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インプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜ?考えられる原因と対処法を解説

インプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜ?考えられる原因と対処法を解説

インプラント治療後に歯茎の痛みを感じることは珍しくありません。その痛みは一時的なものから、何らかのトラブルのサインである場合などさまざまです。

本記事ではインプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラント治療に伴う不調のリスクとは
  • インプラント周囲炎の原因
  • インプラント治療後に歯茎が痛いときの対処法

インプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

インプラント治療に伴う不調のリスク

インプラント治療に伴う不調のリスク

インプラント治療では、顎の骨の近くにある神経や血管、上顎洞などの組織を損傷するリスクがあります。そのため、出血や知覚障害、感染症が発生する可能性がある点に注意が必要です。

また、手術後には痛みや腫れ、発熱などの症状が数日続くことがあり、ケアが求められます。縫合部の治癒不全や感染が起きた場合には、抗生物質の投与や、症状によっては再手術が必要となることもあります。

さらに、まれにインプラントが骨に定着せず脱落するケースもあり、その要因としては喫煙、糖尿病、歯ぎしりなどが挙げられます。

インプラント治療後に歯茎が痛む原因

インプラント治療後に歯茎が痛む原因

インプラント治療後に歯茎が痛むのはなぜなのでしょうか。
以下で原因について解説します。

インプラント周囲炎

インプラントを装着した部分で炎症が起こり、周囲の組織に悪影響を及ぼす状態をインプラント周囲炎といわれています。これは、歯茎の痛みや腫れの原因となることがあります。

インプラントだからといって、歯周病のリスクがなくなるわけではありません。歯周病菌の影響で、インプラント周囲の骨が徐々に溶けて減少することがあり、結果として天然歯の歯周病と似た状態に進行するのが特徴です。

この炎症を放置すると、インプラントを支える骨が減り、インプラントの支持力が低下して、脱落する可能性もあります。そのため、毎日の丁寧なケアと定期的な歯科検診が重要です。

ほかに考えられる要因

インプラント治療後に歯茎が痛む原因として、創部の汚染や歯肉縫合部の治癒不全などが挙げられます。これらの影響で、歯肉の縫合部の治癒がうまくいかなかったり、手術部位が感染してしまうことがあります。

その場合、洗浄や抗生物質の投与が必要になり、状況によっては移植骨の掻爬(そうは)やインプラントの除去や再手術が行われることもあります。

また、インプラントは上部構造であっても歯周病菌の影響を受けることがあり、周囲の骨が吸収されるインプラント周囲疾患を引き起こすリスクがあります。

なかでも、この疾患は自覚症状が少なく、発見が遅れやすいため注意が必要です。

予防には、インプラント治療の前にむし歯や歯周病をしっかり治療し、歯茎や骨の状態を整えることが重要です。さらに、治療後は毎日の丁寧な歯磨きとともに、2〜3ヶ月に一度の歯科での専門的なメンテナンスを継続することが、インプラントの長期安定につながります。

インプラント周囲炎の原因

インプラント周囲炎の原因

前項ではインプラント治療後に歯茎が痛む原因について解説しました。ここでは、インプラント周囲炎の原因を解説します。

メンテナンス不足

インプラント周囲炎は、歯周病のリスクが高い方や、治療前に歯周病が治癒していない状態でインプラント治療を受けた方は、口腔ケアを怠ると炎症や感染が起こりやすくなります。

インプラント周囲炎は、一度感染が進行すると治療が難しくなることがあり、たとえ処置を行っても、5年後の維持率が下がるといわれています。

そのため、日常的なケアと感染予防が重要です。インプラントの埋入部は、歯茎や歯周ポケットに歯垢がたまりやすい部位であり、より丁寧な歯磨きが求められます。

また、歯垢が歯石に変わると自己ケアでは除去できないため、定期的な歯科検診とクリーニングを欠かさず受けましょう。これらの対策が、インプラントの長期安定につながります。

生活習慣

インプラント治療の成功や、その後の健康維持には、生活習慣や口腔内の環境が大きく影響します。
なかでも、過去に歯周炎を経験した方は、インプラント周囲炎を発症しやすい傾向があるとされています。

現在では、歯周炎の既往歴や喫煙、糖尿病などの生活習慣を含めたリスク診断を行い、それに基づいて個別にケアやメンテナンスを行うことが重視されています。

このように、一人ひとりのリスクに応じた管理を行うことが、インプラントの長期的な安定と周囲組織の健康維持に不可欠と考えられています。

食いしばり・歯ぎしり

食いしばりや歯ぎしりは、無意識のうちに強い力が歯やインプラントにかかる習慣であり、特に就寝時に多くみられます。

このときの圧力により、インプラント体に過大な負荷を与えてしまう場合があります。その結果、破損のリスクを高める要因となる可能性があります。

さらに、持続的な圧力は歯茎の退縮や歯周ポケットの深部化を引き起こし、細菌が侵入しやすい環境をつくることから、インプラント周囲炎の発症にもつながる恐れがあります。

インプラント周囲炎の主な症状とセルフチェック項目

インプラント周囲炎の主な症状とセルフチェック項目

インプラント周囲炎は、自覚症状が出にくいこともありますが、進行するとインプラントの脱落にもつながる可能性があります。
以下のセルフチェック項目に該当する方は、早めの対応が大切です。

◆セルフチェック項目(生活習慣、リスク要因)

  • 丁寧な歯磨きや歯間ブラシの使用が不十分
  • 過去に歯周病の診断を受けたことがある
  • 糖尿病を患っている
  • 喫煙習慣がある
  • アルコールを過剰に摂取している
  • 歯磨き時に出血がみられる
  • インプラントに違和感がある
  • 強い歯ぎしりがある
  • 定期的なメンテナンスを受けていない

◆インプラント周囲炎の主な症状

  • インプラント周囲の歯茎が赤く腫れている
  • インプラント部に痛みや膿の排出がある
  • インプラントがぐらつく、長く見えるようになった

上記の項目に複数当てはまる場合は、できるだけ早く歯科医院を受診し、治療とケアを受けることが重要です。

インプラント周囲炎の治療方法

インプラント周囲炎の治療方法

インプラント周囲炎は、進行度によって治療法が異なります。以下で、症状の程度別に治療方法を紹介します。

【軽度(インプラント周囲粘膜炎)の場合】
初期段階では、外科的処置は必要ないことが多い傾向にあり、歯科医院での専門的なクリーニング(PMTC)や、抗菌薬の局所投与により炎症の改善を図ります。
加えて、毎日の丁寧な歯磨きや定期的なメンテナンスの継続が重要です。

【中等度〜重度の症状の場合】
症状が進行している場合は、膿の排出や感染部位の徹底洗浄、インプラント表面に付着した肉芽組織の除去などが行われます。
必要に応じて、抗生剤の内服や局所投与を併用し、感染の拡大を抑えます。

さらに重症の場合は、感染したインプラントの除去や、骨や歯肉の再生治療が必要となることもあり、その後の再埋入を慎重に検討します。

インプラント周囲炎は自覚症状が少なく、進行しても気付きにくいのが特徴です。炎症が治まったとしても、一度失われた骨や歯肉はもとに戻りにくいため、早期発見と迅速な対応が欠かせません。
治療後も継続的なセルフケアと歯科医院での定期検診を怠らず、インプラントの長期安定を目指しましょう。

インプラント治療後に歯茎が痛いときの対処法

インプラント治療後に歯茎が痛いときの対処法

インプラント治療後に歯茎が痛い場合どのような対処法があるのでしょうか。 以下で解説します。

歯科医院を受診する

インプラント治療後に痛みや腫れが長引く場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。
なかでも、以下のような症状がある場合は、速やかな診察をおすすめします。

  • 強い痛みが続いている
  • 痛みが2週間以上治らない
  • 出血がひどい
  • 歯茎を押すと痛みがある

これらの症状は、インプラント周囲炎や感染などのサインである可能性もあるため、放置せずに受診してください。

痛み止めを飲む

インプラント手術後は、炎症の影響で圧迫感や痛みを感じることがあります。このような症状は、痛み止めや抗炎症薬の服用で和らげられます。

もし、処方薬を服用しても圧迫感が改善されない場合は、薬の種類を変更するなど別の対策が必要になることもあるため、歯科医師に相談しましょう。

また、受診前に痛みが強いときは、市販の鎮痛薬を一時的に使用するのもおすすめです。ただし、自己判断で長期間使用するのは避け、できるだけ早く歯科医院で診察を受けることが重要です。

インプラント治療後の歯茎ケアのポイント

インプラント治療後の歯茎ケアのポイント

ここまでインプラント治療後に歯茎が痛いときの対処法などをお伝えしました。最後にインプラント治療後の歯茎ケアのポイントを解説します。

日々の歯磨き

インプラント周囲炎の原因となる歯茎の炎症を防ぐためには、毎日のデンタルケアが欠かせません。
なかでも、歯磨きだけでは落としきれない汚れは、デンタルフロスや歯間ブラシを使って丁寧に除去することが重要です。

さらに、マウスウォッシュによる口腔内の洗浄も炎症予防に効果が期待できます。
食後はなるべく早めに歯を磨き、できれば毎食後に軽く磨く習慣をつけましょう。

ただし、力を入れすぎると歯や歯茎を傷つける原因になるため、優しく丁寧に磨くことがポイントです。 また、小回りのきく歯ブラシを選び、外出先でもケアできるように携帯することもおすすめです。

定期的なメンテナンス

インプラントは、常に口腔内の環境にさらされているため、長期的に安定した機能を維持するには定期的なメンテナンスが欠かせません。
メンテナンスでは、以下の点が確認されます。

  • プラークの付着状況と歯周組織の健康状態
  • インプラントや補綴装置の異常(スクリューの緩み、破損など)
  • 噛み合わせのバランス
  • エックス線検査による骨の吸収や変化

問題があれば、早期対応により進行を防ぐことが重要です。

◆ 周囲組織と補綴装置のチェック項目
インプラント周囲組織については、

  • プラーク指数
  • ポケットの深さ
  • 出血や排膿の有無
  • インプラントの動揺

などを調べ、必要に応じてデブライドメントや抗菌療法、外科的処置が行われます。
補綴装置についても、

  • スクリューの緩み
  • 前装材の摩耗やチッピング
  • 対合歯の状態

などをチェックし、ナイトガードの使用や嚙み合わせ調整などの対策を取ります。

◆ 清掃と間隔の目安
メンテナンス時には、専用のプラスチック製スケーラーや超音波機器で丁寧に清掃し、補綴物表面も研磨します。
ただし、補綴物を頻繁に取り外すと周囲組織にダメージを与える恐れがあるため注意が必要です。

通院間隔は4〜6ヶ月ごとですが、歯周病の既往やプラークコントロールの状態によっては、1〜3ヶ月ごとの短いサイクルでの管理が必要な場合もあります。

患者さんごとのリスクに応じた頻度でメンテナンスを行うことが、インプラントの長期安定と健康維持につながります。

生活習慣の改善

インプラント治療後の回復を助け、炎症や圧迫感を防ぐためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。以下では、具体的な注意点を紹介します。

  1. インプラント部位への刺激を避ける
    インプラント周辺に違和感があると、つい指や舌で触れたくなりますが、これは炎症や感染の原因になるため、術後は傷口が敏感なため、触れずに安静を保ちましょう。
  2. 食事内容に配慮する
    手術直後は、辛い、熱い、硬い食べ物を避け、やわらかく消化に優しいもの(例:雑炊、うどん、ヨーグルトなど)を選ぶことで、口腔内の負担を軽減できます。
  3. 飲酒・運動・入浴の制限
    アルコールは炎症を悪化させる可能性があるため、術後2〜3日は控えましょう。
    また、当日の激しい運動や長風呂、サウナも血行を助け、腫れや出血の原因になるため避けるのが望ましいとされています。
  4. 禁煙を心がける
    喫煙は歯肉の血行を妨げ、治癒の遅れや歯茎の退縮のリスクを高めます。インプラントの長期安定のためにも、治療後は禁煙に取り組み、必要に応じて禁煙補助を活用しましょう。
  5. 全身の健康と口腔ケアの両立
    糖尿病などの全身疾患がある場合は、歯科医院での管理が前提となります。
    加えて、バランスのよい食事と毎食後の歯磨きを習慣にし、よく噛んで唾液を分泌させることが、口腔内の健康維持にもつながります。

まとめ

まとめ

ここまでインプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜかについてお伝えしてきました。インプラント治療後に歯茎が痛いのはなぜかについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラント治療に伴う不調のリスクには、顎骨の近くにある神経や血管、上顎洞などの組織の損傷がある
  • インプラント周囲炎の原因には、メンテナンス不足、生活習慣、食いしばりや歯ぎしりなどが挙げられる
  • インプラント治療後に歯茎が痛いときの対処法には、歯科医院を受診する、痛み止めを飲むことが挙げられる

インプラント治療後の歯茎の痛みは、さまざまな原因によって引き起こされることがありますが、症状を和らげる対処法を実践することが大切です。痛みが続く場合や気になる症状があれば、早めに歯科医師に相談し、正しい診断とケアを受けることが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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