インプラント

インプラントが定着しない場合どのような症状が現れる?定着しない原因なども併せて解説します

インプラントが定着しない場合どのような症状が現れる?定着しない原因なども併せて解説します

失った歯を補うための方法としてさまざまな方に利用されているインプラント治療ですが、インプラントが正しく定着しない場合どのような症状が現れるのか気になる方もいるのではないでしょうか。

本記事ではインプラントが定着しない場合の症状について以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラントが骨に定着しないときに見られる症状
  • インプラントが骨に定着しない主な原因
  • インプラントが骨に定着しないときの治療方法

インプラントが定着しない場合の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

インプラントとは

インプラントとは

インプラントとは、失った歯を補うために、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。自然な歯と同じような見た目と機能を取り戻すことが可能とされています。

インプラントの構造は大きく分けて3つの部分で成り立っています。

まず、顎の骨に埋め込む人工歯根は、主にチタンなどの身体に馴染みやすい金属で作られており、時間とともに骨としっかり結合します。
次に、土台となる部品が人工歯根に取り付けられ、これが人工歯と歯根をつなぐ役割を果たします。最後に人工歯は、見た目や機能を本物の歯に近づけた部分で、土台に固定されます。

この3つの部品が一体となることで、自然な歯に匹敵する安定性の実現につながるとされています。人工歯根が骨と一体化することで、強い噛む力にも耐えられ、咀嚼機能や発音機能の改善も期待できるといいます。

インプラント治療は歯の機能を取り戻すだけでなく、見た目の美しさの保持にも有効とされており、快適な生活を支える選択肢の一つといえるでしょう。

インプラントが骨に定着しないときに見られる症状

インプラントが骨に定着しないときに見られる症状

インプラントが骨に定着しないときは、以下のような症状が見られるとされています。

細菌感染による炎症反応

インプラント治療で埋め込んだインプラント体が顎の骨と結合するためには、数ヶ月間にわたる時間と、患者さん自身の免疫力や自然治癒力が正常に機能することが必要です。

しかし、インプラントの周囲組織に細菌感染が生じると炎症反応が引き起こされ、骨との結合が妨げられる場合があります。
このような状態が続くと、最終的にはインプラントが定着せず、脱落してしまうことがあります。

なかでも問題となるのがインプラント周囲炎と呼ばれる状態で、これは細菌感染がインプラント周辺の組織に影響を及ぼし、天然歯で見られる歯周病に似た症状を引き起こします。
インプラント周囲炎は進行が早い場合が多く、早期に対応しなければインプラントの脱落につながることがあります。

細菌感染の主な原因は、歯垢やプラークに含まれる細菌がインプラント周囲に蓄積することです。さらに、強い力で噛みすぎるなどの咬合負担も、炎症を悪化させる要因となります。

細菌感染による炎症が歯肉の表面に留まる段階であれば、治療を行うことで健康な状態を取り戻すことができるとされています。
しかし、炎症が進行して骨にまで影響を及ぼすと、インプラントが支えを失い脱落する可能性が高まります。
そのため、インプラント治療後は日々の口腔ケアと定期的な検診が重要であり、感染の予防や早期発見に努める必要があります。

インプラントのぐらつき

インプラントは、手術によって人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その後数ヶ月かけて骨と結合することで安定性を確保します。この結合に成功すれば、天然の歯に近い機能と噛む力を得ることができるとされています。

しかし、何らかの原因で骨とインプラント体がしっかり結合しない場合、インプラントがぐらついたり、最悪の場合は脱落することがあります。

結合が不十分となる主な原因には、手術時の技術的な問題が挙げられます。
例えば、ドリル操作による過剰な摩擦熱が骨にダメージを与えると、骨の壊死を招くことがあります。また、埋め込む部位の骨量が不足している場合や、インプラント体の角度や位置が適切でない場合も、結合が妨げられる要因となります。

さらに、患者さん自身の健康状態や生活習慣も影響します。
糖尿病などの持病がある場合や、不規則な生活習慣による免疫力低下が、骨とインプラント体の結合を阻害することがあります。
また、口腔内の衛生状態が悪いと、細菌感染を引き起こし、インプラント周囲炎を招く可能性も高まります。

こうした問題を防ぐためには、手術前の十分な検査と計画が重要です。また、インプラント治療後は、患者さん自身が適切な口腔ケアを行い、定期的に歯科医師の診察を受けることが大切です。
結合が不十分な場合でも、早期に発見し対処することで、治療をやり直せるケースも少なくありません。

インプラントが骨に定着しない主な原因

インプラントが骨に定着しない主な原因

インプラントが骨に定着しない場合、以下のような原因が考えられます。

埋入角度や位置が不適切

インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に適切な位置や角度で埋め込むことが重要です。不適切な埋入位置や角度では、骨とインプラントが十分に結合せず、ぐらつきや脱落の原因となることがあります。そのため、治療前に行う精密検査と、埋入手術の技術が成功の鍵を握っています。

事前の検査では、顎骨の形状や骨量、埋入に適した場所を適切に把握する必要があります。これを怠ると、インプラントを支える骨が不足していたり、埋入が浅すぎたり深すぎたりすることがあります。
また、埋入位置が不適切な場合、噛む力が偏ってかかり、インプラントの寿命が短くなる可能性もあります。

さらに、上顎洞付近にインプラントを埋め込む際は注意が必要です。上顎洞とは上顎骨の内部にある空洞で、埋入が深すぎると上顎洞を突き抜けてしまい、上顎洞炎などの合併症を引き起こすリスクがあります。
このような問題を回避するには、CTスキャンなどの精密な検査を行い、顎骨の状態をしっかり把握したうえで埋入計画を立てることが求められます。

ドリルによるオーバーヒート

インプラント治療で、人工歯根(フィクスチャー)を顎の骨に埋め込む際には、ドリルを用いて歯槽骨に穴を開ける処置が必要です。この過程で発生する摩擦熱が過剰になると、骨がダメージを受ける”オーバーヒート”という現象が起こることがあります。

このオーバーヒートが発生すると、歯槽骨の細胞が死んでしまい、インプラント体が骨と結合するプロセス(オッセオインテグレーション)が妨げられる可能性があります。

オーバーヒートは、適切な冷却が行われないことが主な原因とされています。
ドリルで骨を削る際、摩擦によって骨が熱を持つため、十分な水で冷却しながら処置を進めることが不可欠です。冷却が不十分な場合、周囲の骨組織が損傷し、インプラント体が安定しない、あるいは早期に脱落してしまうリスクが高まります。

歯周病・糖尿病を患っている

インプラント治療では人工歯根が顎の骨としっかり結合することが成功の鍵となります。
しかし、歯周病や糖尿病を患っている場合、この結合が阻害されるリスクが高まります。

なかでも歯周病は、歯茎や骨の健康を損ない、インプラント周囲の細菌感染を引き起こす原因となります。こうした感染が進行すると、骨と人工歯根が適切に結合しない可能性があります。

また、糖尿病の患者さんも注意が必要です。糖尿病では免疫力が低下し、傷の治癒が遅れることがあります。
そのため、インプラント治療後の回復過程で問題が生じやすく、細菌感染のリスクも高まります。また、血糖値のコントロールが不十分な場合、骨の結合力が弱まり、インプラントが安定しない可能性があります。

喫煙をしている・骨密度が低い

インプラント治療では、人工歯根が顎の骨にしっかりと結合することが重要です。
しかし、喫煙習慣や骨密度の低下がある場合、この結合が妨げられる可能性が高まります。

喫煙は血流を悪化させ、顎骨や歯茎への酸素や栄養供給を低下させるため、骨の回復やインプラント周囲組織の治癒を遅らせる要因となります。
また、喫煙による免疫機能の低下は、細菌感染のリスクを高め、インプラント周囲炎が発生する可能性を高めてしまいます。このような環境では、インプラントが骨と結合するプロセス(オッセオインテグレーション)が正常に進まないことがあります。

さらに、骨密度が低い場合もインプラント治療の難易度は上がります。骨密度が低いと、インプラント体をしっかり固定するだけの骨の量が不足していることがあり、その結果、インプラントが不安定になりやすいです。
骨の質が低下する原因として、加齢、ホルモンバランスの乱れ、または特定の疾患が挙げられます。骨が萎縮しやすい場合には、治療前に骨移植や骨造成などの追加処置が必要になることもあります。

インプラントが骨に定着しないときの治療方法

インプラントが骨に定着しないときの治療方法

インプラントが骨にしっかりと定着しない場合、埋め込まれた人工歯根を取り除き、状況に応じて適切な治療を行う必要があります。この際、原因を特定して問題を解決したうえで、再治療を検討します。以下に、主な治療方法をご紹介します。

  • 骨を増やす処置
    インプラントが骨と結合しなかった場合や、撤去によって骨が減少した場合には、骨を補うための処置が必要です。
    骨の量が不足している状態では、インプラントを再び埋め込むことが難しいため、骨移植や骨造成などの手術を行い、顎の骨を回復させます。
    この治療には時間がかかることがありますが、骨の土台を整えることで、再度のインプラント埋入が可能になります。
  • 歯肉を再生する手術
    インプラントを安定させるためには、健康な歯肉が重要な役割を果たします。歯肉が不十分な場合には、歯肉を再生させる手術を行います。この手術は、インプラント周囲の歯肉の状態を改善し、人工歯根がよりよい環境で機能するようにサポートします。
  • 入れ歯による対応
    インプラント治療が困難な場合や、骨を増やす処置が難しい場合は、入れ歯で歯の機能を補う方法があります。インプラントの撤去によって顎骨の一部を大きく削った場合には、入れ歯の安定性を確保するために特別な設計や加工が必要です。
    例えば、クッション性を高めるシリコーン加工や、骨や歯茎が大きく失われた場合には顎義歯と呼ばれる入れ歯が用いられることもあります。おすすめな入れ歯の形状や素材は、口腔内の状態を詳しく診察したうえで決定されます。
  • 定着期間を長く取る再治療
    再度インプラント治療を行う場合には、人工歯根が骨と結合するまでの時間を十分に確保することが重要です。
    治療後の安定性を確保するために、従来よりも長い治癒期間を設けることがあります。また、感染の予防や口腔衛生の維持を徹底することで、再治療の成功率を高めることができるとされています。

インプラントの定着不良を防ぐためには

インプラントの定着不良を防ぐためには

インプラントの定着不良を防ぐために重要なことを以下で解説します。

セルフケアを行う

インプラント治療が無事に完了した後、インプラントを健康な状態で長く保つためには、患者さんのセルフケアが欠かせません。
歯科医院での定期的なメインテナンスは、インプラントや歯槽骨の状態を確認するためのものですが、日常的なケアによって口腔内を清潔に保つことが、インプラントの長期的な安定性を支える基盤となります。

まず大切なのは、日々の歯磨きです。歯ブラシを持つ際には親指、人差し指、中指の3本を使って軽い力で握ると、歯と歯茎の境目や歯の隙間の汚れを効果的に取り除くことができます。

また、歯磨き粉の選択も注意が必要です。
粒子が粗い研磨剤入りの歯磨き粉は避けるべきで、こうした歯磨き粉を使用すると、インプラントと歯茎の境目にダメージを与えたり、炎症の原因となる可能性があります。また、粒子が粗い歯磨き粉は天然の歯に細かな傷をつけ、汚れが付着しやすくなることもあります。

インプラント治療が多い歯科医院を選ぶ

インプラント治療のリスクや失敗を避けるためには、自身に合った歯科医院を選びましょう。選び方のポイントは以下のとおりです。

  • インプラント治療の経験が豊富か
  • 必要な設備が整っているか
  • 患者さんの話をよく聞いてくれるか
  • 治療のリスクやデメリットについてもきちんと説明してくれるか
  • アフターケアが充実しているか

インプラント治療はインプラントを正しい位置に埋め込むことが不可欠です。
そのため、精密な検査を行い、適切な位置にインプラントを配置できる技術を持った歯科医師を選ぶことが大切です。

また、歯科医院の設備が整っていることも重要です。特にレントゲンやCTスキャン、滅菌設備などが完備されているか確認しましょう。

歯科医院を選ぶときは、事前にホームページでインプラント治療の経験や設備情報を確認しておくとよいでしょう。
また、実際にカウンセリングを受けてみることもおすすめです。歯科医師が自身の話にしっかり耳を傾け、インプラント治療のメリットだけでなくリスクやデメリットについても十分に説明してくれるかどうかを確認しましょう。

インプラントの再治療にかかる費用

インプラントの再治療にかかる費用

インプラントが骨に定着しなかった場合、再治療が必要になることがあります。そのため、さまざまな歯科医院では保証制度を設けており、一定の条件を満たしていれば保証が適用されるケースがあります。

歯科医院によって保証内容は異なりますが、治療直後であれば無償で再治療を受けられる場合もあります。
また、治療から数年が経過している場合でも、安価で再治療を提供しているクリニックも少なくありません。

ただし、インプラント治療後の保証を受けるためには、クリニックが定めた条件を守ることが必要です。例えば、一定の間隔で定期的にメンテナンスに通院していることや、保証適用が条件として挙げられることが多いようです。

もし、保証の条件を満たせず適用外となった場合、再治療には高額な費用がかかる可能性があります。そのため、保証内容や適用条件については治療を受ける前にしっかり確認しておくことが大切です。

まとめ

まとめ

ここまでインプラントが定着しない場合の症状についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラントとは失った歯を補うために、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法のことである
  • インプラントが骨に定着しない主な原因には、不適切な埋入角度や位置、ドリルによるオーバーヒートなどが挙げられる
  • インプラントの定着不良を防ぐためにはセルフケアが大切である

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340