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インプラントで上の歯の治療が難しい理由は?骨が薄くなる原因・治療法を解説

インプラント 上の歯

インプラントで上の歯の治療をするのは難しいと聞いたことがある方は少なくないでしょう。なぜ、上の歯のインプラント治療は難しいのでしょうか。

本記事では上の歯のインプラント治療が難しい理由と、上顎の骨が薄くなる原因を解説します。

上の歯のインプラント治療をするときに使われる治療法も紹介するので、参考にしていただけますと幸いです。

インプラントで上の歯の治療が難しい理由は?

相談する医師

インプラント治療にはさまざまなメリットが存在します。機能性や審美性に優れており、自分の歯と同じような噛み心地や見た目の美しさを手に入れられます。

しかし、自由診療なので費用が高額で、外科的手術を必要とするためリスクを伴うことなどがデメリットとして挙げられるでしょう。インプラント治療は専門性の高い治療のため、症例によっては治療を断られることもあります。

上の歯のインプラント治療が難しいとされるのも、上の歯のインプラント治療は難易度が高いためです。上の歯のインプラント治療にはどのような課題があるのでしょうか。

上の歯のインプラント治療が難しいといわれる理由を紹介します。

顎の骨が薄い

上顎の骨は下顎の骨と比べると薄いといわれています。上顎の奥歯の部分に、上顎洞と呼ばれる空洞があるためです。

そのため、インプラントを埋め込む程の骨の厚みがないことが多いようです。上顎洞については後程詳しく説明します。

顎の骨の硬さが足りない

顎骨の硬さは、インプラントの機能性にも関わってきます。硬さが足りないと、インプラントを十分に支えることができません。

その結果、インプラントが脱落してしまうリスクもあります。顎骨は皮質骨と海綿骨で構成されており、皮質骨は硬い構造をした骨です。海綿骨はスポンジ状のやわらかい骨です。

上顎は下顎よりも、この海綿骨の比率が高い傾向にあります。そのため、上顎の骨の硬さが足りないのです。

骨密度が低い

個人差はありますが、上顎は下顎と比べると骨密度が低いといわれています。骨密度が低いと、インプラントと顎骨の結合に時間がかかります。

下顎の骨とインプラントが結合するまでの期間の目安は2~3ヵ月程ですが、上顎の骨とインプラントが結合するまでの期間は3~9ヵ月です。このように、骨密度が低いため、結合するまでに時間を要します。

前歯の場合は見た目への配慮が必要

鏡を見る女性

前歯にインプラントを入れる場合、見た目への配慮が必要になります。なぜなら、前歯は顔の印象を左右する部位だからです。

インプラントの位置や角度が少しずれただけでも左右のバランスが悪くなり、違和感がでてしまいます。ほかにも、前歯は歯茎が下がりやすいことも治療が難しいとされる理由です。

そのため、治療後の歯茎の動きも予測しながら、見た目もきれいになるようにインプラントを入れないといけません。

上顎洞の存在

上顎洞は目の下から鼻の周りにかけて存在する空洞です。シュナイダー膜と呼ばれる膜で覆われています。

このシュナイダー膜が傷つくと、感染症を引き起こすリスクがあります。上顎洞炎と呼ばれ、鼻の違和感を覚えたり痛みや腫れがでたりなどのトラブルが起こるようです。

インプラント治療でシュナイダー膜を破り、上顎洞にインプラントが迷入するトラブルも報告されています。

上顎の骨が薄くなる原因

歯の模型

上顎の骨が薄くなるのは構造上の問題だけではなく、ほかの要因でも薄くなることがあります。

  • 欠損歯を放置した
  • 歯周病で骨が吸収された
  • 入れ歯で骨が痩せた

主に考えられる原因は、この3つです。ここでは、これら3つの原因を詳しくみていきましょう。

欠損歯を放置した

何らかの理由で歯を失ったときに、インプラント治療を検討する方は少なくないでしょう。しかしなかには、歯を失ったまま放置していた方もいるのではないでしょうか。

歯がなくなると、その場所にあった骨は存在意義をなくします。食べ物を噛んだりするときの刺激がなくなるためです。

その結果、その部分の顎骨は瘦せていきます。「骨吸収」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。骨吸収は、このように骨が瘦せていくことを指します。

歯周病で骨が吸収された

歯周病も上顎の骨が瘦せる原因の1つです。歯周病は歯茎が炎症を起こす疾患ですが、症状が重くなると顎骨が吸収されていきます。

歯が抜け落ちる程、骨が薄くなってしまうこともあります。

入れ歯で骨が痩せた

歯を失った方の中には、入れ歯を使っている方もいるでしょう。入れ歯を使っていても、骨吸収は起こります。

なぜなら、入れ歯は歯茎の上に歯を乗せているだけだからです。そのため、歯茎に適度な刺激が加わらず、骨が痩せてしまいます。

骨吸収は歯だけの問題ではなく、見た目にも影響を与えるでしょう。頬がこけて見え、老けて見られてしまうかもしれません。

インプラントで上の歯を治療する場合に用いられる治療法

治療中

インプラントで上の歯の治療をする場合、骨造成治療が必要になるでしょう。骨造成治療は、足りない骨を増やすための治療法です。

骨が薄いままインプラント治療を始めると、インプラントがしっかりと固定できず脱落事故につながったり、上顎洞を貫通してしまったりするリスクもあります。

骨造成を行うことでこれらのリスクを軽減できます。また骨の厚みがあるとインプラントがしっかりと安定するため、長く使えるメリットがあります。

ここでは上顎の骨を増やすための骨造成治療について、詳しくみていきましょう。メリットやデメリットも紹介します。

傾斜埋入法

歯の石膏模型上の歯のインプラント治療をするときは骨造成治療が必要と述べましたが、骨造成をしなくてもインプラント治療ができる方法があります。それが、傾斜埋入法です。

上顎洞を避けるように、骨が残っている部分に斜めにインプラントを埋め込む方法です。通常のインプラント治療と変わらないため、患者さんの負担は抑えられます。

通常のインプラント治療と同じため、費用も変わりません。インプラント1本あたり、300,000~500,000円(税込)程が費用相場です。参考にしてみてください。

しかし、すべての歯科医師ができるわけではありません。傾斜埋入法は難易度が高く、安全性の高い治療を受けるためには歯科医師の技術力が求められます。

ソケットリフト

ソケットリフトは、部分的に骨を再生する治療法です。骨の厚みが3~5ミリ以上あり、増やす骨の量が少ないときに、ソケットリフトが採用されます。

シュナイダー膜を傷つけないようにドリルで顎骨に穴を開け、シュナイダー膜を押し上げるように補填剤を注入します。その後、インプラントを埋め込み、骨が作られたら上部構造(人工歯)を装着して完了です。

手術範囲が狭いので傷口が小さく、患者さんの負担が少ないのがメリットです。ただし、部分的にしか骨を作れないため、広範囲の骨を作れません。

傷口が小さいことは患者さんにとってはメリットですが、歯科医師の立場からみるとデメリットになります。治療部分が見えづらく、シュナイダー膜が破れてしまうリスクがあります。

サイナスリフト

サイナスリフトは骨の厚みが3~5mmに満たず、作る骨の量が多いときに行われる治療法です。上顎洞のことを「サイナス」と呼びます。

サイナスリフトの治療手順を簡単に説明しましょう。まず、インプラントを埋め込む部分の頬側の歯茎を切開し、骨を露出させます。次にその骨に穴を開け、顎骨とシュナイダー膜を剝がします。

スペースができるので、そこに補填剤を入れ塞いだら、歯茎を切開して治療は終わりです。インプラントの埋め込みも同時に行うことがほとんどですが、骨の状態によってはインプラント治療とわけて行うこともあります。

上顎奥歯の骨が薄くても、サイナスリフトによりインプラント治療ができるようになるのがメリットです。広い範囲の骨を再生できるので、複数本のインプラントを埋入することも可能です。

サイナスリフトは歯茎を切開して治療を行うため、安全性の高い治療ができることもメリットでしょう。ただし、傷口が大きくなるので回復に時間がかかることもあります。

術後に痛みや腫れを感じることもあるようです。

GBR(骨組織誘導再生法)

説明

GBR(骨組織誘導再生法)は補填剤以外に、自家骨を使って行う治療法です。自家骨を使う場合はまず、自家骨の採取から始めます。

自家骨は下顎の先端や奥歯の外側から採取することが多いようです。自家骨を使った治療は自家骨を採取するための手術が必要になるため、治療期間が長くなります。

また、喫煙習慣のある方や糖尿病患者さんは自家骨が採取しづらく、自家骨を使った治療は不向きです。

インプラントも同時に埋め込む場合は、ボーンミルという機械を使い、骨を細かく砕きます。

歯茎を開いてインプラントを埋め込んだら、そこへ自家骨もしくは補填剤を置き、メンブレンと呼ばれる人工膜で覆います。

インプラントの埋め込みを同時に行う場合、インプラントを適切な位置に埋め込むことが可能です。そのため、骨を増やす位置も適切な場所にできます。

ボーングラフト

ボーングラフトは、骨のブロックを移植する方法です。骨が吸収され厚みがなくなっている部分に骨を移植し、細かく砕いた患者さん自身の骨もしくは補填剤を詰めて骨の再生を促します。

骨の欠損範囲が広く、GBR(骨組織誘導再生法)では対応が難しい場合に選択されます。自家骨を使うため、拒否反応を起こすリスクが低いのがメリットです。また、再生率も高いといわれています。

ただし、骨の移植が必要なため患者さんにかかる負担が大きいのがデメリットです。

上顎の骨造成にかかる費用

費用

上顎の骨造成にかかる費用は、治療法によって異なります。各治療法ごとの費用相場は次のとおりです。

  • ソケットリフト:30,000円~200,000円(税込)
  • サイナスリフト:100,000円~400,000円(税込)
  • GBR(骨組織誘導再生法):30,000円~150,000円(税込)
  • ボーングラフト:100,000円(税込)~

歯科医院や治療内容によって費用は変わるため、治療を受ける前に費用について確認するといいでしょう。

インプラント治療と骨造成は別々の治療と判断されるため、インプラント治療に骨造成の費用は含まれていません。インプラント1本あたりの費用相場は300,000~500,000円(税込)程です。この費用に、骨造成でかかった治療費がプラスされます。

参考にしてみてください。

上顎の骨造成が適さない人の特徴

まるばつ

上顎の骨造成が適さないのは、全身疾患などのトラブルがある方などです。例えば、重度の骨粗しょう症の方でビスホスホネート製剤を服用している方は骨造成ができません。

2型糖尿病で血糖コントロールができている方は骨造成ができますが、血糖コントロールができていない方や1型糖尿病の方は難しいです。

このように、全身疾患の状態によっては骨造成ができないことがあります。治療を始める前に、担当医や治療を受ける歯科医院の歯科医師などに相談するようにしましょう。

インプラントの上の歯の治療を成功させるポイント

ポイント

インプラントの上の歯の治療を成功させるためには、どのようなポイントに気を付けたらいいのでしょうか。

繰り返しにはなりますが、インプラント治療や骨造成治療は専門性の高い治療となります。

上顎の治療は難易度が高いため、より歯科医師の技術力が重要になってくるでしょう。上顎の骨が足りないときに行うソケットリフトやサイナスリフトは特に高度な技術が必要なため、対応できる歯科医院が限られています。

インプラント治療や骨造成治療の経験が豊富かどうかはホームページなどで調べられるでしょう。カウンセリングのときに、直接聞いてみるのもおすすめです。

治療が難しい場所は、事前の検査・診断がとても重要です。正確にお口の中を把握することで、成功率があがります。

目安として、CTやガイドシステムが挙げられるでしょう。CTがあれば、顎骨の厚み・幅を立体的に見ることができます。

上顎洞の位置も正確に確認できるため、上顎洞炎のリスクも軽減できるでしょう。ガイドシステムは、コンピューターを使って手術の流れを確認してから、実際の手術に反映させて治療を行う方法です。

シミュレーションの結果が問題なければガイドと呼ばれる装置をお口に嵌め、手術をします。ガイドを使うため、正確で安全性の高い治療が可能になります。

まとめ

気にする女性

上の歯のインプラント治療が難しいとされる理由などを解説しましたが、いかがでしょうか。上顎は骨の量や厚みが足りないため、骨造成治療によって不足している骨を補う必要があります。

また、前歯は審美性が問われるため、患者さんが納得のいく治療を提供するためには仕上がりにも注意しないといけません。そのため、治療の難易度も高くなっています。

上の歯のインプラント治療を成功させるためには、経験豊富な歯科医師に相談するのがおすすめです。ぜひ本記事も参考に、信頼できる歯科医院を探してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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