インプラントのネジとはどのようなものなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。 本記事では、インプラントのネジについて、以下の点を中心にご紹介します。
- インプラントの形状
- アバットメントのネジが緩む原因とは
- アバットメントのネジが緩んだ場合の対処法
インプラントのネジについて理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
インプラント治療について
- インプラント治療とはどのようなものですか?
- インプラント治療は、歯を失った際の第三の治療法として注目されています。
インプラントとは、歯を失ったあごの骨に、体になじみやすい材料で作られたインプラント体を埋め込み、それを土台にセラミックなどで作った上部構造を取り付けたものです。インプラントは、基本的には三つのパーツからできています。
顎骨の中に埋め込まれる人工歯根、インプラント体の上に取り付けられるアバットメント、歯の部分に相当する上部構造から構成されています。インプラント治療は、顎骨の骨量や骨質の影響を受ける、治療期間が長い、自費診療のため治療費が高額となるなどのデメリットがありますが、残っている歯への負担がなく、自分の歯に近い機能や審美性の回復が可能であるなどのメリットがあります。
インプラント治療は、成長発育中の子供には基本的には行われません。
一般に20歳〜25歳頃になると骨の成長が止まるため、それ以降に治療を始めるのが良いといえます。
また、高齢者でも抜歯などの手術を受けられる健康状態であれば可能です。
ただし、心疾患などで症状が重い方や安定していない方は難しい場合もあります。
- インプラント治療に必要な検査にはどのようなものがありますか?
- インプラント治療に必要な検査は、以下の3つが主に挙げられます。
- CT検査:
インプラント治療では、インプラント体を顎の骨に埋め込むため、顎骨の状態を正確に把握する必要があります。
CTは、多方向からX線を照射してコンピューターで画像解析ができるため、三次元的な診断が可能です。 - 血圧検査:
インプラント治療を開始する前には、患者さんの全身の健康状態を評価するために、いくつかの検査が必要となります。その一つが血圧検査です。
血圧検査は、手術中に血圧が急上昇し、動悸、発汗、頭痛、嘔吐などの症状が出る可能性があるために行われます。
特に、最高血圧が160mmHg以上の場合、インプラント手術を受ける前に内科医の診察を受けることが推奨されます。 - 歯周病の検査:
インプラントは、歯茎で起きる歯周病と同じような症状を示すインプラント周囲炎にかかりやすいといわれています。
歯周病の治療をせずインプラント治療すると、インプラント周囲炎を起こしやすくなるため、治療前に歯周病の状態を検査する必要があります。
- CT検査:
- インプラント治療の流れはどのようなものですか?
- インプラント治療の流れは、まず患者さんの口腔内の状態を評価し、適切な治療計画を立てます。
その後、手術が行われ、インプラント体が顎骨に埋め込まれます。
インプラントの手術は、一回法と二回法の二つの方法があります。一回法では、インプラント体を埋め込み、同時にアバットメントを取り付けます。
二回法では、インプラント体を埋め込んだ後、一定期間待ってからアバットメントを取り付けます。
この待ち時間は、インプラント体と顎骨がしっかりと結合するためのものです。
- インプラントはどのくらいもちますか?
- インプラントの寿命は、患者さんの口腔内環境やケアの状況、使用されるインプラントの種類や手術の技術などによりますが、適切なケアと定期的なメンテナンスを受けていれば、一般的に10年以上は持つとされています。
しかし、インプラントが永久的なものではないことを理解することが重要です。
- インプラントを長持ちさせるにはどうすれば良いですか?
- インプラントの寿命を延ばすためには、以下の点に注意することが重要です。
- 毎日の念入りな歯みがき:
歯磨きは、インプラントケアの最も重要な部分です。
食事の後すぐに歯を磨くことを心がけ、指導された正しいブラッシング方法を実践しましょう。 - 歯医者での定期検診:
インプラントには神経がないため、感染が起きても自覚症状がないことがあります。 治療終了後も定期的に歯医者で検診を受け、インプラントの状態や歯肉の状態、噛み合わせのバランスなどをチェックしましょう。
また、歯科医院でのクリーニングも重要です。
これらのケアを怠ると、歯垢がインプラント周辺に付着し、歯槽膿漏のような状態になる可能性があり、インプラント周囲の骨が痩せてインプラントが動いてしまうこともあります。
したがって、インプラントを長持ちさせるためには、毎日しっかりと歯を磨き、定期的に検診を受けることが必要です。 - 毎日の念入りな歯みがき:
- インプラント治療の費用はどのくらいですか?
- インプラント治療の費用は、患者さんの状態や治療内容により大きく変動しますが、自費が原則となります。
治療全体の費用は、初診料、CT検査、臨床検査、手術費、そして上部構造の製作費などが含まれます。
治療を受ける前に、これらの費用をしっかりと確認することが重要です。なお、癌などで顎骨を切除後に骨移植をした場合や先天性疾患がある場合など、一部の症例については、健康保険が適用されることもありますが、限られた医療機関でのみ可能であり、全ての医療機関で適用されるわけではありません。
ネジについて
- インプラントの上に歯を装着する方法にはどのようなものがありますか?
- インプラントの上に歯を装着する方法には、主に3つの種類があります。
- 完全に固定する方法:
インプラントにセメントを用いて歯を接着します。
これにより、強く噛むことが可能で、見た目も自然です。
ただし、問題が発生した場合、上部構造を壊さないと取り外せません。 - ネジで止める方法:
インプラントの上部構造と歯をネジで固定します。
定期的な検診時に歯医者が取り外し、インプラントと歯肉の境界を清潔に保つことが可能です。
ただし、ネジ穴が見えることがあります。 - 入れ歯にする方法:
インプラントに棒状または球状の維持装置を取り付け、入れ歯を固定します。
1本ずつ歯を固定するよりもコストが抑えられますが、毎日取り外して清潔に保つ必要があります。
- 完全に固定する方法:
- インプラントの構造はどのようなものですか?
- インプラントは基本的に、上部構造、アバットメントの3つから構成されます。
上部構造は、口腔内に露出する部分で、審美性を重視してセラミックが多く使用されます。
オールセラミックなら、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できます。
アバットメントは、インプラント体と上部構造を連結するパーツで、上部構造の高さや角度を調節する役割もあります。
アバットメントとインプラント体が一体化しているタイプもあります。インプラント体は、この治療法の要となる上部構造で、専用のドライバーを使って顎の骨に埋め込みます。
材質はチタンやチタン合金が一般的で、直径は3〜5mm、長さは6〜18mm程度が目安となります。インプラント体の形状は、スクリュータイプ、シリンダータイプの2つに分けられます。
スクリュータイプはネジのような形状で、インプラント治療で主に使用されています。また、インプラントの構造には、ワンピースタイプとツーピースタイプの2つがあります。
ワンピースタイプは、上部構造とアバットメントが一体化しているタイプで、手術が1回で済みます。
ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分離しているタイプで、原則として2回の手術が必要となります。これらの構造と材質の選択は、患者の顎の状態、治療の目的、費用などにより、歯科医師が判断します。
- インプラントの形状にはどのようなものがありますか?
- インプラントの形状について、以下のような種類が存在します。
- スクリュータイプ:
ネジのような形状で、現在のインプラント治療の主流となっています。固定しやすいのが特徴です。 - シリンダータイプ:
円筒状の上部構造で、スクリュータイプのような切れ込みは入っていません。顎骨との結合が弱いというデメリットがあります。
また、インプラントの構造には、ワンピースタイプとツーピースタイプの2つがあります。
ワンピースタイプは、上部構造であるインプラント体と連結装置であるアバットメントが一体化しています。
一方、ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分離しています。 - スクリュータイプ:
- アバットメントのネジが緩む原因とは何ですか?
- アバットメントのネジが緩む原因はいくつかあります。
- 負荷による金属疲労:
インプラント体と同様に、強い力がかかると金属が疲労し、ネジが緩む可能性があります。 - 上部構造の不具合:
上部構造に問題がある場合、それがネジの緩みにつながることがあります。 - 適合精度:
ネジの適合精度が低いと、ネジが緩む可能性があります。 - 歯のすり減りや移動、顎関節の変位や変化:
これらの変化は、噛み合わせの変化を引き起こし、それがネジの緩みにつながることがあります。 - インプラント周囲炎による骨吸収:
インプラント周囲炎が進行すると、骨が吸収され、それがネジの緩みにつながることがあります。
これらの原因が組み合わさることで、ネジが緩む可能性が高まります。
ネジが緩んだ場合、単にネジを締めるだけでは根本的な解決にはならず、原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。 - 負荷による金属疲労:
- アバットメントのネジが緩んだ場合はどうすれば良いですか?
- アバットメントのネジが緩んだ場合、以下の対策法が考えられます。
- 咬み合わせの調整:
歯の接触状態を適切に調整することで、過度な力がネジにかかるのを防ぎます。 - ネジの締め直し:
インプラントアバットメントのネジが緩むと、ネジを適切に締め直すことで固定し、機能を回復させます。
ネジが緩む場合、それはインプラントやネジの破折につながる可能性もあります。
ネジのゆるみについては、噛み合わせの調整とネジの締め直しが、第一選択となります。 - 咬み合わせの調整:
インプラントとネジの関係
- スクリュータイプのネジは妊娠中に施術できますか?
- スクリュータイプのネジの施術は妊娠中でも可能ですが、その時期や施術内容により注意が必要です。
妊娠中は不要不急な外科処置は避けることが一般的であるため、妊娠中はインプラント治療は行いません。代替の治療法がある場合は外科処置を伴わない義歯やブリッジをおこないます。
妊娠初期は薬剤に対する反応性が高く、外科処置に伴う処方が制限されたり、妊娠後期は仰臥位を長時間とることが血栓症のリスクとなりますので、不要不急な治療は行いません。
安定期であればインプラント治療は問題ないと思いますが、代替の治療法があるため、インプラント治療は行わないことが殆どです。
既にインプラントが入っている場合、メンテナンスは可能です。
- 適応症とは何ですか?
- 適応症とは、インプラント治療が適している状況や条件を指します。
以下にその主な例を示します。- ブリッジをする場合に、歯を大幅に削る必要がある場合:
一度削った歯や取り除いた神経は戻らないため、隣の歯がまだ削っていない状態であれば、インプラント治療が推奨されます。 - 義歯が苦手な方:
入れ歯の不快感はインプラント治療により大幅に軽減できます。また、咬む能力や清掃のしやすさなど、多くの面でインプラント治療にメリットがみられます。 - 不適応症に該当しない場合、または治療によって問題が解消できた場合
ただし、インプラント治療は全ての人に適しているわけではなく、重度の歯周病、骨が大きく失われている場合、隣接する歯やその周囲に感染がある場合、夜間の歯ぎしりやくいしばりがある場合などは適応外となる可能性があります。
また、全身の状態、例えば骨粗鬆症、糖尿病、ヘビースモーカー、チタンアレルギー、血液疾患、高血圧、腎臓疾患なども考慮する必要があります。
これらは一部の例であり、具体的な適応症や不適応症は患者さんの個々の状況によります。
したがって、インプラント治療を検討する際は、必ず専門的な医療機関で詳しい診察を受けることが重要です。 - ブリッジをする場合に、歯を大幅に削る必要がある場合:
編集部まとめ
ここまで、インプラントのネジについてお伝えしてきました。
インプラントのネジの要点をまとめると、以下の通りです。
- インプラントの形状には、スクリュータイプ、シリンダータイプがある
- アバットメントのネジが緩む原因は、負荷による金属疲労、上部構造の不具合、インプラント周囲炎による骨吸収などである
- アバットメントのネジが緩んだ場合の対処法は、噛み合わせの調整、咬筋のボツリヌス注射などである
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。