残っている歯をすべて抜かなくてはならなくなったけど、総入れ歯には抵抗があるという方はいませんか。オールオン4は、そのような方を対象にした画期的な治療法です。
しかし、オールオン4の治療を扱っている歯科医院は多くないため、どのようにして歯科医師を選べばよいのか知りたい方がいるかもしれません。
また、オールオン4は実際に高額な治療ですし、メリットだけでなくデメリットや事前に知っておきたい注意点もあるでしょう。
そこで今回は、オールオン4の失敗例からトラブル予防法までを解説します。オールオン4を検討中の方は、ぜひ本記事を参考に不安解消にお役立てください。
オールオン4の特徴やメリット・デメリット
- オールオン4とはどのような治療ですか?
- オールオン4とは、前歯から奥歯まで一体になっている人工歯を4本のインプラント体で支える治療法を指します。従来のインプラント手術では、1本の抜歯に対して1本のインプラント体を埋め込む必要がありますが、オールオン4は4本という少ないインプラント体で人工歯を支えることができます。抜歯からインプラントの埋入・仮歯の装着まで1日で行うことが可能です。手術は1時間程度で終わり、骨の移植・入院などは必要ありません。
- オールオン4のメリットを教えてください。
- オールオン4は4本のインプラント体で複数の人工歯を支えるため、身体的な負担を大幅に軽減し、費用を抑えることが可能な治療法です。また、顎の骨が十分にある部分を選んでインプラント体を埋入できるため、骨造成をする必要もありません。手術当日に仮歯まで装着できるため、やわらかい食事が可能になり、治療後すぐに審美性を回復できるメリットもあります。
- オールオン4のデメリットを教えてください。
- オールオン4は、保険が適用されないため高額な治療費が負担になるでしょう。インプラントを埋め込む手術が必要になり、一体化した人工歯を装着するためには歯をすべて抜歯しなければなりません。顎の骨の成長がまだ終わっていない・糖尿病など全身疾患がある方など、オールオン4治療が受けられない制限があります。また、オールオン4は専門的な知識や技術が必要な治療法なので、対応できる歯科医院に限りがあるでしょう。
- 治療費用はどのくらいですか?
- 歯科医院によって異なりますが、オールオン4治療の総費用は、片顎でインプラント4本の手術代含め230万~300万円(税込)前後が相場です。
- 治療期間はどのくらいですか?
- オールオン4のインプラント埋入から仮歯の装着までは、半日で終了します。日帰り手術(※)で行うため、入院の必要はありません。術後はインプラントと骨が結合するまで6ヵ月程度待ち、最終的な人工歯と入れ替えて治療は完了となります。骨の結合には個人差がありますが、全体の治療期間はおよそ4~6ヵ月かかるでしょう。(※)術前の検査、術後の経過観察が必要です。
オールオン4のよくあるトラブルや失敗例
- オールオン4のよくあるトラブルを教えてください。
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- 痛み・腫れ・膿が出る
- 仮歯が壊れる
- インプラントが抜け落ちる
- インプラント周囲炎
- スクリューの緩み・破折
- インプラントの破折
術後は、骨を削った部分から痛みや腫れが出るといった症状が出やすくなります。手術当日は症状が出ずに、2~3日経って痛みを感じることもあるでしょう。インプラントの周辺は細菌からの抵抗力が弱いため注意が必要です。歯磨きをせず歯垢が残ったままでいると、細菌が繁殖してインプラント周辺の骨を溶かし、インプラントがグラグラして抜け落ちることがあります。インプラント周囲の歯肉が腫れ、痛みを伴った膿が出る症状をインプラント周囲炎と呼びますが、感染が広範囲に及んだ場合はインプラントごと撤去しなくてはなりません。また、オールオン4ではインプラントと人工歯をネジで止めるスクリュー固定が一般的ですが、スクリューの緩みから細菌が侵入してネジが破折することがあります。
- オールオン4の失敗例を教えてください。
- オールオン4の術中に、インプラントが骨と結合しないことがあります。むし歯や歯周病が原因で歯を失った方の骨はやわらかいケースが少なくありません。やわらかい骨の中にインプラントを入れてもしっかり固定されず、多くの場合は再手術が必要になってしまう失敗例です。インプラントが骨と結合しない原因はさまざまですが、患者さんの骨の質・全身の健康状態・歯科医師の技術などが影響してくるでしょう。また、規定外の粗悪なインプラントを使用したり、噛み合わせがきちんと調整されていなかったりするとインプラントの破損や脱落する危険性があります。
- トラブルや失敗が起こった場合の対処法を教えてください。
- オールオン4手術後、患部に違和感があればすぐに担当の歯科医師に連絡して対処法を仰ぎましょう。術後の痛みや腫れは時間差で現れる場合もあるので、処方された鎮痛剤でうまくコントロールしてください。また、患者さん自身が歯磨きなどセルフケアを怠ってしまったことが原因でトラブルへと発展するケースもみられます。仮歯中は硬いものを噛まないなど患部に負荷をかけないことが大切です。セルフケアとは別に、歯科医院での定期検診やメンテナンスを欠かさないようにしてください。歯科医院でのメインテナンスには、汚れ・歯石の除去といったインプラントの周囲の歯肉観察も同時に行われます。
オールオン4のトラブル予防法や歯科医院の選び方
- オールオン4で起こりうるトラブルの予防法を教えてください。
- 通常の歯科医院ではオールオン4の手術前にまず歯周病の治療を優先しますが、ご自身でも歯周病の検査を受けて治療しておきましょう。歯周病を放置した状態で手術を受けると、インプラント周囲炎のリスクが高まり、インプラントと骨の結合に悪影響を及ぼす可能性があります。また、オールオン4では術後すぐにU型の連結された人工歯を入れますが、強い衝撃を与えるとインプラントと骨が結合しません。術後はどうしても患部が気になるものですが、舌で触り過ぎるとインプラントと骨の結合が妨げられることがあります。トラブルを予防するためにも、手術をした部位を舌で圧迫しないよう注意してください。オールオン4のトラブル予防法としては術後の食事制限の遵守とメインテナンスが重要です。食後の歯磨きなど毎日のセルフケアが欠かせません。また、年に1回は歯科医院でのメインテナンスが推奨されます。長期間外さない状態を続けると、スクリューが緩んでいたりインプラント自体が割れていたり、といったトラブルを見逃す原因にもなるでしょう。
- トラブルを防ぐための歯科医院の選び方を教えてください。
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- オールオン4の臨床経験が豊富な歯科医院か
- 日本口腔インプラント学会認定の歯科医師がいるか
- 歯科医師や医療スタッフがオールオン4治療をよく理解して技術と経験を積んでいるか
- 正確な診断に欠かせないCT診断装置が整備されているか
- 院内が清潔で衛生管理ができているか
- カウンセリングで十分な説明や相談を受けられるか
- 安すぎる価格設定・支払方法などに問題はないか
事前のカウンセリングが十分でなかったために、できあがった歯の色が思っていたのと違う・噛み合わせが気に入らないということもあります。オールオン4でのトラブルや失敗を未然に防ぐためにも、歯科医師と歯科医院の選択は慎重に行いましょう。
編集部まとめ
今回は、オールオン4の術後に起こる可能性のあるトラブルについて失敗例・トラブル予防法などを解説しました。
オールオン4治療の失敗を防ぐためには、高い技術と豊富な経験を持った歯科医院で受けることが重要です。仮歯で硬いものを噛まないなど決められた遵守事項を守り、定期検診・メインテナンスも怠らないようにしましょう。
また、信頼できる歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、ご自身でも毎日の歯磨きをきちんと行い、口腔内の衛生管理を心がけてください。
参考文献