入れ歯を使用しているけれど「よく噛めない」「見た目が悪い」「歯茎と合わない」など不満があり、インプラントに変えてみたいと思ったことはありませんか。
入れ歯と比べてインプラントは自分の歯に近い感覚で噛めるのがメリットです。
しかしいくつかの条件があり、入れ歯からインプラントに変更できるかどうかは個人の状態によって異なります。
本記事では、入れ歯からインプラントへ変更することは可能なのかについて、その条件・メリットとデメリット・治療方法について詳しく解説いたします。
また、気になる費用についてもご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
入れ歯からインプラントに変更できる?
一般的には、入れ歯からインプラントに変更することは可能です。しかし、実際にできるかどうかは状態によって異なります。
入れ歯からインプラントに変える場合は手術が必要となり、その手術にはリスクや負担が伴うためです。
実際にインプラント治療が行えるかどうかは個々の体調や持病などを考慮する必要があります。
例えば、骨量不足・全身疾患・感染症などがあるとインプラント治療ができないケースがあるからです。
また、入れ歯を長期間使用していると顎の骨が痩せてしまうことがあり、インプラントを埋め込む前に、骨造成が必要となることもあります。
骨造成は治療費や治療期間を増やす要因になりますので、しっかりと歯科医師と相談したほうがよいでしょう。
インプラントに変更する場合の治療方法
インプラント治療には健康な歯茎と骨が必要です。歯科医師に相談し、インプラント治療が適切かどうかを判断してもらいましょう。
インプラント治療が可能であれば、次に必要なのは歯科医師による治療計画です。
インプラントを埋め込む前に必要な処置を行い、インプラントの上に被せる上部構造の形や色などを決めます。
そして、局所麻酔や全身麻酔の下でインプラントを埋め込む手術を受けるという手順です。
歯茎を切開し骨に穴を開けてインプラントを埋め込んだ後に歯茎を縫合します。手術後に腫れや痛みがあっても、1~2週間ほどでおさまることがほとんどです。
インプラントと骨がしっかり結合するまで数ヶ月待ち、結合したら最終的に上部構造の装着を行います。
なお、インプラント治療が完了してもその後も定期健診とメンテナンスが必要です。
インプラントに変更する場合の費用
インプラントは手術が必要なので治療期間が長くなる可能性があります。
一般的にインプラントを埋め込む手術から上部構造を装着するまでの期間は、3ヶ月~1年です。
インプラントは入れ歯よりも快適な治療法ですが、それに伴って費用や時間もかかります。
保険適用外の自由治療であり、原則として全額自己負担になるため、保険の入れ歯の費用と比べると10倍以上の差があります。
では、1本だけのインプラントの費用と全ての歯をインプラントにした場合の費用をそれぞれみていきましょう。
インプラント1本の費用
インプラント1本あたりの費用は歯科医院や地域によって異なります。
一般的には約30万~50万円(税込)程度かかることが多いです。
この費用には、検査診断料・インプラント手術代・被せ物製作装着費・メンテナンス費用などが含まれます。
顎の骨量が不足している場合は、別途骨造成手術の費用も必要になることがあります。
全ての歯をインプラントにした場合の費用
全ての歯をインプラントにした場合の費用は治療方法やインプラントの本数によって異なります。
全ての歯をインプラントにすると上下それぞれ10本計20本ほど必要です。
前述したようにインプラント1本の費用相場は約30万~50万円(税込)ほどですので、費用は総額で約800万~1200万円(税込)ほどかかります。
このような場合はオールオン4という治療法がおすすめです。
オールオン4は上下の顎それぞれに支えとなる4本のインプラントを入れて全ての歯の機能を補います。
オールオン4の費用相場は上下片方で200万円~250万円(税込)ほどです。
なお、インプラントが高価なものを選ぶ・治療の難易度や期間が長い・歯科医院の設備や技術が高度なものを選ぶなどの場合はより多くの費用がかかります。
入れ歯からインプラントに変更するメリットは?
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるので噛む力が強くなります。
今まで噛みにくくて避けていたものもよく噛めるようになり、食事の楽しみや栄養の摂取が向上します。
少ない本数でも多くの上部構造を支えることができ、他の歯に大きな負担をかけません。
また、自分の歯と同じように扱えるので入れ歯のように外したり清掃したりする手間が省けるのもメリットといえるでしょう。
耐久性にも優れており、10年以上使用している人も多いです。
このようにさまざまなメリットのあるインプラントですが、これらを踏まえて入れ歯をインプラントに変更するメリットについて詳しくご紹介します。
天然歯と近い噛み心地になる
入れ歯からインプラントに変更すると、天然歯に近い噛み心地になる可能性が高いです。
入れ歯は歯茎の上に装置が乗っているため、噛んだ時の力を歯茎が負担することになります。そのため、噛む力も天然歯より大幅に低下し、痛みや圧迫感も生じやすいです。
これに対し、インプラントは顎の骨に直接インプラント体を埋め込む方法なので、噛んだ時の力は天然歯と同様に骨が負担します。
したがって、入れ歯よりも安定して噛むことができ、より天然歯に近い噛み心地となるのです。
審美性が高い
歯科における審美性とはとくに見た目の美しさを重視する際に用いる言葉です。
インプラントでは噛み心地などの機能面に加えて、審美性が高いのもメリットの1つです。
インプラントの上部構造で多く用いられるジルコニア・セラミックなどといった素材は、金属不使用であり自然な仕上がりが期待できます。
また、天然歯の色に近い見た目を選べますので、違和感が少ないことも審美性を高める一要素となっています。
ほかの歯に負担を与えない
インプラントは顎の骨に直接埋め込んだインプラント体の上に上部構造を装着する治療なので、他の歯を削る必要がなく隣接する歯に負担がかかりません。
これに対し、部分入れ歯は金属のバネを隣接する歯にかけて固定します。 バネをかけた歯に負担がかかってしまうと、その歯自体を失うリスクが高まってしまいますので、インプラントの方がメリットがあるといえるでしょう。
違和感が少ない
入れ歯からインプラントに変更すると違和感が少ないかどうかは個人差があります。
しかし、入れ歯は歯茎の上に装置がのっているので力を入れて噛むことが難しく、違和感を訴える方も少なくありません。
また、歯茎が痩せてしまうと入れ歯が合わなくなり、装着しているだけでも違和感が出てきてしまうこともあります。
これに対して、インプラントは自分の歯と同じように噛むことができ、埋め込んだ後も違和感が少ないのがメリットです。
ただし、インプラントのサイズや形が自分の口に合っていない場合は、違和感をおぼえることもあります。
インプラントは一度入れると取り外すことが難しいので、治療前にカウンセリングや検査を十分に受けることが大切です。
寿命が長い
インプラントの寿命を考える上で、生存率という考え方が参考になります。
厚生労働省によると部分および全部欠損の歯を対象とした症例では、インプラントの10~15年生存率は上顎で約90%程度、下顎で約94%程度となっています。
抜歯後すぐにインプラント治療を行う抜歯即時埋入法や骨移植を伴う治療においては、やや生存率は下がりますが、87~92%程度といずれも高い数値です。
つまり、ほとんどのインプラントは治療後10年以上持つことになります。
一方、入れ歯は5年から10年くらいで交換が必要になることが多く、長期的に見るとコスト高です。
しかし、これはあくまで平均的な数値であり個人差やメンテナンスの状況によって変わります。
歯ぎしり・食いしばり・喫煙などもインプラントの生存率を短くする原因ですので注意が必要です。
インプラントの生存率を高めて長持ちさせるためには、治療計画をしっかり立てて定期的に歯科医院でクリーニングや検査などのメンテナンスを受けることが大切です。
入れ歯からインプラントに変更するデメリットは?
前述したように、インプラント治療は保険が適用されないため1本あたり30万~50万円(税込)ほどかかり、費用が高くなることが多いです。
インプラント治療は外科手術を伴うため、痛み・腫れ・出血などが起こる可能性があります。
また、入れ歯を長く使用して顎の骨が薄くなっているような場合は、骨移植を行うことが必要になることがあります。
インプラント治療は治療の期間が長くなる場合もあり、インプラントを埋め込み骨と結合するまでの期間は3ヶ月~6ヶ月以上です。
インプラントだとむし歯にはなりませんが、周囲の粘膜や歯ぐきに感染することがあります。そのため、毎日の歯磨きや定期的な歯科検診が必要です。
顎の骨が足りない場合骨を増やす手術が必要
インプラント治療を成功させるためには骨を増やす手術が必要な場合があります。
インプラントを埋め込むには、一般的に顎の骨に十分な高さと幅と密度が必要です。しかし、歯周病・加齢・長期間の歯の欠損などで顎の骨が吸収されることがあります。
その場合、インプラントを埋め込む前に骨造成と呼ばれる手術を行うことが必要です。
骨造成には主に以下の3種類あります。
- GBR法:骨の幅が不足している場合に行われます。
- ソケットリフト:上顎洞までの骨の高さが不足している場合に行われる方法です。
- サイナスリフト:上顎洞までの骨の高さが著しく不足している場合に行われます。
骨造成が必要となった場合には、歯科医師とよく相談して治療を受けましょう。
外科的手術が必要
インプラント治療では、失った歯の代わりに人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に上部構造を取り付けます。
治療法は主に歯1本にインプラント1本を埋め込む従来の方法と、オールオン4という少ないインプラントで複数の歯を補う方法の2つがあります。
どちらの治療法もインプラントを埋め込むには顎の骨に穴を開けなければならず、切開・麻酔も必要になるため手術の扱いです。
したがって、総入れ歯も部分入れ歯も、インプラントへ変更する場合は外科的手術が必要となるのです。
入れ歯に比べて治療期間が長い
一般的に、入れ歯よりインプラントの方が治療期間が長くなることが多いです。
入れ歯は手術が不要で歯型を取って入れ歯を製作するだけで、治療期間は1ヶ月~3ヶ月程度かかります。
一方、インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込む手術が必要で、その後に骨とインプラントが結合するまでの治癒期間が必要です。
インプラント治療では手術後約3ヶ月~6ヶ月でインプラントと骨が結合します。
トータルの治療期間は3ヶ月~1年くらいですが、口の状態・手術法・人工歯根の種類などによって治療期間が異なります。
定期検診が必要
一般的に、インプラントにした後も定期的に歯科医院で歯科検診を受けることが必要です。
インプラントのアバットメントや上部構造は、緩んだり割れたりすることがあります。これらのトラブルは早期に発見して対処することが大切です。
また、インプラントは細菌感染に弱く、インプラント周囲炎という病気になる可能性があります。
インプラント周囲炎は悪化すると骨を溶かしてしまいますので、こちらも早期発見・早期治療が大切です。
定期的に歯科検診を受けて、インプラントの状態確認はもちろん、歯・歯茎の状態確認・歯垢や歯石の除去をしてもらいながら異常の早期発見・早期治療に努めましょう。
費用が高額
インプラントは原則健康保険適用外の自由診療であるため費用は高額です。
インプラントの本数や種類・骨の状態・歯科医院の設備や技術などによっても価格は異なってきます。
費用はさまざまな要因で変わりますが、一般的にインプラント1本あたりの費用は約30万~50万円(税込)ほどが平均です。
ただしこれはあくまで目安であり、実際には検査・処置・補維材・技工物なども含めるとさらに高額になる場合があります。
入れ歯からインプラントに変更する場合の治療期間は?
インプラントは歯が欠けた部分に人工の歯根を埋め込み、その上に上部構造を固定する治療法です。
入れ歯からインプラントに変更するとき、治療期間は個人差や治療法によって異なります。
顎の骨にインプラントを埋めてから、インプラントに骨が結合するまでには一定の期間が必要です。
この期間はインプラントを埋めた部位の骨の状態に大きく影響され、インプラント治療部位の骨の造成が必要な場合には治療期間が延びます。
インプラント治療を受ける前に、治療期間についてしっかりと歯科医師に確認してから治療を受けるようにしてください。
骨造成を行わない場合
入れ歯からインプラントに変更する場合、骨造成を行わない場合の治療期間は一般的に3ヶ月~6ヶ月くらいです。
インプラントは骨と人工歯根が十分に結合するまでにかなり時間がかかります。結合が不十分だとインプラントが外れたり感染したりするリスクがあります。
骨造成は顎の骨が十分に厚くない場合に、人工の骨や自分の骨を移植して骨量を増やす手術です。
骨造成を行わない場合はインプラント治療の回数や難易度にもよりますが、最短で3ヶ月くらいで完了する可能性があります。
ただし、個人差や体質、口腔内の状態などによって治療期間は変わることがありますので歯科医師に相談してください。
骨造成を行う場合
骨造成は顎の骨が十分に厚くない場合に、人工の骨や自分の骨を移植して骨量を増やす手術です。
骨造成を行う場合はインプラント治療の前後に別の手術が必要になるため、治療期間が長くなります。
骨造成を行うときの治療の期間は、一般的には3ヶ月~1年程度です。個人差や移植する骨の種類や量によって変わります。
インプラントの埋め込み後も、骨とインプラントが十分に結合するまでに3ヶ月~6ヶ月程度の時間が必要です。
まとめ
入れ歯からインプラントに変更できるかどうかについて詳しくご紹介しました。
総入れ歯であっても部分入れ歯であってもインプラントへの変更は可能です。
インプラントは見た目が自然で美しい・自分の歯と同じように噛める・長持ちするなどメリットが多く、入れ歯をインプラントに変えたいと希望する方は少なくないでしょう。
しかし、インプラント治療には外科的手術を伴い、治療期間や費用の面においてデメリットも存在します。
メリット・デメリットを理解した上で、歯科医師と相談してご自分に合った方法を選びましょう。
参考文献