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インプラントを老後に受けるデメリットとは?注意すべき点を解説!

インプラントを老後に受けるデメリットとは?注意すべき点を解説!

高齢になり歯が抜けた後の治療は、「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つのうちいずれかとなるのが一般的です。中でもここ最近、人気が高まっているのがインプラントです。
インプラント治療では、顎の骨にチタンやチタン合金でできた人工歯根を埋め込む手術を行います。歯が抜けることが多い老後に検討する方が多い反面、老後にインプラントを受ける場合にはデメリットも存在します。インプラント治療を受けて、噛む喜びを再び実感するために、あらかじめ注意点を把握しておきましょう。

インプラントを老後に受けるデメリット

インプラントを老後に受けるデメリット

2016年に行われた歯科疾患実態調査によると、60歳を超えると、約80%の人が少なくとも1本以上の永久歯を失うことがわかっています。このことからも、老後こそインプラントを検討する人が増えるのは当然の流れと言えるでしょう。
しかし、老後にインプラントを受けるにはいくつかのデメリットが存在するのも確かです。ここでは、どのようなデメリットがあるのかについて解説します。

費用と期間がかかる

入れ歯やブリッジには健康保険が適用されるため、比較的費用がかからずに治療が可能です。しかしインプラントは自費診療となり、治療にかかる費用が高額になりやすいのが特徴です。状況によって金額は異なりますが、1本あたり30〜50万円くらいが相場のようです。

また、治療期間も入れ歯、ブリッジに比べると長くかかる傾向があります。埋め込む歯の本数や、顎の骨の状態によって大きく異なりますが、短くても約3ヶ月、長くて1年ほどかかるケースが多いようです。治療に多くの費用と長い期間がかかるため、高齢者の方にとって負担が大きい場合があります。

顎の骨の状態によっては治療を受けられない場合がある

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込む手術です。そのため、土台となる骨がある程度しっかりしている必要があります。しかし高齢者の方は歯周病などの口腔トラブルを抱えている場合が多く、それによって歯を支える骨が脆くなっていたり、溶けてなくなっていたりすることもあります。

元々あった天然の歯を支えられないほど顎が弱っているなどの問題がある場合は、インプラント治療を受けられない場合があります

外科的処置を受けられる体力が必要

インプラント治療は外科的な処置が必須の治療です。手術によって、顎の骨に穴を開ける必要があります。体への負担はインプラント手術が特別大きいわけではありません。しかし高齢者の方は身体にさまざまな問題を抱えていることが多く、また体力も若い頃と比べて落ちています。そのため、体力的な懸念から手術するのは難しいと判断される場合があります。

またインプラントの治療後は、自宅でのケアに加え、歯科に通っての定期的なメンテナンスが必要です。この定期的な通院も、高齢者の方にとっては負担になるでしょう。

・細菌感染のリスクがある
上述の通り、インプラント治療にあたっては外科的処置が必須です。手術では歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けます。そのため、手術中や手術後に、細菌感染が起こるリスクは避けられません。とくに老後は全身の免疫力が低下することから、感染リスクは若年者よりも高くなると言えます。

・インプラントと骨が結合しにくい
健康な天然歯は、歯根とそれを支える骨が結びついているため、通常は取れたり抜け落ちたりしません。

インプラントの素材に多く使われるのは、生体親和性の高いチタンです。これが骨と直接結合することから、インプラントは簡単に取れたり抜けたりせず長持ちします。結合までの期間は個人差がありますが、3ヶ月〜6ヶ月程度が目安です。

しかし老後は、全身の代謝機能が衰えます。代謝が落ちると傷の治りが遅くなる原理で、骨が元通りにくっつくペースも遅くなります。するとインプラントと骨が結合しにくくなります。そのため、結合までの期間が長くかかったり、インプラントが安定しないなどのトラブルが生じる可能性があります。

定期メンテナンスが必要

天然歯と違い、インプラントは人工の歯なので、虫歯になることはありません。しかし治療後のアフターケアを怠ると、「インプラント周囲炎」という、インプラント特有の歯周病にかかるリスクが高まります。

歯と歯のすき間や、歯と歯茎のすき間に蓄積された汚れが原因で発症します。自覚症状が出にくく、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。インプラント周囲炎が進行すると、せっかくのインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

老後のインプラントにはデメリットもあるがメリットも多い

老後のインプラントにはデメリットもあるがメリットも多い

デメリットばかり聞くと、二の足を踏んでしまいそうになるかもしれません。しかし老後のインプラントには、デメリットを上回るメリットがあります。

しっかり噛んで食事ができる

歯が少なくなると、噛む力が低下します。咀嚼能力と健康維持は深く関わっており、ものをよく噛んで食べることが健康の源とも呼べるほどです。

ところが、食べ物をすり潰すのに欠かせない奥歯は、歯の中でもとくに失いやすい歯と言われています。咀嚼能力が低下すると、食べたものを十分に消化することが難しくなります。結果として、栄養の摂取が不十分になります。それによって体の免疫機能が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。

歯が抜けた後の治療法としては入れ歯もあります。入れ歯を見たことがある方はご存知でしょうが、ピンク色の「床」と呼ばれる部分が歯茎と接する構造になっています。床はレジン(プラスチック)もしくは金属でできていますが、いずれにせよ口腔内に違和感があったり、食事の温度や味を感じにくくなったりといった弊害があります。

また、入れ歯によって回復できる咀嚼能力は、天然歯の3〜5割程度と言われています。その点インプラントは、天然歯の9割程度まで咀嚼する力を回復できるのが特徴です。これほどまでに噛む力を回復できる理由は、インプラントが直接顎の骨に支えられているためです。

認知症の予防になる

平成22年に厚生労働省が報告した研究結果によると、咀嚼機能が低い人は咀嚼能力が高い人に比べて、認知症のリスクが高まってしまうことがわかりました。 歯が少ない人は、自分の歯が20本以上残っている人に比べて、認知症リスクが1.9倍にもなるそうです。

違和感なく会話できる

歯が抜けると、息漏れが生じて発音が不明瞭になることがあります。入れ歯は会話中にずれることや、外れることがあるため、会話中にストレスを感じるシーンも少なくありません。さらに、入れ歯を装着することで、口腔内が狭くなったような違和感を覚え、口を動かしづらくなることもあります。部分入れ歯の金属部分が見えるのが恥ずかしいなどの理由から、他人との会話を避けるようになる場合もあります。

インプラントなら、そういったストレスに悩まされることはありません。自信をもって大きな口を開け、喋ったり笑ったりと違和感なく会話を楽しめます。

若々しい外見を保てる

歯の有無は、見た目に直結します。歯が抜けた状態のままでいると、口元がしぼんで、年齢よりも老けて見える可能性があります。しっかりと歯が並んでいる状態をキープすれば、口元にふっくらとハリが生まれ、健康的な印象になるでしょう。

入れ歯よりもインプラントの方がより自然の歯に近く、若々しさがアップします。

・誤嚥性肺炎の予防になる
入れ歯のケアを怠り不衛生な状態で使用していると、細菌が繁殖します。それを唾液とともに飲み込んでしまうと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす可能性があります。また部分入れ歯の場合は、入れ歯ごと誤嚥してしまうこともあるようです。

インプラントの場合は、人工歯と顎の骨ががっちりと結合しているため、そういったリスクはほぼありません

老後のインプラントのデメリットを軽減するための注意点

老後のインプラントには、メリットもデメリットも多くあります。それでもインプラントのメリットに惹かれる、挑戦したいという方に向けて、デメリットを軽減するための注意点を紹介します。

持病がある場合は医師に相談する

老後はさまざまな持病を抱えることが増えるでしょう。インプラントは外科手術を伴うため、持病の種類によっては治療リスクが高まったり、そもそも治療自体が行えないこともあります。

いずれにせよ、持病がある場合は自己判断せず、まずは医師に相談することをおすすめします。この際、歯科だけでなくかかりつけ医にも相談することを忘れずに。場合によっては、かかりつけ医と歯科医との間の連携が必要になることもあります。 例えば服薬の一時中断など、より健康上のリスクを減らして治療に臨めるようになるかもしれません。

専門性の高い歯科医院を選ぶ

インプラント治療を受けるには、歯科医院の選択が肝となります。治療を安全に進行させるためには、術前検査が極めて重要です。とくに老後は、全身の骨が弱っている場合が多いため、術前検査によってインプラント治療が可能かどうか確認する必要があります

そこで、骨の状態を調べるために重要な機材が、歯科用CTです。通常の歯科医院に置かれているレントゲンでは判別できない骨の状態や、神経の状態まで調べることができます。

また、人工歯根を埋める場所の骨の状態によっては、インプラント治療以前に、骨を作る治療を行うこともあります。骨を作る治療には、「再生誘導法(GBR法)」「上顎洞底挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)」などがありますが、これらの治療は非常に専門性が高く、行える歯科医院は限られます。

歯周病などで骨の状態に自信が持てない方は、インプラント治療の専門性が高い歯科医院を選びましょう。そうすることで、より安心して、安全に治療を受けられるでしょう。

毎日のお手入れをしっかりする

「第二の永久歯」とも呼ばれるインプラントは、入れ歯やブリッジと比べて長く使用できます。比較的新しい治療法なので、具体的な持続期間ははっきりしませんが、今のところ、施術から10年後でも95%のインプラントが使用できていると言われています。

その一方で、インプラントの寿命を延ばすためには、適切なアフターケアが不可欠です。歯科医院での定期的なメンテナンスが重要であることは既に触れましたが、自宅での日々のケアも同等に大切です。天然歯以上に時間をかけ、入念にお手入れを行う必要があります。

となると、気になるのが歯磨きについてではないでしょうか。インプラント治療後、歯科医師はよく「どんな歯磨き粉を使ったらいいのか」と質問を受けるのだそうです。

結論としては、市販の歯磨き粉を使用しても問題ありません。フッ素入りの歯磨き粉も使用できます。フッ素がインプラントを腐食させるという心配もあるようですが、市販の歯磨き粉に含まれる量であれば問題はないとのことです。

ただし、研磨力の強い研磨剤が入った歯磨き粉は避けることを推奨します。また、研磨剤の顆粒が大きいと、インプラントと歯茎の間に研磨剤が入り込み、炎症を引き起こすケースもあるようです。

さらに歯磨きだけでなく、フロスや歯間ブラシの使用もおすすめです。歯ブラシだけでは、歯間の汚れを完全に落とすことができません。インプラントと共に天然歯のケアも忘れず、フロスなどを使って口腔ケアを行いましょう。

ただし銀歯などの詰め物をしている場合は、フロスの使用には注意が必要です。詰め物部分にフロスを強引に通すと、詰め物が取れてしまうことがあります。不安な場合は、事前に歯科医師に相談すると良いでしょう。

まとめ

まとめ

老後は歯が少なくなることから、インプラントを検討する人が増えます。インプラントは人口の歯ながら、「第二の永久歯」と言われるほど自然で、長持ちするのが特徴です。

一方で、老後ならではのデメリットも存在します。それを上回るメリットもたくさんあるので、まずはどのようなデメリットがあるのかを把握し、ご自身にどれほど当てはまるかをチェックしてみましょう。

その上で不安なことがあれば、インプラントの専門医にぜひ相談を。インプラント治療を行えば、健康な歯の状態の8割ほどの咀嚼能力を取り戻せます。噛む力を取り戻せば、食事も、会話も、人生も、もっと楽しめるようになるはずです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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