インプラント

インプラントは妊娠希望の人も受けられる?妊娠中のリスクや治療のタイミングを解説

インプラントは妊娠希望の人も受けられる?妊娠中のリスクや治療のタイミングを解説

トラブルで歯を失ってしまった場合、インプラントによる治療を希望する方も多いのではないでしょうか。

しかし、妊娠中はさまざまな身体のトラブルが起こりやすい時期です。インプラント治療も妊娠中は避けることが多いです。そのため、これから妊娠を希望する方は、インプラントも慎重に考える必要があります。

これから妊娠希望の方に向けて、妊娠中にインプラント治療を行うことのリスクや治療のタイミングを詳しく解説します。

インプラントは妊娠希望の人も受けられる?

ハートを抱える女性

妊娠希望の人がインプラント治療を受けても大丈夫ですか?
直近で妊娠を計画している・不妊治療や妊活中の方は、インプラント治療は避けることをおすすめします。妊娠中はインプラント治療が難しく、またインプラント治療は長い場合3~12ヵ月の治療期間が必要となります。近いうちに妊娠を希望している場合はインプラント治療を避け、インプラント治療が完了した後に妊娠を検討するか、出産後にインプラント治療を開始しましょう。
インプラント治療中に妊娠したらどうすればよいですか?
インプラント治療中に妊娠が発覚した場合や妊娠の可能性がある場合は、できるだけ早く担当の歯科医師に相談しましょう。基本的にはインプラント治療を一時中断し、出産後に治療を再開することが多いです。インプラント治療に限らず、妊娠中の歯科治療にはリスクが伴います。担当の歯科医師と相談のうえ、できるだけ母体や胎児に負担の少ない治療に切り替えてもらいましょう。
治療を中断した場合、抜歯したところはどうなりますか?
  • 噛み合わせが悪くなる
  • 見た目が悪くなる
  • 食べ物が詰まりやすくなり、むし歯・歯周病のリスクが上がる
  • あごや筋肉に痛みが出る
  • 治療が困難になる

こうした問題はすぐに起こるわけではありませんが、インプラント治療はなるべく中断せずに行うのが理想的です。そのため妊娠希望時には避けることをおすすめします。もし治療中に妊娠が判明してインプラント治療を中断する場合は必ず担当の歯科医師と相談し、抜歯した部分の対処を行いましょう。

インプラント治療の妊娠中のリスクや影響

妊娠中は控えた方がよい理由を教えてください。
インプラント治療は、患部の切開や縫合を行う外科的処置を伴います。健康な状態ではそれ程心配はありませんが、妊娠中は以下の理由により控えた方がよいです。
  • レントゲン・歯科用CTによる被ばくの危険性
  • 投薬の影響
  • 外科的処置による母体への負担
  • 治療中の体勢による負担

妊娠中は免疫力が低下し、トラブルの起きやすい時期です。緊急の場合を除き、母体や胎児に負担のかかる治療は避けることが多いです。レントゲン・投薬・外科的処置による負担については以下で詳しく解説します。また、治療中の体勢による負担ですが、妊娠週数が進んだ妊婦が長時間仰向けになって治療を受ける場合、「仰臥位低血圧症候群」という症状が起こることがあります。仰向けになることで子宮が下大静脈を圧迫してしまい、一時的に低血圧となることで以下のような症状が出るのです。

  • 顔面蒼白・めまい
  • 脈が速くなる
  • 気持ちが悪い・吐き気
  • 呼吸が苦しい

こういった症状は一時的なものではありますが、ひどい場合にはショック状態につながることがあり、母体に負担をかける可能性があります。インプラント治療では長時間仰向けになって治療を受ける必要があるため、仰臥位低血圧症候群を起こすことが考えられます。これも妊娠中はインプラント治療を控えた方がよい大きな理由のひとつです。

レントゲン・歯科用CTは胎児に影響ありますか?
レントゲン・歯科用CTはX線などの放射線を使用するため、被ばくを心配される方も少なくないでしょう。実際に、妊娠10週までの50mGv以上の胎児被ばくはリスクとなる可能性があります。しかし、実際のレントゲン・歯科用CTで行われる撮影での被ばく量はわずかなため、胎児への影響はほぼないといえるでしょう。撮影時には腹部を遮蔽するため、影響はさらに少ないものとなります。ただし、不安に感じたり過剰に心配したりしてしまうと母親へのストレスのもとになってしまうため、必要がなければ避けた方がよいでしょう。
麻酔薬・術後の投薬の影響はありますか?
歯科治療で主に用いられるのは局所麻酔薬です。局所麻酔薬は妊娠や胎児にはほとんど影響がないと考えられてはいますが、一部の薬は胎盤を通過してしまったり、弱い影響ですが妊娠に影響を及ぼしてしまったりする可能性があるため、慎重な使用が必要となります。また、術後の投薬も注意が必要です。基本的に妊娠中の薬の使用は必要があるとき以外は避けるよう推奨されています。一部の抗生物質・鎮痛剤・その他胎児に影響を及ぼす可能性のある薬は避けなくてはなりません。インプラント治療は外科的処置を伴うため、術後にこうした薬が必要となる場合があります。すべての場合で危険につながるわけではありませんが、避けた方がよいです。
インプラント治療で早産になる可能性はありますか?
インプラント治療は手術を行うため、出血を伴います。普段なら問題にならない程度の出血量でも、体内ではサイトカインという物質が放出されます。サイトカインは子宮筋の収縮を促進してしまうため、妊娠中には早産のリスクにつながる可能性があるのです。そういった面でも、妊娠中のインプラント治療は避けることをおすすめします。

インプラント治療を受けるタイミング

治療後

妊活中の場合、治療を受けるタイミングはいつがよいですか?
妊活中の場合、いつ妊娠してもよい状態にしておく必要があるため、妊活と並行してインプラント治療を行うのはおすすめできません。インプラント治療を受ける場合は以下のタイミングがよいでしょう。
  • 妊娠・出産後
  • 妊活を終了した後

それまでの間は仮歯や部分入れ歯での処置を受けることをおすすめします。また、妊娠に備えて口腔ケアを中心に行うのもよいでしょう。妊娠中は食生活や嗜好の変化から、むし歯や歯肉炎が起こりやすくなります。また、つわりによって歯磨きが難しくなることも珍しくありません。妊活の一環として、歯や歯肉のケアをしっかりと行っておくことも大切です。

出産後はどのタイミングで受けられますか?
出産後1ヵ月など、出産直後は母体の負担も大きいため、肉体的な負担を伴うインプラント治療は避けた方がよいでしょう。その後は授乳中の期間となりますが、母親が投与された薬が母乳に移行するかどうかは薬の種類や、授乳のタイミングにもよります。医師や薬剤師と相談し、使用する薬を選べばあまり心配はありませんが、薬の影響が気がかりな方は授乳期間を過ぎてからインプラント治療を受けるようにしましょう。母乳にこだわらず、ミルクを併用しながら母親の治療を優先するのもひとつの方法です。
妊婦以外でインプラント治療が難しいケースを教えてください。
妊娠中以外にもインプラント治療が難しいケースは、以下の場合となります。
  • 循環器系疾患・呼吸器系疾患・糖尿病や骨粗鬆症などの疾患のある方
  • 循環器系・腎臓や肝臓の機能障害がある方

また、以下の方はリスクが高いため、それぞれの症状を改善させてからインプラント治療を行う必要があります。

  • 顎の骨が少ない方
  • 重度の歯周病を患っている方
  • 顎の骨の成長が終わっていない20歳以下の方
  • 歯ぎしりや食いしばりをしやすい方
  • 喫煙者

こうしたケースでもインプラント治療が可能な場合があるため、インプラント治療を考えている場合は信頼できる医療機関に相談しましょう。なおインプラント治療は自由診療となり、一般的な費用相場は1本あたり300,000円〜500,000円(税込)程度です。

編集部まとめ

自身のある女性

妊娠中は体調が変化しやすく、負担をかけることはできるだけ避けてほしい時期です。

インプラント治療は普段の状態ならそれ程心配はありませんが、妊娠中は麻酔・薬・出血の影響など、さまざまなリスクが高まります。そのため、妊娠がわかった段階でインプラント治療は中断することが多いです。

妊娠を希望している場合は、直近のインプラント治療は慎重に考え、タイミングは担当の歯科医師ときちんと相談しましょう。出産後には問題なくインプラント治療を受けられる場合が多いです。

妊娠・出産は人生の大きなライフイベントのひとつです。後悔のないよう、時期はしっかりと計画を立てて過ごしていきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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