歯がないと顔が歪むと聞いたことはありませんか?加齢やむし歯、さらには歯周病などが原因で1本でも歯を失ってしまうと、顔の筋肉の使い方が変化したり、なくなった歯のスペースにほかの歯が動いたりして、結果として顔が歪んだ印象になることがあります。
特に、歯を失いやすくなるご高齢の方は、歯を失ってから人相が変わったり、老け顔になってしまったりなどの事態を招きやすいとされています。
一方、歯がなくなることで起きる影響や、リスク、さらには治療方法に関してあらかじめよく理解しておくことで、トラブルは回避できます。そこでこの記事では、歯がないことで顔や歪む症状に関連することをわかりやすく解説します。
歯がないことによる顔の歪みについて
- 歯がないと顔が歪むことがありますか?
- 歯がないと顔が歪むことがあります。具体的には、顔の左右差が生じる、鼻が曲がって見える、そして左右の目の高さが異なるといった症状が該当します。ほかにも、顔の片側だけが垂れ下がってしまう、頬がこける、口元が歪む、さらには出っ歯になってしまうこともあり、顔の歪みの程度や症状は人それぞれです。
- 顔が歪む原因を教えてください
- 歯がないと顔が歪む原因として、歯並びの変化、顔の筋肉の変化、そして顎の骨量が減ることが挙げられます。
歯がなくなることで、歯があった部分に隙間が生じ、隣の歯が斜めに倒れるようにして動いてしまうと歯並びが変化します。
歯並びが変化すると、噛み合わせが悪くなり、必然的に顔の筋肉も変化します。具体的には、咬筋、大頬骨筋、小頬骨筋などの筋肉の使い方が変わってしまい、結果として顔が歪んだ印象になるわけです。
また、歯がないことで咀嚼が不十分になると、顎の骨を刺激する量も変化します。骨は、刺激が加わらないと衰えてしまう性質があることから、噛む力が低下すると顎の骨量が減ってしまう可能性があります。
顎の骨が減少すると、噛み合わせに影響がでる場合があり、これによって顔の筋肉のつき方などが変化することも、顔が歪む要因となることがあります。
このように、歯がないと顔が歪む原因は、歯がなくなることをきっかけにして、連鎖的な悪循環が生まれることが大きく影響しているといえるでしょう。
- どの歯がないかによって顔の歪みやすさは異なりますか?
- 例えば、奥歯がなくなると、頬がこけて顔が歪む可能性があります。また、奥歯を失うと嚙み合わせが悪くなって、口元の高さが変わる、頬がたるむ、さらにはほうれい線が深くなり、余計に歪んだ印象を与えやすくなるでしょう。奥歯を失うと、嚙み合わせ時の高さが不十分になり、上下の前歯がぶつかりやすくなります。上下の前歯が衝突を繰り返していると、必然的に前歯が外側に飛び出るようにして出っ歯になるかもしれません。
嚙み合わせの位置に大きく影響する犬歯を失ってしまうと、嚙み合わせの位置がずれやすくなり、口元が歪んだ顔になる可能性があります。ほかにも、中切歯や側切歯などの前歯を失うと、口腔内側からの支えがなくなってしまうため、唇や頬が陥没するようにして口元が歪むかもしれません。
このように、いずれの歯であっても、ひとたび失ってしまうと顔が歪みやすくなると考えてください。
歯がない状態を放置するリスク
- 歯がないと顔の歪み以外にもトラブルが生じますか?
- 歯がないと顔が歪むだけでなく、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。
- 歯が突出したり移動したりする挺出(ていしゅつ)が起きやすい
- 歯の傾斜や捻転が起こりやすい
- 唇や頬を噛んでしまう
- 発音しにくくなる
- 顎関節症を発症しやすい
- 姿勢の悪化
- 消化器官の負担が増える
- 歯科治療が困難になりやすい
- 認知機能の低下
- 食事が楽しめない
歯の欠如は、さらなる歯の欠如を招きやすくなるほか、口内炎や顎関節症、さらには認知機能の低下などのトラブルも引き起こす可能性があります。また、嚙み合わせが悪くなることで十分な咀嚼ができなくなり、内臓に負担をかけたり、肩こりや頭痛を招いたりすることもあります。歯を失ってしまうと食事が苦痛になり、食事のたびに嫌な思いをする精神的なダメージを負うかもしれません。つまり、歯がなくなることは、身体だけでなく精神にもトラブルが生じる可能性があるということです。
- 歯がないまま放置すると歯並びが変わりますか?
- 歯がないまま放置していると歯並びは変わります。例えば、1本歯がなくなった状態を放置していると、抜けた歯の隙間に隣の歯が倒れるように動くため、歯並びは変わるでしょう。空いたスペースを埋めるかのようにして動いた歯は、次第に歯茎から歯根が露出して、抜け落ちてしまう可能性があります。仮に、複数本の歯がなくなってしまうと、歯並びが大きく変わり、顔の歪みや頬のこけなどが目立つようになるでしょう。
歯は隣にスペースがあるとスペースを埋めるようにして動く性質があります。1本でも歯がない状態で放置していると、徐々に歯が動いて歯並びが変わるだけでなく、周りの歯までを失う事態になるかもしれません。
歯がない場合の治療方法
- 顔の歪みはインプラントで改善できますか?
- 歯がないことで顔が歪んでしまう症状は、インプラント治療によって改善できます。歯を失うことで顔が歪む原因は、歯がなくなったことで歯並びや顔の筋肉、そして顎の骨量などが変化するためです。一方、インプラント治療は、歯を失っても、本来の歯の状態に近づけることが可能なため、顔の歪みを生むそれぞれの要因に対処できます。また、歯を失ってからしばらく経過してしまった場合であっても、インプラント治療によって歯を取り戻すことで、顔の歪みが改善したり、顔の印象がよくなったりする効果も期待できるでしょう。
むし歯や歯周病、そして加齢などによって歯を失った場合、そのまま放置していてもよくなることはありません。そのままにしておくと、顔の歪みが生じるだけでなく、心身に悪影響が及ぶ可能性があるため、できるだけ早い段階でインプラント治療を検討してください。
- 歯がない場合のインプラント以外の治療方法を教えてください
- 歯がない場合、インプラント以外の治療法として、ブリッジ、入れ歯、そして歯列矯正などの選択肢があります。
ブリッジは、なくなった歯の両側の歯を削り、人工歯を被せるようにして固定させる方法です。ブリッジは切開などの外科的な処置が不要なことや、違和感が少ない長所がある一方、固定するために歯を削ることがあるほか、土台となる歯に負担がかかりやすい短所があります。
入れ歯は、欠損した部分に義歯を入れる方法で、部分入れ歯や総入れ歯など、個々の症状に合わせて使用します。一般的な入れ歯は保険が適用されるため、コストが抑えられることや、お手入れのしやすさがメリットですが、違和感の発生や嚙む力の低下は否めません。
歯列矯正は、適用されるケースは限定的ながら、歯を失った際の治療法として、ひとつの選択肢になります。ブリッジや入れ歯のように人工歯を使わずに済むことや、自然な仕上がりになる利点がある反面、費用が高額になる、治療期間が長い、そして適用症が限られることが欠点に思えるでしょう。
編集部まとめ
歯がないと顔が歪む可能性は十分にあります。歯がなくなると、歯並びや、顔の筋肉の使い方、そして顎の骨量が変化し、結果的に顔が歪んでしまいます。歯がなくなることで、顔が歪むだけでなく、姿勢や認知機能を悪化させる恐れもあるため、影響は甚大と認識しましょう。
歯が欠損した場合は、インプラント治療、ブリッジ、入れ歯、そして歯列矯正などの選択肢で対処可能なので、かかりつけの歯科医に相談してください。
参考文献