何かの拍子に歯がボキッと折れたら焦ってしまいますよね。歯は再生することがない器官なので、折れて放置していても元には戻りません。それでも治療には費用がかかるため、なにもせずにそのまま放っておいてしまう人も多いことでしょう。ここではそんな歯が折れた場合の治療法や放置するリスク、治療にかかる費用などを詳しく解説します。
歯が折れる原因
- 歯が折れる原因について教えてください。
- 歯が折れる原因としては、以下の2つが挙げられます。
・転倒や事故による外傷
道端で転んだり、交通事故などに遭ったりした際に歯が折れることが多い傾向にあります。歯はとても頑丈な器官ではあるものの、過剰な圧力や衝撃が加わるとあっさり折れてしまうものなのです。アメリカンフットボールやラクロス、ボクシングなど、他の選手との接触が多いスポーツをしている人も顔面への外傷で歯が折れるリスクが高くなっているため、十分な注意が必要といえます。・歯ぎしりによる圧力
歯ぎしりや食いしばりでは、皆さんが想像している以上の圧力が歯にかかります。成人男性の噛む力は、60~100kgに達するといわれており、食べものが介在せず、歯と歯が直接、接触する歯ぎしりが習慣化していると、いつ歯が欠けたり、折れたりしてもおかしくはないといえるでしょう。
- 歯が折れることでどのような症状が起こりますか?
- 歯が折れた時に現れる症状は、歯の折れ方によっても大きく変わります。歯の頭の部分である歯冠の比較的浅い部分で折れた場合は、痛みなどの症状が現れにくいです。しばらくすると歯がキーンとしみる知覚過敏に悩まされるようになることもありますが、強い症状は現れにくいといえます。 歯冠の深い部分で歯が折れた場合は、ほぼ間違いなく痛みが生じます。場合によっては歯の神経と血管で構成される歯髄(しずい)が露出することで、感染による痛みも併発するかもしれません。歯の根っこの部分で折れた場合も強い痛みを伴うと同時に、歯茎の部分が腫れたり、噛んだ時に激痛が走ったりするようになります。このように、歯が折れることで生じる症状は、歯の折れ方によって大きく変わってくるのです。
歯が折れた際にするべきこととは
- 歯が折れた際にまず対応するべきことはなんですか?
- 外傷や歯ぎしりなどで歯が折れた時は、次のような方法で応急的に対応してください。
・歯が完全に抜けた場合は牛乳パックに入れる
歯が完全に抜けた場合は、牛乳に浸けた状態で保管するようにしましょう。歯の根っこには歯根膜細胞が付着しているため、口腔内に近い状態で保管するのが望ましいです。抜けた歯をティッシュにくるんで保管していると、歯が乾燥して歯根膜細胞が死んでしまいます。牛乳が手に入らない場合は、抜けた歯を口の中に含んでおいてください。その際、折れた歯を飲み込まないよう注意しましょう。・頭を打っている場合は脳外科の診療を優先する
受傷した部位が口腔周囲であっても、歯が折れるほどの衝撃で頭部を強く打ったのであれば、脳に異常が生じている可能性もありますので脳外科や救急外来を受診しましょう。まずは病院に連絡をして、何科を受診すべきか問い合わせることをおすすめします。・かかりつけの歯医者に連絡をする
脳への深刻なダメージが予想されない場合は、まずかかりつけの歯医者に連絡しましょう。歯が折れた状態や受傷した状況などを細かく伝えておくと、歯医者も対応しやすくなります。歯が根っこから折れた場合は、歯科への受診が早くなるほど、元に戻せる確率も高くなります。ただし、必ずしもかかりつけ歯科医にこだわる必要はありません。受傷した時にかかりつけ歯科医が休みだった場合は、その他の歯科医院でも構いませんので、とにかく一刻も早く相談することをおすすめします。急患に対応している歯科医院であればなおよいです。
- 歯が折れたまま放置するリスクについて教えてください。
- 歯が折れた状態を放置すると、次のようなリスクが生じるため、十分な注意が必要です。
・むし歯になる可能性がある
歯が折れた部分は傷口と同じです。細菌による感染が起こりやすく、虫歯のリスクが上昇する可能性があります。・強い痛みが出る
歯が折れた部分に神経の露出が見られると、激痛を伴うようになります。神経が見えていなかったとしても、知覚過敏が起こりやすくなっています。・噛み合わせの悪化
歯が折れることによって、噛み合わせが変化します。その影響は歯列全体に及ぶため、時間の経過とともにより深刻な症状を引き起こしていく可能性があります。・粘膜を傷つける
歯が折れた部分が鋭利になっている場合は、舌や頬の内側の粘膜を傷つけるおそれがあります。
歯が折れた際の治療方法
- 歯が折れた際に受けられる保険適用の治療について教えてください。
- 折折れた歯を保険診療で治療する場合は、コンポジットレジン修復や被せ物を選択することになります。
・コンポジットレジン修復
歯が折れた部分に、歯科用プラスチックであるコンポジットレジンを盛り付けて形を整え、光で固めます。歯型取りなどが不要な治療法なので、折れた歯の治療をその日に終わらせることも可能です。・被せ物
保険適用される被せ物には、金属の土台の表側をレジンで覆った硬質レジン前装冠や、コンピューターで歯を設計して設計データを基に歯を削って作製するCAD/CAM冠、2種類の純チタンを使用して全部鋳造方式で製作された歯冠修復物の唇面または頬面を硬質レジンで前装したレジン前装チタン冠があります。
- 歯が折れた際に受けられる自由診療の治療について教えてください。
- 折れた歯を自由診療で治療する場合は、以下の3つの方法が選択肢として用意されています。
・ラミネートベニア
歯の表面にセラミック製のチップを貼り付ける治療法です。歯の表面が少しだけ欠けた症例に適しています。・セラミッククラウン
セラミック製の被せ物を装着する治療法です。歯冠部が大きく折れた症例に適しています。・インプラント
根っこから折れた歯を元に戻せない場合や歯が丸ごと脱落した場合に適応される治療法です。欠損部にチタン製の人工歯根を埋め込んで、その上に人工歯を装着します。
歯が折れた際の治療費用
- 歯が折れた際の保険適用の治療費用について教えてください。
- コンポジットレジン修復は2000~3000円程度、硬質レジン前装冠は8000円前後の費用がかかります。これらは3割負担での値段です。
- 歯が折れた際の自由診療の治療費用について教えてください。
- ラミネートベニアやセラミッククラウンなどで治療する場合は、10万~15万円程度、インプラントで治療する場合は、30万~50万円程度の費用がかかります。
編集部まとめ
今回は、歯が折れた場合の治療法や放置することのリスク、治療にかかる費用などを解説しました。歯が折れた場合、保険診療ではコンポジット修復や硬質レジン前装冠を選択することが可能です。治療にかかる費用は、1万円以内におさまるケースがほとんどです。
自由診療では、ラミネートベニア、セラミッククラウン、破損片の接着修復、硬質レジン前装冠、インプラントなど、豊富な選択肢から選ぶことが可能となっています。自由診療は全額自己負担となるため、費用は数万円から数十万円になります。いずれにしても折れた歯の治療を受けることで、むし歯リスクが上昇する、強い痛みが出る、噛み合わせが悪くなる、粘膜が傷つくといったリスクを回避できます。
参考文献