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インプラントの2回目法とは?1回法との違いや2回法のメリット・デメリットを解説

インプラントの2回目法とは?1回法との違いや2回法のメリット・デメリットを解説

インプラント治療では、外科手術が必須となっています。それは顎の骨に人工歯根を埋め込まなければならないからです。いわゆるインプラント手術は、1回法と2回法の2つに大きく分けられ、それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあります。ただ、現状はいくつかの理由から2回法が主流となっており、1回法でインプラント治療を受ける人は一部に限られます。そこでこのコラムでは、インプラントの2回法の特徴やメリット・デメリットについて解説します。

インプラント2回法について

インプラント2回法について はじめに、インプラントの2回法の基本事項を確認しましょう。

インプラント2回法とは

インプラント2回法とは、インプラント手術を2段階に分けて行う方法です。1回目の手術では、インプラント体を顎骨に埋め込みます。そして手術後、インプラント体と骨がしっかりと結合するまでの数ヵ月間を待ちます。専門的には「オッセオインテグレーション」と呼ばれる現象が起こることで、インプラント体と骨が結合し、安定性が増します。 インプラント体が骨と結合した後、二度目の手術を行います。この手術では、インプラントの上部にヒーリングアバットメントと呼ばれるパーツを取り付けます。その後、手術の傷が癒えるのを待ってから、人工の歯(上部構造)をヒーリングアバットメントと交換する要領で装着します。この2回法の特徴は、段階を踏んで行うため、さまざまな状況に対応できる点です。

インプラント1回法との違い

インプラント2回法と対照的に、1回法は一度の手術でインプラント体とアバットメントを同時に取り付ける方法です。1回法では手術回数が少なく治療期間が短縮されるという利点があります。しかし、この方法はすべての患者さんに適しているわけではありません。 1回法では、手術直後からインプラントに負荷がかかることがあるため、インプラントと骨の結合が緩んでしまうリスクがあります。そのため、骨の質や量が十分でない患者さんには適さない場合があります。これに対して、2回法ではインプラントが骨と結合するまで十分な時間を確保するため、インプラントの安定性が向上しやすいです。

2回法はどのような人に向いているのか

インプラント2回法は、骨の質や量が不十分な患者さんや、全身疾患などで感染のリスクが高い場合に向いています。2回に分けて手術を行うため、インプラント体がしっかりと骨と結合するまでの期間を確保できますし、インプラント埋入直後からインプラント体に負担がかかるリスクを減らすことができます。

インプラント2回法の治療の流れ

インプラント2回法の治療の流れ 次に、インプラント2回法の治療の流れを簡単に説明します。

カウンセリングから治療計画の説明

インプラント治療の第一歩は、カウンセリングから始まります。まず、歯科医師が患者さんの口腔内の状態を確認し、インプラント治療が適しているかどうかを判断します。この際、噛み合わせやむし歯の有無、歯周病の状態などもチェックします。 次に、精密検査を行います。CTスキャンデータやパノラマX線写真を用いて顎骨の形状や密度を詳細に確認します。これにより、インプラントを埋入する位置や深さを正確に計画することができます。また、患者さんの全身状態も確認し、手術に適しているかどうかを総合的に評価します。 そして、検査結果をもとに、歯科医師が治療計画を立てます。この計画には、使用するインプラントの種類やサイズ、手術のステップ、治療期間などが含まれます。治療計画は患者さんに詳しく説明され、疑問点や不安点についても丁寧に回答してもらえます。その後、患者さんが納得し、同意を得た上で、治療がスタートします。

一次手術と二次手術

インプラント2回法では、手術を2回に分けて行います。一次手術では、インプラント体を顎骨に埋め込みます。手術は局所麻酔下で行われることが多く、痛みを感じることはほとんどありません。手術では、インプラント体を埋入するために歯茎を切開し、顎骨に穴を開けてインプラントを埋入します。その後、歯茎を縫合して、傷口を塞いだら、インプラント体が顎骨としっかり結合するまで待機します。この期間は一般的に3〜6ヵ月とされ、オッセオインテグレーションと呼ばれるプロセスが進行します。オッセオインテグレーションが完了することで、インプラントの安定性が確保されます。 二次手術は、インプラント体が顎骨と結合した後に行います。この手術では、インプラント体の上部にアバットメントを装着します。アバットメントは、インプラントと上部構造を接続する役割を果たします。二次手術も局所麻酔下で行われ、痛みや不快感はできる限り抑えられたものとなります。

上部構造の装着とメンテナンス

二次手術後、歯茎が回復したら上部構造の装着が行われます。上部構造とは、インプラントの上に装着される人工の歯(クラウン)やブリッジのことです。上部構造は、患者さんの噛み合わせや歯列に合わせて精密に作製されます。 上部構造の装着方法は、現在ではスクリュー固定とよばれる固定方式がほとんどです。スクリュー固定では、上部構造をインプラント体にネジどめします。 装着が完了したら後は何もしなくてよいと考えられる方も少なくないですが、インプラント治療後も、定期的なメンテナンスが重要です。インプラントは天然の歯と同様に、歯周病のリスクがあります。そのため、患者さんには定期的な歯科検診やクリーニングを受けることが推奨されます。歯科医師がインプラントの状態をチェックし、問題があれば早期に対処します。また、患者さん自身も日常的な口腔ケアを怠らないようにすることが大切です。正しい歯磨きやフロスの使用、食生活の改善などを通じて、インプラントの健康を保つことが求められます。

インプラント2回法のメリット

インプラント2回法のメリット インプラントの2回法には、以下に挙げるメリットを伴います。

さまざまな症例に対応することができる

インプラント2回法の大きなメリットは、さまざまな症例に対応できる点です。特に、顎骨の状態が不十分な患者さんにとっては、この方法が有効です。一次手術でインプラント体を顎骨に埋め込み、数ヵ月間かけて骨と結合するオッセオインテグレーション期間を設けることで、骨の質や量が不十分な場合でもインプラントが安定しやすくなります。

細菌感染のリスクが低い

インプラント2回法のメリットとしては、細菌感染のリスクが低い点も挙げられます。一次手術後インプラント体が歯茎のなかに完全に覆われた状態となるため、手術直後の感染リスクを大幅に減少させることができます。これにより、手術後の感染によるインプラント失敗のリスクが低くなると考えられています。また、口腔内の衛生状態が不十分な場合や、糖尿病などの全身疾患を抱える患者さんにとっては、感染リスクが高くなるため、2回法の方が適しているかもしれません。もし、細菌感染による炎症が発生してしまうと、インプラント周囲の骨が溶解し、インプラントが不安定になる可能性があるため、感染リスクを低減することはとても重要なこととなります。

インプラントが安定しやすい

インプラント2回法は、インプラントが安定しやすいというメリットもあります。一次手術でインプラント体を埋入した後、数ヵ月間かけて骨としっかり結合する期間を設けることで、インプラントの安定性が高まります。また、インプラント2回法では、二次手術でアバットメントを装着する際にも、インプラント体が安定しているため、噛み合わせの調整がしやすくなります。これにより、患者さんにとって快適な噛み合わせが実現しやすくなります。そして、インプラントの安定性は、長期的な成功に直結します。安定したインプラントは、噛み合わせや日常の使用においても問題が起こりにくく、長期間にわたって患者さんの生活の質を向上させることができます。

インプラント2回法のデメリット

インプラント2回法のデメリットインプラントの2回法には、以下に挙げるデメリットを伴います。

手術が2回になるため負担が増す

インプラント2回法のデメリットの一つは、手術が2回にわかれるため、患者さんにとって心身への負担が増すことです。一次手術でインプラント体を埋入し、数ヵ月後に二次手術でアバットメントを装着することから、それぞれの手術に伴うストレスや不安が重なります。手術そのものの痛みや不快感は少ないものの、手術前後の緊張感や体調管理の必要性が増す点は無視できません。 また、手術が2回行われることで、費用も増加する傾向があります。手術ごとにかかる費用や、手術後の経過観察に必要な診療費、さらには通院の交通費などが積み重なり、経済的な負担も大きくなります。特に保険適用外のインプラント治療の場合、費用が高額になるため、治療を決断する際には十分な検討が必要です。

通院回数が増える

インプラント2回法では、通院回数が増えることもデメリットの一つです。一次手術二次手術それぞれの前後の診察や経過観察のための通院が必要となり、忙しい日常生活のなかで通院スケジュールを調整するのが難しくなることがあります。 特に、仕事や家庭の事情で時間の制約がある患者さんにとっては、頻繁な通院が負担となる場合があります。また、遠方から通院する場合や、交通手段が限られている場合には、通院そのものが大きな負担となることもあります。これにより、患者さんの生活全体に影響を及ぼす可能性があるため、治療前に十分な計画を立てることが重要です。

治療期間が長くなる

インプラント2回法のもう一つのデメリットは、治療期間が長くなることです。一次手術と二次手術の間に治癒期間を設けるため、インプラント体が骨としっかり結合するまで数ヵ月を要します。この期間中は仮歯を装着することがありますが、上部構造の装着までには時間がかかります。

インプラント手術後の注意点

インプラント手術後の注意点インプラント手術後は、以下の5点に注意しましょう。

術後当日の歯磨き・うがいは歯科医師の指示に従う

手術直後は、歯茎や顎骨がとてもデリケートな状態にあります。強い刺激を与えると、出血や感染のリスクが高まる可能性もあります。手術直後のお口のケアについては、歯科医師の指示に必ず従うようにしましょう。

刺激の強い食べ物は避ける

インプラント手術後の食事には注意が必要です。辛い食品や酸味の強い食べ物は、傷口に刺激を与えてしまい痛みを引き起こす可能性があります。また、硬い食材を噛むことで、インプラント部位に負担がかかり、治癒を遅らせる原因とることも考えられます。手術後数日は、やわらかくて栄養価の高い食事を選ぶことをおすすめします。

激しい運動は控える

インプラント手術直後は、激しい運動を控えることが重要です。運動による体の動きや血流の増加は出血や腫れを引き起こす可能性があります。特に術後の数日は、安静を保ち、身体を休めるほうが無難です。軽い散歩やストレッチ程度の運動は問題ありませんが、無理のない範囲で行いましょう。

喫煙や過度の飲酒はしない

喫煙は、インプラント手術後の回復に悪影響を及ぼします。喫煙は血流を悪化させ、傷口の治癒を遅らせるだけでなく、感染のリスクも高めます。過度の飲酒は血流を増加させ、手術部位からの出血を招くことがあります。

定期検診を受ける

インプラント手術後の回復が順調に進んでいるかを確認するために、定期検診は欠かせません。術後数週間から数ヵ月の間に複数回の検診が行われます。歯科医師がインプラントの状態をチェックし噛み合わせや周囲の歯肉の健康を確認します。また、検診を受けることにより患者さん自身が気付かない問題が生じていた場合、歯科医師が早期に発見し、対処することができます。インプラントの長期的な成功のためにも定期検診の受診は推奨されます。 以上の注意点を守ることで、インプラント手術後の回復をスムーズに進め、健康な口腔環境を保つことができます。

編集部まとめ

今回は、インプラント手術の2回法の特徴やメリット・デメリット、1回法との違いについて解説しました。インプラント2回法は、文字どおりインプラント手術を2回に分けて行う方法で、1回法にはないメリットがあると同時に、いくつかのデメリットも伴う点に注意が必要です。インプラント手術を2回法で行うか1回法で行うかは、患者さんの意向だけで決められるものではない点も注意しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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