インプラント治療を行うには、インプラント埋入する部位に十分な量の骨が必要です。
骨が不足していると、残存歯と高さが合わなかったりインプラント体が骨や歯茎から露出したりするトラブルが発生します。
インプラント治療を成功させるためには、インプラントを埋入する部位に自家骨や人工の補填材を使用して顎骨の補充をする必要がありますが、補填手術が骨造成術です。
骨造成術は自由診療のため全額自己負担となり費用は、50,000~150,000円(税込)程が相場で、インプラント治療の費用が別途加算されます。
骨造成は痛みや腫れが伴う手術もあり、できれば骨造成なしでインプラント治療を受けたいと考える方は少なくありません。しかし顎骨の量が不足した状態でインプラント治療を希望してもできないことがあります。
本記事では、骨造成の種類や痛みや腫れの対処法を詳しく解説しているので、骨造成に不安を感じているのならぜひ参考にしてください。
インプラントの骨造成・手術の種類
- インプラントの骨造成とは何ですか?
- インプラント治療を行おうとしたとき土台となる顎の骨の厚みや量が必要です。土台が安定していないとインプラントを埋入しても安定感がなく、曲がってしまったり外れたりします。歯槽骨が少なくなる原因には以下のものがあげられます。
- 生まれつき顎骨が薄い
- 歯周病
- 歯が抜けた後長期間放置していた
- 入れ歯の不具合
骨造成は、自家骨や人工の補填材で骨の再生や増加を誘導する外科的処置です。
骨造成を行うことによって、そのままではできなかったインプラントの埋入ができるようになるだけではなく、インプラントの強度を保ち審美性を高めることができます。
- 骨造成の手術の種類を教えてください。
- 骨造成はいくつか種類がありますが代表的な5つを紹介します。
- GBR法(骨誘導再生)
- サイナスリフト
- ソケットリフト
- 遊離骨移植
- ソケットプリザベーション
GBR法は、歯槽骨を再生するために行う施術ですが、不足している部位を粉砕した自家骨や補填材で補い、人工膜(メンブレン)で覆うことで骨を再生させます。インプラント挿入と同時に行うことも可能です。
サイナスリフトやソケットリフトは、上顎の奥歯の骨が不足している場合に行う施術です。サイナスリフトは、歯茎を側方から切開し上顎洞の粘膜を剥がして補填材を入れます。
一方のソケットリフトは、インプラントを埋入する穴を活用して膜を押し上げながら補填材を填入します。歯茎を切開しないため、サイナスリフトより感染のリスクが低いのが特徴です。
遊離骨移植は、本人の下顎や骨盤から採取した骨を移植する施術です。自家骨を利用するため定着しやすく人工骨に比べ拒否反応が低いといわれています。
ソケットプリザベーションは、抜歯した当日に空いた穴に補填材や自家骨を填入して骨を再生させます。抜歯後は時間経過とともに骨が吸収され減少していきますが、ソケットプリザベーションを行えば抜歯窩を保護して骨の吸収を抑えることが可能です。
- 骨造成にかかる期間はどのくらいですか?
- 骨造成後の定着期間は歯茎の状態や補填材の量などによって個人差があります。
GBR法の骨造成の期間は約6~10ヵ月、サイナスリフトは、骨の安定まで6~12ヵ月、ソケットリフトは3~6ヵ月程度です。骨移植は、数ヵ月間骨の形成までかかります。
インプラント埋入時に骨造成を行うことで期間の短縮ができますが、同時埋入は、骨造成の種類でできないものがあります。詳しくは手術を行う歯科医院に相談しましょう。
インプラントの骨造成の腫れ・痛み
- インプラントの骨造成を行うと腫れが起こりますか?
- 骨造成は、歯茎を切開しているため腫れが起こりやすいです。サイナスリフトやソケットリフトなどの上顎洞挙上術では、上顎膜が破れやすいため破れると腫れが起こる可能性が高いでしょう。
骨造成の施術範囲の広さや体質によっても腫れが生じる可能性が高まります。骨造成で腫れる原因は、切開部を守ろうとする防御反応や免疫反応によるものや術後の細菌感染が考えられます。
- 術後の腫れはどのくらい続きますか?
- 骨造成後の腫れは術後7~10日程で引いてくるのが一般的です。細菌感染で症状がでている場合は10日を過ぎても炎症による腫れの症状は治まることはありません。
症状を放置すると化膿して膿がでることや、インプラントを同時埋入している場合は骨との結合に支障がでることがあるので注意が必要です。腫れが長引く場合は施術した歯科医院に早急に相談しましょう。
- 骨造成は痛みを生じる可能性がありますか?
- 骨造成の手術中は局所麻酔を行うため、痛みが生じることはありません。ただし、歯茎を切開した場合は術後に痛みが生じる場合があります。
ソケットリフトはサイナスリフトと比べると痛みや腫れが生じる確率が低い施術ですが、ソケットリフトを行うには5mm以上または歯科医院によっては3mm以上の骨の高さが必要です。
骨造成の痛みは、手術範囲や感染のリスクによって生じる期間に個人差があります。なお、手術後に鎮痛剤が処方されるので、鎮痛剤を飲めば痛みは和らぐでしょう。
- 術後の痛みはどのくらい続きますか?
- 痛みは術後すぐに感じる人や一晩で痛みが引く人、痛みが長引く人などさまざまです。一般的には、術後3~10日程で痛みが引いていきます。
- 2週間以上痛みや腫れが治まらない
- 激痛で眠れない
- 日々痛みの強度が増している
- 鎮痛剤や抗生物質が効かない
上記の場合、細菌感染の可能性もあるので担当の医師に相談しましょう。
インプラントの骨造成の腫れ・痛みの対処法
- 骨造成手術後の腫れの対処法を教えてください。
- 骨造成後の腫れは、傷口が治る過程の自然な免疫反応が主な原因です。冷やすことで、腫れが治まりやすくなります。水道水で濡らしたタオルなどで、頬の外側から冷やすようにしましょう。
氷や保冷剤を直接傷口や頬に当てる行為は冷やし過ぎで血行が悪くなり、傷口が悪化する可能性があるので注意してください。また、傷口付近はなるべく歯ブラシが当たらないようにして傷が治るまではやわらかい歯ブラシを使用しましょう。
うがいで細菌感染のリスクが減り炎症を抑えることができます。口腔内を清潔に保つことで腫れのリスクが減ります
- 骨造成手術後の痛みの対処法を教えてください。
- 骨造成手術後の痛みは、傷口が治る過程では自然な症状ですが、痛みを誘発する原因が生活習慣の場合もあります。次のような行動が手術後の痛みの原因につながります。
- 飲酒・喫煙
- 刺激物や硬いものを食べる
- 傷口を指や舌で触る
- 温度の高いお風呂に浸かる
- 口腔ケア不足
- 処方された抗生物質を服用しなかった
上記の行為は、術後の痛みや腫れを誘発する可能性があります。
痛みを軽減するためには、傷口にストレスがかからないように食べ物を変えたり生活習慣を見直したりして、口腔内を清潔に保つようにしましょう。なお、痛みが激しい場合は処方された痛み止めを飲みましょう。
- 腫れや痛みで受診するべき目安はありますか?
- 骨造成術後は、一般的には麻酔が切れた頃から10日前後まで痛みや腫れがでることがあります。痛みや腫れのピークは2~4日程ですが、徐々に治まっていくのが通常です。
処方された痛み止めがなくなっても痛みが引かない場合や夜眠れないような激痛がある場合は、傷口が細菌感染していることもあるので我慢しないで歯科医院を受診しましょう。
編集部まとめ
インプラントは、入れ歯などと違い自然歯と同じ扱いができるためインプラント治療を望む人は少なくないでしょう。
しかし、抜歯後放置して時間がたってしまうと骨が吸収されそのままではインプラントを埋入するのは難しくなります。
骨造成は吸収された骨を自家骨や人工の補填材で補強する手術であり、顎骨が不足している人のインプラント体を固定させるためには有効な施術方法です。
骨造成をする必要がない場合は、インプラントを埋入しても大きな痛みが続くことはほとんどありません。
ただし、骨造成は外科的手術のためほとんどの人が痛みを経験しますが、補填範囲が狭い程痛みは少なくなります。
また、痛みや腫れを減らしインプラント治療に失敗しないためには、骨造成の経験が豊富な専門の医師を選ぶことも重要です。
インプラントの治療や骨造成は骨の定着期間を入れると長期間におよびますが、定着するまでの生活習慣を見直すことも治療の終了を早めることにつながります。
本記事では、治療中の生活習慣も記載しています。本記事がインプラントの治療に貢献できれば幸いです。
参考文献