インプラント

奥歯のインプラントの費用相場はどのくらい?インプラント治療に必要な費用や上部構造の種類も解説

笑顔で並ぶ女性

奥歯は大人の歯の中で最も失いやすいといわれている歯です。

奥歯は大人の歯の中で最も失いやすいといわれている歯です。

失った奥歯の代わりに入れ歯を入れたものの歯茎との間に細かい物が挟まり不便を感じる方や強く噛めないと悩んでいる方も多いでしょう。

インプラントではそうした悩みや不便はありませんが入れ歯に比べると高額です。またインプラント治療は基本的に保険適用外の自由診療のため医療機関ごとに費用が異なります。

とはいえ何事にも相場があります。インプラント治療の一般的な費用の相場や上部構造、についても解説しますので参考にしてください。

奥歯の範囲はどこまで?

歯と歯科器具

奥歯とは口の奥にある歯で臼歯と呼ばれ、その名の通り臼のように食べ物をすり潰す役目の歯です。

永久歯は前側から奥に向かって中切歯・側切歯・犬歯・第1小臼歯・第2小臼歯・第1大臼歯・第2大臼歯・第3大臼歯と並びます。第3大臼歯は親知らずと呼ばれ人によっては生えません。

この並びの犬歯から奥の第1小臼歯から第3大臼歯までが奥歯です。

奥歯の特徴は上部の溝と山の凹凸で、凹凸が食べ物をすり潰し唾液と混ぜて飲み込める形にする役目をしています。

奥歯の1本を失くしたり使えなかったりすると物をよく噛めない・食べにくいと感じるのは食べ物が十分にすり潰されず唾液の水分を含んだ状態になりにくいためです。

奥歯のインプラントの費用相場はどのくらい?

電卓と歯科器具

奥歯1本のインプラントにかかる費用には幅があり通常30~50万円程度が相場でしょう。

あまりの高額さに驚くかもしれませんが、一般的にインプラント治療は健康保険が適用されない診療で費用は全額自費負担です。

病気や外傷の治療のために顎骨・歯槽骨・歯などが大きく切除され、再形成のためのインプラント治療に健康保険が適用されるケースもありますが多くはありません。

日本人が歯を失う2大原因は虫歯と歯周病ですから、大多数の人はインプラント治療に健康保険が使えないことになります。

このためインプラント治療は医療機関ごとに料金設定が異なり、同じ医療機関でも使用する材料によって費用が異なるのが現状です。

治療を開始する前に初診から治療が全て終わるまでにかかる費用をしっかりと確認しましょう。曖昧にしていると思わなかったほどの費用を請求されて驚いてしまうかもしれません。

さらに治療後のメンテナンスにかかる費用も確認した方が安心できます。

レジン

インプラント 模型

レジンは合成樹脂でプラスチックの1種ですが高い耐久性と強度を備えています。

歯科治療で使用するレジンにはアクリル系レジンと硬質レジンがありますが、奥歯のインプラントに使用するのは硬質レジンです。

インプラントの上部構造に使用する材料はどれも高価ですが、セラミックやジルコニアを使用するよりレジンは費用を少なく抑えられます

しかし、レジンはセラミックやジルコニアに比べるとプラークが付着しやすいというデメリットがあると知っておきましょう。

付着したプラークを放置するとインプラントと周囲の間に細菌が繁殖しインプラント歯周炎になるリスクが高まります。

ジルコニア

ジルコニア

ジルコニアといえばアクセサリーに使われるキュービックジルコニアや研磨などに使われる工業用ダイヤモンドを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

ジルコニアはセラミックの1種で人工ダイヤモンドと呼ばれるほどの強度があります。硬いものを強く噛んでも壊れる心配がないため奥歯に向いている材料です。

費用的にはレジンより高額になりますがセラミックより低額になる傾向があります。

また強度と耐久性に優れたジルコニアの上部構造を丁寧に鏡面研磨仕上げすると経年劣化による変形がないため嚙合わる歯が傷みにくいというメリットもあります。

セラミック

セラミック

セラミックは化学的に安定した物質で硬く、食べ物を噛み裂く前歯にも食べ物をすり潰す奥歯にも向いた材料です。

歯の自然色に近い色合いと光沢を出せるため非常に審美性に優れた歯になりますが、ジルコニアに比べると割れやすいというデメリットがあります。

奥歯を強く噛み締める癖がある方や睡眠中に歯軋りをする方には向いていないかもしれません。

費用的にはレジンやジルコニアより高額になる傾向がありますが、どの材料よりも自然に近い美しさが出せるため人目に付く前歯に向いています。

インプラント治療にかかる費用

PCを持つ医者

インプラント治療の費用が高額になるのは、人工歯(上部構造)・支台部(アバットメント)・歯根部(インプラント体)といったインプラントのパーツが高価なためだけではありません。

インプラント治療に手術が必要なことも大きな要因です。

手術には事前の検査や事後の処置もあり、手術も含め全てが全額自己負担ですから費用が高額になるのは想像できるのではないでしょうか。

また手術をするためには手術に必要な設備を整える必要があり、そうした設備投資をインプラントの診療料金に反映しなければ病院の経営が成り立ちません。

インプラント治療の費用は大きく分けると3つです。それぞれについて以降の章で解説しましょう。

手術前の診察費用

レントゲンを指差す看護師

インプラント治療では通常の治療と同様にはじめに医療面接と診察をします。その後の検査は口蓋部のCT検査・血液検査・心電図検査・歯周病検査などがあります。

検査の数の多さに驚かれるかもしれませんが全てインプラントの手術の前に必要な検査です。

血液検査・心電図検査などの臨床検査では手術自体が可能か・安全に手術ができるのか・手術時にどのような注意や処置が必要かなどを確認します。

歯周病検査をするのは歯周病を治療してからインプラント手術になるためです。

これらにかかる費用は通常5~10万円程度ですが、検査で疾患や異常が判明するとさらに検査費用がかかる場合があります。

インプラント手術の費用

歯科用のハサミ

インプラント手術には1次手術と2次手術があります。1次手術はインプラント体を埋め込む手術で、2次手術はインプラント体にアバットメントを結合する手術です。

手術に使われるインプラント体やアバットメントは製造会社によって規格が異なります。手術後はインプラント体の情報が記載されたもの大切に保管してください。

手術の費用は1次手術と2次手術を合わせて20~30万円程度になります。1次手術でインプラント体を埋め込んだ後は治癒期間を置きますが治癒期間中の通院にも別途費用が必要です。

また通常のインプラント手術は日帰りでもできますが、入院が必要な場合は入院費も自己負担になります。

インプラント上部構造の費用

代替歯と器具

インプラント上部構造の費用は通常16~20万円程度が相場です。

インプラント上部構造は材料の種類で費用が異なりますが、医療機関によっては上部構造の材料が決まっていて患者が選択できない場合もあります。

高額な費用を支払うのですから手術前にしっかりと確認しましょう。

上部構造は目に見えるパーツです。どのような歯にするのか担当医師と十分に相談し希望に合わないときはセカンドオピニオンも検討してください。

インプラントの上部構造の種類

インプラント一本

インプラントの上部構造の材料は金属・ガラスセラミック・ジルコニアセラミック・レジンの4つに大別できます。

上部構造は上記の4つの材料を単独または組み合わせて造られ、金属・メタルボンド・ハイブリッドセラミック・オールセラミック・ジルコニアが一般的に知られた種類です。

奥歯に向くもの・前歯に向くもの・両方に向くものがあり、材料により見た目も強度も異なるため個人のニーズに合った選択が必要になります。

以降の章では種類ごとの特徴・メリット・デメリットについて解説しますので上部構造を選ぶときの参考にしてください。

金属

金属の上部構造はチタンやチタン合金を材料とし、強度と耐久性が非常に優れているという特徴があります。

金属のメリットは特徴である強度と耐久性で硬いものを噛んでも壊れません。長期間使用しても変色しにくいのもメリットといえます。

デメリットは銀色・金色の金属色が目立つことでしょう。

金属は非常に丈夫であるため力がかかる奥歯の上部構造に向いています。

上部構造の中では価格が低いので見た目の美しさよりも費用を抑えたい方は選択肢のひとつとして検討してください。

上部構造の中では価格が低いので見た目の美しさよりも費用を抑えたい方は選択肢のひとつとして検討してください。

メタルボンド

メタルボンドは金属の表面にセラミックの表皮を焼き付けた上部構造で、金属の強度と耐久性を備えながらセラミックの美しさもあるのが特徴です。

メリットは強度・耐久性・本物の歯のような自然な色合いですが、焼き付けたセラミックが剥離しやすいというデメリットがあります。

また金属の色が歯茎に移ってしまったり歯周病などで歯茎が下り金属が見えてしまったりすると当初の美しさが損なわれてしまいます。

こうしたデメリットから上部構造に見た目の美しさを強く求める方には向いていません。

メタルボンドはオールセラミックより費用を低く抑えセラミックの美しさも欲しい方には検討の価値がある選択肢です。

ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックは材料のガラスセラミックとレジンを混ぜた上部構造で、ガラスセラミックとレジンの特徴を合わせ持っています。

ハイブリッドセラミックのメリットは自然に近い滑らかな質感・色合いと価格の低さです。自然な歯のように見えるため前歯と奥歯の両方に使用できます。

デメリットはレジンを混ぜている分だけオールセラミックほどの強度と耐久性がなく美しさの面でもオールセラミックに劣ることでしょう。

仕上がりの美しさと低価格を求める方はハイブリッドセラミックを選択肢に入れメリットとデメリットを十分に検討してください。

オールセラミック

オールセラミックの上部構造は内側がジルコニアセラミックで外側がガラスセラミックで造られています。

内側のジルコニアセラミックで金属並みの強度と耐久性を確保しながら、外側のガラスセラミックで艶やかで滑らかな質感と色合いを出しているのが特徴です。

オールセラミックには丈夫で美しいだけではなく、人との親和性の高さからアレルギーがある方でもほぼ使えるという大きなメリットがあります。

金属・メタルボンド・ハイブリッドセラミック・ジルコニアセラミックより価格は高い傾向がありますが、アレルギーで金属が使えない方や強く美しさを求める方のニーズを満たす上部構造です。

ジルコニア

オールセラミックの価格面のデメリットが大きすぎると思う方はジルコニアを検討するのも悪くありません。

ジルコニアの上部構造は全てジルコニアセラミックで造られているため人との親和性が高く強度と耐久性はほぼ金属並みです。

しかもガラスセラミックよりも表面の上部が摩耗しないため表面研磨仕上げをすると嚙合わせる歯の摩耗率が低くなり長持ちします。

自然で艶やかな質感や美しさはオールセラミックにやや劣りますが、費用はオールセラミックより抑えられる傾向があります。

ジルコニアセラミックはやや光りが強い質感と丈夫さを考慮すると最も奥歯に向いた上部構造といえるでしょう。

予算と仕上がりイメージを考慮して種類を選ぼう

インプラントを選ぶ女性

インプラント治療は基本的に全額自己負担のため奥歯1本でもトータルで50万円程度の費用がかかります。

また治療にかかる期間も長く1度治療した後でやり直すのは費用面でも期間面でも難しいでしょう。

つまり仕上がりが気に入らなくても機能的な不具合がなければやり直せないのです。

一概にはいえませんがインプラントの寿命は10~15年程度です。それだけの期間、気に入らない歯を見続けるのは大きなストレスになります。

失敗しないためには、治療を始める前に医療機関にある上部構造の種類ごとの色見本と鏡を見ながら自分の歯の色合いや質感に合うか医師と相談しましょう。

予算と治療の仕上がりイメージを具体的に考え、何か疑問があれば遠慮せずに医師に質問してください。

もし疑問が解決しなければ後で悔やまないためにもセカンドオピニオンも検討しましょう。

また治療に不安があるときは不安をそのままにせず医師に打ち明け十分な説明を受けてください。不安の内容によっては医師から不安を解消できる医療的な提案がある可能性もあります。

まとめ

歯を確認する女性

インプラント治療にかかる費用は原則的に全額自己負担になり、奥歯1本を治療するには初診から治療終了まではトータルで30~50万円程度かかるのが相場です。

奥歯とは犬歯から奥の小臼歯と大臼歯で通常の歯科診療では健康保険が適用されますが、インプラント治療は美観を高める治療とされ健康保険が適用されません。

人生の楽しみの3分の1は食にあります。高額な費用をかけて治療するのですから失敗しないインプラントを選び、入れ歯ではできない快適な食生活を楽しんでください

治療が終了しても定期的なメンテナンスのために通院が必要ですが、インプラント以外の歯の歯石の除去や虫歯・歯周炎のチェックのためにも定期的に通院するのが理想でしょう。

インプラントは第2の歯です。大切な歯を失くさないように毎日の歯磨きも忘れないでくださいね。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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