インプラント治療は気になるけれど、治療費用が心配という方は多いのではないでしょうか。特に治療の本数が増えると、その分費用も高くなってしまうので、なるべく費用を抑えた治療を受けたいという方もいるとおもいます。
そこでおすすめの治療法の一つが、インプラントオーバーデンチャーという治療方法で、部分入れ歯との併用も可能であり、治療費用を抑えながらしっかり噛める歯を実現しやすい治療です。
この記事では、インプラントと部分入れ歯の併用が可能なオーバーデンチャーについてを中心に解説します。
インプラントと部分入れ歯の違い
インプラントと部分入れ歯は、両方とも歯がなくなってしまった部位を補完する目的の治療法ですが、具体的にそれぞれどのような特徴があるのかをご存じでしょうか。
まずは、それぞれの特徴をご紹介します。
インプラント治療の特徴
インプラントは、日本語に直訳すると、埋め込むという意味の言葉です。
歯科治療でインプラントという場合、歯を支えている顎の骨に対して、金属製のパーツ（人工歯根）を埋め込み、そこに人工の歯を被せるという治療を指します。
治療の対象となるのはむし歯や外傷などによって歯がなくなってしまった部位で、天然の歯と同じように、骨に固定されることから、自然な噛み心地を実現しやすい点が特徴です。
なお、インプラントは骨に対して人工歯根を埋め込む治療のことなので、上にかぶせる人工の歯のパーツには、入れ歯やブリッジが用いられる場合もあります。 インプラント治療は基本的に保険適用外で、先天的に歯が生えていない場合や、外傷によって顎の組織を失ってしまったというような場合以外では自費診療で治療が行われます。
また、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込むという大がかりな手術が必要になるため、治療費用が高額になりやすい点や、手術による身体への負担が大きくなる点がデメリットです。
特に複数の歯に対してインプラント治療を行おうとすると、身体的な負担や経済的な負担が大きくなりやすい治療といえます。
部分入れ歯の特徴
入れ歯は、好きなタイミングでつけたり外したりすることができる人工の歯です。
入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯があり、前歯から奥歯までの全体をカバーするものが総入れ歯、歯が欠けている一部分だけをカバーするものが部分入れ歯と呼ばれます。
部分入れ歯は白い歯のパーツと、それを支える床と呼ばれる歯茎に当てるパーツ、そして入れ歯を固定するためのパーツで構成されています。
部分入れ歯にはさまざまな種類があり、保険適用で治療を受けることも可能です。
好きなタイミングでつけ外しが可能で、専用の洗浄剤などを使用して清潔に保ちやすいというメリットや、修理や調整をしやすいといった、取り扱いやすさがメリットです。
一方で、インプラントと比べると安定感が得にくく、噛む力が十分に発揮しにくいというデメリットがあります。
インプラントと部分入れ歯を併用するオーバーデンチャーとは
インプラントと部分入れ歯にはそれぞれメリットやデメリットがありますが、この二つを併用して、両者の優れた部分を活用する治療がオーバーデンチャーです。
まずはオーバーデンチャーの特徴をご紹介します。
インプラントオーバーデンチャーの特徴
インプラントオーバーデンチャーは、簡単にいえば、インプラントで支える入れ歯の治療です。
上述のとおり、入れ歯は任意で取り外しが可能であるという扱いやすさが一つのメリットですが、一方で安定感が弱く、十分な噛み心地を発揮しにくい点がデメリットです。
インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯をインプラントで支える（固定する）という方法によって、入れ歯をしっかりと安定させ、天然の歯と近いような噛み心地の実現を目指す治療法です。
インプラントオーバーデンチャーは総入れ歯と部分入れ歯のどちらでも対応可能です。
インプラントオーバーデンチャーが向いている人
インプラントオーバーデンチャーの治療を行うためにはまず、インプラント治療を受けることができる条件が揃っている必要があります。
インプラントは歯を支えている顎の骨にパーツを固定するため、骨の量が十分にないと治療を行うことができません。ただし、骨量が不足している場合には骨造成という骨を増強する治療を併用することで、治療が可能になる場合もあります。
また、歯の欠損が1本の場合は、インプラントオーバーデンチャーにするメリットが特にないので、欠損部位が2本以上、特に連続した歯が欠損している方にとって向いている治療といえます。
インプラントオーバーデンチャーの治療の流れ
インプラントオーバーデンチャーの治療は、通常のインプラント治療と基本的に同じ流れで行われます。 まずはしっかりとした検査でインプラント治療が可能かどうかを確認し、手術でインプラント体（人工歯根）を顎の骨に埋め込みます。
インプラントの手術には1回法と2回法という二つの方法があり、これは手術を行う回数の違いです。 1回法は、インプラント体を骨に埋入させた後、インプラントの上部が歯茎から露出した状態で縫合し、粘膜部分が治癒したら、上部構造と呼ばれる白い歯のパーツを装着します。 2回法は、インプラント体を骨に埋入させた後、いったんインプラントごと歯茎の粘膜で覆うように縫合し、一定期間が経過してから、再度歯茎を切開して、白い歯を装着するためのパーツを連結させます。
なぜ2回法のような手順をとるかというと、埋め込まれたインプラント体は時間経過とともにゆっくりと歯の骨に結合される性質を持っているため、この結合を待ってから次の工程に進むことで、良好な治療結果が得やすくなるためです。
結合までの期間は上顎の場合で5ヶ月前後、下顎の場合で3ヶ月前後とされています。 1回法は早めに上部構造を取り付け、歯の機能を回復させやすいというメリットがありますが、細菌感染のリスクが高く、対応している歯科医院が限られます。 インプラントオーバーデンチャーの治療を行う場合は、インプラントがしっかり結合した段階で歯型を採取し、お口の形に合わせたオーバーデンチャーを作成して完成です。
後は自分で入れ歯を付けたり外したりすることができます。
インプラントオーバーデンチャーのメリット
インプラントと部分入れ歯の併用で行うオーバーデンチャーには、下記のようなメリットがあります。
すべてインプラントにするよりも負担が少ない
歯が複数本欠損している場合、すべての歯をインプラントにしていくと、手術による身体的負担や、治療費用による経済的な負担が大きくなります。
インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラントで入れ歯を支えるため、手術する本数を減らすことが可能であり、これにより身体的、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
しっかりと噛む力を発揮できる
一般的な部分入れ歯の場合、歯を固定するのはクラスプと呼ばれる金属製のパーツで、これを隣接する歯にひっかけることで入れ歯を安定させます。
しかし、この方法は入れ歯の外側で軽く支えているような状態なので、どうしても天然の歯のような安定感は実現が難しく、強い力がかかると入れ歯がずれるなどの状態が生じ、硬いものなどが噛みにくくなります。
また、入れ歯を固定するための器具をひっかけている歯に負担がかかりやすく、残っている歯の健康を損なってしまう可能性もあります。
一方で、インプラントオーバーデンチャーは入れ歯を内側から固定することが可能であり、固定源であるインプラントが天然の歯と同じように歯槽骨に接続されているため、天然の歯と近い噛み心地を実現可能です。硬いものでもしっかりと噛むことが可能で、残っている歯に対する負担もかからない点がメリットといえます。
顎の骨の量が少なくてもできる
インプラント治療は顎の骨に固定させるため、顎の骨の量が十分にないと適応が難しい治療です。
複数の歯が欠損している場合、欠損部位をすべてインプラントにしようとすると、全体的に顎の骨が残っている必要があります。しかし、そもそも複数の歯を欠損しているような方の場合は骨量が減少してしまっているケースも多く、治療を受けられない可能性が高まります。
一方で、インプラントオーバーデンチャーはインプラントを埋め込む場所が少なくて済むため、骨の量が減ってきていても、治療を受けられる可能性があります。
骨造成などの治療が必要な場合も、治療する箇所が少なくて済みます。
手入れがしやすい
インプラントオーバーデンチャーは任意で取り外しが可能で、専用の入れ歯洗浄剤などを使用して清潔に保つことができます。
また、口腔内の状況に変化があった場合でも、入れ歯を調整したり作り直したりすれば対応ができるので、歯科医院でのメンテナンスも手軽に受けやすいといえます。
インプラントオーバーデンチャーのデメリット
インプラントオーバーデンチャーにはさまざまなメリットがある一方で、やはりデメリットも存在します。
費用が高額になりやすい
インプラントオーバーデンチャーのデメリットの一つが、費用面です。
上述のとおり、すべての歯をインプラントにするよりかは経済的な負担を抑えやすい治療ではありますが、一方で保険適用の部分入れ歯などと比べれば、やはり治療費用が高額になってしまう点は否めません。
また、インプラント治療は基本的に保険適用とならず、自費診療での治療であるため、治療費用が歯科医院ごとに異なる点も、治療の検討が難しい要因の一つです。
治療費用が高額であればよい治療を受けやすいとは必ずしもいえないため、どこで治療を受けたらよいかを判断しにくいかもしれません。
時間経過とともに劣化する可能性がある
インプラントオーバーデンチャーは、人工物を使用した歯科治療ですので、やはり時間経過とともに劣化していってしまう可能性があります。
劣化が進んでいくと、場合によっては強い力が加わった際などに破損する可能性もあり、修理のためにお金がかかることもあります。
保険適用の部分入れ歯であれば修理費用を抑えやすいですが、インプラントオーバーデンチャーの場合は自費診療での作成なので、修理や作り直しが必要な場合の価格がある程度の金額になってしまいやすいといえます。
インプラントオーバーデンチャーの種類
インプラントオーバーデンチャーは、固定する方法によって複数の種類があります。
それぞれの特徴をご紹介します。
ボールタイプ
インプラントの先端にボール状のパーツを取り付け、ボール状のパーツがぴったりはまるような構造を入れ歯の内面に用意し、そこにはめ込むことで入れ歯を固定する方法です。
少し前までは使用されることの多いタイプでしたが、ボールタイプのオーバーデンチャーを扱うメーカーが減少し、少なくなっています。
バータイプ
インプラント同士をバーのようなもので接続し、このバーを挟み込むような形のクリップを入れ歯の内面に用意することで、固定させる方法です。
入れ歯の固定が点ではなく線になることで安定させやすいというメリットがありますが、費用が高くなりやすく、クリップの劣化もしやすいことなどから、現在はあまり使用されません。
マグネットタイプ
インプラントの先端に磁力と反応する金属を取り付け、入れ歯内部に協力な磁石を埋め込むことで、磁力の力で入れ歯を安定させる方法です。
インプラントに対する負担が少なく、つけ外しが楽である点がメリットの方法ですが、磁力に反応する金属を取り付けるため、MRI検査を受けにくくなります。
ロケータータイプ
ボタンのような構造のロケーターと呼ばれるパーツをインプラントに取り付け、パチッと入れ歯を固定させることができるタイプです。
現在、特によく利用されるタイプです。
コーヌステレスコープ
ドイツ式入れ歯とも呼ばれるコーヌステレスコープの併用を行うオーバーデンチャーです。
インプラントの先端に金属製のクラウンをかぶせ、それにピッタリとはまるような構造を持った入れ歯を合わせることで、茶筒の蓋のようにしっかりと固定させることができます。
インプラント側に窪みなどがないため、清潔に保ちやすく、つけ外しがしやすいというメリットがあります。
まとめ
インプラントと部分入れ歯を併用して行うオーバーデンチャーは、すべての歯をインプラントにする治療よりも身体的な負担や経済的な負担を抑えやすく、複数の歯をなくしている方におすすめの治療法の一つです。
インプラントや部分入れ歯、そしてオーバーデンチャーは、それぞれにメリットやデメリットなどがありますので、歯科医師とじっくり相談して、自分に合った治療法を見つけてくださいね。
参考文献
電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。