグレーション不全のリスクがあるファクターには、貧血・骨粗しょう症・喫煙習慣などがあると言われています。いずれの場合も、症状が十分にコントロールされていればインプラント治療は可能になります。
インプラント治療を受ける際の注意点を教えてください。
インプラント治療には高額な費用・長い治療期間・さまざまなリスク因子があるため、事前に医師とよく相談してメリット・デメリットを十分に理解しておきましょう。
生活習慣病や喫煙習慣以外にも、むし歯や歯周病がある場合には先に治療が必要です。治療終了後にもセルフケアが不可欠となることも、治療の前に理解しておかなければいません。
インプラント治療開始の前に治療計画の全体を把握できる計画書を作成してもらいましょう。
治療後の生活での注意点を教えてください。
インプラント治療後には、患者さん自身でのセルフケアと定期的な通院メンテナンスが不可欠です。
人工歯がむし歯になる心配はありませんが、骨に埋め込んだインプラント体は、天然の歯根よりも細菌感染に弱くなっています。
インプラント治療後に歯科医院での定期メンテナンスを受けていない場合、受けている患者さんよりもインプラントの生存率が低く、トラブルの発生頻度が高くなるという報告もあります。

編集部まとめ

模型を使った診察

インプラント治療に伴うリスクや、全身への影響を解説してきました。

インプラント治療は顎の骨に金属製の土台を埋め込む手術となるため、侵襲性が高く身体への負担も少なくありません。

糖尿病や高血圧などの生活習慣病がある場合には、先に症状をコントロールする治療をしないと、インプラント手術は大きなリスクになります。

また、むし歯や歯周病がある場合も、インプラント治療に影響があるため先に治療が必要です。

インプラント治療にはリスクがある一方で、歯を補うことは健康寿命にも大きく影響します。

自分の歯に近い感覚でしっかり噛めることには大きなメリットがあり、歯を失ったまま放置するデメリットは無視できません。

インプラント治療が身体に与えるよい影響と悪い影響を検討するために、まずは一度歯科医院にご相談ください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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