歯が抜けたところに入れたくてインプラント治療を検討している人もいるでしょう。
しかし、インプラントは誰でも入れられるわけではありません。そこで今回は、インプラント治療は何歳から何歳までできるのか解説します。
また、インプラント治療を受けられないケースや年齢によるリスクもご紹介するので参考にしてみてください。
インプラント治療は何歳からできる?
インプラント治療は、骨の成長が終わっていないとできません。骨の成長が終わっていないのに挿入してしまうと、骨が成長して咬み合わせが悪くなるなどの悪影響が出ます。
そのため、一般的には骨の成長が確実に終わっている20~25歳以上となっている歯科医院が多いです。
日本口腔インプラント学会では「20歳以上が好ましい」としています。
インプラント治療の年齢制限
インプラント治療はどの年齢でもできるわけではありません。ここでは、インプラント治療が可能な年齢と何歳まで治療できるのかを解説します。
インプラント治療が可能な年齢
インプラント治療は20~25歳以上と決めている歯科医院が多いです。これは20歳以下の場合、顎の骨の成長が続いている可能性があるためです。
顎の骨の成長が止まる前にインプラント治療すると歯並びなどに影響が出てしまったり、歯の健康状態が悪くなったりすることが考えられるでしょう。
顎の成長には個人差があり16歳で成長が止まる人もいます。そのため、16歳以上や18歳以上と未成年でも治療できる歯科医院もあります。
しかし、顎の成長が止まっているかの判断は歯科医師でも難しく、治療後に顎が成長してしまうこともあるでしょう。
これを避けるためにも多くの歯科医院では、インプラント治療に20~25歳以上という制限を設けているのです。
また、女性よりも男性の方が骨の成長が止まるのが遅いため、性別で年齢制限がある歯科医院もあります。
インプラント治療の年齢の上限
インプラント治療は何歳からの制限はあっても上限はありません。
70代・80代の高齢であっても、健康であればインプラント治療を受けられます。
しかし、全身疾患の既往がある場合インプラント治療ができない可能性もあります。病歴や現在の症状をしっかりと伝え、インプラント治療が可能かどうかを確認することが重要です。
病気があってもかかりつけ医と歯科医師で連携を取ることで、インプラント治療ができるケースもあります。
インプラント治療を検討中の人は、歯科医院受診時にかかりつけ医の診察券を持っていきましょう。
若い人がインプラント治療をするメリット
インプラント治療は高齢者向けと思っている人も多いでしょう。インプラント治療は若い人がやるからこそのメリットがあります。
健康な歯への影響が少ない
若い人の場合、抜けてしまった箇所だけにインプラント治療をする人が多いでしょう。
インプラント治療は、部分入れ歯のように残っている健康な歯に金具をかけたり、ブリッジのように隣接する健康な歯を削ったりすることもありません。
そのため、インプラント治療をすることでほかの歯の寿命を短くすることがないのです。
歯を削ったばかりのころは寿命を感じませんが、徐々にダメージが蓄積していき数十年後に歯が失われる可能性があります。
若い人がインプラント治療をするデメリット
若い人がインプラント治療をするのはメリットばかりではありません。デメリットも考慮してインプラント治療をするか検討してください。
治療費が高い
インプラント治療の費用の相場は1本30〜50万円(税込)ほどだそうです。参考にしてみてください。
しかし、首都圏は高額になる傾向があります。
また、顎の骨の有無・追加治療の有無・インプラントの種類・鎮静方法によって価格は異なるため、カウンセリングなどで確認しましょう。
インプラント治療は顎の骨を連続して1/3以上失っているなどの症例に限り、保険診療を行っている歯科医院で保険診療で治療できます。
しかし、ほとんどの人が自由診療扱いになるため保険適用になりません。費用を抑えたい場合は、医療費控除を活用しましょう。
確定申告で医療費控除を行うことで、医療費の一部が還付されます。そのため、医療費の領収書を紛失しないようにしてください。
インプラント治療は医療費控除の対象になりますが、保険診療に当てはまらない場合は高額療養費制度を利用することはできません。
また、歯科医院によっては、分割払いやクレジットカード払いに対応していることがあります。1回での支払いが難しい場合は、支払方法が選べる歯科医院がおすすめです。
治療期間が長い
インプラントの治療期間は、一般的に3ヶ月〜1年といわれています。
入れ歯・ブリッジの場合は1〜2ヶ月なのでインプラント治療は期間が長い方法といえるでしょう。
インプラントは骨と結合するのに3〜6ヶ月の期間が必要です。結合が確認出来たら人工の歯の型取りと調整を行い、1ヶ月程で完成します。
あくまでこの期間は目安なので、インプラントの本数や骨の結合具合によって日数は前後します。
そのため、ほかの方法よりも完成までに期間を要することがデメリットといえるでしょう。
すべての人がこの期間で完成できるわけではなく、重度の歯周病や顎の骨が足りない人はさらに3〜6ヶ月の期間が必要となります。
定期的なメンテナンスが必要
インプラント治療は耐久性がありますが、毎日のケアや定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
自宅でのケアだけでは不十分なため、歯科医院でのケアとセットでメンテナンスをしていきましょう。
インプラントを挿入すると起こりやすいのが、歯周病と同じ症状のインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎を放置してしまうと、インプラントが抜けてしまうので早めに対処しましょう。
自宅でのケアは主に歯磨きやフロスによるケアですが、多くの人が正しい歯磨きをしていません。インプラント治療をしたら歯磨き指導も受けましょう。
歯科医院でのメンテナンスでは、まず歯周病の有無・出血の有無・インプラントの状態を確認します。インプラントを挿入した部分の周りの骨に異常がないかや噛み合わせ、揺れ具合を確認し、必要であれば治療を行います。
インプラント治療を受けられないケース
インプラント治療は誰でも受けられる治療法ではありません。ここでは、どのようなケースが治療できないのかをご紹介します。
顎の骨が不足している
インプラントは顎の骨と結合するため、顎の骨が不足していると挿入できません。
歯が抜けてしまった部分の骨が痩せ細ってしまっている場合、インプラント治療の前に骨造成手術を受けなければなりません。
骨造成手術は骨が完成するまでに半年以上かかることもあるため、インプラント治療の期間が長くなります。
この骨造成手術は、設備が整っている歯科医院でないと受けられません。そのため、インプラント治療を受けようと思ったら、歯科医院の設備も確認しておきましょう。
顎の骨が成長しきれていない場合もインプラント治療が難しいです。これは20歳以下の人に多く、顎の骨が成長できていないと噛み合わせなどに影響が出るためインプラント治療ができません。
このケースは後から骨が成長するため骨造成手術を受けることはできず、骨が成長しきるのを待ってからの治療になります。
健康状態が悪い
インプラント治療をするためにはこれまでの病歴や薬歴、現在の体調などを聞かれます。
糖尿病・骨粗鬆症・貧血・高血圧症・ビスフォスフォネート系薬剤服用している患者さん・抗血栓療法を受けている患者さん・ステロイド薬服用している患者さん・喫煙者は注意が必要です。
これらに該当する人は、骨結合ができなかったり合併症が発生したりとリスクが伴うため、担当医としっかりと話し合いましょう。
ビスフォスフォネート系薬剤を服用している患者さんの場合、禁忌としている歯科医院が多いと覚えておいてください。
糖尿病などの基礎疾患がある人は、歯科医院の担当医だけでなくかかりつけ医との打ち合わせも必要になります。
万が一に備えるため、インプラントができないかもしれないと病状を隠すことは決してしないようにしましょう。
口の中に異常がある
口の中に歯周病がある状態だと、口腔内感染を引き起こす可能性があります。また、これらはインプラント治療前に治療をしとかなければなりません。
歯周病を治療しないでいると、インプラント周囲炎が発症する可能性が高まります。せっかく挿入したインプラントが抜け落ちてしまう原因の1つです。
抜歯したからといって原因を治さなければ意味がありません。歯周病はインプラント治療前に治療しておきましょう。
高齢者のインプラント治療のリスク
インプラント治療には年齢の上限がありませんが、高齢者にはリスクが伴います。ここでは、高齢者に起きやすいリスク3つをご紹介します。
細菌感染が起きやすい
高齢者は若い人に比べて免疫力や抵抗力が落ちてしまっています。そのため、細菌感染のリスクが非常に高まるのです。
高齢者はインプラントを挿入する人が増えますが、挿入時には歯肉を切開しなければインプラントを挿入できません。
この歯肉を切開するときに免疫力が低下していると、細菌感染が起こりやすくなります。インプラントを挿入した部分の骨が溶けたり、膿が出たりするようなら細菌感染を疑いましょう。
インプラントを挿入した直後の細菌感染は、骨との結合を妨げ手術が失敗する可能性が高まってしまいます。
日頃から免疫力や抵抗力を高める食事や生活習慣をして、細菌感染する確率を下げましょう。
また、高齢者はインプラント周囲炎にかかる可能性も高まります。免疫力の低下とともに炎症を抑制する機能も低下してしまうので、免疫力アップに加え炎症を起こさないよう丁寧な口腔ケアも必要です。
インプラントと骨が結合しずらい
インプラント治療は歯肉を切開し顎の骨を削ってインプラントを挿入します。このインプラントと顎の骨が結合しないと支えられず、抜け落ちてしまいます。
インプラントと骨の結合には免疫力が欠かせません。高齢者の場合免疫力が落ちて顎の骨を削った傷口がなかなか治らず、骨との結合がうまくいかないことが多いです。
また、骨粗鬆症の改善目的でビスホスホネート製剤を服用している場合、骨を破壊する働きを抑制しようとすると歯周組織を作れません。
そのため、骨が結合しづらくなってしまいます。この服薬をやめると細菌感染のリスクが高まるため、インプラント治療は難しいでしょう。
体力がなく手術を受けられない
高齢者は気温・湿度・精神状態によって全身の状態が変わってしまうため、手術を受けられない可能性があります。
また、薬を服用している高齢者の中には複数の合併症を発症しているケースも多く、慎重に検討しなければなりません。
また、インプラントは挿入して終わりではなく、定期メンテナンスが必要です。そのため、インプラント治療後に通院したり診察を受けたりする体力も必要になります。
まとめ
この記事では、インプラント治療は何歳から何歳までが対象なのかをご紹介しました。
インプラント治療には年齢の上限はありませんが、顎の骨が完成していなければいけません。また、骨や健康状態によってはインプラントを挿入できない人もいます。
若い人はメリット・デメリットを踏まえ、高齢者の人はリスクがあることを承知の上でインプラント治療を行いましょう。
参考文献