オールオン4

オールオン4で歯科用CT検査が必要な理由とは?そのほかの検査内容や費用の目安も解説

オールオン4で歯科用CT検査が必要な理由とは?そのほかの検査内容や費用の目安も解説

インプラント治療のなかでもオールオン4は、総入れ歯に代わる治療法として注目されています。ほとんど歯が残っていない方でも、たった4本のインプラントで一顎の歯を支えることが可能な方法です。しかし、治療を成功させ安全に進めるためには、事前の検査が重要です。特に歯科用CT検査は欠かせない検査の一つで、顎骨や神経の位置を正確に把握するために必要です。本記事では、オールオン4の基本や歯科用CT検査が必要な理由などを解説します。

オールオン4とは

オールオン4とは

オールオン4とは、4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支えるインプラント治療法です。従来は失った歯1本ごとにインプラントを埋める必要がありましたが、オールオン4ではインプラントの本数を大幅に減らせます。その結果、患者さんの身体的および経済的負担の軽減治療期間の短縮につながっています。総入れ歯のように外れる心配がなく、手術当日に仮歯を固定してすぐに噛める歯が手に入るのも大きな特徴です。

オールオン4の治療法

オールオン4の治療では、上顎と下顎それぞれ4本のインプラントを戦略的な位置と角度で埋入します。特に後方のインプラントは斜めに埋め込むことで、少ない本数でも12本前後の人工歯を安定して支えられるよう設計されています。

骨移植などは基本的に不要で、抜歯からインプラント埋入、仮歯の装着までを1日で行うこともあります。手術当日に仮の歯を装着できるため、歯がないまま過ごす時間がほとんどなく、翌日からやわらかい物であれば食事も可能です。

埋入本数や手術法は患者さんの骨の状態によって変わりますが、少ない本数ですべての歯を支えられるよう、事前に歯科用CT画像で骨の状態を3次元的に検討して適切なプランを立てます。

オールオン4が向いている方

オールオン4は、「総入れ歯では満足できない」「多数の歯を失ってしまった」という方に特に適した治療法です。具体的には以下のようなケースの患者さんにおすすめできます。

  • 入れ歯が合わず違和感やストレスがある方
  • 重度のむし歯や歯周病で、ほとんどの歯を失った方
  • 自然な見た目にしたい方
  • 長期間かかる治療は難しく、できるだけ短期間で噛めるようになりたい方
  • インプラント治療に興味はあるが、費用負担を抑えたい方

一方、顎骨の状態によっては通常より多くのインプラントが必要になる場合や、重度の全身疾患や喫煙習慣がある方などは適応が慎重に判断されます。主治医と相談し、自分がオールオン4に向いているか評価してもらうことが大切です。

オールオン4で歯科用CT検査が必要な理由

オールオン4で歯科用CT検査が必要な理由

オールオン4に限らずインプラント治療では、歯科用CT検査による精密な診断が不可欠です。歯科用CTでは、平面のレントゲンではわからない顎骨の立体的な情報が得られます。例えば、骨の幅や高さ、厚み、骨の質(密度)、そして顎の中を走る重要な血管や神経、上顎洞(副鼻腔)の位置まで正確に把握できます。これらは安全にインプラントを埋め込む上で必須の情報です。

特にオールオン4では限られた本数のインプラントですべての歯を支えるため、各インプラントの埋入位置と角度が重要です。歯科用CT画像を用いて事前にシミュレーションを行えば、骨のどの部分にどの角度でインプラントを入れるか精密に計画でき、神経や上顎洞を避けた安全な手術計画を立てることができます。

オールオン4を受けるために必要な検査

オールオン4を受けるために必要な検査

オールオン4治療を受ける前には、お口の中だけでなく全身の健康状態まで含めたさまざまな検査を行います。インプラント治療は外科手術を伴うため、患者さんごとに異なる体調や既往症を把握し、安全に手術できるか確認する必要があるからです。ここでは主な検査項目である血液検査やアレルギー検査、レントゲン検査について解説します。

血液検査

血液検査はインプラント手術を安全に行うために必要な検査です。血液を調べることで、血糖値、肝機能、腎機能、貧血の有無、血液の凝固機能、感染症の有無など全身状態を把握できます。インプラント手術中は出血を伴いますし、術後の傷の治りにも全身状態が大きく影響します。

また、血液凝固能も重要です。凝固能が低いと手術中に出血が止まりにくかったり、術後の治癒が遅れたりするおそれがあるため、事前に数値を確認します。肝機能の検査も行われ、肝臓の働きが落ちていると麻酔薬や抗生剤の代謝に支障をきたし、副作用リスクが高まる可能性があります。このように血液検査で異常がみつかった場合は、必要に応じて内科主治医と連携しながら万全の体調で手術に臨めるよう対策を取ります。

血液検査自体は採血するだけで特別難しいものではありません。場合によっては最近受けた人間ドックや健康診断の血液検査結果を持参すれば再検査を省略できることもあります

アレルギー検査

インプラント治療で主に問題となるアレルギーは金属アレルギーです。インプラント体の素材であるチタンはアレルギーを起こしにくい金属ですが、それでも安全とはいい切れません。過去に金属アクセサリーや歯科金属でかぶれた経験がある方は、事前にパッチテストなどのアレルギー検査を受けておくことが望ましいでしょう。

パッチテストとはアレルゲンを皮膚に貼り付け、48~72時間後に湿疹などの反応が出るか確認する検査です。これによりチタンやチタン合金に対するアレルギーの有無を事前に調べることができます。

万一チタンアレルギーがあると診断された場合でも、オールオン4が絶対に受けられないわけではありません。最近では金属を一切使わないジルコニアインプラントという選択肢も普及してきています。

ジルコニアは生体親和性が高くアレルギーの心配がない素材で、見た目も白く審美性に優れています。金属アレルギーが心配な方は、事前に歯科医師に申告し必要なら検査を受けておくことで、治療法の選択肢を確保できます。なお、金属以外にも麻酔薬や薬剤に対するアレルギーがある場合も問診で必ず伝えましょう。

レントゲン検査

レントゲン検査も基本的な検査項目の一つです。具体的には口腔全体のパノラマレントゲン撮影を行い、顎骨の大まかな高さや形状、残っている歯や歯根の状態、歯周病の有無などを確認します。レントゲン写真は2次元ではありますが、顎全体の概観を短時間で把握できるという利点があります。

例えば、顎骨が極端に痩せていないか、嚢胞(のうほう)や炎症が写っていないか、残存歯にむし歯がないかなどをチェックします。オールオン4の場合、残っている歯があれば抜歯が必要かどうか、抜歯後の骨量は足りそうか、といった判断にもレントゲン画像が役立ちます。

ただし、レントゲンは平面的な情報しか得られないため、詳細な骨の厚みや神経位置の把握には歯科用CT検査が不可欠です。レントゲンと歯科用CTそれぞれの長所を活かし、口腔内の状態と顎骨の状態をもれなく評価して治療計画に反映させることが重要です。

オールオン4の検査にかかる時間と費用の目安

オールオン4の検査にかかる時間と費用の目安

オールオン4を検討するうえで、事前検査にどれくらい時間費用がかかるのかも気になるでしょう。ここでは一般的な検査に要する時間と、その費用の目安を解説します。なお、実際の所要時間や費用はクリニックによって異なりますが、あくまで参考としてお読みください。

オールオン4の検査にかかる時間

検査自体にかかる時間は、それほど長くありません。初診時または2回目の来院時にまとめて検査を行いますが、検査はおおむね1時間程度で完了します。各検査の内訳をみても、歯科用CT撮影自体は数分で終了します。撮影後、その画像データを確認、分析する時間が10~20分程度かかる場合がありますが、これも含めて歯科用CT検査全体でもおおよそ10~30分以内には終わるでしょう。

レントゲン撮影はさらに短時間で、撮影自体は数十秒、準備含め数分程度です。血液検査は採血に数分、結果は院内検査なら当日中、外部委託なら翌日~数日で判明します。アレルギーのパッチテストのみ、貼付後48~72時間後の経過をみる必要があるため、結果判定まで2~3日かかりますが、これは患者さん自身に貼付したまま帰宅していただき、後日判定を行います。これらはあくまで目安の時間ですので、詳しい検査時間は事前に問い合わせておく、あるいは受診時にたずねておくと、計画が立てやすいでしょう。

オールオン4の検査にかかる費用の目安

検査費用はクリニックや検査内容によって幅がありますが、自費診療となる場合が多いです。したがって検査にかかる費用も原則自費です。

各検査ごとの大まかな費用目安は以下のとおりです。

検査費用の目安
歯科用CT検査8,000~30,000円程度
血液検査5,000~10,000円程度
アレルギー検査3,000~10,000円前後
レントゲン検査1,000~5,000円程度

インプラントに必要な検査費用は、多くが自費で1万円前後~数万円程度を想定しておくとよいでしょう。先天的な歯の欠損症、腫瘍や外傷による顎骨の大きな欠損など特殊な事情がある場合、保険が使えることもありますが、オールオン4など自由診療目的では原則自費です。

オールオン4の初診から治療完了までの流れ

オールオン4の初診から治療完了までの流れ

実際にオールオン4治療を受ける場合、初診から手術、そして治療完了までどのようなステップを踏むのか、その大まかな流れを理解しておくとよいでしょう。ここでは一般的な治療の流れを初診検査手術術後のメンテナンスの段階に分けて解説します。

初診

初診(カウンセリング)では、患者さんのお口の状態や希望を詳しく伺います。具体的には、これまでの病歴や持病、現在抱えているお悩み(入れ歯が合わないなど)、治療に対する要望などを歯科医師がヒアリングします。また、お口の中を診察し、残っている歯や歯茎の状態を確認します。初診時点で簡単なレントゲン撮影を行い、大まかな骨の状態を確認することもあります。

治療の流れや概算の費用についても、この段階で説明があるでしょう。オールオン4が適切な選択肢か、ほかの治療法(総入れ歯や通常インプラント)との比較も含めて案内されるでしょう。疑問点や不安な点があれば遠慮なく質問してください。ここで得られた情報をもとに、次に行う精密検査の計画を立てます。

検査

初診のカウンセリング後、詳しい検査を行います。検査内容は前述したとおり、歯科用CT撮影やレントゲン撮影、口腔内の写真や型取り、血液検査など多岐にわたります。特に、歯科用CT撮影とレントゲン撮影は必須で、これにより顎骨量と形態や神経の位置を詳細に把握します。

また、口腔内の精密検査として、歯周病の検査や残存歯のむし歯の有無の確認も行います。歯周病にかかっている場合、そのままインプラントを埋入すると感染源になるため、まず歯周病治療を優先する必要があります。

これらの検査結果を総合して、患者さん個々に適した治療計画を立案し、確定します。検査後にあらためて歯科医師から結果の説明と治療方針の提案があるでしょう。そこでは、治療期間や費用の詳細見積もりも提示されるので、納得いくまで相談してください。

手術

治療計画に同意したら、いよいよオールオン4の手術(一次手術)に進みます。手術当日は局所麻酔または静脈内鎮静など麻酔で痛みや不安を抑えた状態で行います。歯茎を切開し、計画に沿って顎骨に4本のインプラント体を埋入します。インプラントを入れる穴をあけ、1本ずつチタン製の人工歯根を顎骨に固定していきます。

4本すべてのインプラント体を入れ終わったら、仮の義歯をその場で装着します。オールオン4では手術当日に固定式の仮歯を装着できるため、手術直後から見た目が回復し、会話も可能です。硬い食べ物は控える必要がありますが、やわらかい食事であれば当日から食べられるとされています。

一次手術後はインプラントと骨がしっかり結合するまで安静期間を設けます。これをオッセオインテグレーション期間と呼び、通常3~6ヶ月程度必要です。この期間中は仮歯で通常の生活を送りながら、インプラントが安定するのを待ちます。定期的に経過観察を行い、問題がないか確認します。

インプラントが十分骨と結合したら、二次手術を行います二次手術は歯茎を少し開いてインプラントにアタッチメント(連結部分)を取り付ける処置です。その後、事前に型取りして製作した最終的な人工歯(ブリッジ)を装着します。仮歯との見た目や噛み心地の違いを確認し、必要に応じて調整してから本付けします。これでオールオン4の最終的な治療が完了し、新しい歯で快適に噛めるようになります。

術後のメンテナンス

治療が完了した後も、定期的なメンテナンスは一生続きます。オールオン4で手に入れた新しい歯を長持ちさせるためには、患者さん自身のケアと歯科医院での定期検診、クリーニングが欠かせません。インプラントはむし歯にはなりませんが、歯周病菌に感染するとインプラント周囲炎というトラブルでグラグラになってしまうおそれがあります。

インプラント周囲炎を防ぐため、歯科医院で定期検診を受け、噛み合わせのチェックやレントゲン撮影による評価を行います。また、定期検診時には、普段の歯磨きでは落としきれない汚れを除去してくれます。

日々のセルフケアも重要です。オールオン4の場合、ブリッジが固定されていますので、専用のデンタルフロスや細長いブラシを使って歯茎との隙間を掃除する必要があります。歯科衛生士から歯磨き指導もありますので、教わったとおりに毎日清掃しましょう。

このように術後のメンテナンスを適切に行うことで、オールオン4で入れた歯を長持ちさせることができます。

まとめ

まとめ

オールオン4は、わずか4本のインプラントで一列の人工歯を支えるため、患者さんの負担軽減や治療期間の短縮といったメリットがあります。一方で高度な技術を要する治療であり、安全に行うためには事前の検査が大変重要です。歯科用CT検査をはじめ、血液検査やアレルギー検査、レントゲン検査などを通じて全身状態と顎骨の状態を詳しく調べます。検査には時間も費用もかかりますが、安心してオールオン4に臨むためには大切です。信頼できる歯科医師と十分に相談し、不明点を解消したうえで治療に臨んでください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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