インプラントに興味はあるものの、治療期間がトータルでどのくらいかかるのかわからず、治療の一歩を踏み出せない方もいるのではないでしょうか。
本記事ではインプラント治療は何日かかるのかを、以下の点を中心にご紹介します。
- インプラント治療にかかる期間
- インプラント治療の流れ
- インプラント治療が長引くケース
インプラント治療は何日かかるのか理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
インプラント治療とは
インプラント治療とは、むし歯や歯周病、外傷、腫瘍、先天性欠如などによって失われた顎骨また顎顔面の欠損に対して、人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に支台、人工の歯(上部構造)を装着する治療法のことです。
身体と馴染みやすいチタン製のインプラント体が使用され、自然な噛み心地と見た目の再現を目指します。
歯を失った場合の治療法として、入れ歯(義歯)、ブリッジ、インプラント治療の3つが挙げられますが、インプラント治療は、歯根が残っていない場合にも対応できる点で、差し歯やブリッジ、入れ歯とは異なります。
ちなみにインプラントとは、本来は体内に埋め込む医療器具や材料を指します。そのため、歯科領域だけでなく、美容整形のシリコンや、整形外科の骨折治療で用いられるボルト、心臓に埋め込むペースメーカーなどもインプラントです。
インプラント治療は何日かかる?
インプラントの治療は、手術自体は約1〜2日で終わるものの、全体の治療期間は半年〜1年ほど必要とされています。
治療は事前検査から始まります。
手術前に検査や前処置のために何度か通院する必要があるため、期間は2〜3週間ほど要します。この段階でむし歯や歯周病が発見された場合は、先にその治療を行います。
それから、インプラント体(人工歯根)の埋入手術を行います。
手術時間は、1〜2本なら1時間程度が目安ですが、全身麻酔を必要としたり、出血多量となった場合などは、術後2〜3日ほど入院が必要になる可能性があります。
その後、インプラント体が骨と結合するまで、約3〜6ヶ月の治癒期間が必要です。
上顎は結合に時間がかかるため、下顎より長引く傾向があります。症例や体質によっても異なるため、正確な期間は担当の歯科医師に尋ねましょう。
治癒期間を経て、骨とインプラント体が結合したら、アバットメントを接続する二次手術が行われます。
その後約2〜4ヶ月、仮歯を装着して過ごし、最後に人工の歯(上部構造)を装着します。
また、インプラント手術後は約3~6ヶ月毎に定期メンテナンスを受ける必要があります。
手術直後は感染症などの恐れがあるため、傷口が塞がるまでは細かく行われます。
インプラントの定着後も噛み合わせの検査やX線撮影などを通じて、埋め込んだインプラントの検査を行います。
インプラント治療の流れ
インプラント治療はどのような流れで行われるのでしょうか。また、それぞれの所要時間や処置期間はどのくらいかかるのでしょうか。
インプラント手術には、1回法と2回法があります。
1回法は、インプラント体に加えてアバットメントというパーツの取り付けも一緒に行います。
2回法は、インプラント体のみを埋入した後、顎の骨との結合が完了してからアバットメントを装着する手術を行います。
骨の量が十分にあり、硬い場合は1回法でも問題はないとされていますが、骨の量が少なく、骨移植が必要だったり骨がやわらかかったりする場合は2回法が行われます。
ここでは、2回法を例に解説します。
1.カウンセリング
インプラント治療の第一歩となるのがカウンセリングです。治療の動機や不安、手術時期の希望、既往歴やアレルギーの有無などをしっかり伝えましょう。
患者さんの既往歴や体質、アレルギーなどによって治療がすぐに行えないケースもあるため、問診とカウンセリングはとても重要です。
また、歯科医院ごとに治療方針や設備、費用体系は異なるため、疑問点や不安な点があれば遠慮せず質問しましょう。
カウンセリングは1回で、初診時に行われることが多く、所要時間は約1~2時間です。
納得のいく治療を受けるためにも、自身が信頼できる歯科医院を選ぶことが大切です。
2.検査と治療計画
インプラント治療では、治療開始前に精密な検査と診断が欠かせません。むし歯や歯周病の有無、噛み合わせの状態を確認し、歯科用CTスキャンで顎の骨の密度と量を調べ、インプラントが安全に埋め込めるかを判断します。
さらに、上部構造の材質や色などの要望も踏まえたうえで、個別に治療計画を作成します。 スケジュールや費用、治療の内容に納得できれば、契約と予約へと進みます。
3.一次手術
一時手術では、歯の根にあたるインプラント体を顎の骨に埋め込む処置を行います。 局所麻酔下で歯茎を切開し、骨に専用のドリルで穴を開け、インプラント体を埋入し、歯茎を縫い合わせます。日帰りで、1本あたりの処置時間は15分程度が目安ですが、埋め込む本数や抜歯、骨造成や再生治療の有無によって処置時間は変わります。
骨とインプラント体がしっかり結合するまで、約3〜6ヶ月の治癒期間が必要です。
恐怖心が強い方は、静脈麻酔を使用した、半分寝ている状態で手術を受けられる静脈内鎮静法に対応しているクリニックもあるので、歯科医師に相談してみましょう。
4.抜糸と仮歯調整
インプラント埋入手術の約2週間後に、手術時に使用した糸の抜糸を行います。傷口が安定したことを確認できたら、仮歯を装着します。この処置にかかる時間は15分程度です。
前歯に関しては、見た目を考慮して当日に仮歯を入れる場合が多いようです。また、顎の骨の状態や噛み合わせに問題がない場合、一時手術のときに仮歯を入れる方法もあります。
仮歯が入った後も、強く噛みすぎるとインプラント体の骨との結合に悪影響を及ぼす可能性があるため、やわらかい食事を意識するなどの注意が必要です。
5.待機
インプラント手術の一次手術後は、インプラント体が顎の骨としっかり結合するまでの待機期間が必要です。待期期間の目安は下顎で3ヶ月程度、上顎で4〜6ヶ月程度ですが、骨の状態やインプラントの本数、体質によってはそれ以上かかることもあります。
また、定着期間に通院の必要はないとしているクリニックもありますが、術後の状況に合わせて3〜4回ほどの通院が必要になる場合もあります。
通院の予定がなくとも、異常を感じた際はすぐに歯科医師に相談しましょう。
インプラントの治療は、長期的な視点での取り組みが大切です。
6.二次手術
インプラント治療の二次手術では、インプラント体と人工歯(上部構造)をつなぐアバットメントを装着します。
歯茎を再度切開してインプラントの頭部を露出させ、埋入したインプラント体が顎の骨としっかり結合しているかチェックします。問題がなければキャップや仮のアバットメントを取り付け、歯茎の形が整うのを1~2週間ほど待ちます。また、患者さんの状態に応じて仮歯の調整も行われます。
二次手術は日帰りで行われますが、最終的な上部構造の装着までさらに1~2週間ほど待機が必要です。
7.型取り
インプラントの二次手術後、歯茎の状態が落ち着いたら、上部構造を作るための型取りを行います。これは、見た目や噛み合わせを自然に仕上げるために大切な工程です。 患者さんごとに合わせた専用のトレイを使い、シリコン材や口腔内スキャナーなどで精密な型を採取します。歯並びや噛み合わせを正確に再現して、装着後に違和感のない、しっかりと機能する上部構造です。
型取りは、インプラントの仕上がりの美しさや快適さにも関わる重要なステップです。
8.完成
インプラント治療の最終ステップは、歯となる被せ物の装着です。
二次手術で装着した仮歯を外し、上部構造を土台を取り付けます。
噛み合わせや色、形に違和感がある場合は、その場で歯科医師に相談しましょう。
上部構造の装着自体は30分程度で終わり、ここでインプラント治療は完了です。
9.メンテナンス
インプラントを長持ちさせるためには、治療後も定期的なメンテナンスが不可欠です。 3ヶ月〜6ヶ月に一度、調整や定期検査、歯磨きの指導などが行われます。
インプラントは時間と手間がかかりますが、その分、天然歯に近い快適な機能と見た目を得られる治療です。
インプラント治療が長引くケース
インプラント治療は長期に及ぶため、長引かせたくない方は多いのではないでしょうか。 ここでは、どのような場合にインプラント治療が長引くのか解説します。
むし歯や歯周病があるケース
インプラント治療を行う前には、むし歯や歯周病などの口腔内の問題を解決することが重要です。歯周病はインプラント治療に大きな影響を与えるため、治療前にしっかりと対処しなければなりません。歯周病が進行している場合、治療に数ヶ月を要して、その後にインプラント治療を開始します。
歯周病が軽度であれば、インプラント治療を始めることも可能とされていますが、治療を先延ばしにせず、しっかりと改善してから進めることが望ましいです。中等度から重度の歯周病の場合、歯茎や顎の骨の状態が悪化しているため、インプラントの埋入が難しくなります。このような場合は、歯周病治療を優先し、場合によっては骨造成術を行う必要が出てくることもあります。
インプラント治療を成功させるためには、まずは歯周病の治療を徹底的に行い、その後の治療へと進むことが大切です。
顎の骨が不足しているケース
インプラント治療を行うためには、顎の骨の十分な厚みと高さが必要です。しかし、顎の骨が不足している場合や骨が脆い場合には、追加の処置が必要になることがあります。具体的には、骨移植や骨増生などの手術ですが、骨移植や骨増生の手術には数ヶ月〜半年以上の治療期間が必要となる場合があります。
顎の骨が薄かったり少なかったりする場合、骨造成手術が行われます。インプラントをしっかりと支えるための骨量を確保しますが、骨が増え、定着するまでには半年ほどの時間を要します。
ただし、骨造成手術とインプラントの埋入を同時に行う方法もあり、その場合は治療期間を延ばすことなく、効率的に治療を進めることが可能とされています。
結合に時間がかかるケース
インプラント治療では、人工歯根と顎の骨がしっかりと結合することが大切です。しかし、患者さんの体調や環境によっては、この結合に時間がかかることがあります。例えば、糖尿病を患っている方や全身疾患を持っている方は、骨密度が低下していることが多く、結合に時間を要するため注意が必要です。
また、高齢の方や喫煙者の方も、インプラントと骨の結合が遅れる可能性があります。喫煙は、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、血流を悪化させるため、結合に悪影響を与えることがあります。血流が滞ると、治療が長引いたり、結合が不十分になるリスクが高まることがあります。
インプラント治療の費用相場
インプラント治療の費用は基本的に自費となります。初診から歯科用CT検査、臨床検査、手術費、上部構造の製作費など、治療が完了するまでにかかる費用を事前にしっかりと確認し、納得したうえで治療を受けることが重要です。
なお、平成24年4月からは症例で健康保険が適用されるようになりましたが、適用されるのは顎骨をがんなどで切除した後に骨移植を行う場合や、外胚葉異形成症(がいはいよういけいせいしょう)などの先天性疾患の症例に限られています。
保険適用のインプラント治療を提供している医療機関は、入院施設を有する病院など、施設基準を満たしている必要があり、すべての医療機関で対応できるわけではありません。
インプラント治療の仮歯期間で注意すること
最後にインプラント治療の仮歯期間はどのようなことに注意すればいいのかについて以下で解説します。
食事
治療期間中は食事に気をつける必要があります。例えば硬い食べ物は仮歯を壊すリスクがあり、治療部位に直接的な負担をかけることがあります。そのため、治療中はやわらかい食べ物を選ぶことが大切です。
インプラント治療後はスープやヨーグルト、ピューレなどのやわらかい食事が推奨されます。食事の硬さを工夫することで、治療がスムーズに進み、快適な期間を過ごせます。
口腔内環境のケア
仮歯周辺には汚れが溜まらないように注意しましょう。食べ物の残りかすやプラークが仮歯の周りに溜まると、口腔内の環境が悪化し、感染症のリスクが増す可能性があります。
そのため、仮歯周辺は丁寧な歯磨きを心がけ、フロスや口腔洗浄液を使ってうがいを行うことが大切です。
仮歯の取扱い
インプラント治療中に仮歯を入れたまま治療を中止しないようにしましょう。仮歯はあくまでインプラント治療中の一時的な役割を果たすものであり、長期間の使用や放置は避けるべきです。プラスチック製の仮歯は時間とともに劣化し、その機能や形が変わることがあります。
そのため、仮歯を使用する際は、歯科医師の指示に従い、治療を最後まで完了させるように心がけてください。
まとめ
ここまでインプラント治療は何日かかるのかにをお伝えしてきました。 インプラント治療は何日かかるのか、要点をまとめると以下のとおりです。
- インプラント治療は、手術自体は約1〜2日で終わるものの、全体の治療期間は半年〜1年ほど必要とされている
- インプラント治療は主に、①カウンセリング、②検査と治療計画、③一次手術、④抜糸と仮歯調整、⑤待機、⑥二次手術、⑦型取りの流れで行われる
- インプラント治療が長引くケースには、むし歯や歯周病があるケースやむし歯や歯周病があるケース、結合に時間がかかるケースが挙げられる
インプラント治療の期間は、治療内容や患者さんの状態によって異なりますが、数ヶ月〜半年程度かかることが多いようです。事前にしっかりと治療計画を確認し、安心して治療を受けることが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。