インプラント

インプラントのタイミングはいつがいい?抜歯後の埋入・費用についても解説

インプラントのタイミングはいつがいい?

歯を失った際の治療法として、インプラントが挙げられます。インプラントとは、失った歯の部分に人工歯を埋め込む治療法です。

インプラントは入れ歯・ブリッジなどと比べると、歯の安定感がある他、他の歯への負担が少なく見た目が良いといったメリットがあります。

さまざまなメリットのあるインプラントですが、実際にどのタイミングで行う治療法なのか気になる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回の記事ではインプラントのタイミングについて詳しく解説していきます。

また、抜歯後の埋入・費用・治療できないケースも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

インプラントのタイミングはいつがいい?

インプラント タイミング

インプラントは歯が抜けた際に行う治療法であるため、以下のタイミングで行うと良いでしょう。

  • むし歯や歯周病で歯を失ったとき
  • 歯根破折で歯を失ったとき
  • 事故などで歯を失ったとき
  • 生まれつき歯がない場合

ここからは、インプラントのタイミングについて詳しく解説します。

むし歯や歯周病で歯を失ったとき

インプラント治療は、むし歯・歯周病によって歯を抜いたときに行います。

むし歯とは、口の中にいる細菌が食べ物などに含まれる糖質を餌にして作り出す酸によって、歯が溶かされてしまう病気のことです。

歯が溶かされると次第に歯に穴が開きます。それを放置していると、神経・歯の根元まで細菌が達し、歯茎に膿が出てくるようになります。

この状態になると歯を抜かないといけなくなり、この際にインプラント治療が行われるケースがあるのです。

また、歯周病とはプラークの中にある歯周病原菌によって引き起こされる病気です。プラークとは歯垢ともいい、食べ物の残りかすが歯の表面に付き細菌が繁殖したものを指します。

歯周病になると歯茎に炎症が起こり、進行すると歯を支えている骨が溶けてしまい、その結果歯を失うことになります。

歯周病は自覚症状がほとんどないため、進行しやすく歯を失いやすい病気とされています。実際に、日本人の歯を失う原因として歯周病が多いことが分かっています。

またインプラント治療において、歯周病を発症している患者さんに対して行うケースが多いとされています。

ただし、歯を抜いてもむし歯・歯周病の治療が必要な箇所がある場合には、先にそれらの治療を行わないとインプラント治療ができません。

歯根破折で歯を失ったとき

歯根破折によって歯を失ったときも、インプラント治療を行うことがあります。

そもそも歯根破折とは、歯の根の部分である「歯根」が縦に割れたりヒビが入ったりする状態です。硬い食べ物を噛んだ際に歯に強い力がかかることで、歯根破折が起こる場合があります。

見た目では歯の状態が問題なさそうであっても、歯の根元に痛みが生じることがあれば歯根破折が起こっている可能性も考えられますので、気になる場合は検査すると良いでしょう。

事故などで歯を失ったとき

転倒・衝突・交通事故などによる外傷で歯を失った際にインプラント治療を行うことができます。

しかし、外傷による歯の損失は子ども・若い患者さんに起こりやすいとされています。子ども・若い患者さんは成長期で顔の骨格が変化していくため、通常はインプラント治療ができません。

また、外傷によって歯を失った場合は、歯茎の内側にある骨「歯槽骨」も損傷している可能性があります。

歯槽骨は歯を支える役割を持っています。インプラント治療を行うためには、歯槽骨が人工歯を埋入できるくらい丈夫である必要があるのです。

つまり歯槽骨も損傷している場合は、歯槽骨の状態が回復してからでないとインプラント治療が行えません。そのため、多くの場合は治療期間が長くなるといわれています。

生まれつき歯がない場合にも有効

生まれつき歯がない

乳歯が抜けてから永久歯が生えてこない、あるいは乳歯・永久歯も生えないといった生まれつき歯がない場合にもインプラント治療が有効です。

生まれつき永久歯が少ないことを「先天性欠如歯」といいます。先天性欠如歯は1本の歯が少ない場合・複数本の歯が少ない場合といったように、症例は個人差があるとされます。

生えてこない場所・生えていない本数によっては気づかないケースもあり、歯科医院を受診して初めて気づく患者さんもいらっしゃるようです。

先天性欠如歯と診断されたら、インプラント治療で歯のない部分を補う、もしくは歯科矯正で歯のない部分の空間を無くしてしまうといった方法で治療を行うことが多いです。

抜歯後にインプラントを埋入するタイミングは?

抜歯後 インプラント 埋入する

抜歯後にインプラントを埋入するタイミングは、抜歯即時もしくは抜歯数ヶ月から半年後に行うケースがあります。

また抜歯後にインプラントを埋入するタイミングによって、以下の2つの治療方法が挙げられます。

  • 抜歯即時埋入法
  • 抜歯待時埋入法

それぞれの方法について、詳しく解説します。

抜歯即時埋入法

抜歯即時埋入法では、抜歯した直後にインプラントを埋入します。治療期間が短縮できたり、手術回数を減らしたりすることが可能です。

ただし抜歯即時埋入法は、以下の条件を満たす必要があるとされます。

  • 治療箇所の周辺にむし歯がない
  • 歯周病を発症していない
  • 抜歯した箇所が炎症していない
  • 顎の骨に欠損がない
  • インプラントを埋入した直後に、骨とインプラントが結合する可能性が高い

むし歯・歯周病・炎症がある場合には、これらを治療することが優先されます。また、インプラントを埋入した際に歯を支える骨があることが重要です。

骨が柔らかかったり骨の厚みが少なかったりすると、抜歯即時埋入法を行えないケースがあります。

また、抜歯した傷口が塞がらないままインプラントを埋入するため、細菌感染のリスクがあると考えられています。

このように、抜歯即時埋入法は患者さんにとっては精神的・肉体的負担は少ないですが、この方法が適用できる方は限られるでしょう。

抜歯待時埋入法

抜歯待時埋入法は、抜歯後に傷口がある程度治癒してから行う方法です。むし歯・炎症があったり骨の厚みが少なかったりする場合に、この方法が行われることが多いとされます。

個人差はありますが、抜歯してから数ヶ月後もしくは半年後に行われます。

また埋入までに期間があることから、インプラントの埋入する方向・深さを十分に検討でき、理想的なポジションでインプラントを埋入できると考えられます。

インプラント治療に適した年齢は?

インプラント治療 適した年齢

インプラント治療に適した年齢は、20~25歳以上とされています。なぜ20~25歳以上がインプラント治療に適しているのかは、骨の成長が20歳程度で終わると考えられているからです。

つまり、骨が成長中である子どもにインプラント治療は適していないことになります。成長中にインプラント治療を行うと、もともと生えている歯・人工歯との間にずれが生じる可能性があります。

骨の成長が終わるのは女性が18歳頃、男性が20歳頃といわれていますが、骨の成長は個人差があり、25歳くらいまでインプラント治療が行えない場合もあるでしょう。

厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査」によると、24歳以下のインプラント装着率は0%であると報告されています。

実際にインプラント治療を受けるのは25歳以上のケースが多いようです。

また、一般的にインプラント治療を行うのは、40〜60代が中心とされています。

高齢者でも治療を行えますが、健康状態・認知機能に問題があると治療が行えない場合があるため、事前に検査が必要です。

インプラント治療に直接影響を与えるものでなくても、高血圧・心疾患などの病気を発症している場合、状態によってはインプラント治療を控える可能性があります。

インプラント治療の費用

インプラント治療 費用

インプラント治療の費用は、どのくらいかかるのか気になる方が多いかもしれません。一般的に歯周病などの治療よりも高額といわれています。

また、インプラント治療の費用は基本的に自費で、保険適用されません。

一部の症例においては保険適用されるケースもありますが、通常のインプラント治療では保険適用されないと認識しておくと良いでしょう。

また、インプラント治療の費用はインプラント治療を行う歯の本数によって変動します。

そこで、1本当たりの費用・全体をインプラントにする場合の費用について詳しく解説しましょう。

1本の費用

インプラント治療は自由診療であるため、実際にかかる費用は歯科医院によって異なります。

一般的な相場として1本のインプラント治療の費用は、約30〜50万円(税込)程度です。

また、複数本のインプラント治療をする場合の費用は、1本の費用よりも1本当たり約20万円程度高くなると考えられています。

なお、インプラントの費用は以下の6つの項目によって算出されています。以下の項目のうち必要に応じて行うものもあるため、より費用が高くなるでしょう。

  • 血液検査・細菌検査などの診査
  • インプラント手術
  • 骨量が足りない場合の追加手術
  • 麻酔など手術に関連する処置
  • インプラントに取り付ける歯の部分
  • インプラント治療のメンテナンス

上記の項目は患者さんによって内容が異なるため、詳しく知りたい場合は歯科医院に相談することがおすすめです。

全体をインプラントにする場合の費用

歯を全て失った場合は、オールオン4というインプラント治療を行うケースが多いです。

通常のインプラント治療では1本の歯に対して1本のインプラントを埋入しますが、オールオン4では顎の骨に4本インプラントを埋入した上で12本連結した人工歯を入れます。

オールオン4には1本ずつ入れるよりも体の負担が軽減できる他、費用も抑えられるというメリットがあるのです。

オールオン4の費用は歯科医院によって異なりますが、片顎当たり200万〜300万円(税込)とされています。

片顎の12本を全て1本ずつインプラントを埋入した場合、費用が約360万〜480万円と算出されるため、オールオン4だとかなり費用が抑えられることが分かります。

インプラントの治療期間

インプラント 治療期間

インプラント治療にするにあたって、治療期間がどのくらいになるのか知りたい方も多いでしょう。

インプラント治療は一般的に数ヶ月〜1年程度といわれています。ただし、骨造成を行う場合は長期化すると見込まれます。

ここからはインプラント治療期間について詳しく解説します。

一般的に数ヶ月~1年程度

インプラントの治療期間は個人差があります。一般的には数ヶ月〜1年程度かかるといわれています。

インプラント治療は以下の流れで行われます。

  • インプラントの埋入手術
  • 人工歯の作成・装着
  • メンテナンス

まず、人工歯を装着するためにインプラントを顎の骨に埋入する手術を行います。

この手術の後、約3〜4ヶ月の期間を経て、人工歯を装着するための土台となるアバットメントを連結させる手術を行い、1〜2週間程度置きます。

この間に型をとり、インプラントの上に付ける人工歯を作成し、装着するまでが治療です。

治療後は、治療を受けた部分に問題がないかを定期的にメンテナンスします。メンテナンスは治療した箇所を長く良好に維持するために重要です。

骨造成を行う場合はさらに長くなる場合も

骨造成を行う場合は、治療期間がさらに長くなる可能性があります。

骨造成とは、インプラント治療において骨の厚み・高さが足りない場合に骨を増やすために行う方法のことです。

インプラントを埋入する顎の骨量が不足していると、手術を行うのが難しくなります。そのため骨造成も行う必要があるのです。

一般的に骨造成は患者さん本人の骨を採取して行いますが、足りない場合は補填材を使用します。

骨造成はインプラントの埋入手術と同時に行う場合・インプラントの埋入手術の前に行う場合があります。また、骨造成は数ヶ月間かかるといわれています。

骨造成も個人差はありますが、骨造成を行わない場合と比べると、骨造成がある場合はインプラントの治療期間が1年以上となる可能性もあるのです。

インプラント治療ができないケース

インプラント治療 できないケース

インプラントは誰でも治療できるものではありません。以下のケースは、インプラント治療が難しいといわれています。

  • 歯周病やむし歯がある
  • たばこを吸っている
  • 妊娠中である
  • 骨密度が低い

それぞれについて詳しく解説します。

歯周病やむし歯がある

歯周病・むし歯がある場合は、インプラント治療が難しいとされています。

歯周病を発症している方はインプラントの治療が行えたとしても、治療後のインプラントを維持するのが困難であると知られています。

そのため、歯周病・むし歯がある場合はこれらの治療を行ってから、インプラント治療を行うのが望ましいです。

たばこを吸っている

たばこ 吸っている

喫煙はインプラントの手術後の治癒・予後に影響を及ぼすとされています。

たばこを吸っている方は、粘膜が炎症を起こしやすかったり、粘膜の損傷が治りにくい傾向があります。

そのため、たばこを吸っていない方よりもインプラント治療が成功しにくく、インプラントを埋入しても骨と結合しにくくなる可能性があるのです。

さらに喫煙は歯周病を悪化させる他、インプラントを埋入した周辺に炎症が起こる可能性もあります。

これらのことから、たばこを吸っている方はインプラント治療を行えないとされています。

ただし、喫煙年数・喫煙本数・吸っているたばこの種類にもよりますが、禁煙を行うことでインプラント治療を行える場合もあります。

妊娠中である

妊娠中

妊娠中である場合もインプラント治療を行うのが難しいとされます。

インプラント治療は歯周病などの歯科治療と比べると、治療期間が長いため体に負担がかかるリスクがあります。

また、インプラント治療は手術で麻酔を使用します。妊娠中である場合、投与された薬は胎児にも移行し影響を与える可能性があると考えられています。

一般的に妊娠中に手術を行うことで流産・早産のリスクが高くなるといわれているため、インプラント治療は控えるのが望ましいです。

骨密度が低い

骨密度が低いと、インプラント治療が難しい可能性があります。

インプラント治療では人工の根を顎の骨に埋入するため、骨は丈夫で治療に耐えられる状態であることが必要です。

しかし、骨密度が低いと骨がもろく折れやすい状態であるため、治療を行っても顎の骨が折れてしまったり人工歯が抜けてしまったりするリスクがあります。

特に骨粗鬆症を発症している患者さんは、インプラント治療が難しい可能性が高いでしょう。

骨粗鬆症は骨量が減って骨がもろくなり、骨折しやすい状態のことで、加齢に伴って発症しやすくなります。特に閉経後の女性に多く見られます。

また、骨粗鬆症の患者さんのなかでも骨粗鬆症の治療薬としてビスフォスフォネート系薬剤・骨吸収抑制薬を服用している方は、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)を引き起こす場合があります。

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死とは、顎の骨が細菌感染を起こし壊死してしまう病気のことで、骨吸収抑制薬を服用している期間が長いほどリスクが高くなります。

インプラント治療においても、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の発症リスクがあると考えられるため、注意が必要です。

まとめ

まとめ

インプラントは、歯周病・歯根破折などで歯を失ったタイミングで行うのに適した治療法の一つです。また、生まれつき歯がない方にも行える治療法でもあります。

インプラントの埋入方法には抜歯即時埋入法・抜歯待時埋入法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

歯科医師と相談し、自分に合った方法で治療を行うと良いでしょう。

インプラントの費用は、1本当たり約30万〜50万円(税込)が相場といわれています。

全体をインプラントする場合は、1本ごとにインプラント治療を行うよりも費用を抑えることができるオールオン4という治療法がおすすめです。

ただし、歯周病を発症している方・喫煙している方・妊娠中の方・骨密度が低い方はインプラント治療自体を行えない場合があります。

インプラント治療が自分にとって適しているのかを十分に検討することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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