上顎奥歯のインプラント治療は難しいのでしょうか。この記事では以下の内容を中心に解説していきます。
- 上顎洞炎について
- 上顎洞炎を引き起こす原因と症状
- 上顎洞炎を治す方法
インプラント治療による上顎洞炎についても解説しているので、ぜひ最後までお読みください。
上顎奥歯のインプラント治療について
上顎奥歯のインプラント治療は、特に難易度が高いとされる部位です。その理由として、上顎洞という副鼻腔の存在が挙げられます。
上顎洞は、内部が空洞であり、上顎洞粘膜という粘膜で覆われています。 手術中にこの膜を損傷すると、上顎洞内に感染を引き起こすリスクがあります。そのため、詳細な画像診断や熟練した手術技術が求められます。
上顎洞炎について
上顎洞炎は、上顎の上部や鼻の奥部分にある骨の空洞で発生する炎症を指します。この骨の空洞部分は「上顎洞」と呼ばれ、内部は上顎洞粘膜という粘膜で覆われています。細菌がこの粘膜に侵入すると、上顎洞炎という炎症が発生します。 放置すると、さらに重篤な病気へと進行する可能性があるため、注意が必要です。
上顎洞炎は、虫歯や歯周病、さらにはインプラント治療などからも引き起こされることが知られています。治療方法としては、薬物治療や歯科治療、さらには上顎洞の手術が考えられます。
上顎洞炎を引き起こす原因と症状
上顎洞炎を引き起こす原因と症状について解説していきます。
鼻性上顎洞炎
鼻性上顎洞炎は、風邪やインフルエンザなどのウィルス感染、細菌感染、またはアレルギー性鼻炎が主な原因となります。これらの状態が鼻の炎症を引き起こし、その炎症が鼻から副鼻腔に広がり、副鼻腔炎を引き起こします。アレルギー性鼻炎が長期化すると、副鼻腔炎を引き起こし、膿が溜まったり、粘膜が腫れて厚くなったりすることもあります。
鼻性上顎洞炎の症状としては、鼻づまりや黄色や緑色の鼻水が出てくることが挙げられます。
また、歩くときに鼻の横に響くような違和感を感じたり、眼の奥が重い感じがすることがあり、頭痛を引き起こすこともあります。
歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎は、主にむし歯や歯周病が原因となります。
むし歯が進行すると歯の神経が腐り、歯根の先に膿をためるようになります。
歯周病の場合は、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットから歯周病菌が侵入し、徐々に歯を支える骨を溶かし、上顎洞に炎症が近づいていきます。
上顎の奥歯は、その上方に上顎洞があるため、元々骨が薄い箇所です。虫歯や歯周病が歯根の方向に進行すると、むし歯や歯周病の炎症が上顎洞に達し、上顎洞炎を引き起こすようになります。
歯性上顎洞炎の症状としては、原因となる歯で噛むと痛みを感じたり、歯が浮いた感じがしたりすることがあります。
上顎洞炎を治す方法とは
上顎洞炎はどのように治すのでしょうか。以下で解説していきます。
薬物治療で治す
上顎洞炎の治療法の一つとして、薬物治療があります。薬物治療は、炎症を抑制するために抗菌薬が使用されます。 具体的には、マクロライド系、β-ラクタム系などの抗菌薬が用いられることが多いようです。抗菌薬による薬物治療は、他の治療法と併用されることが一般的です。
歯科治療で治す
上顎洞炎が歯の疾患が原因で発生した場合、歯科治療が行われます。歯科治療では、病巣を除去するために原因となった歯を抜くことが多いようです。ただし、根管治療や歯根端切除術を行うことで、歯を抜かずに治療できる場合もあります。
上顎洞根治手術で治す
上顎洞炎を治療するためのもう一つの方法が、外科的手術です。以前は、Caldwell-Luc法をはじめとする上顎洞根治術という手術が行われていました。上顎洞根治術は侵襲が大きい手術であるため、現在では内視鏡を用いた内視鏡下副鼻腔手術の適応が拡大しています。この手術により、上顎洞炎を根本から治療できる場合があります。
インプラント治療による上顎洞炎について
ここではインプラント治療による上顎洞炎について解説していきます。
インプラント治療による上顎洞炎の原因
上顎洞炎は、鼻の横に存在する上顎洞という部分で発生する炎症を指します。
上顎洞炎は、風邪やインフルエンザなどのウィルス感染や細菌感染、アレルギー性鼻炎などが原因で起こることがあります。また、歯が原因で上顎洞炎を引き起こすこともあり、その中にはインプラント治療が含まれます。
インプラント治療による上顎洞炎は、主に上顎洞内にインプラントが突き抜けたり、上顎洞粘膜を傷つけたりすることが原因となります。特に、上顎洞底の骨の厚みが薄くなっている場合に起こりやすいとされています。そのため、インプラント治療を行う前には、骨の厚みや形状をしっかり確認し、必要なインプラントの長さを十分に確保できるかどうか、担当の歯科医師と相談することが重要です。
上顎の骨の厚みとインプラントの関係性
インプラント治療の成功の鍵は、インプラントを埋め込む場所の骨の厚みに大きく依存します。
歯を失うと、歯を支えている歯槽骨が吸収され、骨の厚みが減少します。特に上顎の奥歯の部分では、歯が無くなると上顎洞底の骨の厚みも減少します。インプラント治療では、骨にインプラントを埋め込むため、上顎洞底の骨の厚みが少ないと、インプラント治療が失敗するリスクが高まります。そのため、治療前に骨の厚みを確認し、必要ならば人工骨を用いて上顎洞底の厚みを増やす手術(サイナスリフト)を行うこともあります。
上顎の骨が薄い人がインプラント治療前にする骨増成術
上顎の骨が薄い場合、インプラント治療を受ける前に受ける治療があります。以下に2つの治療を紹介します。
サイナスリフト
サイナスリフトは、骨が極端に薄い場合に行われる手術で、大量の骨を増やす必要がある場合に行われます。この手術では、歯茎の側面に穴を開け、粘膜を慎重に剥がし、できたスペースに人工骨を入れていきます。 これにより、上顎洞内の粘膜が持ち上げられます。
サイナスリフトのメリットとしては、骨が非常に薄い人でも安心してインプラント治療が受けられること、広範囲に骨を作ることができるため複数本のインプラントを埋入することも可能であること、そして歯茎側面を切開して直視下で行うため安全性が高いことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、傷口が大きくなるため回復に時間がかかり、術後に腫れることがあること、骨の状態によってはサイナスリフトとインプラントの埋入を別々に行う必要があるため、治療期間が長くなる可能性が挙げられます。
ソケットリフト
ソケットリフトは、骨がそれほど薄くない場合に行われる手術で、部分的に骨造成を行う方法です。
ソケットリフトのメリットとしては、外科手術の範囲が少ないため傷口が小さく、患者さんの負担が少ないことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、部分的に骨を作る方法であるため、サイナスリフトほど広範囲に骨を増やすことはできないこと、そしてソケットリフトは直視下ではなく、見えない環境下で行う方法であるため、粘膜をやぶってしまった際の修復が困難であることが挙げられます。
まとめ
ここまで上顎奥歯のインプラント治療や上顎洞炎について解説してきました。内容をまとめると以下の通りです。
- 上顎洞炎は、上顎の上部や鼻の奥部分にある骨の空洞で発生する炎症を指す
- 上顎洞炎には鼻性上顎洞炎や歯性上顎洞炎がある
- 上顎洞炎の治療法には薬物治療や歯科治療がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。