オールオン4は、歯がない方でも4本のインプラントですべての人工歯を支えることができる治療法です。このオールオン4では、さまざまなインプラントや人工歯の材質を使います。それぞれの材質には特徴やメリットやデメリットがあり、ご自身に合った選択をする必要があります。本記事では、オールオン4で使用される材質の種類と、そのメリットやデメリット、選び方のポイントを解説します。
オールオン4の概要
- オールオン4とはどのような治療ですか?
- オールオン4とは、すべての歯を失った場合に上顎または下顎の片顎につき4本のインプラントを顎骨に埋め込み、その上に一体型の人工歯を固定するインプラント治療法です。4本のインプラントで片顎12本前後の人工歯を支えるため、従来より少ない本数のインプラントで見た目と噛む機能を回復できるのが特徴です。インプラント本数が少ない分、手術の負担や治療期間を抑えやすく、総入れ歯に比べてしっかり固定された歯を得られるため、会話や食事も自然に行えるようになります。
- オールオン4の構造を教えてください
- オールオン4の構造は、インプラント本体、それに連結するアバットメント(支台装置)、そして人工歯と人工歯肉が一体化した上部構造の3つの要素から成り立ちます。まず顎骨に4本のインプラントフィクスチャー(人工歯根)を埋め込み、角度調整用のアバットメントという部品を装着します。その上に、ピンク色の人工歯茎とおよそ12本の人工歯が連なったブリッジ状の上部構造をネジで固定します。一般的に前歯部には2本のインプラントを垂直に、奥歯部には2本を斜めに配置することで、少ない本数でも広範囲の歯を安定して支えることができます。上部構造は取り外し式ではなくインプラントに固定されているため、装着後はご自身の歯に近い感覚で生活できるようになるのも利点です。
オールオン4のインプラントフィクスチャーの材質
- オールオン4のインプラントフィクスチャーの材質の種類を教えてください
- オールオン4に使用されるインプラントフィクスチャーの材質には、主にチタン(金属)とジルコニア(セラミック)の2種類があります。一般的なインプラント治療と同様に現在はチタン製が主流ですが、金属アレルギーの不安がある方やメタルフリーを希望する方にはジルコニア製インプラントが選択肢となる場合もあります。
- 材質別のメリットとデメリットを教えてください
- インプラント(人工歯根)に使われる代表的な素材ごとのメリットとデメリットは次のとおりです。
(表は横にスクロールできます)材質 メリット デメリット チタン - 生体親和性が高く骨と強固に結合しやすいため、長期安定性が得られる
- 強度や耐久性に優れ、医療分野で長く使われている
- 金属のなかではアレルギーを起こしにくい
- 金属アレルギー反応の可能性がある
- 銀色の金属のため、歯茎が薄いと色が透けることがある
ジルコニア - 白色のセラミック製で自然な見た目のため、高い審美性がある
- 金属アレルギーの心配がない
- 骨との結合性も良好で生体親和性に優れる
- チタンに比べて衝撃に弱く、割れやすい
- 導入している歯科医院が限られる場合がある
オールオン4で使用する材質
- オールオン4で使用する材質にはどのようなものがありますか?
- オールオン4で使われる材質は、大きくインプラント体に使われる素材と、上部構造(人工歯や人工歯肉部分)に使われる素材に分けて考えられます。インプラント体には先述のとおり主にチタンかジルコニアが用いられます。一方、人工歯など上部構造の素材としては、レジン(合成樹脂)、ハイブリッドセラミック、ジルコニアセラミックなど複数の種類があります。一般的にオールオン4では、手術当日に装着する仮歯には安価なレジン系の素材を用い、インプラントと骨の結合後に装着する本歯には耐久性と審美性に優れたセラミック系の素材を使用します。
- 材質別の特徴を教えてください
- オールオン4の上部構造(人工歯)に用いられる主な素材それぞれの性質は以下のとおりです。
(表は横にスクロールできます)名称 特徴 レジン(プラスチック) - 軽量で加工しやすい
- 短期間で製作可能
- 天然歯や歯肉に近い色や質感を再現しやすい
ハイブリッドセラミック - セラミックとレジンの複合素材
- セラミックより割れにくく、レジンより硬い
- 強度と美しさのバランスがよい
- 加工や修復がしやすい
ジルコニア - 高強度
- 割れや欠けが起こりにくく長期使用可能
- 変色や着色がほぼなく美しさが持続しやすい
- 高い生体親和性と審美性
- 強い咬合力がかかる部位でも使用可能
このように、オールオン4にはさまざまな種類があり、それらの特徴を踏まえて、患者さんに合ったものを選択します。
- それぞれのメリットを教えてください
- 各素材ごとの主なメリットは次のとおりです。
(表は横にスクロールできます)素材 主なメリット レジン(プラスチック) - 低コストで製作可能
- 短期間で加工、装着できる
- 軽量でやわらかく噛み心地がよい
- 破損しても修理や調整が容易
ハイブリッドセラミック - 審美性と耐久性のバランスがよい
- 天然歯に近い見た目である
- 純セラミックより加工がしやすい
- レジンより強度が高く長持ちしやすい
ジルコニア - とても高い強度と耐久性
- 摩耗や変色がほとんどなく長期的に美しさを維持できる
- 透明感のある自然な見た目で高い審美性
- 金属アレルギーのリスクがない
オールオン4はその素材によって、さまざまなメリットがあります。費用や審美性、アレルギーなど、どの点を重視するかによって、用いる素材を選択します。
- 材質によってデメリットはありますか?
- 各素材ごとの主なデメリットとして、以下の点が挙げられます。
(表は横にスクロールできます)素材 主なデメリット レジン(プラスチック) - やわらかく摩耗や変色が起こりやすい
- 長期使用で劣化が進む
- 噛む力が強い方では割れや欠けが発生しやすい
- 定期的な交換やメンテナンスが前提
ハイブリッドセラミック - レジン成分を含むため摩耗や変色が徐々に起こる
- 純セラミックに比べ審美性と耐久性で劣る
- 定期的な交換が必要
- レジンより初期費用が高い
ジルコニア - 硬いためインプラントや骨に負担がかかる場合がある
- 費用が高額で製作期間も長い
- 破損時は修理が難しく作り直しになる
- 重さのために上顎装着時に違和感を覚えることがある
各素材にはさまざまなデメリットがあります。デメリットを知っておくことで、治療後のトラブルや不満を抑えることができます。治療後に後悔することのないよう、あらかじめ各素材のデメリットを知っておきましょう。
オールオン4で使用する材質を選ぶポイント
- オールオン4のインプラントフィクスチャーはどのように選べばよいですか?
- インプラントフィクスチャーの素材に関しては、多くの場合チタン製インプラントが選択されます。一方、金属アレルギーがある方や体内に金属を入れたくないと希望される方には、ジルコニア製インプラントを選択します。ジルコニアインプラントは見た目やアレルギー面で問題になりにくいですが、対応している歯科医院が限られることや折れやすさのリスクも踏まえて検討する必要があります。なお、チタンは生体親和性が高く、金属のためアレルギーを起こしにくい素材とされています。金属アレルギー体質の方でも問題なく使用できることが多いですが、不安がある場合は事前に主治医と相談するとよいでしょう。
- 歯の材質を選ぶポイントを教えてください
- 人工歯の材質を選ぶ際は、見た目の美しさや耐久性、費用、メンテナンス性などに注目することがポイントです。それぞれの素材にメリットとデメリットがあるため、何を重視するかによって適した材質が異なります。例えば、審美性を重視するなら変色しにくく透明感に優れたジルコニアなどセラミック系の素材が適しています。一方、費用を抑えたい場合や将来的な修理のしやすさを重視する場合はレジンやハイブリッドセラミックが選びやすいでしょう。見た目優先か、費用優先かなどの希望や、噛み合わせの強さや骨の状態などを踏まえ、歯科医師と相談しながら適切な素材を選ぶことが大切です。
編集部まとめ
オールオン4では、インプラント本体から上部構造の人工歯に至るまでさまざまな材質が使用されており、それぞれに特徴とメリットとデメリットがあります。材質ごとの違いを理解したうえで、自分の優先したいポイント(見た目や耐久性、費用など)に合った素材を選ぶことで、満足いく治療結果が得られるでしょう。わからない点は主治医に相談しながら、適切な組み合わせを検討してください。適切な素材選びによって、オールオン4のメリットを活かし、快適で長持ちする新しい歯を手に入れましょう。
参考文献