インプラント

インプラントの取り外しが必要なケースとは?費用やその後の治療も併せて解説します

インプラントの取り外しが必要なケースとは?費用やその後の治療も併せて解説します

「インプラントを入れたけれど、取り外しが必要になったらどうすればいいの?」そんな疑問を持っている方もいるかもしれません。インプラントは失った歯を長期的に補える歯科治療の一つですが、何らかの理由で取り外しが必要になることもあります。
本記事ではインプラントの取り外しが必要なケースについて以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラントの取り外しが必要なケース
  • インプラントを取り外す方法
  • インプラントを取り外した後の治療

インプラントの取り外しが必要なケースについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

インプラント治療とは

インプラント治療とは

インプラント治療は、歯を失った部分に人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に上部構造を取り付ける治療法です。失った歯の機能や見た目を自然に回復させられます。

従来の入れ歯やブリッジと比較して、インプラントは歯根から補えるため、噛む力が自然に回復し、違和感が少なくなります。また、周囲の健康な歯に負担をかけず、ほかの歯を削ることもないため、長期的に健康な口腔内の環境を維持できます。

インプラント体が顎の骨としっかり結合した後、アバットメント(インプラントと上部構造を接続する部分)を取り付け、その上に最終的な上部構造を装着します。もし骨の厚みや高さが不足している場合は、骨造成手術を行い、骨を増やし、インプラントの設置に必要な環境を整えることもあります。

インプラントの取り外しが必要なケース

インプラントの取り外しが必要なケース

インプラントは、どのようなケースで取り外しが必要なのでしょうか?以下では、取り外しが必要なケース別に解説します。

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラントを支える歯茎や骨に細菌が感染し、炎症を引き起こす疾患です。歯磨きや定期的なメンテナンスが不十分であると、プラークが蓄積し、炎症が進行する原因となります。初期段階では自覚症状がほとんどなく、発見が遅れることも少なくありません。

そのため、気付いた時には顎の骨が溶け始めていることもあります。骨吸収が進行すると、インプラントが不安定になり、最終的には除去が必要になることがあります。

インプラント周囲炎を予防するためには、日々の歯磨きとともに、定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要です。

こうしたリスクを防ぐには、日頃の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。

インプラント体の破損

インプラント体が破損した場合も、インプラントの除去が必要となることがあります。インプラント体は、耐久性のあるチタン合金などで作られており、長期間の使用にも耐えられるよう設計されています。

しかし、加齢や咬合力による金属疲労、外的な衝撃などで劣化が進むと、わずかなひび割れから破損に至るケースがあります。破損した状態を放置すると、インプラント周囲炎や噛み合わせの乱れなど、さらなるトラブルの原因となるため注意が必要です。

なお、上部構造のみが破損した場合は修理や再製作で対応できるとされていますが、インプラント体そのものが損傷した場合は基本的に修復できず、除去が検討されます。

インプラント体の迷入

インプラント体の迷入とは、インプラント手術中にインプラント体が所定の位置に埋め込まれなかったり、予期せぬ場所に移動してしまう状態を指します。この状態は、手術中の操作ミスや骨の状態、インプラント体のサイズが合っていない場合などに発生する可能性があります。

迷入したインプラント体は、隣接する神経や血管、上顎洞などの重要な構造に影響を与える可能性があるため、早期に発見し、治療を施すことが必要です。レントゲンや歯科用CTスキャンを用いて正確に位置を確認し、必要に応じて再手術が行われます。

インプラント体の迷入を防ぐためには、手術前の十分な検査と計画、そして経験豊富な歯科医師の技術が重要です。

神経麻痺

インプラント治療では、下顎の奥歯付近など神経に近い部位にインプラントを埋め込む際、神経に損傷を与えるリスクがあります。

このような損傷が起こると、舌や唇、顎のしびれや違和感、場合によっては痛みを伴うこともあります。神経が強く圧迫されたり切断された場合は、感覚が戻らず麻痺が長引く可能性も否定できません。こうした症状が現れた際には、できるだけ早く専門の歯科医師に相談することが重要です。

早期の対応によって、インプラントの除去や治療方針の見直しなど、回復の可能性を高める選択肢が広がります。重大な後遺症を防ぐためにも、異常を感じたらすぐに行動を起こすことが大切です。

金属アレルギー

インプラント治療において金属アレルギーは、インプラントの取り外しが必要となる一因となります。インプラントにはチタンや金属合金が使用されていますが、これらの金属にアレルギー反応を示すことがあります。アレルギー反応は、口腔内の炎症や腫れ、かゆみ、痛みなどの症状として現れることがあります。

症状が進行すると、インプラント周囲に感染を引き起こし、インプラントの支持力が低下する可能性もあります。この場合、インプラントを取り外し、アレルギー反応が収束するまで自身に合った治療が推奨されます。

金属アレルギーの兆候が見られた場合は、早期に歯科医師に相談し、治療方針の決定が重要です。

上顎洞炎

上顎洞炎は、上顎の歯根が上顎洞(鼻腔に近い空間)に接近または穿通している場合、インプラント治療後に発症する可能性があります。炎症が進行すると、上顎洞内に膿が溜まり、痛みや腫れ、発熱などの症状が現れることがあります。

このような症例では、インプラント体の取り外しが必要となる場合があります。インプラントが炎症の原因となっている場合、インプラントを除去することで、炎症の進行を防ぎ、症状の改善が期待できます。また、インプラント周囲の骨の状態や炎症の程度によっては、追加の治療や再手術が必要となることもあります。

インプラント治療後に上顎洞炎の症状が現れた場合は、早期に歯科医師に相談し、対応を受けることが重要です。早期の診断と治療により、症状の改善や再発の防止が期待できます。

インプラントを取り外す方法

インプラントを取り外す方法

インプラントは、顎の骨にしっかりと固定されるため、取り外しが容易ではありません。しかし、いくつかのケースでは、インプラントを取り外さなければならない状況が生じることがあります。

先述したように、インプラント周囲炎が進行してインプラントを支えている骨や歯茎がダメージを受けている場合、インプラントが顎の骨と適合しない場合、または顎の骨に問題が発生した場合にはインプラントを除去しなければならないケースがあります。

インプラント除去の手順は、以下のとおりです。

  1. 状況の確認
    まずレントゲンや歯科用CTスキャンを用いてインプラントの状態を詳しく確認し、どのような方法で取り外すかを計画します。
  2. 麻酔をしてインプラントの取り外し
    手術は、局所麻酔のもとで行われ、患者さんにできるだけ負担をかけずに進められます。取り外しの際には、周囲の歯茎や骨に損傷を与えないように慎重に処置します。
  3. 手術後のケア
    手術後には、腫れや痛みが出ることもありますですが、これを管理するために術後ケアが必要です。抗生物質や鎮痛剤の服用が推奨され、感染や炎症を防ぐためにしっかりと守ることが重要です。
  4. インプラント抜去後の治療方法の検討
    また、インプラントを取り外した後は、インプラントの再手術をするか、ほかの治療法を検討する必要があります。これには、骨の再生治療や、義歯やブリッジの選択肢も考慮されます。

このように、インプラント除去は簡単な手術ではなく、専門的な知識と技術が必要です。経験豊富な歯科医師による正確な判断と手術が求められます。

インプラントの取り外しにかかる費用

インプラントの取り外しにかかる費用

インプラントの取り外しにかかる費用は、手術の難易度や使用する材料、施設によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。ここでは、インプラントの取り外しにかかる費用について詳しく解説します。

保険適用の場合

インプラントの取り外しには、治療内容や状況に応じた費用がかかります。保険が適用される場合、取り外しにかかる費用は、患者さんの負担を軽減できますが、適用される条件や範囲には制限があります。

3割負担の方の場合、費用は1,400円程度になります。なお、骨を削ってインプラントを取り除く処置を行った際は、3割負担で2,000円程度かかると考えられます。

保険適用の条件には、インプラントが正しく機能していないことを証明する必要があります。例えば、インプラントが破損した場合や感染症が発生した場合、歯科医師の判断に基づいて取り外し手術が行われます。このような治療では、健康保険が適用され、自己負担額は軽減されます。

また、治療内容や地域によって自己負担額が異なる場合があり、事前に担当の歯科医師や保険会社に確認しておくことが重要です。インプラント治療の取り外しを考える際には、これらの点を理解しておきましょう。

保険適用外の場合

予防的な取り外しや美容目的でのインプラント取り外しは、保険対象外となります。予防的にインプラントを取り外す場合や、見た目の改善を目的とした場合は、基本的に自己負担となります。
保険適用外のインプラントの取り外しの費用は、標準的なインプラント体の除去には、1本あたり4,600円とされています。

患者さんの口腔内の状態や除去手術を行う歯科医院によっても異なり、複雑な処置が必要なケースでは費用が高くなることもあるため、事前に確認をとることをおすすめします。

インプラントを取り外した後の治療

インプラントを取り外した後の治療

インプラントを取り外した後には、どのような治療法が行われているのでしょうか。再手術可能な場合と再手術不可能な場合にわけて、詳しく解説します。

再手術可能な場合

インプラントを取り外した後、再手術が可能なケースがあります。取り外しの主な理由としては、感染、骨吸収、破損などが挙げられますが、これらの問題が解決されると、再度インプラントを埋め込めます。

再手術する前に重要なのは、顎骨の状態をしっかりと確認することです。顎骨の量や質が十分でない場合は、骨造成を行い、インプラントを安定させるための準備が必要となります。骨造成手術には数ヶ月の回復期間が必要な場合があり、顎骨がしっかりと定着するのを待つ必要があります。

また、再手術する際には、感染や炎症が治癒していることを確認することが重要です。治癒が不完全な状態で再手術すると、感染や再発のリスクが高くなるため、十分な治療と回復を待つことが求められます。

手術後は、定期的なフォローアップが必要です。患者さんの状態を監視し、必要なメンテナンスをすることで、インプラントの再埋入が成功し、長期的な機能回復や美しい仕上がりが期待できます。

再手術不可能な場合

インプラントを取り外した後、再手術が不可能な場合は、いくつかの理由が考えられます。主に、顎骨の状態が悪化している場合や、インプラントを取り外した部分の周囲の組織が十分に回復しない場合が該当します。インプラントが定着しなかったり、周囲の骨が不足していると、再度インプラントを埋め込むのが難しくなることがあります。

また、炎症や感染が広がっている場合、治癒が妨げられるため、再手術が困難となることもあります。

その場合、代替治療方法としては、義歯やブリッジが考慮されます。これらの治療は、インプラント治療と比較すると外科手術を必要としないため、早期から治療を開始することが可能とされています。

患者さんの個別の状況や希望によっても選択される治療法は異なるため、治療方法を選択する際には歯科医師と十分に話し合うことが重要です。

まとめ

まとめ

ここまでインプラントの取り外しが必要なケースについてお伝えしてきました。 インプラントの取り外しが必要なケースについて、要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラントの取り外しが必要な主なケースには、インプラント周囲炎や歯茎の感染、インプラントの破損などが挙げられる
  • インプラントを取り外す方法は、まずレントゲンや歯科用CTスキャンを用いてインプラントの状態を詳しく確認し、麻酔をして外科手術によってインプラントは除去され、手術後には、腫れや痛みが出ることもあるため術後ケアが必要
  • インプラントを取り外した後には、患者さんの口腔内の状況や希望によっていくつかの方法が検討され、再度インプラントを埋め込むか、ほかの治療方法(入れ歯やブリッジ)が選択される

インプラントの取り外しには外科的処置が伴い、除去する目的や状況によって患者さんの費用負担が異なります。また、インプラントを取り外した後の治療法にはいくつかの選択肢があるため、担当の歯科医師と十分に相談することが大切です。

本記事が少しでもインプラントの取り外しが必要なケースについて知りたい方のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP