八重歯を改善する方法のひとつに、歯列矯正用アンカースクリューという補助装置を利用したインプラント矯正があります。
八重歯は歯並びが悪い状態のため、さまざまな口腔トラブルの要因になります。見た目の悪さから、コンプレックスを感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事ではインプラント矯正で行う八重歯の治療法について、リスク予防法や費用と併せて解説します。
八重歯の歯列矯正の選択肢を増やし、見た目や笑顔に自信を持って過ごすきっかけとなれば幸いです。
インプラントで行う八重歯の治療法
- インプラントとはどのような治療ですか?
- インプラントとは、体内に人工物を埋め込む治療方法です。
歯科治療の場面では、失った歯を補うための補綴用インプラントと、歯列矯正治療のためのインプラントがあります。補綴用インプラントは、歯茎に埋め込んだ金具に人工歯を取り付ける治療法です。埋め込んだチタンが骨と結合することで、半永久的に使用できます。
インプラント矯正は、歯茎の側面から骨に金具を埋め込み、その露出した部分を固定源として歯列を矯正する方法です。この際、「歯列矯正用アンカースクリュー」というネジタイプの金具が使用されます。
ただし、アンカースクリューは固定源となる補助装置であり、マルチブラケットやインビザラインなどの主な矯正装置と併用する必要があります。歯列矯正が完了した後には金具を撤去するため、体内に金具が残ることはありません。
- インプラントで行う八重歯の治療法を教えてください。
- インプラント矯正により八重歯を治療する際は、歯列を整えるための歯の移動に歯列矯正用アンカースクリューを使用します。
治療の流れとしては、初めにX線検査(レントゲン)で歯列矯正用アンカースクリューを埋め込む位置や金具の大きさを検討します。埋め込む処置の所要時間は、1ヵ所あたり5~10分程度です。
埋め込み位置に局所麻酔を行い、専用のドライバーを用いて木ねじの要領で直接スクリューを埋め込みます。場合によっては歯茎を切開したり、事前に誘導孔を開けたりする場合があります。埋め込み後の痛みはほとんどありません。
設置後は、マルチブラケットもしくはインビザラインを使用して歯列矯正します。歯列矯正の完了後に除去する際の痛みはほとんどなく、麻酔が必要ない程度です。完了後、一定期間は保定装置をつけることで後戻りを防ぎます。
なお八重歯とは特定の歯を指すのではなく、歯列からずれている歯を指す言葉です。上側の犬歯(歯列の中心から3番目の歯)が八重歯になることが多いため、一般的には犬歯が前に張り出している状態を指すことが多いです。
八重歯の治療は歯列からずれている歯をほかの歯と同じ位置に直し、歯並びを整えることを目的として行われます。
八重歯を正しい位置に入れるためには、ほかの歯を移動させてスペースを確保する必要があります。歯の移動の際に歯列矯正用アンカースクリューを使用するのがインプラント矯正です。患者さんの口腔内の状態によってはスペース確保のため抜歯が必要となる場合もあります。
- 八重歯の歯列矯正を行う場合メリットはありますか?
- 八重歯の歯列矯正を行うメリットは以下のとおりです。
- むし歯や歯周病になりにくくなる
- 嚙み合わせがよくなる
- 口内炎になりにくくなる
- 笑顔や印象に自信が持てるようになる
八重歯の歯列矯正は、上記のような口腔内環境および口腔機能の向上につながるメリットがあります。
八重歯は歯並びが悪い状態のため、歯磨きなどのケアが行き届かずむし歯や歯周病になりやすいです。歯並びの悪さは嚙み合わせの悪さにつながり、食事のしにくさや顎関節症のリスクを高める原因にもなります。八重歯が唇や粘膜を傷つけてしまい口内炎ができることも少なくありません。
八重歯をコンプレックスと感じている方は、歯列矯正を行うことで思いきり笑えるようになるなど、心理的にもよい効果があります。
続いて八重歯をインプラント矯正で治療することによるメリットは下記のとおりです。- 治療時間が短く済む
- 抜歯をせずに歯列矯正できる可能性が高くなる
- 患者さんの負担が減る
- 治療の幅が広がる
インプラント矯正はほかの歯列矯正方法(マルチブラケットやマウスピースなど)と比較して固定力が強く、歯を大きく動かすことが可能です。そのため、治療時間の短縮や抜歯の回避、患者さんの負担軽減の可能性が高くなります。
- 八重歯の歯列矯正を行う場合のデメリットを教えてください。
- 八重歯の歯列矯正を行うデメリットは、次のものがあります。
- 費用がかかる
- 時間がかかる
- 治療中は定期的な通院が必要
- 状態によっては永久歯を抜く必要がある
- 後戻りの可能性があるため、治療後も管理が必要
治療費については、歯列矯正治療は一般的に医療保険が適用されないため、全額自己負担となります。
ただし、厚生労働大臣が定める疾患に起因する場合などでは保険適用となるケースがあるため、一度歯科医師に相談をおすすめします。その他のデメリットも歯科医師から説明を受け、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。
- 受診してから治療完了までの期間はどのくらいですか?
- 歯列矯正用アンカースクリューを用いた八重歯のインプラント矯正は、治療完了まで1~3年程度かかります。
ただし、患者さんの状態や希望によって治療方針や治療期間が変わるため、まずは歯科医師に相談しましょう。
インプラントで八重歯を歯列矯正する際のリスク予防法
- 八重歯の歯列矯正でのリスク予防法はありますか?
- インプラント矯正に伴うリスクには、以下のものがあります。
- 周辺粘膜の腫れや痛み
- 歯根への接触や損傷
- 神経や血管の損傷
上記のリスクは治療前の診断の精度を上げ、適切な位置に歯列矯正用アンカースクリューを埋め込むことで予防が可能です。
万が一問題が発生した場合は、早急に適切な対策を講じることで症状を抑えられます。そのため、インプラント矯正の知識と経験が豊富な歯科医師を選ぶようにしましょう。
また持病がある人やチタン過敏症の人、妊婦などはインプラント矯正ができない場合があります。心当たりがある方は事前に歯科医師に確認し、リスクを予防しましょう。
- インプラントで八重歯を歯列矯正するときによい歯科医師を選ぶコツはありますか?
- インプラント矯正を希望する場合は、インプラント矯正について十分な知識と経験がある歯科医師を選ぶことをおすすめします。
歯科医師を選ぶ方法のひとつに、次に挙げる日本矯正歯科学会の認定資格を持つ歯科医師かどうかを確認するという方法があります。- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会臨床指導医
日本矯正歯科学会認定医は、学会が指定する研修機関で5年以上の矯正歯科臨床経験を持ち、学会の審査に合格した歯科医師です。
日本矯正歯科学会臨床指導医は、12年以上矯正歯科診療に専従し、学会の審査に合格した歯科医師です。
認定資格を持つ歯科医師は日本矯正歯科学会ホームページ上で検索できるため、参考にしてみるとよいでしょう。
- 歯列矯正前のセカンドオピニオンは効果的ですか?
- 歯列矯正治療を受けるにあたり、治療前のセカンドオピニオンは効果的です。歯列矯正治療は費用が高額で治療期間が長期にわたるため、患者さんが納得した状態で治療を受けることが大切です。
まずは相談のために受診し、不安がある場合はほかの医院や病院にも相談して納得がいくまで説明を受けることをおすすめします。歯列矯正治療が可能な医療機関は下記があります。- 歯列矯正治療が可能な一般歯科医院
- 歯列矯正専門の歯科医院
- 大学付属病院の歯列矯正歯科
異なる形態の医療機関にセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう。
インプラントで八重歯を歯列矯正する際の注意点・費用
- インプラントで八重歯の歯列矯正での注意点を教えてください。
- 八重歯のインプラント矯正の主な注意点は、インプラント金具の脱落や周辺粘膜の炎症です。
歯列矯正用アンカースクリューは機械的刺激に弱いため、指や舌などで力を加えないよう注意が必要です。場所をずらして再度金具を埋め込むことで治療を継続できるため、脱落してしまった場合はすぐに歯科医師に相談しましょう。
また、歯列矯正用アンカースクリューの周辺粘膜が炎症を起こし、腫れや痛みが発生することがあります。口腔内環境を衛生に保つことを意識し、歯茎から露出している歯列矯正用アンカースクリュー頭部も丁寧に歯磨きを行うことで、炎症の発生を予防できます。
- インプラントで八重歯を歯列矯正したときの費用相場を教えてください。
- 歯列矯正用アンカースクリューの埋め込み処置は1本あたり30,000円(税込)程度で、別途歯列矯正治療の費用がかかります。
歯列矯正治療の一般的な相場は800,000~1,200,000円(税込)といわれていますが、地域や医療機関、歯列矯正方法により費用は異なります。治療を希望する場合は歯科医師に相談し、費用についてもしっかりと確認しましょう。
編集部まとめ
インプラントで行う八重歯の治療法として、歯列矯正用アンカースクリューを用いる方法があります。歯茎に埋め込んだチタン製の金具を固定源として歯の位置を矯正する方法です。
固定力が強く、治療時間の短縮や抜歯の回避、患者さんの負担軽減の可能性が高くなるのがインプラント矯正のメリットです。
知識と経験が豊富な歯科医師のもとで口腔内衛生に注意しながら治療を行うことでリスクを低減できます。
インプラント矯正は一般的な歯列矯正治療費用に加え、アンカースクリュー1本あたり30,000円(税込)程度の費用がかかります。
歯列矯正用アンカースクリューによる八重歯の歯列矯正治療を希望する場合は歯科医師に相談し、納得がいくまで説明を受けることが大切です。
参考文献