インプラント

インプラント治療で歯を抜く必要はある?抜歯後の治療の流れも解説

インプラント治療で歯を抜く必要はある?抜歯後の治療の流れも解説

インプラント治療を検討するとき、できれば自分の歯を残したいと思う方はいるのではないでしょうか。抜歯が避けられないケースと抜かずに済む可能性のあるケースにはそれぞれ理由があります。

本記事ではどのようなケースで抜歯が必要なのか、逆に残せる可能性があるのはどのような状態なのかをわかりやすく解説します。

さらに、抜歯後の治療の流れや期間、治療法の選び方も含めて詳しくご紹介します。ぜひ最後まで読んで納得のいく治療をしましょう。

インプラント治療で歯を抜く必要はある?

疑問

インプラント治療を検討する際、歯を抜くべきかどうかの判断はとても重要なポイントとなります。

重度のむし歯や歯周病、または歯根の破折など歯の保存が困難な場合には抜歯が必要とされるケースが多いです。しかし、状態によっては根管治療や補綴処置(失われた歯や歯の一部の機能・形を人工物で補う治療)により、歯を残すことが可能な場合もあります。

抜歯が必須とは限らず、症状や周囲の組織の状態を総合的に判断が必要です。治療の方針は、歯の状態だけでなく骨の質や量、さらに将来の予後まで含めて慎重に検討されます。

歯科医師に相談し保存の可能性について十分な説明を受け、選択肢を比較することが納得できる治療につながるでしょう。

インプラント治療で抜歯が必要なケース

矯正器具

歯の損傷が大きく、修復が困難な場合にはインプラント治療の前に抜歯が求められます。

むし歯や歯周病の進行が著しいケース、歯が割れてしまっている場合です。また、オールオン4のような特殊な治療法を選択する際も抜歯が前提となることがあります。

以下で具体的な例を見ていきましょう。

重度のむし歯や歯周病

歯の内部まで細菌が浸潤し、根管治療で対応しきれないほど組織が破壊されている場合は、抜歯に踏み切らざるを得ないことがあります。

歯周病でも歯の周囲の骨が大きく吸収され、歯の支えが著しく弱くなっていれば保存が難しいです。こうした状態では、歯を残しておいても周囲の歯や歯茎に悪影響を及ぼす恐れがあります。

最終的には抜歯を選び、インプラントによって失われた歯の機能を補うほうが有効と考えられる場合が多いでしょう。

歯が割れている

強い衝撃や長期間の負担によって、歯にヒビが入ることがあります。特に、歯根まで亀裂が達している場合は、修復での対応が難しく、抜歯が検討されるケースが多くなります。

浅い割れであれば、被せ物や詰め物で補える可能性もありますが、深く縦に走る亀裂は保存が困難です。折れ方が複雑な場合は、歯の内部に細菌が入り込みやすく、感染によって歯茎や顎の骨にまで影響が及ぶこともあります。

そのままにしておくと腫れや痛みが悪化するため、早めの処置が必要です。歯の割れは見た目では判断しづらいため、歯科医師の診察を受け抜歯の必要性を含めた適切な治療法を検討しましょう。

オールオン4の治療のため

オールオン4は、顎全体の歯が大きく損傷しているときに、基本的に4本のインプラントで上または下の歯列を一気に支える方法です。現存する歯が使えない場合、一度全体を整理してから新しい歯列を構築する必要があります。

従来の総入れ歯に比べてしっかりと固定された歯を得られる点が魅力ですが、その前段階として抜歯が行われることがほとんどです。

抜歯するかどうかは、歯の破損度や骨の状態、そして将来的な予後が考慮されます。治療法を決定する際は、現在の歯を残せるかをよく検討し、必要であれば抜歯を選択する流れが一般的です。

インプラント治療で抜歯が不要なケース

女性歯科医

すべてのインプラント治療で抜歯が前提になるわけではありません。すでに歯が抜けている部位への埋入や残存歯が修復可能と判断される場合では、抜歯を行わずに治療を進める選択肢もありえます。

歯の状況を総合的に見極めて、あえて抜かずに済む場合は保存を優先したほうがよいこともあります。ここからは、抜歯が不要となる代表的なパターンを見ていきましょう。

歯をすでに失っている場合

顎の骨に厚みや高さが十分残っていれば、そのままインプラントの埋入が可能です。

治療の流れもスムーズに進められるため、計画を立てやすい利点があります。ただし、歯を失ってから長期間が経過している場合には注意が必要です。

骨が少しずつ吸収されている可能性があり、骨の量が不十分であると、骨造成の前処置が必要になることもあるでしょう。このような処置には期間や費用が追加されることもあるため、事前の検査と相談が重要になります。

欠損があるからといってすぐに治療を始めるのではなく、顎の状態や治癒の過程を踏まえて適切なタイミングで治療を行うことが大切です。

残っている歯が治療可能な場合

抜歯を検討されるような状態でも、根管治療によって機能の回復が見込める場合には、インプラントに頼らず天然歯を残す選択も可能です。

歯を残すことで噛み合わせ全体のバランスを保ちやすく、周囲の歯や骨に与える影響も少なく抑えることができます。また、治療範囲を広げずに済むため、身体的な負担の軽減にもつながります。

ただし、歯根や歯周組織の状態によっては、長期的な安定が難しいと判断されることもあるため注意が必要です。保存するかどうかの判断は、専門的な検査とカウンセリングを通じて慎重に進めることが重要です。

治療後も定期的な検診やセルフケアを怠らず、再発防止に努めることで、天然歯をより長く維持できる可能性が高まります。

抜歯後のインプラント治療の流れ

インプラント

インプラント治療は、抜歯の後すぐに進められる場合と一定期間の治癒を待ってから行う場合があります。どちらの方法を選ぶかは、顎の骨の状態や炎症の有無、患者さんの体調などによって異なります。

それぞれに異なるメリットと注意点があるため、事前に流れを把握しておくことが大切です。ここでは抜歯即時埋込法と抜歯待時埋込法の流れを解説します。

抜歯即時埋込法の流れ

抜歯即時埋込法とは、歯を抜いたその日のうちにインプラントを埋め込む治療法です。抜歯窩(歯を抜いた穴)を丁寧に洗浄し、炎症や感染の兆候がなければ、そのままインプラント体を埋入します。

この方法は、治療回数や通院期間を減らせる可能性があり、患者さんの負担を軽減しやすい点が特徴です。また、抜歯後の骨の吸収を抑えやすく、見た目の回復も早くなることがあります。

ただし、骨の量が不十分な場合や感染リスクが高い場合には適応できないケースもあるため、事前の診査と歯科用CTによる評価が欠かせません。

無理に即時埋入を行うと、インプラントの初期固定が不安定になるリスクもあるため、慎重な判断が求められます。すべての患者さんに適しているわけではないため、医師との相談を重ねながら進めましょう。

抜歯待時埋込法の流れ

抜歯待時埋込法は、歯を抜いた後に数ヶ月から半年の治癒期間を設け、歯茎や骨の状態が整ってからインプラントを埋入する治療法です。この方法は、抜歯部位に感染や炎症があった場合や、骨の再生が必要な症例に適しています。

治癒期間を確保することで、インプラント体の初期固定が得られやすく、長期的な安定性につながることが期待できます。一方で、治療期間は長くなりやすく、抜歯と埋入で2回の手術を行う必要があるため、通院回数も増えるでしょう。

治癒を待つ間は、見た目や噛み合わせを補うために仮歯や入れ歯を使用することが一般的です。即時埋入に比べて慎重な手順を踏む分、安全性を重視した治療といえるでしょう。骨の状態に不安がある場合にも、この方法が選ばれるケースが多くなっています。

抜歯即時埋込法のメリットとデメリット

メリットやデメリット

抜歯即時埋込法は、歯を抜いたその日にインプラントを埋入する治療法です。通院や手術の回数を減らせる反面、適応できる条件が限られる特徴があります。

ここでは、即時埋込法の主なメリットとデメリットを押さえておきましょう。

メリット:治療回数が少ない

抜歯即時埋込法の大きな利点は、治療回数を少なく抑えられる点です。抜歯とインプラント埋入を同日に行うため、通常2回必要となる処置を1回で済ませることができます。

その結果、通院の手間や身体への負担を軽減でき仕事や家庭との両立がしやすくなるメリットがあります。また、治療全体のスケジュールが短縮されるため、早く噛める状態に戻りたい方にとっても適した方法といえるでしょう。

ただし、すべての症例で行えるわけではなく、炎症の有無や骨の質などを総合的に判断する必要があります。

適応条件が合致している場合には、効率的かつ短期間での治療が期待できます。医師との十分な相談のうえ、計画を立てることが重要です。

メリット:痛みや腫れが少ない

歯の治療器具

抜歯とインプラント埋入を同時に行うことで、手術を2回に分ける方法よりも身体への侵襲を抑えられる可能性があります。切開や縫合の回数が少なくなるため、術後の痛みや腫れも軽減されやすいといわれています。

特に、治癒力の高い初期段階にまとめて処置を行うことで、回復のスピードが早くなる利点も見込めるでしょう。患者さんの不安やストレスも減りやすく、治療に対する心理的ハードルが下がるケースもあります。

ただし、術後のケアを怠ると感染のリスクは残るため、セルフケアや定期検診が不可欠です。また、痛みや腫れの感じ方には個人差があることから、すべての患者さんに同じ効果が現れるとは限りません。処置のタイミングと術後の管理が重要となります。

デメリット:インプラント体が安定しないことがある

抜歯直後は骨や歯茎の状態が不安定であることが多く、インプラント体が十分に固定されない可能性があります。特に抜歯部位に炎症があったり、骨吸収のスピードが早く進行したりすると、初期固定が難しくなり、場合によってはインプラント体が露出して審美的な問題を引き起こす可能性もあります。

インプラントが安定しないと、治療後に動揺や脱落のリスクが高まるため、再治療が必要になる場合もあるでしょう。また、インプラント体と骨の結合(オッセオインテグレーション)がうまく進まなければ、長期的な成功率にも影響を及ぼします。

骨造成や補助的な処置が追加されることもあり、結果的に治療期間が延びるケースも少なくありません。即時埋込はスピード感が魅力ですが、骨の量や質が十分でなければリスクを伴う方法でもあります。

抜歯待時埋込法のメリットとデメリット

パソコンをする

​​抜歯待時埋込法は、歯を抜いた後に一定の治癒期間を設けてからインプラントを埋入する治療法です。治療期間は長くなりますが、さまざまな症例に柔軟に対応できることが特徴です。待時埋込法の主なメリットとデメリットを理解し、状態に応じた選択肢を検討しましょう。

メリット:適応範囲が広い

抜歯待時埋込法の大きな特徴は、多くの症例に対応できる柔軟性の高さにあります。抜歯後に歯茎や骨の回復を待つことで、感染や炎症が落ち着き手術環境がより安全性の高い状態です。

例えば、歯周病が進行していた部位や骨吸収があるケースでも、必要に応じて骨造成や歯肉の再生処置を行えるため、無理のない計画が立てやすくなります。

また、インプラント体の固定性が高まりやすい利点もあります。即時埋込法に比べて期間がかかるものの、幅広い症状に対応できることから、安全性や成功の見込みを重視したい方にとって適した方法といえるでしょう。

長期的な成功率を高めるためにも、こうした柔軟な選択肢が用意されていることは大きな利点です。

メリット:インプラント体が安定しやすい

歯の模型

抜歯後に治癒期間をしっかり設けることで、インプラント体の初期固定が得られやすくなります。歯を抜いた直後の骨や歯茎はやわらかく不安定なことが多いため、時間をおいて組織の再生を待つことで、インプラントをしっかりと支える環境が整います。

この安定性は、インプラントと骨が結合する過程(オッセオインテグレーション)にもよい影響を与え、治療の成功率を高める要因となるでしょう。

さらに、骨が十分に回復してから埋入できるため、見た目や噛み合わせの仕上がりにもこだわりやすくなります。治療の手間は増えるものの、安全性や品質を優先するなら、この方法が有力な選択肢となるでしょう。

デメリット:手術が2回必要となる

抜歯とインプラント埋入を別々に行うため、手術が2回に分かれ、患者さんの身体的・時間的な負担が増えるデメリットがあります。さらに、抜歯後の治癒期間として数週間から数ヶ月が必要となり、治療全体のスケジュールが長期化する点も避けられません。

その間、仮歯や入れ歯を装着して日常生活を送ることになりますが、これに不便を感じる方も少なくないでしょう。また、手術のたびに腫れや痛みが出る可能性もあり、精神的なストレスが蓄積することもあります。

とはいえ、治療の成功の見込みを重視したい場合には有効な選択肢です。一度の治療で完結しない分期間はかかりますが、慎重かつ丁寧に進めることができる方法です。

まとめ

歯を磨く

インプラント治療で歯を抜くかどうかは、歯の損傷度や骨の状態、長期的なリスクを含めて検討されます。

歯根や歯茎の状態が良好でむし歯や歯周病がひどくなければ、根管治療や被せ物などで歯の機能を回復できる可能性があります。

抜歯即時埋込法と抜歯待時埋込法のいずれかを選ぶにしても、骨や歯茎の状態やライフスタイルに合わせて総合的な判断が重要です。

納得できる治療プランを立てるために、歯科医師とじっくり相談することが大切です。複数の選択肢を比較し、予防も含めた治療計画を立てましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

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