インプラント

前歯のインプラント治療は難しい?歯がない期間の過ごし方など、治療を受けるポイントも解説

前歯のインプラント治療は難しい?歯がない期間の過ごし方など、治療を受けるポイントも解説

インプラント治療は天然の歯と近い噛み心地や見た目を実現できることから、特に周囲の人から見られやすい前歯の治療としても人気ですが、前歯の治療は奥歯の治療とは異なる難しさなどもあります。
この記事は前歯のインプラント治療について詳しく解説していきますので、治療が気になっている方は参考にしてみてください。

前歯のインプラント治療は難しい?

前歯のインプラント治療は難しい?

インプラント治療は、歯を失ってしまった場所の顎の骨に対して人工歯根を埋め込み、そこに人工の歯(かぶせ物)を装着して噛み合わせの機能を回復させる治療法です。
インプラント治療は前歯から奥歯までどの歯でも治療を行うことができますが、前歯の治療は奥歯の治療と比べて難しいポイントがあります。
まずは前歯のインプラント治療が難しいとされる理由から解説します。

前歯のインプラント治療が難しい理由

前歯のインプラント治療が難しい理由

前歯のインプラント治療が難しい理由として、下記のような点が挙げられます。

前歯はインプラントを支える歯槽骨が薄い

インプラント治療は、歯槽骨と呼ばれる歯を支えている顎の骨に対して、人工歯根を固定し、そのうえに白い歯をかぶせる治療法です。
そのため、歯槽骨が薄いと歯を支えるための十分な強度が確保できず、治療を行うことができません。
前歯部分の歯槽骨は奥歯が生えている部分よりも薄く、土台となる骨が少ない場合があり、これが前歯のインプラント治療が難しい理由の一つです。
また、特に下の前歯は小さい歯が多く、治療スペースが小さい点も、治療の難易度が高い理由といえます。

見た目に関するトラブルが起きやすい

前歯はお口を開けたときに見えやすいため、見た目がとても重要視されるパーツです。残っているほかの歯との色の違いなどがあると目立ちやすく、不自然になってしまう可能性があります。
また、インプラント治療直後は問題がなくても、治療後に歯肉退縮などが起きると金属のパーツが見えるなどの状態になる可能性があり、見た目のトラブルが生じやすいことが前歯のインプラント治療が難しい理由です。

2本連続でインプラントを埋入する場合は難易度が上がる

2本連続で歯が欠損している部分にインプラント治療を行う場合、より骨の強度が必要になり、慎重な治療が求められます。
また、歯と歯の間には歯間乳頭と呼ばれる三角形の部分がありますが、2本連続の治療の場合は必要に応じてこれを形成する必要があり、治療の難易度が高くなります。

歯肉移植など大がかりな治療が必要になる場合がある

審美性の高い治療を行うためには、歯の部分だけではなく歯茎の見た目にもこだわる必要があります。特に前歯の場合は歯茎部分もみえやすいため、場合によっては歯肉移植などの大がかりな治療が必要となり、高い技術力が要求される可能性があります。

歯列矯正が必要なケースがある

重度の叢生など、前歯の歯並びに問題がある場合、そのままインプラント治療を行えない場合があります。こうしたケースにおいては先に歯列矯正を行って歯並びを整える対応などが必要になり、治療難易度が高くなるだけではなく治療にかかる期間も長くなります。

前歯をインプラントにするメリット

前歯をインプラントにするメリット

前歯のインプラント治療にはさまざまなメリットがあります。

自然な見た目を手に入れられる

歯が欠損してしまった場合の治療法には、インプラント治療のほかに入れ歯やブリッジによる治療があります。このなかでも特にインプラント治療は自然な歯の見た目を手に入れやすい点が特徴で、お口を開いた際に目立ちやすい前歯部分であっても、違和感を感じない自然な見た目を目指すことができます。

天然の歯に近い咀嚼力が期待できる

インプラント治療は、天然の歯と同じように歯槽骨にしっかりと固定された歯を作る治療です。
安定感が高いため、天然の歯に近い咀嚼力が発揮されやすく、咀嚼の際の刺激が歯槽骨に伝わるため、食事の際の感触も、自分の歯で食事をしている際と遜色ない状態が目指せます。 また、入れ歯やブリッジの治療は歯槽骨への刺激が減少することから、長期的には歯槽骨が痩せてしまうという難点がありますが、インプラント治療の場合は歯槽骨の減少を防ぐことができる点もメリットといえます。

ほかの歯への負担が少ない

インプラント治療は、ほかの歯から独立した状態で行うことができる治療です。ブリッジのように周囲の歯を削る必要がなく、入れ歯のように使用時に周囲の歯に負担をかけることもありません。

長期間使用しやすい

インプラント治療の歯は、自分の歯と同じようにケアを行って、長期間使用し続けることができます。
歯の素材も耐久力が高く汚れの付着しにくいセラミックなどによって作られるため、適切にケアを行えば美しい見た目のまま、しっかりと維持できます。
もし白い人工の歯が壊れてしまっても、土台である人工歯根が破損していなければ再治療が行いやすく、人工歯根はチタン合金などとても硬い金属でできているため、これも長期間使用しやすいポイントといえます。

前歯のインプラントにするデメリットとリスク

前歯のインプラントにするデメリットとリスク

前歯のインプラント治療にはさまざまなメリットがありますが、下記のようなデメリットやリスクもあります。

治療費がかさむ

インプラント治療は、原則として保険適用外であることに加え、難易度の高い手術が必要な治療であるため、治療費が高額になりやすい点がデメリットの一つです。
保険適用外のため高額療養費制度などの対象にもなりませんので、治療を受ける際は費用についても歯科医院でよく相談し、場合によってはデンタルローンなどを利用するとよいでしょう。

治療期間が長い

インプラント治療は、人工歯根を埋入させてから最終的な人工歯を装着するまで、数ヶ月間待つ必要がある治療です。これは、埋入させた人工歯根が歯槽骨にしっかりと固定されるまでに一定の時間が必要になるためで、この待機期間があることで治療期間が長引きやすいのです。
待機期間は歯がない状態が長期間続いてしまうため、特に前歯の治療においては見た目や、発音への影響などが気になりやすいといえるでしょう。
なお、こうしたデメリットを軽減するために仮歯を装着する方法もありますので、気になる方は歯科医師に相談してみましょう。

インプラント周囲炎のリスクがある

インプラント治療においては、インプラント周囲炎と呼ばれる、進行の早い歯周病のような疾患があります。せっかくインプラント治療を受けてもインプラント周囲炎で歯槽骨が減少してしまうと、インプラントの脱落などにつながる可能性があります。

インプラントの破損などのリスクがある

インプラントの各パーツはとても丈夫にできていますが、強い力がかかると破損してしまうリスクがあります。

仕上がりの見た目に関するトラブルが起きやすい

前歯は他人から見られやすい部位であり、特に見た目が気になる箇所の一つです。
自然な見た目を実現するためには高い技術力が必要になるほか、治療後のケアを怠ってしまうと、インプラント治療を受けた歯と天然の歯で見た目に差が生じてしまうリスクもあります。

インプラント治療で前歯がない期間への対応

インプラント治療で前歯がない期間への対応

上述のとおり、インプラント治療は人工歯根が固定されるまでの間に待期期間が必要となり、その間は歯がない状態で過ごすことになります。
しかし、前歯の治療の場合は歯がない状態が気になるという方も多いのではないでしょうか。その場合は下記のような対応を検討するとよいでしょう。

即時荷重で仮歯をすぐに入れる

インプラント治療においては、最終的な人工歯を入れる前に、仮歯と呼ばれるものを利用することがあります。仮歯を利用すると、最終的な人工歯のような噛み心地や自然な見た目を実現することは難しいものの、ある程度見た目を回復させたり、発音への悪影響を回避したりできます。
通常、仮歯はインプラントが歯槽骨に固定されてから使用されますが、即時荷重と呼ばれる方法であれば、インプラントの埋入後すぐに仮歯を装着することができます。

1回法の手術を受けて治療期間を短縮させる

インプラント治療には1回法と2回法と呼ばれる2つの方法があります。
基本となる治療法は2回法と呼ばれるもので、これは人工歯根を埋め込んだ後に一度歯茎を閉じた状態で骨と結合するのを待ち、その後歯茎を切開してアバットメントというパーツを取り付け、さらに歯茎の炎症がおさまってから人工歯を取り付けるという方法です。
一方の1回法は、人工歯根を埋め込んだ後、歯茎を閉じない状態で時間を置き、骨との結合が完了したら人工歯を取り付けるという治療法で、切開を伴う手術が1回だけであるため、1回法と呼ばれます。
手術の回数が少ないことなどから、1回法による治療の方が期間が短く済み、前歯がない期間を短縮できます。
なお、上述の即時荷重を行う場合は1回法で治療が行われます。

前歯がない期間に注意したいこと

前歯がない期間に注意したいこと

インプラント治療の期間中、前歯がない期間には下記のような点に注意して過ごす必要があります。

硬い食べ物を避ける

硬い食べ物は噛むときに歯や歯周組織に強い負担をかけやすいほか、食事のかけらが歯肉を傷つけるなどして、炎症などのトラブルにつながる可能性があります。
場合によっては縫合している部位が開いてしまうこともありますので、治療期間中は硬い食べ物を避けるようにしましょう。

粘着性の高い食べ物を避ける

インプラント治療中、特に仮歯を装着している期間は、ガムなどの粘着性がある食べものを避けましょう。
粘着性がある食べものが仮歯にくっついてしまい、取れてしまうトラブルにつながる可能性があります。

歯科医師の指導に従い正しい口腔ケアを行う

インプラント治療の期間中も、しっかりと歯磨きをはじめとした口腔ケアを正しく行うことが大切です。
ケアが不十分だとむし歯や歯周病、口腔内の炎症などが引き起こされる可能性があり、治療を順調に進められなくなってしまうかもしれません。
どのようにケアをするべきかは歯科医師や歯科衛生士から指導を受けることができますので、指導された内容にしたがい、きちんと口腔ケアを行いましょう。

前歯のインプラントを長持ちさせるためのポイント

前歯のインプラントを長持ちさせるためのポイント

前歯のインプラント治療を受けた後、歯をしっかりと長持ちさせるためには下記のようなポイントを心がけましょう。

定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける

インプラントの歯を長持ちさせるためには、歯科医院での定期的なメンテナンスを受けることが重要です。歯科医院で行われるメンテナンスを受けることで、日頃のケアで除去しきれていない歯垢や歯石をしっかりと落とし、インプラント周囲炎などのリスクを抑えることができます。
また、定期的に歯科医院を受診することで、治療した歯に問題が生じている場合や、残っている歯にむし歯などが生じた場合も早く見つけることができるため、良好な状態を長く維持させやすくなります。

歯磨きなどの日々のケアを丁寧に行う

インプラントの歯が天然の歯のようにむし歯になることはありませんが、口腔内に食べ残しなどがあると細菌が毒素を作り出し、インプラント周囲炎などを引き起こします。
歯ブラシやフロス、歯間ブラシ、マウスウォッシュを適切に使用して丁寧に口腔ケアを行うことは、インプラントの歯を長持ちさせるためにも重要です。

歯ぎしりなどの癖を改善する

歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに歯に強い負担をかけてしまう原因の一つです。インプラント治療を受けた歯も、歯ぎしりなどによって強い負担がかかると歯が欠損するなどのトラブルにつながる可能性があります。
歯ぎしりなどを意識して改善することが難しい場合は、歯科医院で作成するマウスピースなども利用してみるとよいでしょう。

禁煙を心がける

喫煙習慣は、口腔内のさまざまなトラブルを引き起こす要因となります。
喫煙しているとインプラント周囲炎の進行を促進してしまうなど、治療後のトラブルにつながる可能性があるため、禁煙を心がけるようにしましょう。

まとめ

まとめ

見た目が気になりやすい前歯のインプラントは、さまざまな理由から難易度が高い治療であるといえます。
一方で、インプラント治療は天然の歯に近い噛み心地や見た目を実現しやすい治療でもあり、失ってしまった前歯を補う治療として優れた治療法といえます。
インプラント治療は、人工歯根が顎の骨に固定されるまでの待期期間が生じる治療法ですが、場合によっては即時荷重ですぐに仮歯を設置する方法もありますので、治療が気になる方は一度歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

記事をもっと見る

注目の記事

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340