インプラント治療とは顎骨を支えに土台を立て、人工歯を取り付ける治療方法です。
インプラント治療は自然歯に近い耐久性と、見た目の美しさの回復が期待できる魅力的な治療方法ですが、高額な治療費が患者さんのネックになっています。
そこで今回の記事ではインプラント治療の治療費・保険適用の可否・安く治療を受ける方法を解説します。
なぜ治療費が高額になるのかまでわかるため、納得感を持ってインプラント治療を検討できるようになるでしょう。
インプラント治療は自費診療?
- インプラント治療は自費診療ですか?
- インプラント治療は原則自費診療です。かなりコストがかかることを理解しておきましょう。インプラント治療にかかる費用は、口腔内に入れる装置の費用に限られません。以下のようなコストが発生します。
- 診査・検査費用
- 手術費用
- メインテナンス費用など
診査・検査とはインプラント治療のために必要な検査と、治療方針決定のステップです。以下のような検査が含まれます。
- インプラント相談
- 血液検査
- 歯周病細菌検査
- パノラマX線写真でのエックス線検査
- CTでのエックス線検査など
インプラントの手術は装置の埋め込み手術のみで完結するケースもあります。しかし装置の支えとなる顎骨の強度やサイズが不足する場合は、追加の手術が必要です。術後にはメインテナンスが必要になることも忘れてはいけません。3ヵ月〜半年に一度は歯科医院に通い、毎日の歯磨きでは取りきれない汚れをクリーニングします。また人工歯の見た目を追求したり、インプラントに影響するほかの病気を治療したりすると、さらに追加料金が発生します。
- 自費診療の場合のインプラント1本の費用相場を教えてください。
- インプラントの費用は各歯科医院が決めるため、ばらつきがあります。初めてインプラントを入れる際の費用相場は1本あたり30万〜50万円(税込)程度です。ただし同じ条件でも安くて10万円(税込)未満、高くて50万円(税込)以上で治療を受けたとの報告もあります。歯科医師とよく話し合いながら、患者さん自身が価格相応の価値をその治療に見出せるのかよく検討しましょう。
- すべての歯をインプラントにする場合の費用相場を教えてください。
- すべての歯をインプラントにする場合、歯を1本1本セラミックに変えるとコストや身体的負担が大きくなってしまいます。そこでオールオン4という治療法が選択されます。オールオン4の費用相場は200万〜400万円(税込)程度です。オールオン4の治療方法についても理解しておきましょう。オールオン4では片方の顎に少なくとも4本ずつ土台(インプラント体)を立てて、その上にすべての人工歯を乗せます。総入れ歯と比較してかなりコストがかかりますが、噛む力や審美性に優れておりQOLの向上も期待できる治療法です。
- 自費診療の治療費は医療機関によって異なりますか?
- 自費診療の治療費は医療機関によって異なります。自費診療、つまり自由診療の料金設定は各医療機関に任されているためです。医療費の違いは主に以下のようなポイントから生じます。
- 治療方針の違い
- インプラントメーカーの違い
- 人工歯の素材の違い
- 治療方法・手術内容の違い
- 設備費用の違いなど
治療方針の違いとは、担当歯科医が患者さんの口腔内を診て、どのような治療が必要と判断するかの違いです。例えば患者さんの口内を診て、ある歯科医師はインプラント1本の埋め込み手術のみ必要と判断したとします。しかし同じ患者さんの口腔内を診ても、違う歯科医師は顎骨を大きくする手術をしてインプラントを2本埋めようと判断することも起こりえます。インプラント手術費用に納得できない場合は、複数の歯科医院で相談してみてもよいでしょう。
- インプラントの治療費の支払い方法を教えてください。
- インプラントの治療費の支払い方法は歯科医院により異なります。一般的には以下のような選択肢があります。
- 現金
- 電子マネー
- クレジットカード
- デンタルローン
デンタルローンとは歯科治療専用のローンです。デンタルローンでは、ローン会社が支払いを立て替えてくれるため、患者さんの支出は分割でも医療費としては一括支払いの扱いになります。そのためインプラント治療の総額が、医療費控除の対象となる点がメリットです。どの方法で支払いができるか・現金支払いで分割できるか・デンタルローンが使えるかなど、細かいルールは各歯科医院で異なります。インプラント治療は高額の支払いが必要になるため、事前の確認を忘れないよう気をつけましょう。
インプラント治療の保険適用の条件
- インプラント治療が保険適用になるケースもあると聞いたのですが…。
- 2012年4月から、症例によってはインプラント治療が保険適用できるようになりました。しかし保険が適用されるケースは限定的ですので、以下のような原因で歯を失っている場合は保険適用されないことを知っておきましょう。
- むし歯
- 歯周病
- 破折
- 埋伏歯など
歯を失う二大原因はむし歯と歯周病です。歯科医院で行われる抜歯の主な原因は、29.2%がむし歯、37.1%が歯周病と報告されています。なお埋伏歯とは、歯の頭が正常に生えず、顎骨内や口腔粘膜下に隠れてしまっている歯のことです。埋伏歯が近くの歯に悪影響を及ぼしている場合、及ぼすリスクがある場合は、抜歯の治療が行われます。
- 保険適用になる条件を教えてください。
- インプラント治療が保険適用されるのは、以下の症例によってインプラント治療が必要になるケースに限ります。
- 外傷などで顎骨を失い骨移植を行った症例
- がんなどで顎骨を切除後に骨移植を行った症例
- 外胚葉異形成症などの先天性疾患の症例
また保険診療を行える病院も、病院法で定義される病院に限られます。病院法で定められる病院とは、20人以上の患者さんが入院可能な施設を持つ、医師や歯科医師が医業を行う施設とされます。これより規模の小さい診療所やクリニックでは保険診療が受けられないため、よく確認しましょう。
- 保険が適用される場合のインプラント1本の費用相場を教えてください。
- インプラント治療が保険適用された際の、インプラント費用相場は6万〜12万円程度です。これは一般的なインプラント1本あたりの費用相場から、患者さんが義務教育終了後〜69歳の年齢層であるという前提で、3割負担額を算出した金額です。日本の医療保険制度では、自己負担額の割合が患者さんの年齢に応じて以下のように変動します。
- 義務教育就学前は2割負担
- 義務教育終了後〜69歳は3割負担
- 70〜74歳は2割負担
- 75歳以上は1割負担
ただし、70歳以上でも、現役並みの所得者は3割負担です。
インプラント治療の費用を安くする方法や医療費控除
- インプラント治療の費用を安くする方法はありますか?
- 処方される薬をジェネリック医薬品、つまり後発医薬品に変更して医薬品を抑える方法があります。後発医薬品とは新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使った、品質・効き目・安全性が同等な医薬品のことです。インプラント装置でもジェネリックインプラントと呼ばれる、先発するインプラント体を模倣して作られた装置があります。料金は抑えられますが、患者さんの口腔内環境とマッチするか歯科医師とよく相談する必要があります。なおインプラント治療は自由診療であるため、高額療養費制度や高額医療、高額介護合算療養費制度は適用できません。
- インプラント治療は医療費控除の対象ですか?
- インプラント治療は美容目的ではなく、欠損した歯の機能を補う目的での治療と認められれば控除を受けられます。医療費控除を受けるためには、領収書を保管し税務省に確定申告書を提出する必要があります。
編集部まとめ
インプラント治療は原則自由診療となるため、保険適用されず全額自費で負担する治療となります。
インプラント治療が保険適用となるのは、外傷やがんなどで顎骨を失い骨移植を行った症例、先天性疾患の症例などに限られます。
インプラント治療での経済的負担を抑えたいならば、ジェネリック医薬品を選択することや、医療費控除で減税することなどの方法があります。
高額になってしまうインプラント治療ですが、治療費を抑えることに囚われ過ぎず、患者さんのお口の健康やライフスタイルに合うインプラント治療を計画しましょう。
参考文献