インプラント

インプラント治療後の腫れがでる原因について解説|腫れや痛みを軽減する方法も紹介します

歯が痛い女性

インプラントは歯科治療の中でも人気の高い方法です。見た目が美しく、自分の歯を取り戻したかのような本物さながらの機能も人気のポイントです。

しかし、インプラント治療は外科手術にあたります。外科手術には腫れや痛みがつきものであり、インプラント治療をためらう原因になるかもしれません。

今回はインプラント治療後の腫れが出る原因や軽減方法をご紹介します。

インプラント治療後の腫れについて

鏡を見て肌に悩む女性

インプラント治療では手術後に術部が腫れてしまうことがあります。腫れが引くのは術後2~3日程度です。

しかし、同時に治療する歯の本数が多いほど腫れが強くなったり長引いてしまったりすることがあります。

また、顎の骨や歯肉が少ない場合に不足している分を移植する手術を受けることも腫れが長引く原因です。

長引いた場合でも概ね1週間ほどで腫れは引いていきますが、長引く場合は受診が必要です。

また、治療完了後に腫れが出る可能性もあります。

治療後に腫れが出る場合は、インプラントの周囲に炎症を生じていたり、パーツが上手く調整できていなかったりすることが原因です。

すぐに受診し、専門的な治療を受けましょう。

インプラント治療で腫れがでる原因

歯が痛い女性

インプラント治療で腫れがでる原因は主に2つです。それぞれ詳しくみていきましょう。

手術後の免疫・防御反応

歯科治療

外科手術では腫れはつきものです。外科手術は治療の際に体に傷ができます。体に傷ができると、免疫・防御反応が働きます。

腫れは免疫・防御反応の1つで、体が傷を再生しようと必要な栄養を集めるために生じるものです。

傷を早く治すために生じている反応なので、決して悪いものではなく正常な反応です。

細菌感染

細菌

免疫・防御反応は正常な腫れなのに対し、細菌感染による腫れは放っておけない症状です。

インプラント治療における細菌感染による腫れは、衛生面の問題や正しく服薬ができていないことが原因です。

衛生面の問題というと歯科の手術環境が思い浮かぶかもしれませんが、術後に正しい口腔ケアがされていないのも問題になります。

また、虫歯や歯周病、糖尿病などがある方は細菌感染を起こしやすいです。該当する方は治療を受ける前に必ず歯科や主疾患の担当医に相談しましょう。

細菌感染による腫れが疑われる場合はすぐに受診し、専門的な治療を受けるのをおすすめします。

インプラント治療後の腫れや痛みを軽減する方法

女性

インプラント手術直後の腫れや痛みは、免疫・防御反応によるものなので正常な反応です。
しかし、腫れや痛みは辛いもの。なるべく軽減したいです。

治療後の腫れや痛みは3つの方法により軽減できます。特に細菌感染による腫れは治療後の正しいケアで予防できるので確認していきましょう。

口内洗浄

歯磨き

インプラント治療をした部分は、強い刺激を与えると腫れが酷くなったり治りが遅くなったりしてしまいます。

術後は歯磨きをしない方が良いのではないかと考える方もいるでしょう。

しかし、全く歯磨きをしないと細菌感染を起こし、やはり腫れが悪化する原因になります。

術後であっても治療した部位も含めてしっかりと歯磨きをする必要があります。口内洗浄の正しい手順を知って、しっかりケアしましょう。

口内洗浄の基本手順は以下の通りです。

  1. 歯間ブラシやデンタルフロスで歯間のケア
  2. 歯ブラシでブラッシング
  3. 舌ブラシで舌のケア
  4. うがい
  5. 洗口液で仕上げ

歯間ブラシやデンタルフロスは、歯ブラシの届かない歯の間をケアするのに便利です。歯ブラシと同じように細かく動かし磨いてください。

次に歯ブラシでブラッシングを行います。歯間ブラシやデンタルフロスの後に歯ブラシを使うことで効果的に歯垢を除去できます。

インプラント治療後の歯も自分の歯と同様に、歯ブラシで歯肉の境目までくまなくブラッシングしましょう。

歯ブラシと歯間ブラシを使用するときには、インプラント治療をした部位は優しい力で磨くよう注意してください。

また、舌にも歯と同じように多くの細菌が付着します。

舌のケアには舌ブラシを使用しましょう。よく歯ブラシで舌のケアをしている方を見かけますが、おすすめできるケア方法ではありません。

舌には味蕾という味覚を感じる部位があります。歯ブラシでの摩擦は刺激が強過ぎて味蕾を破壊してしまいます。

舌専用のブラシを使って優しくケアすることがおすすめです。

ブラッシングの後は、うがいでよく歯をゆすぎましょう。

インプラント治療後は仕上げに洗口液の使用がおすすめです。

術後の痛みや腫れの恐れから十分にブラッシングができない場合にも、治療部位の歯垢を洗い流してくれます。

ただし、口内洗浄の基本はブラッシングです。洗口液のみの使用は避けてください。

正しい口内洗浄により、口腔内の細菌数が増えるのを予防し、細菌感染を防ぎましょう。

傷口には触れない

歯を触る女性

傷口には触れないことも重要です。

触れたことが刺激になり、傷の治りが遅くなるため腫れが長引く原因になります。

口腔内が気になってついつい舌で触ってしまうこともあるかもしれません。しかし、手術直後は極力触れないようにするのが基本です。

手で触れることも勿論避けましょう。手が十分清潔でない場合には細菌感染の原因にもなります。

また、舌や手だけでなく、硬いものや刺激物を口に含むことで刺激されます。術後は腫れが引くまで刺激の強い食べ物は控えるようにしましょう。

薬を正しく服用

薬

処方された薬を正しく服用することも腫れの軽減に繋がります。

手術直後は麻酔が効いているので痛みが少ないことや腫れが目立たないこともあります。

しかし、麻酔が切れれば痛みは生じますし、後々腫れてくることもあります。正しく薬を服用し、腫れや痛みを軽減しましょう。

インプラント手術後に処方される薬は主な薬は以下2つです。

  • 痛み・炎症止め
  • 抗生剤

痛み・炎症止めは、手術後の痛みや腫れを軽減する薬です。傷を早く治す効果もあります。

処方の際には頓服薬または内服薬として出されます。

頓服薬として処方された場合は痛みが出ている時だけ服用してください。

内服薬として処方された場合は、毎回決められた時間帯に服用し、最後まで飲み切りましょう。

抗生剤は、細菌感染を防ぐ薬です。内服薬として処方されることが多いです。

頻繁に内服を忘れてしまうと効果が得られにくいことがあるため、処方された通りに服用してください。

インプラント治療のメリット

インプラント

歯の治療方法にはインプラントの他にもブリッジや入れ歯などの選択肢があります。

他の治療方法よりもインプラント治療をおすすめする理由には他の歯の負担や美しさなどが挙げられます。

インプラント治療のメリットは主に以下3つです。

失った歯を取り戻せる

虫歯や事故などによって歯は失われてしまうリスクがあります。残念ながら歯が生え変わるのは1度切りで以降失った歯を再生することはできません。

しかし、インプラント治療は本物さながらの歯の見た目と機能を取り戻せます。

インプラント治療では、失った歯の歯根の代わりに埋め込まれるのは人工歯根という土台です。人工歯根は、独立したしっかりとした土台を作れます。

土台をしっかりと作ることにより、本物さながらの噛む力や耐久性を取り戻せます。硬いものでも問題なく噛めるため、満足感が高いです。

しっかりと噛めることは、歯を支える骨に刺激を与えて骨が痩せるのを防ぐ効果もあります。

入れ歯やブリッジは歯を失った部分に刺激が加わらないので、骨が痩せてしまう原因になります。

また、インプラントは本物の歯と同じように磨けます。歯磨きの際に入れ歯やブリッジのように取り外す煩わしさがありません。

人工歯根は本物の歯に劣らない機能をもっていることから、第2の永久歯とも呼ばれています。

他の歯に負担をかけず治療ができる

ブリッジや入れ歯は治療の段階で周囲の歯を削ったり、噛む力を隣接する歯で負担したりします。

余計な負担が長期間かかった歯は寿命が短くなる傾向があります。

インプラントは人工歯根を1本1本埋め込むため、施術が必要なのは治療する歯単体です。

他の歯を削ったりブリッジで繋いだりする必要がないため、他の歯に負担をかけずに治療ができます。

また、1本1本が独立して噛む力を負担するため余計な力が入らず、長期的に見ても他の歯の寿命を短くしてしまうリスクが低いです。

周囲の歯の健康を守るためにもインプラントはおすすめの治療方法です。

見た目が美しい

肌を気にする女性

ブリッジ治療を例に挙げると、金具が見えるなど見た目の美しさは損なわれてしまうことがあります。

一方、インプラントは本物の歯のような見た目に仕上がります。

見た目でまずインプラントと気付きにくいかもしれません。

自分の歯の色や形に合わせることができるので、他の歯から浮いて見えないことが多いのもメリットです。

見た目の美しさはインプラント治療最大のメリットといっても過言ではないでしょう。

インプラント治療のデメリット

おさいふ

他の歯を守り、見た目も美しいインプラントですが、デメリットもあります。インプラント治療のデメリットは以下の4つです。

外科手術でリスクがある

インプラント治療は外科手術にあたり、リスクが生じます。

手術中に起こる主なリスクとしては、出血や腫れが長引くことです。出血や腫れは大半の外科手術で生じますが、長引く場合は受診が必要です。

また、以下8つの危険因子がある方は治療のリスクが高まります。

  • 喫煙…血液循環が悪くなる、インプラントが定着しにくくなる
  • 糖尿病…細菌感染をしやすくなる、傷の治りが遅くなる
  • 貧血…傷の治りが遅くなる・出血が長引く・細菌感染をしやすくなる
  • 高血圧…手術によって血圧が上がり出血が長引
  • 骨粗鬆症…インプラントを支えられない
  • 虫歯や歯周病…細菌感染をしやすくなる
  • 咬合不良…インプラントが定着しにくくなる、インプラントが破損しやすくなる
  • 服薬(ビスフォスフォネート系薬剤・抗血栓療法・ステロイド薬)…出血が長引くなど

該当する項目のある方は、インプラント治療をはじめる前に必ず医師や主疾患の担当医などの専門家に相談しましょう。

治療期間がかかる

インプラントの治療期間は3ヶ月~1年ほどです。

他の歯科治療に比べて治療期間が長いことがデメリットの1つに挙げられます。

治療期間が長くなる原因は、インプラント治療のプロセスが多いからです。手術を始める前にも診察や検査が必要になります。

また、人工歯根を埋め込む手術をした後、人工歯と結合させる装置をすぐに取り付けることはできず人工歯根が定着するのを待つ必要があります。

インプラント治療のプロセスは安全に治療を進める上で必要です。

また、インプラント治療は口腔内の健康状態により、治療が長引くことがあります。

健康な方はすぐに手術が受けられインプラントの定着も早いです。

一方、虫歯や歯周病のある方は細菌感染のリスクが高いため、根本的な歯の治療を優先して行わなければならないことがあります。

インプラントが定着するまでにも時間がかかる傾向があります。

治療後もメンテナンスが必要

インプラント治療は手術をすれば終わりではありません。手術後に定期的なメンテナンスをする必要があります。

定期的に正しいメンテナンスが行われないと問題になるのが、インプラント周囲に歯垢(プラーク)が溜まることです。

放置すると治療を行った歯肉の周囲に炎症が起こります(インプラント周囲炎・インプラント周囲粘膜炎)。

進行すると歯を支える骨が溶けてしまい、インプラントの揺れや歯茎の痛みを生じます。

最終的にはインプラントが抜けてしまう重大な問題になります。

インプラント周囲炎を防ぐためには、定期的に正しいメンテナンスを行いましょう。

また、インプラント周囲炎の症状に気付いたら早めに受診し専門的な治療を受けてください。

保険がきかないので費用がかかる

インプラント治療には健康保険が適用されません。

治療にかかる費用は全て自己負担になるため、3割負担の保険適用の治療に比べて高額です。

また、インプラントには耐久性の高さなどからチタンが使われています。

チタンの値段は高額であり、インプラント治療の費用はお手頃価格であるとはいえません。

また、本数が増えれば費用も高くなるため、複数の歯の治療を検討されている方にとっては負担が大きいです。

一括で支払えない場合はデンタルローンの活用をおすすめします。デンタルローンは高額な歯科治療を受ける際に使えるローンのことです。

インプラント治療はデンタルローンが適用されるため、治療の際に検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

インプラント

いかがでしたでしたか。

今回はインプラント治療後の腫れがでる原因や軽減する方法について解説しました。

術後は傷口に触れないことや正しい服薬で、腫れを軽減しましょう。

見た目も美しく、本物さながらの噛む力を再び手に入れられるインプラント治療は魅力的です。

腫れが心配でインプラント治療をためらっている方の参考になりましたら幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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