せっかくインプラント治療をしたにも関わらず正しいケアを怠ったためにむし歯になることは実際にあるのでしょうか。
インプラント治療を検討中の方には事前に知っておいた方がよい情報を、またすでに治療を終えた方にはどのようなことに気をつけて生活をしていけばよいのかを具体的に解説します。
インプラント治療後に起こりうるむし歯以外の口腔トラブルや自分でできる正しいケア方法についてご紹介します。気になるトラブルの治療費用はいくらくらいかかるのでしょうか。
ぜひこの記事を参考にインプラント治療に対する不安を解消してインプラント治療後を快適に過ごしていただければ幸いです。
インプラントでむし歯にならない理由
- インプラントでむし歯にならない理由を教えてください。
- インプラントは、人工歯のためむし歯になることはありません。
むし歯は酸が歯を溶かすことで起こりますがインプラントの人工歯根の材料には純チタンやチタン合金が用いられ、人工歯の部分はセラミックなどが使われています。そのため酸で人工歯が溶けることはありません。
- インプラント後にむし歯が発生する原因は何でしょうか?
- インプラント自体はむし歯になりませんが、天然歯との間に歯垢が溜まることで周囲の歯がむし歯になることがあります。
歯垢には細菌が潜んでいて食べかすの糖分を摂取・分解することで酸を出して歯を溶かしていきます。
むし歯は歯磨きだけで完全に防げるわけではありません。特に大人のむし歯が発生する原因として次のようなものがあります。- 歯と歯の間や溝、歯茎に接する部分の歯垢からの発生
- もともと治療が施してあった詰め物の奥でむし歯が進行してしまう場合
- 歯周病などで歯の根面が露出してむし歯になるケース
インプラント後にむし歯が発生する原因には治療後の他の歯や歯茎に対するケアがあるようです。
- インプラント後の生活上での対処法はありますか?
- インプラント治療をした後にむし歯を発生させないためにも、生活のなかで取り入れられる対処法として以下の項目があげられます。
- インプラントの部分も天然歯もどちらも丁寧に歯磨きをする
- デンタルフロスや歯間ブラシを使用して歯と歯の間の歯垢を取り除く
- フッ化物入りの歯磨剤などを利用する
- 糖分の摂取を制限する
- 歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける
上記の対処法は一例ですが、取り入れやすい方法から試すことでむし歯の発生リスクを抑えることができます。ぜひ参考にしてみてください。
インプラントで注意したい口腔トラブル
- インプラントで注意したい口腔トラブルはなんですか?
- インプラント治療後の代表的な口腔トラブルとして次のような事例があります。
- 補綴修復物(上部構造)の破折・破損
- インプラント周囲炎
- インプラント体の動揺
- インプラントの破折
- 埋込手術後のインプラント体の脱落
トラブルの発生原因はさまざまです。治療後のケアで予防できるトラブルと、初期の段階で骨量が少ない部位にインプラント体を埋込したことが原因で起こる脱落トラブルなどがあります。
- 治療後にむし歯以外で考えられるトラブルはありますか?
- むし歯以外で考えられるトラブルとしてインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎などがあります。インプラント周囲粘膜炎はインプラント周囲の粘膜に起こる初期の症状です。
しかし、インプラント周囲炎になると歯茎が腫れたり赤みが出たりして歯磨きなどの際に出血することがあります。
歯面ではなくインプラントに付着した歯垢が原因で起こる細菌感染症の一種で、悪化するとインプラント脱落のトラブルが発生してしまいます。インプラント周囲炎の発生原因は複雑で治療法もさまざまです。
歯周炎と同様に口腔環境の不良や喫煙習慣などが悪影響を及ぼすと考えられています。適切なケアによるインプラント周囲炎の予防が重要です。
- インプラント自体破損や脱落することはありますか?
- インプラント自体の破損や脱落はトラブルの事例として実際にあります。インプラント自体の破損はスクリューの弛みや過度な咬合の繰り返しなどで起こります。破損した場合は上部構造を取り外したり修理したりしなければなりません。
インプラントの脱落の原因の一つに先ほどまで述べてきたインプラント周囲炎があります。炎症が進行すると歯肉や歯槽骨まで広がり、インプラントが支えきれなくなってしまい脱落や動揺を起こします。
インプラント周囲炎は軽微な段階では症状に気がつきにくいのが特徴です。早期発見が重症化を防ぐことにつながります。そのためにもインプラント治療後は定期的に歯科医院でメンテナンスを受けましょう。
- 口腔トラブルでの治療費用の相場を教えてください。
- 高額なインプラント治療に加え口腔トラブルでも治療費が発生するとなるとどのくらい費用を負担しなければならないのか不安に感じる方は少なくありません。
インプラント治療は自由診療でありインプラント周囲炎の治療では保険適用ができないため、少しの治療であっても予想以上の費用がかかると考えられます。
一般的な歯科医院で公表されている費用相場は炎症の症状によって分けて設定されているようです。参考の費用は以下のとおりです。- 軽度:数千円程度
- 中期〜末期:数万円〜数十万円
歯科医院によっても費用設定に違いがあるため、あらかじめ問い合わせておくとトラブルが少なくて済むかもしれません。
口腔トラブルの原因がインプラント周囲炎の前段階であるインプラント周囲粘膜炎だった場合は炎症が周囲粘膜に限られているため感染除去をすれば改善が期待できるうえ、外科的処置も必要ありません。
インプラント周囲炎になり炎症範囲が骨にまで及んでしまうと外科的な処置が必要になり費用負担も増えてしまいます。ただし一般的には10万円を超える医療費は控除が受けられるため、確定申告の際に必要となる領収証は大切に保管するようにしましょう。
インプラントの正しいケア方法
- インプラントの自分でもできる正しいケア方法を教えてください。
- インプラントを長持ちさせるためにも正しいケアを心がけましょう。具体的には次のようなケア方法があります。
- 歯磨きは通常の歯と同様に行う
- インプラント周囲炎を予防する観点からも特に歯と歯肉の境目を丁寧に磨く
- 歯間ブラシやデンタルフロスを使ってインプラント同士あるいは天然歯の間も歯垢が溜まらないようにする
- 洗口剤の使用によって歯だけでなく口腔内全体を殺菌する
- 喫煙などの生活習慣を見直す
いったんトラブルが起こるとメンテナンスとは別に歯科医院に通院する必要が出てきたり、インプラントの修理をしなければならなくなったり新たな治療費がかかったりとデメリットが多くなります。
日頃のケアをこまめに行うことでトラブルを予防できるのであればするに越したことはありません。
- ケアで口腔トラブルは予防できますか?
- 口腔トラブルは予防ができます。自分でできるケアと歯科医院で行うケアの両方を取り入れてインプラントを長く保つことが大切です。
治療前に適切な検査を受けることはもちろん治療後もインプラントや天然歯との隙間の歯垢を取る、口腔内を殺菌する、あるいは歯茎が腫れたり異変を感じたりしたら早めに歯科医院を受診しましょう。
- 装着後は月に何回くらい通院することが望ましいですか?
- インプラント治療後は3〜6ヶ月に1回メンテナンスのために通院するのが望ましいです。インプラントは95%が10年以上持ったといわれています。
インプラントを長く保つためには日常のケアに加えてプロの歯科医師によるメンテナンスが欠かせません。定期的なメンテナンスを受けることでインプラントやインプラントの周辺組織の機能が安定します。
自分では気付きにくい口腔トラブルや治療後の異変が早期に発見できて早期治療ができるメリットもあります。
編集部まとめ
インプラント治療を終えたら自分でできるケアと定期的な歯科医師によるメンテナンスを受けることで口腔トラブルを予防しましょう。
インプラント自体がむし歯になることはありませんが、むし歯以外にも注意したいトラブルがあります。インプラント周囲炎の発生はインプラントの脱落につながる恐れがあることがわかりました。
またインプラント周囲炎の治療も自由診療となってしまうため高額な治療費がかかる恐れもあります。
日頃のこまめな口腔ケアでトラブルのリスクが軽減されます。インプラント治療は装着したら終わりではなく長期間にわたって歯科医師による経過観察やメンテナンスが必要です。
治療後も3〜6ヶ月に1回を目安に歯科医院を訪れて口腔トラブルの予防に努めましょう。
参考文献