インプラント治療を検討している方のなかには、高額療養制度を利用できないかと考えている方もいると思います。
高額療養制度は、医療費が一定額を超えた場合に還付される制度のため、実質的にインプラント治療を安く済ませる方法として活用を考えている方もいることでしょう。
一方、高額療養制度は必ずしもすべてのケースで利用できるとは限らず、インプラント治療も例外ではありません。
そこでこの記事では、インプラント治療における、高額療養制度をはじめ、健康保険、さらには医療費控除を利用できるのかについて、初心者にもわかりやすく解説します。
インプラント治療の高額療養費制度について
- 高額療養費制度とはなんですか?
- 高額療養費制度とは、ひと月の間にかかった医療費の自己負担額が、定められた上限額を超えた際に、超過分を支給してもらえる制度のことです。
上限額は、年齢や所得によって異なりますが、高額な医療を受けた際は利用できる可能性があります。
高額療養費制度は、実質的な医療費の軽減法として利用可能ですが、対象となる医療行為は、保険適用の医療つまり保険診療のみが対象となることに注意が必要です。
仮に、保険適用外の医療行為を受けた際、ひと月の上限額を超えたとしても超過分は支給されません。
高額療養費制度は、あくまでも保険診療を受けた際に適用されることが前提の制度と理解するのがポイントです。
- 高額療養費制度の利用方法を教えてください
- 高額療養費制度の基本的な利用方法は、医療機関で支払いを終えた後、ご自身が加入している健康保険組合に申請書と必要書類を通じて高額療養費の申請を行って、超過分の医療費を受け取る流れになっています。健康保険組合が申請に基づいて審査を実施し、内容に問題がなければ医療費を支払った3ヶ月後を目安に、医療費が払い戻される仕組みです。
もし、医療機関で医療費を支払うことが困難な場合は、前もって健康保険組合に限度額適用認定証を申請する方法もあります。限度額適用認定証を利用することで、医療機関窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられます。
このように、高額療養費制度は、後から申請して支給を待つのが基本的な利用方法ですが、先に限度額適用認定証を申請する利用方法もあることを知っておくとよいでしょう。
- インプラント治療に高額療養費制度は適用されますか?
- インプラント治療は、高額療養費制度の適用外になることがほとんどです。例外的に適用されるケースは、生まれつき顎の骨が3分の1以上欠損しているケースや、生まれつき顎の骨が形成不全と認められるケース、さらには事故や病気によって顎の骨を3分の1以上失った場合などに限られます。
また、入れ歯やブリッジなどの治療では、咀嚼機能の回復が困難な場合など、インプラント治療で高額療養費制度が適用されるケースは極めて限定的と言わざるを得ません。
また、利用する医療機関が条件を満たしていることも求められます。具体的には、当直体制が整っている施設、さらには歯科口腔外科または歯科として5年以上稼働しているという点が挙げられます。
このように、インプラント治療で高額療養費制度が適用されるケースは、とても稀であることを知っておきましょう。
保険適用や高額療養費制度の対象となる事例
- インプラントが保険や高額療養費制度の対象となることはありますか?
- インプラント治療が保険適用または高額療養費制度の対象となるケースは以下のとおりです。
- 生まれつき顎の骨が3分の1以上連続して欠損している
- 生まれつき顎の骨が形成不全で欠損している
- 事故や病気により顎の骨を3分の1以上失った
上記の条件いずれかを満たしていることに加えて、インプラント治療を受ける医療機関が以下の条件を満たしていることが必要です。
- 歯科または歯科口腔外科を有する医療機関である
- 歯科または歯科口腔外科で5年以上の経験を有し、3年以上のインプラント治療経験がある常勤医師が2名以上在籍している
- 当直体制が整っている
- 医療機器や医療品の安全確保や管理体制が整っている
- インプラントの高額療養費制度ではいくら戻ってきますか?
- 高額療養費制度の上限額は年収により異なります。高額療養費制度には、複数の受診や同じ世帯の別の方の受診分を合算できる世帯合算や、過去12ヶ月以内に3回以上にわたって上限額に達した場合、4回目以降から上限額が下がる多数回該当などの仕組みも用意されています。年齢、所得、世帯、さらには上限額に達した回数などによって、戻ってくる金額が変わるため、前もって加入している健康保険組合に確認することをおすすめします。
インプラントの費用
- インプラント治療はどのくらいの費用がかかりますか?
- インプラント治療は、1本あたり30~40万円が相場といわれています。
保険や高額療養費制度が適用されることは稀なため、全額自己負担になると考えてください。
仮に、上下すべての歯をインプラントにした場合、400~500万円かかる可能性があります。インプラント治療にかかる費用は、自由診療のため歯科医院ごとに異なることに注意しましょう。
- インプラントは医療費控除額の対象になりますか?
- インプラント治療にかかる費用は、医療費控除額の対象になります。医療費控除とは、本人や家族の医療費の合計が年間10万円、または総所得金額が200万円未満の方は総所得金額の5%を超えた場合に、超えた金額をその年の所得から差し引ける制度です。
控除額は200万円が限度となりますが、所得控除を受けることで住民税や所得税が軽減される仕組みになっています。
インプラント治療にかかった費用も医療費控除の対象となるため、インプラント治療を受けた方すべてが利用できる制度といえるでしょう。
- インプラント治療に補助金などはありますか?
- インプラント治療が対象の補助金制度はないと考えた方がよいでしょう。
- その他にインプラントの費用負担を軽減する方法はありますか?
- 医療費控除のほかに、インプラント治療にかかる費用を軽減する方法として、デンタルローンを利用して月々の負担を抑える方法のほか、分割払いに対応している歯科医院を選ぶこと、さらには複数の歯科医院で相見積もりをとって少しでも安い歯科医院を選ぶ方法などがあります。
インプラント治療の費用を直接的に安くする方法はないため、医療費控除などを活用しましょう。
編集部まとめ
インプラント治療で高額療養制度を利用することは現実的とはいえないのが実情です。
少しでも費用負担を軽減させるためには、医療費控除を利用するのがよいでしょう。
インプラント治療は保険適用外となることを前提にし、医療費控除を利用すること、さらには各自治体で医療費補助制度があるかどうかを確認することをおすすめします。
参考文献