インプラント

インプラントは高齢になったらどうなる?起こる可能性があるトラブルやリスクを解説します

インプラントは高齢になったらどうなる?起こる可能性があるトラブルやリスクを解説します

インプラントは、入れ歯など従来の歯科治療に比べ、治療結果を予測しやすく、安定した効果が長期間期待できる治療方法です。インプラント治療を選択する方は年々増加しており、平成28年には2.7%だった普及率が、令和4年では3.2%にまで伸びています。
年齢別では、70〜74歳が5.9%と最も高く、次いで80〜84歳が4.9%と、高齢者の間でもインプラント治療を選択する方が増えていることがわかります。

本記事では高齢になってインプラント治療を受けた場合や、治療後に高齢期を迎えた場合に考えられるトラブルやリスクなどを詳しく解説します。

シニア世代とインプラント

インプラントは高齢者でも入れることはできますか?
はい、可能です。
日本における高齢者人口の割合は3,625万人で総人口に占める割合は29.3%と、世界のなかでも高い水準にあります。高齢化に伴い、国民の健康意識は高まっており、なかでも高齢者にとって、インプラントは質の高い生活を維持するための治療法として注目されています。
冒頭でも述べたように、高齢者である65歳以上は、インプラント治療を選択する患者さんが多い年齢層です。

ただし、高齢者に限らず、インプラント治療を検討する際に慎重に進める必要がある場合もあります。以下のような疾患を持っている方は、インプラント治療に際して注意が求められます。

  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症
  • 貧血
  • 高血圧症
  • 心疾患
  • 脳血管障害
  • 血液疾患

また、これらの疾患がなくても、骨量や骨質、咬合状態などインプラント治療を行ううえで身体的な条件が整っていない場合などは、治療を慎重に検討する必要があります。
まずは歯科医師と相談し、必要に応じて主治医とも連携をとりながら、リスクを十分に理解することが大切です。

40代から50代でインプラントを検討しています。インプラントの耐久年数を教えてください。
インプラントは、上顎で10〜15年後の残存率が約90%、下顎で約94%とされています。 患者さんを対象としたアンケート調査では、治療から20年が経過した方のうち78%が問題ないと回答しており、約8割の患者さんインプラントを良好な状態で維持していることがわかります。

毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンス、そして生活習慣の改善を行うことが、インプラントをより長く残存させることにつながります。

インプラントは高齢になったらどうなる?

高齢になったらインプラントはどうなる可能性がありますか?
高齢になると、インプラントにも変化や注意しなければならない点が出てくる可能性があります。
加齢や骨粗鬆症に伴う顎の骨密度や再生能力の低下により、インプラントを支える骨が減少し、インプラントの安定性が損なわれてしまうリスクが高まります。

ほかにも、インプラントの周囲に以下のような感染が起こることもあります。

  • インプラント周囲炎
  • インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲粘膜炎はインプラントの周囲の粘膜に限定した炎症ですが、インプラント周囲炎は、インプラント周囲の骨の吸収を伴う病変で、インプラントの喪失につながる可能性があります。

これらの感染症の主な原因は、インプラント周囲の清掃不良です。しかし、免疫力の低下や糖尿病の発症、あるいは重症化により、発症リスクが高まることがあります。

高齢になってから起こる可能性があるトラブルについて教えてください。
インプラント治療後に高齢になった場合に起こりえるトラブルはいくつか考えられます。

まず、健康状態の変化などによってセルフケアが難しくなることです。また、交通手段が限られてしまうなどで、歯科医院での定期的なメンテナンスが難しくなることも考えられます。

ほかには、経済的な理由も考えられます。インプラントを維持するためにには欠かせない定期メンテナンスですが、経済状況の変化により、メンテナンス費用が負担になってしまう可能性もあります。

インプラント治療後に要介護状態になった場合のリスク

インプラント治療後に要介護状態になった場合のリスクを教えてください。
要介護状態になったときには、いくつかのリスクが考えられます。

まず挙げられるのはセルフケアの困難さです。要介護状態になると多くの場合セルフケアが難しくなり、家族や介護職員といった介護者によるサポートが必要となります。

通院が難しくなることも予想され、歯科医院での定期的なメンテナンスが途絶える恐れもあります。こうした場合には、訪問歯科診療を活用することが選択肢のひとつとなります。

介護が必要になったとき、入れ歯とインプラントでは介護の負担が変わりますか?
入れ歯とインプラントのどちらを選択しても、介護の場面では一定のサポートが必要となりますが、その負担の内容には違いがあります。
インプラントは固定式であるため、脱落や誤嚥のリスクが少なく、咀嚼や外観面などで優れています。しかし、インプラントの周囲を丁寧に清掃することは介護者にとって負担となる可能性があります。
一方、入れ歯は取り外しができるため、洗浄しやすい利点がありますが、装着や管理には手間がかかります。また、脱落や誤嚥のリスクもあります。

このように、入れ歯とインプラントにはそれぞれメリットとデメリットがあることを理解して治療を検討しましょう。

インプラント治療後のメンテナンス方法や費用

インプラントを入れた後にかかる費用について教えてください。
通常、インプラントは公的医療保険の対象外となる自由診療であるため、治療後のメンテナンスにかかる費用についても、通院する歯科医院によって差があります。
一般的には、1回のメンテナンスで数千円から10,000円前後で、通院の頻度は3ヶ月に1回程度が目安とされますが、治療経過や全身状態によって個人差があります。また、もしもインプラントにトラブルが発生した場合には、追加の治療費が必要となることもあるため、将来的な維持管理費用を把握することが大切です。
インプラントは高齢になったときに特別なメンテナンスが必要ですか?
インプラントを長く良好に保つためには、年齢に関係なく定期的なメンテナンスが欠かせません。

しかし、高齢になると、既往疾患の存在や、全身的な健康リスクの増加が懸念されます。例えば70代の約40%は糖尿病を有している可能性があり、70代女性の約40%が骨粗鬆症を抱えているというデータもあります。
こうしたリスクをふまえたうえで、主治医および歯科医師との連携のもとで、全身状態に応じた治療計画を立てることが重要となります。

まとめ

本記事では、高齢者がインプラント治療を選択した場合や、インプラント治療後に高齢者となった場合のトラブルやリスクを中心に解説しました。
現在、インプラント治療を選択している方が多い年齢層は、高齢者と呼ばれる65歳以上の方ですが、高齢者のインプラントには、特有のリスクやトラブルの可能性があります。一方で咀嚼や審美面から生活の質の向上につながることもわかっています。

大切なのは、将来的な健康状態の変化を見据えたうえで、信頼できる歯科医師と相談し、適切なサポート体制を整えておくことです。
インプラントのメリットとデメリットを理解し、自分のライフスタイルにあった治療を選択しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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