オールオン4手術後にも、腫れや痛みがあることをご存知ですか?
オールオン4は、4本のインプラント体で片顎すべての人工歯を支える方法で、費用や身体の負担を抑えられるのがメリットです。
しかし、骨にインプラント体を埋め込む手術がある以上、痛みや腫れのリスクを伴い、適切な対処が不可欠です。
本記事では、オールオン4手術を受ける前に、患者さんが知っておくべき腫れ・痛みの原因や治療法を解説します。
オールオン4手術後に腫れや痛みは起こる?
オールオン4の手術は、通常のインプラント手術に比べて腫れや痛みは少ないといわれています。
通常のインプラント手術では、骨にインプラント体を埋め込むために、粘膜を切開して骨を露出させます。
これに対して、粘膜を切開せずに歯肉パンチとよばれる器具で歯肉と骨に穴を開けてインプラントを埋め込む手術が、フラップレスインプラント手術です。
フラップレスインプラント手術では粘膜を切開しないため痛み・腫れのリスクが少なく、手術時間も短くなるのが大きなメリットです。
オールオン4の手術はフラップレスで4本のインプラントを埋め込むため、通常のインプラントを何本も繰り返すよりは身体への不安も少なくなるでしょう。
しかし、実際にはオールオン4の手術後にも腫れや痛みが起こるケースは少なくありません。
オールオン4手術を受ける前には、手術後の腫れや痛みが起こる可能性も視野に入れておきましょう。
オールオン4治療で歯茎が腫れる原因
オールオン4やその他のインプラント手術の後にも、歯茎が腫れて痛みが起こることがあります。
歯茎が内出血を起こすと、頬の一部が紫色になることもあり、特に肌が色白の方は変色が目立ちます。
ほとんどの場合は自然に治まりますが、腫れや痛みがひどい場合には、早めに歯科医師に連絡してください。
オールオン4の手術で腫れが起こるのは、主に以下のような原因があります。
- 手術の侵襲による炎症反応
- 不適切なオーラルケア
- 咬合の不調和
- インプラントの不適合
- 全身的な健康状態
それぞれの内容を解説します。
手術の侵襲による炎症反応
インプラント手術は、顎の骨に金属製のインプラント体を埋め込む手術です。
オールオン4ではフラップレスのため歯肉の切開は最小限ですが、骨に金属を埋め込む手術は身体への侵襲が少なくありません。
インプラント手術に伴って患部で炎症が起き、歯茎や頬が大きく腫れることがあります。
この炎症は、侵襲に対する身体の正常な反応であるため、心配する必要はありません。
不適切なオーラルケア
手術で埋め込んだインプラント体の周辺に、細菌が感染すると歯周病のような症状となります。
これをインプラント周囲炎といい、インプラント周囲の腫れや痛み・出血などが主な症状です。
オールオン4手術でインプラント体を埋め込んだ後は、インプラント周囲炎の予防のためにも毎日のオーラルケアが欠かせません。
インプラント体には天然の歯のような免疫機構がないため、天然の歯よりも細菌感染に弱くなります。
オールオン4手術後にオーラルケアが不適切であった場合は、インプラント周囲炎により歯茎の腫れや痛みが起こるリスクが高まります。
インプラント周囲炎を放置すると、人工歯が抜けてしまう場合もあるため、毎日のオーラルケアは十分に行いましょう。
咬合の不調和
オールオン4は12本の歯を4本のインプラント体で支えるため、極めて精密な作業が必要であり、難易度の高い手術です。
上の歯と下の歯が少しでもずれていると噛み合わせが悪くなり、咬合の不調和によって歯茎や顎に大きな負担がかかります。
咬合の不調和による歯への負担が原因で、歯茎が腫れるケースも考えられます。
オールオン4後に噛み合わせの違和感を覚えたら、放置せずに早めに歯科医師に連絡してください。
噛み合わせの悪さを放置すると、顎関節症やインプラント脱落につながるおそれがあります。
インプラントの不適合
インプラントの人工歯は、骨に埋め込んだインプラント体が骨と一体化することで強固に支えられています。
チタン製のインプラント体と骨が一体化することをオッセオインテグレーションといい、インプラント手術では5%未満の確率でオッセオインテグレーション不全が起こります。
オッセオインテグレーションがうまくいかない場合は、速やかな治療が必要です。
埋め込んだインプラント体と骨が適合しない場合は、炎症が悪化して腫れが強くなることもあります。
手術後の腫れは金属アレルギーの可能性もありますが、インプラントに主に使われるチタンは金属アレルギーを起こしにくい材料です。
しかし、チタンであっても金属アレルギーを起こすケースはあるため、心配であれば手術前に金属アレルギー検査を受けた方がよいでしょう。
全身的な健康状態
オールオン4手術は麻酔を使用して侵襲の大きな手術であるため、全身の健康状態が治療後の回復を左右します。
特に糖尿病や骨粗しょう症などの持病がある方は、手術後の回復が遅くなるため、インプラント手術を受けられない場合があります。
治療によって症状が十分にコントロールされていれば、オールオン4も可能ですが、手術によって症状が悪化するケースも少なくありません。
歯茎の血流が悪化していると、傷口が回復するのに時間がかかり、腫れも大きくなる可能性があります。
オールオン4手術後の腫れはいつまで続く?
オールオン4手術では、片方の顎に4本のインプラント体を埋め込み、上下同時であれば計8本のインプラント体を骨に埋め込みます。
手術中は麻酔が効いているため痛みは感じにくくなりますが、麻酔が切れてきたタイミングで痛みがではじめ、腫れは2~3日後がピークです。
一般的には、手術後1週間以内に腫れは治まり、頬の変色も1~2週間で自然に治るでしょう。
インプラント手術後の腫れは親知らず抜歯後の腫れに似ていますが、抜歯後の腫れよりは軽度であることがほとんどです。
残存歯がある場合には、オールオン4手術の前にすべて抜歯するため、抜歯に伴う腫れが起こることもあります。
複数の歯を抜歯した場合は、1週間以上腫れが続くこともあり、傷口が塞がるまでは固いものや辛いものは食べられません。
オールオン4手術後に考えられるその他のリスク
オールオン4は、すべての歯を人工歯に変えるため、食事や発音に違和感を覚えることが少なくありません。
天然の歯は歯根膜というやわらかい膜で覆われており、噛むたびにクッション作用によって衝撃を吸収しています。
オールオン4の人工歯には歯根膜がないためクッション性がなく、食事の際に味や食感が変化する場合があります。
食事や発音の違和感はすぐに慣れるため、噛み合わせに問題がなければ心配する必要はありません。
その他には、オールオン4手術に伴って軽度の出血や、傷口からの感染が起こる可能性があります。
手術後には抗生剤と痛み止めが処方されるため、歯みがきうがいと合わせてオーラルケアを怠らないようにしましょう。
オールオン4手術後の腫れに対する対処法
オールオン4の手術後に腫れや痛みが出てきてしまっても、適切に対処すれば治まることがほとんどです。
逆に、腫れや痛みを治療せずに放置していると、症状が悪化してインプラントの寿命を縮めてしまうことも少なくありません。
オールオン4手術後には、定期的に通院して歯科医師のチェックを受けますが、腫れが強くなってきた場合は速やかに歯科医院に連絡してください。
症状によって治療が必要な場合もあれば、患者さん自身で対処できる場合もありますので、歯科医師の指示を仰ぎましょう。
オールオン4手術後の腫れに対しては、主に以下のような対処法があります。
- 痛み止め・抗生剤を服用する
- 患部を冷やす
- 噛み合わせを調整する
- インプラントの交換・修理を行う
それぞれの内容を解説します。
痛み止め・抗生剤を服用する
オールオン4の手術中は、麻酔が効いているため痛みは感じにくくなっています。
手術後の麻酔が切れてきたタイミングで痛みが出てくるため、手術当日は痛み止めを処方されるでしょう
また、手術で傷ついた歯肉や骨は細菌感染のリスクが高まるため、抗生剤も処方されることがほとんどです。
細菌が感染すると、炎症が悪化して腫れが強くなるため、処方された抗生剤は症状がなくても飲みきってください。
痛み止めは決められた量以上を飲んでも効果は高まりませんので、乱用しないようにしましょう。
患部を冷やす
痛み止めを飲んでも痛みや腫れが治まらない場合は、患部を氷水や氷嚢で冷やすのが効果的です。
患部を冷やすことで、毛細血管が縮小して血流が少なくなり、炎症物質が広がるのを防ぎます。
オールオン4手術後は天然の歯と一緒に歯の神経もなくなっているため、冷たさでしみる可能性は低いでしょう。
噛み合わせを調整する
オールオン4手術後に噛み合わせが悪くなっているのが腫れの原因の場合は、噛み合わせの調整を行います。
オールオン4はすべての歯が一体化した人工歯であるため、噛み合わせの調整は極めて高い技術が必要とされます。
手術後の調整も重要ですが、それ以上に手術前の精密な設計が重要です。
オールオン4手術を受ける歯科医院は、オールオン4の経験が豊富で、設計とシミュレーションを徹底している医院を選びましょう。
インプラントの交換・修理を行う
手術後の腫れがひどくなり、インプラント周囲炎が悪化すると、インプラントを交換せざるを得なくなります。
一度インプラントを除去して患部の治療を行い、治療が完了してから再びインプラント手術を行います。
インプラント周囲炎によって骨が溶けてしまったり、骨粗しょう症が進行したりしていると、再手術の難易度は高まるでしょう。
オールオン4手術後の腫れを軽減する予防法
オールオン4手術後に、患部が腫れてしまう症状は、患者さん自身のケアによって予防が可能です。
オールオン4は高額な費用がかかるため、できるだけ長持ちさせて快適に使うためにも、予防を心がけましょう。
オールオン4手術後の腫れを軽減するには、主に以下のような予防法が有効です。
- セルフケアでお口の清潔を保つ
- 歯科医院でのメンテナンスを受ける
- 刺激の強い食べ物を避ける
- たばこ・アルコールを控える
それぞれの内容を解説します。
セルフケアでお口の清潔を保つ
オールオン4手術後にも、毎日の歯みがきなどのオーラルケアは欠かせません。
人工歯はむし歯になりにくいですが、人工歯と歯肉の隙間には汚れがたまりやすく、インプラント周囲炎のリスクがあります。
インプラント周囲炎は歯周病と似た病気で、初期には自覚症状がないため、腫れが出てきたときにはかなり進行してしまっています。
人工歯に歯垢がたまっていると口腔環境が悪化し、インプラント周囲炎のリスクも高まっているため、毎日のオーラルケアは変わらず行ってください。
歯科医院でのメンテナンスを受ける
オールオン4手術後には、定期的に歯科医院でチェックとメンテナンスを受けることが重要です。
セルフケアでは取り切れない歯石や歯周ポケットの掃除を行い、異常がないかを歯科医師にチェックしてもらいましょう。
定期的なチェックを受けることで、毎日の歯みがきで磨けていない部分や汚れが溜まりやすい部分を知り、セルフケアを見直す契機にもなります。
インプラント手術後に定期的なメンテナンスを受けていない人は、インプラント周囲炎のリスクが有意に高く、インプラントの残存率が低くなると報告されています。
刺激の強い食べ物を避ける
オールオン4手術後2~3日後をピークに、患部が腫れて痛みが出ることがあります。
手術後に患部が腫れている場合には、炎症を悪化させないために辛いものや熱いものは避けた方がよいでしょう。
腫れている部位には細かい傷もあるため、刺激性の食べ物は痛みを悪化させ、炎症が強くなる可能性があります。
また、硬いものを噛むのも数日間は避けましょう。
オールオン4手術は、インプラント体を埋め込んでからすぐに人工歯を装着するため、骨に強い負荷がかかります。
手術当日から硬いものを噛むと、骨への荷重によって腫れが悪化する可能性があります。
たばこ・アルコールを控える
喫煙は明確な歯周病のリスク因子であり、喫煙習慣がある人は歯周病やインプラント周囲炎のリスクが高まります。
喫煙によって口腔粘膜の毛細血管が縮小し、血流が悪くなることで免疫機能が低下して細菌が増殖しやすくなります。
また、オールオン4手術の傷口が回復するのも遅くなるため、手術前には歯科医師から禁煙を指示されることも少なくありません。
アルコールはインプラント周囲炎の直接的なリスク因子ではありませんが、飲酒習慣のある人はない人に比べて、インプラント残存率が1.7%有意に低下すると報告されています。
アルコールによって傷の治癒が遅れたり、飲酒後にオーラルケアを怠ったりすることが主な原因と考えられています。
オールオン4手術後数日間や、腫れが出てきたときには、たばこ・アルコールは控えるようにしましょう。
まとめ
オールオン4手術後に、患部が腫れる原因や対処法を解説してきました。
オールオン4は通常のインプラントに比べて腫れや痛みが少ないといわれていますが、侵襲性の高い手術である以上、腫れや痛みが出る場合はあります。
ほとんどの場合は数日で自然に治まりますが、感染症や合併症の可能性もゼロではありません。
高額な費用がかかるオールオン4を長持ちさせるためにも、手術後にはセルフケアを怠らず、腫れや痛みが出た場合は速やかに歯科医師にご相談ください。
参考文献